小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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少々長めのアレな話です。


第250話 観測者2

「……」

 

 ライ(仮)との激闘を終えてから緊張の糸が切れた反動で、体中を襲う酷い倦怠感に身を任せながら瞼を閉じた(スバル)は気が付けば体の感覚がない、まるで無重力の中を彷徨っている感じのまま意識が覚醒していく。

 

「……?」

 

 いや、違うな。

 

 どこかへ……『下』へと引きずられていく浮遊感を微かに感じる。

 

 ゆっくり……本当にゆっくりな速度だ。

 まるで深海に潜水(ダイブ)していく、観光用の潜水艦の感じだ。

 

 徐々にボンヤリとした光が星のように見えてくる。

 

 それはまるで、光で出来たシャボン玉。

 その近くに俺は徐々に近づいていく。

 

『────』

 

 シャボン玉の何から、音が聞こえてくる。

 

『────この愚図が────!』

 

 音じゃない。

 声だ。

 荒い男性の、大人の怒鳴る声だ。

 

 ガシャン!

 

 まるで光に吸い込まれていく感じに浮遊する速度が加速していき、シャボン玉に近づけば近づくほどに木製で出来た何かが割れる音等がうるさくなって俺は思わず目をしかめるどころか瞑ってしまう。

 

『死体の片づけの儲けがこれだけなはずが無いだろうが────!』

 ────バキっ────!

『────イタ────!』

『────大体お前の所為で母さんは────』

 ────ドカッ────!

『────ごめんなさい────!』

 

 次に目を開けると目の前には中世ヨーロッパを思わせる、ボロい家(小屋?)の中で小さな女の子を殴る大の男の景色がモノクローム状態で広がっていた。

 

 よく見たら女の子の体中には痣や打撲傷などが無数にあり、俺は思わず彼女の傍に駆けより────ん?

 

 ……動けない。

 “動けん! 全く、体が動かんぞぉ!”とかの冗談を言っている場合じゃないので割と本気だ。

 

 本当に()()()()

 ()()()()()()

 

「……」

 

 なんだこれ?

 まるで体全体が細胞レベルでガッチリと固定されているかのような感覚だ。

 

『────今日は外だ────!』

 ────ドサッ────!

『────う!』

 

 そう言いながら男は痛がる女の子を文字通りに『家』────もうボロ小屋でいいや────から投げ出す。

 

『チ……農具の置いているところを使え!』

『……はい。』

『お前を生んだ所為で母さんは死んだんだ! 屋根があるだけ感謝しろよ。』

 

『はい……ありがとうございます……』

 

 バァン!

 

 ボロ小屋の扉が力任せに閉められ、みすぼらしい服装のまま追い出された女の子はずるずると地面を移動して道具置きの屋根(と言うか簡易な屋根しかない)の下で丸くなる。

 

『さむい……』

 

 ガァン!

 

 女の子はぽつぽつと雪が降ってくる空を見上げながらボソリと独り言を出すと、何を思ったのかそのまま頭を地面に叩きつけた。

 

『い、たい……』

 

 いや、そりゃ痛いだろうよ。

 凄い音が出たからな。

 ……あと血も出ているし。

 

『でもさむいより、むねのなかが、いたいよりも、いい……』

 

 ……俺は一体、何を見せられている?

 子供が自虐の痛みで、虐待の悲しさや寒さを凌ぐなんて……

 

 悲し(理不尽)すぎる。

 

 何か……何かこの子の為にできることはないか?

 せめて、自虐を止めるとか。

 

 身体は動かない。

 声も出せない。

 

 それでも何か出来ることがある筈だ。

 

『う……ッ……ぁ……』

 

 空から降ってくる雪が少女の肌に────傷であれた肌に当たる度に、彼女は苦しむ声を出して顔を歪める。

 

 ……そうだ。

 ()()()()()()()()()、少しは少女の為に筈だ。

 

 身体が動けなくとも、特典で────って、この距離でも通じるか?

 

 こう、『少女の周りの空気を膜状のようなモノで常温に固定』することが出来れば……

 ん?

 気のせいか?

 

 雪が少女に当たる前に消えていくぞ?

 

 ()()()

 

 ……なに〇フィールドなの、これ?

 

 『……がと……います……』

 

 まぁいいか。

 どういたしまして。

 

 理由も原理も分からないが……これぐらいならばお安い御用だ。

 

 それから目の前の景色が早送りされるビデオのように動きが加速していき、少女の日常が見えてくる。

 

 昼は糞尿やドブさらいに死体の処理用の穴掘り等の、誰もがしたくない面倒ごとや雑用を村人から押し付けられる。

 

 夜は帰り道に状態のよさそうな食物をゴミの溜まり場からサルベージしたり、木から落ちた木の実等で腹を満たしながらボロ小屋へと帰っても野宿が殆ど。

 

 だが、さっきの応用で少しだけ汚臭や天気からの影響を押さえることが出来る。

 

 それでも少女は感謝の言葉を口にしても、表情が笑顔になることは無かった。

 

 

 

 とある時期を境目に景色がぐらりと回り、乗り物酔いと似た感覚にビックリしていると場が一気に変わる。

 

 ボロ小屋の前に小綺麗な馬車とそれ等を囲むかのように武装した大人たちが止まっているし、さっきの女の子から痣とかが見えないところから察するに、やはり少しの時間が過ぎたようだ。

 

 雪も降っていないところと、木々の葉っぱを見ると……春か、夏あたりだろうか?

 

『ではこれで。』

『……ああ。』

 

 馬車の御者と女の子を殴っていた男の二人が話す間によく見ていると、少女と似たような恰好や状態の子供たちが一緒に馬車の後ろに乗っている。

 

 御者の横で虐待男がなんだか不服そうな顔で手の中にあるコインの通貨を数えていた。

 

 これって、もしかして……

 

『ではいくぞお前たち。』

『旦那、ここからもう商会に戻るんですかい?』

『ああ、着くまで気を抜くな。 ハッ!』

 

 ガタ()()()ゴト。

 

 御者が手綱を操ると馬車がボロ小屋の前から動き出し、鎖の音が馬車の中からする。

 

『中世ヨーロッパ』、『辺鄙な田舎』、『虐待』、『小奇麗な馬車』に『金』と数々の点によって先ほど思い浮かべた仮説が確信に変わる。

 

 この御者、奴隷商人か────うわ?!

 

 またもぐるりと世界が一転し、今度はさっきの少女を含めた子供たちが教室っぽいところにいる場へと変わる。

 

 学校……にしては物々しすぎる見張りらしき者たちがドアや窓の外に立っていることから、ここは奴隷商会の教育施設だろう。

 

 だとしても幸運にもさっきまではどこからどう見ても細すぎた少女の体つきは良くもなっている。

 

 モノクロームだからよく見えないが、多分顔色もよくなっていると思う────

 

『────それでどの段階まで来ている?』

 

『はい、水汲みや家畜の世話などを行えるだけの体力や料理の下ごしらえ、裁縫や洗濯、簡単な文字の読み方などと一通りの教育は済んでいます。』

 

 うん?

 教室の外から声がして、注意をそちらに向けると明らかに裕福そうな大人が貴族っぽい者に報告をしていた。

 見るからに奴隷商人と常連(あるいはスポンサー)な感じだ。

 

『そうか、“選別”は出来るか?』

 

『せ、選別でございますか?』

 

『何かね?』

 

『いえ、いささか早いと感じたので────』

『────それとも例の“出来損ない”に情が移ったか────?』

『────まさか。 確かに他の商品と比べると様々な点では見劣りしますが従順さと頑張りはピカイチで、他の模範に────』

『────人材育成に長けている君がそう言うのなら問題は無いのだろうが、生憎ながら世界は私たちの様な者の評価が噛み合わくなってきている。 ここも引き払う────』

『────買収は済んだのでは────?』

『────近頃は平民共が“平等” や“自治”だ何だとうるさくなってきたからか“能力さえあれば文官の補佐などに採用する”などと言った愚行が広がってきている。』

 

 なんだ、これは。

 何を聞かされている?

 

『なるほど、それは確かに厄介ですな。 奴らは世界の仕組みを知らず後先考えずに自分らの正義を他人に押し付ける、血気盛ん過ぎる犬どもですからな。 では選別はすぐにでも行います。』

 

 奴隷商人が、子供たちの簡易的な肖像画と情報が書かれた紙を取り出しては次々と『用途』の欄に書き込んでいく。

 

『労働』。

『娯楽』。

『替え玉』。

()()』。

『その他』。

 

『単語が何を意味するのか』を想像したくないものばかり。

 

 そして少女の肖像画がとうとう出てくる。

 書かれていたのは『性別:女』、『種:白』、『健康:良』、『見目:良』、『体力:中』、『容量:下』、『勉学:下の中』、『メモ:実直で従順』など。

 

 サラサラサラ。

 

 そして商人が『用途』に書いたのは────

 

 

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 

 

『ほら、この人が新しいご主人様だよ。 挨拶をしなさい。』

 

『はい────』

 

 何も知らない彼女の受け渡しを、指をくわえながら見届ける。

 そもそも体が動かないから『指をくわえた気』なんだが。

 

 ダメだ、ドレスに見とれたままついていくな。

 

 馬車に乗るな!

 

 クソ、ここでまたも早送りが……

 

 場所はどこかの室内へと変わり、装飾品などから高級な宿(あるいはどこかの屋敷の室内)で少々薄暗~い雰囲気は()()な場所を連想────

 

『ふむ、値段の割に見た目より小さいが些細なことだな────』

『────いや────!』

『────従順だと聞いていたのに何だその態度は────!』

 

 少女が初めて声を荒げ、拒否の言葉と共に自分へとよじってくる男相手に暴れる。

 

 少し前(小さい頃)より成長したと言っても、大人との体格差を埋めるには何もかもが足りなさすぎる。

 

 それに右足は鎖の足枷でベッドに繋がっているから、コマンドに『逃げる』は灰色で塗りつぶされて選択できない。

 

 故に『暴れる』しかない。

 

 なんで、この子ばかりが……いや、この時代だと割と普通なのかもしれないが価値観が────

 

『────目をつぶればいい────!』

『────やめて────!』

 

 こんな……こんなことって……

 

 ()()()()()

 

 ビリビリビリビリビリビリ!

 

『い────むぐー!』

 

 少し前まで少女が初めて嬉しがって着ていたドレスが破かれ、口が男によって────止めろ。

 

 止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろぉぉぉぉぉぉぉぉ!

 

『むー! むー────!』

『────壊されたくなければ大人しくしろ────』

 

 こ、この! 最低ド変態のクソキモ豚野郎が!

 

 ブチッ

 

 ()()ね。

 

『な────ガッ?!

 

 嫌がる少女の上に覆い被さばろうとした男は動きを止めて、意味不明な息を吐きだし初めながら頭と首の筋肉を強場らせると血管が浮き出てくる。

 

が……ア゛?! か、かかかカカかかががガガ?!

 

 男は自分の胸の上に手を置いては更に苦しみだす鳴き声を上げるが……知ったことか。

 

 汚物に『生』なぞ贅沢過ぎる。

 

 ドサ! ドスッ。

 

『あう! イタ……』

 

 次第に男は白目を剥いたまま苦しみに悶えているとうつ伏せに倒れていき、これを見た少女はさっさとベッド上から床へと転び落ちる。

 

 身動ぎ一つしなくなった男を少女が見て、ボソリと独り言を出す。

 

『……死んだ?』

 

 死んだぞ。

 奴の心の像はもう脈を打っていない。

 少女は辺りをキョロキョロしていると、何度か自分と目が合う。

 

 いや、合ったような気がしというべきか────

 

『────あり……が、とう────?』

 

 ────え゛。

 

 ちょ、ちょっと待て。

 疑問形だったけれど、この子はもしかして────

 

 ────ドンドンドン!

 

『お客様! どうなされましたか?!』

 

『あ?!』

 

 部屋のドアがノックされ、外から別の男の声がしてくる。

 “お客様”と言ったからにはやはりここは()()()()()()()で、外にいる奴は支配人か何かだろう。

 マズい。

 このままだと彼女がこの豚を殺したようにしか見えない。

 真偽の調査なんてマトモなことはしないだろうし、悪い結末しかない。

 時間が無い、鎖を引っ張れ。

 

『ふん!』

 

 ガチャ!

 

 少女は自分の足をベッドに繋げている足枷に付いた鎖を引っ張りだす。

 

 何か、何か出来ないことは無いか?

 

 よく見れば足かせと鎖は使いまわされているのか、錆び付いていた。

 

 “だから何だ”と言えばそれまでなのだが、鎖が繋がれた先はベッドだ。

 ()()()

 

『ふん!』

 

 ミシミシミシミシ!

 

 頑張れ!

 

 バキン!

 

 よし! ベッドが壊れた!

 

 そのまま窓から逃げて走れ!

 

『うん!』

 

 よし、いい子だ。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 少女は窓から出て振り返らずにただ走って、走って、走りまくった。

 

 星が散らばっていた夜空も太陽によって照らされては再び夜が訪れ、また日光が辺りに光を散らしていた。

 既に小さな道沿いにある村をいくつか通ったが、相手が貴族かある程度の富豪の相手をする娼館ならば立ち寄らない方が良い。

 

 殺しの容疑が掛けられているだけならまだマシだが『子供』を扱っている時点でツーアウトノー打者状態の重罪なのは明白。

 裏の組織やコネの繋がりがあってもおかしくはなく『幼女の暗殺者』なんてのデマをでっちあげても何ら驚かない。

 捕まったら問答無用で引き渡されるか、殺されるか、あるいは()()()()()()()()()になるのがオチだ。

 

『う……』

 

 だが限界が来たのか少女の足取りは徐々におぼつかないモノへとなっていき、最後は糸の切れた人形のように倒れてしまう。

 

 無理もないか、何も飲まず食わずの上に睡眠も二日ほど取らなかったのだ。

 寧ろ子供なのによくここまで頑張った。

 少しの間、眠って────ん?

 

 道を誰かが歩いてくるような……おい、起きろ!

 

『……』

 

 起きろ、誰かが来るぞ!

 

『……』

 

 あ。

 よく見ると教会のシスターか。

 

 現代ならともかく、この時代のシスターならば……

 いやどの時代でも『汚い聖職者』はいたわ、ガッデム。

 

『……あら? もし、大丈夫?』

 

 あ、なんだか優しそうな女性でよかっ────待て。

 

 待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て!

 

 ずっとモノクロームだったから気付くのが遅くなったが、シスターの額には()()()()が……つまりこの景色を()()()()()

 

『う……だ、れ?』

 

『私? 私はしがない、辺鄙な村のシスターよ。 ひどい顔色ね……』

 

 ぐ~きゅるるるる。

 

『お腹が空いたの? 教会へいらっしゃい。』

 

 ま、待て! やめろ!

 そのシスターについていくんじゃあない!

 行くな!

 

『……?』

 

 声が届いていない?

 なんでだ。

 ならそのシスターが()()()()だということを証明してやる!

 

 ……なんだこの手応えの無さは?

 

『キョロキョロしてどうしたの?』

 

『……ううん……なんでも、ない……』

 

 だから行くな!

 その女に騙されるな!

 

 シスターと出会った時から叫び続けたが、虚しくも少女に────幼い頃のC.C. の耳にそれ等が届いた様子は無かった。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 またも『動画の早送り』状態が再開しては所々で景色が通常のスピードで流れた。

 

『貴方には、生きる意味がおありかしら?』

 

 体を洗われ、空腹を温かいスープで満たし、次の朝まで寝て次の日の朝にシスターがそう幼いC.C.に問う。

 

『わからない……でも、しにたくはない……』

『では私が生きる理由を、“契約”として貴方に授けましょうか?』

『けーやく?』

『はい、私からは貴方に生きる力を。 その代わりにいつの日か、貴方には私の願いを叶えて頂けます。 お名前は何と言います?』

『……なまえ、ない。 いつも“おい”、“おまえ”、“きみ”だから……』

『なら……“セラ”なんてどうかしら?』

『せら……わたし、せら……』

 

 これはアレだ。

 奴隷だったC.C.が、とある教会のシスターに拾われてギアスの契約をする場面か。

 名前までシスターに付けられたとは知らなかったが……

 

『ほぉ……綺麗なお嬢ちゃんだね。』

『ああ、まるで天子様だ!』

『それならば宴をしよう! 俺たちだけだと彼女に失礼だ!』

『近くのサーカス団も呼び寄せよう!』

 

 教会の近くにある村の者たちが次々と狼狽えるC.C.を祭り上げる。

 

 C.C.が発現したギアスは、『周りから愛されること』。

 性質はマ()に似ているが、こうやって初めて『愛』に触れて喜んでいる姿を見るとまだ能力のオンオフが出来ているっぽい。

 

 彼女の……セラ(C.C.)の世話を村人たちが全員したがり、交代制に彼女への貢ぎ物が増えていく。

 それが『奉仕』であれ、『物』であれ、『高級品』であれ、『ドレス』であれ、何らかの貢ぎ物を。

 

 みすぼらしい服装はドンドンと良い物にアップグレードしていき、体も時の流れと栄養満点にしっかりとした衣食住によってメキメキと健やかに成長していく。

 いつも仏頂面だったセラ(C.C.)の顔にはもはや笑顔が絶えずに浮かべられ、毎日が自分を中心に開かれるどんちゃん騒ぎを本当に楽しんでいる様子だった。

 

 村は町に発展し、町は都市に変わる。

 

 彼女がドンドンと人を呼び寄せる規模が拡大し、今では貴族や貴族夫人等なども思春期頃に成長したセラ(C.C.)をチヤホヤし始めた。

 

 シスターと会ってからからずっと何度もアクションを起こそうとしているが、うんともすんともしない。

 完全に見ているだけの状態でそれだけに、()()()が更に哀しく感じる。

 

 貴族たちからチヤホヤされて数年後、どれだけ断っても招待状がひっきりなしにとある領主に貰った豪邸に届けられる頃から、セラ(C.C.)の顔が時々曇り始めた。

 

 ギアスのオンオフが出来なくなり、止めようにも止められない能力に振り回されて戸惑い始める。

 それでも唯一ギアスの効かないシスターに愚痴などを言えば、胸奥の靄は解消される。

 だがセラ(C.C.)が教会に毎日通うところを見た者たちは『彼女はきっと宗教信仰者なのだろう』という勘違いから、ギアスの影響で彼女を称える集会を作った。

 

 そんな状況下でどうすればいいのか分からないセラ(C.C.)は更にシスターに依存する。

 

 悪循環の出来上がりだ。

 

 そして────

 

『────ちゃんと言われた通りにして来ましたか?』

『はいはいはい、言われた通りに貰い物は全部手放して人払いも済ませましたー。 それでシスターの頼みって、何?』

 

 教会の中はステンドガラスを通して入ってくる日の出の光に照らされたシスターと、シスターに言われるがまま生まれた姿になったセラ(C.C.)だけがいた。

 

『ちゃんと全て、ですよね?』

『ちゃ~んと全部で~す。』

『確認は済ませましたか? 数が多いだけに────』

『────私の意思関係なく、ギアスの所為でどんどんと来るんだから仕方ないじゃない!』

『そうですか。』

『シスターには感謝はしているけれど、正直私もうんざりしているの。 本当よ? あーあ……毎日の贈り物に、私の意思に関係なく“嚮主様”呼びする変な集会も出来ちゃうし、プロポーズも領主とかから来るし……はぁ~……』

『全部、終わりにしたい?』

『うん!』

『そう────』

 

 ────ガシッ!

 

『っあ?!』

『ようやく! ようやく終わりに出来るわ!』

 

 シスターがセラ(C.C.)の喉を両手で掴み、セラ(C.C.)が目を白黒させている間に首を絞めていく。

 

『かはっ────?!』

『────私の永遠を終わらせるには、貴方の様なギアスを持つ誰かが必要だったのよ!』

 

 シスターにマウントを取られたセラ(C.C.)はバタバタと足をバタつかせ、シスターの手を振りほどこうとしながら涙目で訴えた。

 

『何故?』、と。

 

『“なんで”? 簡単よ! “私”が終わるために必要な道具だったからよ! 私にとってうんざりなガキだったけれど、これでようやく私も姉上たちの場所に行ける! アハハハハハハハ!』

 

 徐々に暴れていたセラ(C.C.)の動きが鈍くなっていき、彼女は近くのロウソク立てを必死に掴んではそれを振るう。

 

 ザシュ!

 

ガッ?!

 

 生々しい音がシスターの喉を貫いたロウソク立てから発される。

 

『ケホ!』

 

ガボッ?! ゴボボッ……

 

 返り血まみれになったセラ(C.C.)の咳込みをしている間、背景で自分の喉を押さえるシスターのブクブクと泡立てをするような音が出る。

 

 シスターは倒れ、ぐったりしながらもセラ(C.C.)を見てはニチャッとした笑みを浮かべると次第に目の焦点が合わなくなっていき、喉の音も消えていく。

 

『……シスター?』

 

 バァン!

 

 息を整えたセラ(C.C.)が亡くなったシスターに恐る恐る近寄ると、教会の扉が力任せに開かれる。

 

『皆────?』

『────いたぞ!』

『────こ、これは?!』

『────なんだその血は?!』

『────やっぱりお前は人間を食い物にする魔女だったんだな!』

 

『な、何を────きゃああああああ?!』

 

 かつての村人たちの豹変ぶりにセラ(C.C.)は戸惑い、何かを言える前に怒った形相の者たちによって外へと引きずり出されては醜い感情をそのままぶつける人達の餌食となる。

 

『お前の所為で俺は破綻だ────!』

『妙な術の所為で、自信を失くした妻は頭を病んだ────!』

『ドレスは良いから、彼を返してよこの泥棒! 貴方の所為で彼は狂ったのよ────!』

『全部お前の所為だ────!』

『────ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!』

 

 罵倒の中で殴られても蹴られてもセラ(C.C.)は身を丸くさせながらただ謝っていた。

 

 にもかかわらず────

 

『────古来より魔女の浄化と言えば炎だ────!』

『────火炙りだ────!』

『────お願い、やめてよ皆────!』

『────松明を添えるぞ────!』

『────いやああああああああ────!』

 

 ────彼女は『魔女』と一方的に定義され、彼女の懇願は完全に無視されて火がどんどんと広がっていく。

 

 白い球の肌は焦げ、肉の脂肪が火の燃え上がりを加速させた。

 やがて顔中が火によって覆われるとセラ(C.C.)は酸欠から悲鳴を上げられずに窒息死するまでの間、体が炎の中で痙攣し続けた。

 

 これを見届けた人たちは歓喜を上げ、これを期に『魔女狩り』を始める。

 

 その次の日も、別の女性が近くで火炙りにあった。

 

 その次の日も。 そしてそのまた次の火も。

 

『……ゲホ!

 

 やがて『魔女狩り』が終わって火が消えていくとシスターからコードを無理やり受け渡されたセラは────C.C.は死んでおらず、体が再生していった。

 

 火によって自分を拘束していたボロボロのロープは容易く音を上げて切れて、セラ(C.C.)は燻る灰の上から逃げる。

 

 自分の体から傷が癒えていく様に不安を感じ、彼女は震える自分自身の身体を抱きながら空を見上げた。

 

『どうして……どうして?!』

 

 守れなかった……

 

『なんで?!』

 

 すまない。

 

『どうしてみんなひどいことするの?!』

 

 ()()()()()()

 

『大っ嫌い────!』

『────み、みろ!』

『嚮主様だ! 嚮主様が蘇られた!』

『やはり嚮主様は不老不死の術を?!』

 

『魔女狩り』が終わって近くまで来ていたローブの者たちがC.C.を見て『嚮主様』と呼びながら、歓喜の声を上げる。

 

『魔女だ! 魔女が復活しやがった!』

『皆の衆、嚮主様を守るんだ!』

 

『待って、止めて!』

 

 C.C.を『魔女』と『嚮主』呼びする者たちが彼女の意思を無視し、彼女の身柄を巡る戦を始めた。

 

 当の本人であるC.C.はただ泣きながら、その場から逃げる。

 

 逃げては保護を求め、良心的な者の世話になったりする場合もあればその逆もあった。

 

 だがどちらにしても、数年後には老いた様子や傷跡が一つも残らない彼女の容姿に嫉妬や疑惑が周りから来るとC.C.はその場所を離れることを強要される。

 

 数年住んでは引っ越しが続き、その中で彼女は必死に一人で自分の世話が出来る術を覚えてからひっそりと人知れない田舎でポツンと住み始める。

 

 あれだけ笑っていた彼女の面影はどこにもなく、時折に静かな涙を流していた彼女も今ではただせっせと事務的に『生命活動を続ける』を日課にしている。

 

 そんな痛々しい姿にどれだけ声を届けようとしても彼女が反応することは無い。

 

 

 もう、観たくない。

 

 

 それを最後に、意識が遠のく。

 シャボン玉の様な光の玉から意識が出ると再び暗い場所へと戻る。

 

『────』

 

 声が……

 

 暗闇の中で、呼ぶ声が……

 

『……』

 

 もう、答えられない。

 

 逆に光から遠のく速度が上がって体が────

 

 意識が浮上する様な感覚が────




???:いつから『160話にあったアンケートの投票がまだ可能だった』ことを『作者のミス』だと錯覚した?
作者:長い。 (;´д`)ゞ
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