「……ここは?」
ルルーシュは気が付くと、濃い霧がかかったような芝生の上に立っていた。
自分含めてモノクロームな景色だという異質な状態だったが。
「(遺跡の外か? いや、それならばギアス嚮団に出ている筈だが……しかし神根島での件も配慮するとどこかに飛ばされたという可能性も捨てきれない。 それに霞がかかっているのに湿気や温度差をさほど感じられない所を見ると、ホログラムの類か。)」
ザザァン……
「ん? 神楽耶にスザク?」
『わかっておろう、蓮夜────』
「────……いや、別人か────」
『────そうだよな。』
霧が少し晴れていくとルルーシュは近くから来た声に振り返ると神楽耶に似た少女が居たことに平然としていたが、左腕を包帯で巻く以外では全身鎧姿の『蓮夜』と呼ばれたスザク似の少年にはさすがに驚きを声に出した。
「(スザクと似ているがどこか荒々しい空気に一昔前のブリタニアの鎧姿……ここは過去の映像か何かか?)」
『元々俺を追っかけてきた理由は仇討ちだっけ?』
『うむ。 わらわとしては何らかの手柄を持って帰らねば、皇の一族は示しがつかぬ。』
『いや、それで俺の首を塩漬けにする準備はどうなんだ?』
『手柄と言えば生首に決まっておろう!』
『いや分かるけれど二葉がそうする理由は分かんねぇよ!』
「(『
『分かるけど分からんとは、蓮夜にしては複雑なことを……』
『だから二葉が帰る国────日本に俺たちは捨てられたんだ、だからブリタニアで俺たちの居場所を作る。』
『だから首にはなれぬと?』
『アホ、お前もこっちに残ればいいんだよ。』
『へ。』
ここで連夜の後ろにある霧の中から普段から公の場でコーネリアが普段着ている皇族ファッションに似た正装姿の少女が出てくる。
『そうですよ、私たちと一緒に二葉さんもこの国を作っていきませんか?』
『蓮夜、お主はもしかして────』
『────おう、一緒にブリタニアを作るつもりだ。 な、クレア?』
『ええ。』
「(“クレア”に、“ブリタニアを作る”……もしやこの少女、神聖ブリタニア帝国を再建させたクレア・リ・ブリタニア女帝か? この“
『なるほど……必死な理由付けだな、蓮夜。』
『いや、俺は真面目に────』
『────ならばこちらも真面目な返事をしてやろう。 わらわは一先ず日本に帰る。 色々とやることがあるしな。 戻ってきたら必ず
『いや、言っていることが無茶苦茶だぞ二葉。』
『それじゃあ、私も行くぞ。』
「この声は、まさか?!」
今度は聞き覚えのある声にルルーシュは思わず声を上げてしまう。
『やはり、C.C.さんも行ってしまうのですか?』
『ああ、元々私は漂流者。 今回は一つの場所に長く居すぎた。』
『なんだ、お前も行っちまうのか?』
『そうだよ蓮夜……もしかして寂しいか? お前にはクレアがいるだろう────』
『────どういう意味だよそりゃ────』
『────
『クレアはこいつが何を言っているか分かるか?』
『ウフフフフ、
『……クレア、なんで怒っているんだ?』
『怒っていないわよ、
『おやどう見ても俺の苦手な座学を無理やり受けさせる時の顔じゃねぇか……』
この時、クレアの仕草にルルーシュは静かに怒るユーフェミアを連想したのは余談である。
『蓮夜は、私を恨まないのか?』
『あ? 突然他人の心配か?』
『私の所為で、お前は
『────じゃあ逆に聞くがよ、なんでC.C.は俺たちに今まで付いて来た?』
『……さぁな。 強いて言うならば、“契約に失敗した者へのアフターサービス”とでも受け取ってくれ。』
『ずっと思っていたけれどお前、本当に素直じゃないな。』
『何だと? どういう意味だ蓮夜。』
『なぁ、C.C.? あんたもさ、居場所が欲しかったんだろ? 鳥も、魚も、人も世界が必要としているんだ。 誰が何のために必要としたのかはわからない。 けれど必要なんだと俺は思う。 もう既にいるんだからさ、仕方ないじゃないか。』
『お前は……優しすぎるよ。 それを私は受け入れられるほど、器量が出来ていない。』
「……」
蓮夜が言った言葉とこの時C.C.がそっぽを向きながら見せる悲哀と諦観の混じった表情に現在のC.C.を知っているだけに、ルルーシュは珍しく考えを走らさずにただ話をジッと聞いていた。
『長生きしているクセにか?』
『長生きしているからだよ、若造。』
『そっか……困ったらいつでも来いよ、今のブリタニアはいろんな奴らの力を必要としているからな。』
『気が向いたら、な。 ああ、そう言えば聞いたぞ? 生き残ったナイトメアたち────』
『────今は“ギアスユーザー”な。 ボケたかC.C.────?』
『────ギアスユーザーと私は言ったぞ? 相変わらず馬鹿な蓮夜だな────』
『────おい────!』
『────そのギアスユーザーたちの為に、お前たちは新たな暗部を立ち上げたのだろう?』
『おう、また皇族が一網打尽にならないようにな陰からさせる奴をな。 えええっと……名前は“プルトン”だったか、クレア?』
『“冥界を司る神”から取って“プルートーン”よ、蓮夜?』
『ああ、それな。』
『世話になったなお前たち。』
『お前は本当にブレないな?!』
『私はC.C.だからな。』
『……いつでも来いよ、C.C.。』
『考えておくよ……なんだ二葉、その目は?』
『なんでもない! さっさと行くぞ!』
『……ああ、そう言うことか。 安心しろ、私はクレアやお前と違ってこの若造に────』
『────何を安心しろと────?!』
『────連夜とは違う方向性で面白いな、お前は。』
ニヤニヤするC.C.とは正反対にイライラする二葉たちが木製の船に乗り込むとルルーシュの回りがまばゆい光に包まれていく。
ルルーシュが気が付くと景色はさっきの場所からどこか別にある、夜の浜辺へと移っていた。
小舟の近くには綺麗な作りをした小屋とC.C.、そして彼女と小屋を見て呆れる様子の蓮夜が立っていた。
『で、あれだけしんみりした別れ方をしたのに……なんだ? 半年後はブリタニアに密入国して、矢文を俺の頭めがけて射ったってワケかお前は────?』
『────久しぶりだな若造────』
『────無視するなよお前。 あの後どれだけ城内が騒がしくなったと思っている? アンジさんは俺を“若”と呼んで警備体制を見直すし、暗殺未遂で警備隊はアルトの野郎の所為でビクビクして巡回に力を入れすぎて夜な夜な必殺技の叫びとかがうるさいし────』
『────蓮夜は大変だな。』
『だ・れ・の所為だと思っていやがる、このドアホ!』
「C.C.も全く変わらんな。」
『“どあほ”? 何だそれは?』
『“度が過ぎる阿呆”っていう意味だよ!』
『日本語は奥が深いな。』
『ったく、これでクレアも取り乱していたらプルートーンとニールスのマーリン騎士団たちが大騒ぎを起こしていたぞ……』
『ロレンツォのヤツに丸投げすればいいではないか。 そのため彼を傍に置いているのだろう』
『クレアの事もあって既に過労で倒れそうなあいつにとどめを刺せと?』
『ああ、そう言えばクレアは身籠っていたんだな。 おめでとう、蓮夜。』
『お、おう……サンキュ……』
「む?」
いじる様なC.C.の言葉に照れ臭くそっぽを向きながら頬を掻く蓮夜の様子にルルーシュは一つの仮説を思い浮かべる。
「(やはりクレア女帝の相手が、この“レンヤ”という日本人なのか? しかし、そう考えれば何故“仲睦まじい愛のある皇帝夫婦の例”とまで名高いクレア女帝の夫の名前が一度も歴史書などに出てこないのかに納得がいく。 ブリタニア人至上主義を称える貴族共にとっては邪魔で忌々しいな部分でしかないだろうからな。)」
『で? 用件はなんだよ、C.C.?』
『実は用があるのは私ではなく、こいつだ────』
『────また会ったのぉ、蓮夜!』
小屋の上に人影────忍び装束姿の二葉が胸を張りながらどや顔で蓮夜を見下ろしていた。
『って
『そうだ、わらわじゃ!』
『じゃあ、そういう事だから後は若い者たち同士で。』
『“若い者同士”ってお前……いったい何のために来たんだ?』
『
『“うるさい”とは誰の事じゃ?!』
『……その次いでと本命の建前、逆じゃねぇか?』
『蓮夜も無視するでない!』
C.C.は連夜の言葉に答えることなくただ手をひらひらと振っては────
『────蓮夜、強く生きろよ────?』
『────は?』
────その場から消える前に蓮夜の肩に手を置いては小声で
『ん? どうした蓮夜?』
『あー……取り敢えず、“一族の復興と日本統一おめでとう”ってところか?』
『う、うむ? 感謝、なのじゃ?』
『んじゃ、そう言うことで────』
『────ってちょっと待てぇぇぇぇぇい! 逃げるな蓮夜!』
『うるせぇ! こちとらまだまだいろんなことに手をつけないといけなくてクッソ忙しいのに
『め、面倒くさい?!』
『せめてちゃんと日本の使者として書状を先に送れよ、このじゃじゃ馬が! それでも武家の当主か?!』
『な、何をぉぉぉぉぉぉぉ────おっとコホン……このままだと平行線だな。 この皇二葉、こうして蓮夜殿が密会の要望に応じたことを光栄に────』
『────急に上品なお嬢様口調になるんじゃねぇよ。 気持ち悪くて鳥肌が立つ。』
『失礼な! お主がギャーギャー騒ぐから相応の態度になっただけだ!』
『まっっっっっっっっっったく似合わねぇ……』
『ぐぬぬぬぬぬぬ……減らず口を……』
「(この連夜、見た目だけでなく性格も口の悪さも俺とナナリーが初めて会った時のスザクと瓜二つだな……いや打ち明ける前の段階で言えば、スザクの方が自己中心的だったか。)」
ルルーシュが思い浮かべるのは皇歴の2009年、ナナリーと共に日本の枢木首相の元へと身一つと二人分の所持品が入れられたスーツケース一つで送られ、紹介された住処が枢木神社。
―――の敷地内にある、薄汚れた土蔵。
その時点で何の説明を父親から受けていない幼いスザクと土蔵の中で出くわし、彼の“
結果は
そして兄が暴力を受けていることに耐えかねたナナリーが“兄の代わりに暴力を受けるからやめて”と懇願したところでスザクは彼女の状態に気が失せたのか、あるいは罪悪感からかその場から逃げた。
「(第一印象と接触は最悪だったな……しかしあの時点からナナリーに気をかけていたから俺たちは仲が良くなった。)」
ちなみにルルーシュは詳細を知らないがスザクと仲良くなったきっかけはとある日の昼ごはんを提供された食材だけでなく、より良いご馳走とさせる為に山菜を探しに山へと出かけたルルーシュの帰りがいつも以上に遅くなっていたことだった。
帰りが遅い事に心配したナナリーは目も足も不自由という障害を持ちながらそのまま車椅子で兄を探しに山へと出かけ、落とし穴スザクの二代目秘密基地へと通じるトンネルに引っ掛かり秘密基地内にいたスザクとばったり会い、ルルーシュがいないことでゆっくりと初めて話してお互いの境遇を知り打ち解けた。
その間、土蔵に帰ってくるもナナリーがいないこと、車いすのタイヤ跡が山へと続いていたこと、そして雨が降り始めたことでルルーシュは焦りながら傘を手に取って山へ駆け出すと、雨の中だというのに落とし穴に落ちて壊れた車椅子の代わりにナナリーを背負ったスザクを見つけたことから次第にルルーシュとスザクの間にあったわだかまりは消えていったのだった。
「(そう思えば今まで、ライバルや家臣などだけが周りにいた
『……ま、まぁ良かろう……それにしても蓮夜、お主はやはり腑抜けたな?』
『お前なぁ────』
『────前回の別れ際に、わらわが言ったことを忘れておるな?』
『ッ! そう言うことかよ!』
蓮夜はすぐに腕に巻かれた包帯を取ると包帯の下からは“人間の腕”や“義手”とも呼ぶには禍々しすぎる、まるで生きている様に脈を打つ異形の腕が姿を現す。
『────ウッ?!』
だが蓮夜が何かを成す前に、彼の動きが急に止まる。
『お、おま……何を?!』
蓮夜が見た風上の先には小屋の隣に小さな壺らしき物。
そしてその壺の中から煙が僅かにだけ出ていた。
『まさか、痺れ薬か?! 卑怯だぞ、二葉!』
『お前がかつて日本で居場所を失くし、流浪の旅で言ったようにこの世は結果じゃ────!』
『────アホか! あれは、クレアが危なかったから他の奴らを鼓舞────!』
『────わらわとの雑談に乗った時点で貴様の敗北じゃ────!』
『────聞けよ────!』
『────ナイトメアモドキのお前でも、流石にこれは防げまい! さてと────』
『────え? え? え?!』
二葉が小屋の上から飛び降りると壺に蓋をし、彼女はそのまま足に力が入らなくなった連夜を小屋へと引きずっていく。
『のわぁぁぁぁぁ?! 待て待て待て待て待て俺をどうする気だテメェ?!』
『ふ、ふふん! 心配することは何も無いぞ蓮夜!』
『心配しか無ぇよ?!』
『壁のシミを数えていれば終わるぞ?』
『ちょっと待────なんでだよ?!』
『これからの時代、桜の爆ぜ石だけでなく政治的にもブリタニアと日本の繋がりはこれから必然となる!』
身体の動かない蓮夜と二葉はそのまま小屋の中へと消える。
『どわぁぁぁぁぁぁ────?!』
『────安心して観念せいやぁぁぁぁぁ────!』
『────やぁぁぁぁめぇぇぇぇぇぇぇろぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
『良いではないか~、良いではないか~♪』
「・ ・ ・」
C.C.と負けず劣らずなジト目になりながら呆れていたルルーシュは無言で顔を覆う。
「(夜のドラマのような展開だ……)」
ザ、ザザ……ザザァァァァ!
『キャハハハハ────!』
「(────子供の声────?)」
まるで砂嵐の中にいるように景色が一時的に不確かなものになり、ノイズが走る音が終わると聞こえてくる少女の声にルルーシュが再び周りを見ると今度は未だに霧の中にいるような靄がかかった景色からルルーシュにとって最も意外な人物が出てくる。
「────んな?!」
気楽な笑いをあげながら
「ナ、ナナリー────!」
『────待てよナナリー! そんなに走ったら転ぶぞ────!』
「────ッ?!」
ルルーシュが抱き上げるかのようにしゃがむと同時に幼いナナリーが自分の体を過ぎ通って行き、後を追うかの様に幼い自分が見えたことでルルーシュは驚いたがおかげで一つの仮説を立てた。
「(これは……)」
『だったらお兄様が捕まえて~♪』
「(もしや、
そうルルーシュが思うと霧が少しだけ腫れていって見通しが良くなるが、周りは未だに色が抜けた
「(良く走り回っては俺を困らせる元気なナナリーか、懐かしいな。 それにこの庭園……アリエスの離宮か? いや、それよりもなんだここは……) ッ?!」
彼は見覚えのある風景に内心和むながら歩きだすと、懐かしい姿を見ては息を呑んでしまう。
「(か、母さん……)」
ルルーシュが見たのははしゃぐナナリーとルルーシュへ温かい、ニッコリとした笑いを向けるマリアンヌだった。
そんなマリアンヌの隣に立っていたのは燕尾服を着た、見慣れない子供だった。
「だが隣にいるのは……誰だ?」
『どう? ここでの暮らしには馴染めたかしら?』
『……』
しかし騒がしいルルーシュとナナリーがいる所為か、あるいはその子供の表情がのっぺりとしているから、マリアンヌの言葉に生気が籠っていない目と無言で見返していた。
『……やっぱり貴方には、他人と接するのは早すぎたかしら……』
ザザザザザ!
マリアンヌがその場を子供と共に振り返るとまるで砂嵐の中にいるように景色が一時的に不確かなものになり、ノイズが走る音が終わると同時にマリアンヌと燕尾服の子供に気が付いたナナリーはマジマジと子供を見ている景色に変わる。
『ねぇおかあさま! そのこ、だ~れ?』
『この子は……そうね、新しく従者見習いとして入って来た子よナナリー。』
『ふぅ~ん……へんなかおー! まるでおにんぎょうさんみたいー!』
『……』
『あなた、おなまえは?』
『……』
『わたしはナナリーよ! あなたのおなまえは~?』
『…………の、なま、エ?』
『……喋った?』
『へんなしゃべりかたー!』
天真爛漫でグイグイと押しの強いナナリーに、たどたどしく口を開けた子供の様子にマリアンヌが目を見開かせる。
『ねぇおかあさま! この子はどうしたの~?』
『この子はちょっと事情があって、少しの間ここにいさせることになったの。 それとあまりその……今まで人と触れ合う機会が無かったの────』
『────へんなの! へんな子ー! アハハハハ~!』
興味を失くしたナナリーは元気よくジャンプしてはマリアンヌのかぶっていた帽子を取り、またも元気よく走り出す。
『あらあらあら、私に似て元気ねぇ……』
マリアンヌがチラッと横目で見るのはスタミナ切れから、肩で息継ぎをしていたルルーシュ(子供)だった。
『そういえばあの子もナナリーに似ていたわね……建前上の身分的にも、良いかも知れないわ。』
『……?』
『大丈夫よ。 そんなに心配しなくても、あの子もここにいる貴方と同じ見習いとして来ているから。 こちらにいらっしゃい?』
マリアンヌと子供が歩き出すとルルーシュも後をつけながら考え込む。
「(一体どういうことだ? さっきの蓮夜と二葉、この見覚えのない少年に母さんとの間に何の接点が? そもそも、俺はこんな子供────)」
『────
『あ、マリアンヌ様。』
「アーニャだと?!」
『もちろんです……その子はどなたでしょうか?』
歩いて来たマリアンヌに
『実はこの子の事であなたに頼みたいことがあるの。 貴方と同じく見習いとしてここに居させるのだけれど、事情があって人との関わり方などが得意ではなくて……私はルルーシュとナナリーでその、手がいっぱいだから頼めるかしら?』
『喜んで世話を見ますわ、マリアンヌ様。 その少年のお名前を窺っても?』
『……“スヴェン”よ、ね?』
『……ハい。』
「なん……だと?」
ルルーシュがショックを受けている間、マリアンヌが場を後にするとアーニャは誰も周りにいないことを確認してからボーっと立ったままの子供へと開き直る。
『あー、緊張したー! で、貴方はどこの家の子? きっとここに出入りできるのだから、どこぞの名門貴族でしょうけれど……貴方の様なへん────
『……ドコの、こ?』
『いや、私が先に聞いたのですけれど? ま、いいわ! じゃあまずはここでの立場が先ね!』
『???』
『見た目的には貴方の方が年上っぽいけれど、言っておくけれど私が先に見習いとしてここに来たのですから私を先輩として敬うこと!』
『……』
『その代わり、困ったらいつでも胸を借りても良いわよ!』
スヴェンが無言で頷く様子に、さっきまでの『落ち着きのある令嬢』からお転婆娘に一転した様子のアーニャが“ムッフー!”と誇らしく(?)どや顔を披露しながら胸を張る。
『……』
『ちょっと! レディの身体を見るなんて────!』
『────でも、アーにゃ、むね無イ────』
『────ぐ?!』
未だに無表情のスヴェンの(恐らく)他意のない言葉がアーニャを(精神的に)滅入らせる。
『わ……私だってきっとあと数年すれば、胸も尻も殿方が好む…… や、や、約束しなさい! レディに対して絶対に失礼のない様に振る舞うと!』
『やく、ソク……ナに?』
『約束はねぇ……絶っっっっっっっっっっっっっっっ対に! 破っちゃいけない誓いの事よ! それは分かる?』
『……はイ。』
『じゃあ約束! レディには紳士的に接すること!』
『……しんシ?』
『 “優しく”、ということよ。 “優しい”、これは知っているわよね?』
『……“ヤサしい”?』
『他の人を思いやったり、穏和で好ましい感じ!』
『……?』
『貴方ねぇ……本当に貴族男子? 絵本や教本などくらいは読んだことあるでしょう?』
フルフルフルフル。
先ほどから無言でハテナマークを浮かばせながら、首を横に振るスヴェンにアーニャは頭を抱える。
『こ、これは重傷だわ……』
ナデナデナデナデ。
遠目にある何かを見ながら、スヴェンはぎこちない動きでしょんぼりと俯くアーニャの頭を撫でる。
『はぁ~……ありがとう────って、許可なくレディに触れるのもダメよ。』
『????????』
スヴェンが不思議なものを見るかのように無言で頭を静かに傾げると、アーニャは顔を覆う。
『マリアンヌ様……この子、うるさい自分の家より面倒そうです…… いいわ! じゃあまずはマナーやエチケット、それと従者のマニュアルね! そしてあわよくば私の仕事を押し付け────いえ、まずは“おてほんまにゅある”を読ませることからね!』
そこからアーニャがスヴェンに読ませたのは確かに従者としてのマニュアル本だったが、それ以外の絵本や小説なども含まれていた。
余談で題名は『影の王子様』、『完璧な執事は完璧に尽くす』、『こんな美女な男がいるわけが!』等々と言ったものであった。
サングラスのマックス:何時から160話────え、ちょっと押さないで?!
おはぎちゃん:あっちに行こうねぇ~。 ~(´・ω・)つ))`Д´)グリグリ
作者:長くなりましたが、次話で展開を進める予定です。