小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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(;´ω`)ゞ


第261話 『これが若さ』

 アッシュフォード学園のクラブハウスの二階にある生徒会室のテレビからは租界の報道局によるニュースが発されていた。

 

『────ブリタニア軍の電撃作戦により、愚かにもゴトウ租界を中心に、九州ブロックを再び混乱に陥れようとしたテロリストの掃討────』

 

「────♪~。」

 

 作業に集中するための背景音として点けているのだが内容が明らかにブリタニア側寄りのプロパガンダの映像や内容だったにも関わらず、マーヤは鼻歌まじりに作業を続けていた。

 

 「マーヤのヤツ、な~んかご機嫌じゃね?」

 「そうか?」

 

 普段の彼女ならばテレビのチャンネルをすぐに変えたり、ただ無言に黙り込んでしまうのでこのように楽しそうな様子のマーヤは稀であることにリヴァルはルルーシュに(変装したエルに)小声で問うが返ってきたのははぐらかすような答えだった。

 

 「う~ん……もしかすると、彼氏でもできたとか────?」

 「────ぬぅわにぃぃぃぃぃぃぃぃ?!」

 

「ねぇマーヤ、それって何の歌?」

 

「へ? 歌?」

 

 ルルーシュ(エル)の呟きにリヴァルがオーバーなほどの音量で叫ぶが、生徒会は皆慣れているのかスルー(無視)したシャーリーの質問にマーヤが書類から見上げてはパチクリと瞬きをしながらハテナマークを頭上に浮かばせる。

 

「なんだか良いテンポが良いヤツ! 聞いたことが無かったから聞いてみただけ!」

 

「私、歌なんて歌っていたかしらアンジュ?」

 

「思いっきりね。 鼻歌だけれど。」

 

「どんな鼻歌?」

 

「アレよ。 国歌というか……軍歌みたいな()()。」

 

「……ああ。 ()()ね。」

 

「ふーん……でも“オール・ハイル・ブリタニア(ブリタニア帝国国歌)”じゃないわよね?」

 

「ああ。 アンジュは国歌や軍歌に例えていただけで、実際はまだただの鼻歌よ。」

 

「そっか~、残念! 綺麗な歌だったのに……」

 

「そ、そう? なら作曲した甲斐が────

「────へ────?」

「────ああいえ何も。 ただの独り言よ。」

 

「それにしてもスヴェンのヤツ、まだ療養中なのか会長────じゃなくて先生?」

 

「え? ええ、シュタットフェルト家からそう時々連絡が来ているけれど……どうして?」

 

「いや、アイツが風邪を引くとか聞いたことなかったからさぁ? “結構引きずっているんだなぁ”って。」

 

「うーん……まぁ、カレンの事もあるし? スヴェンも結構無理するタイプだから疲れとかが一気に押し寄せて体調を拗らせたとか?」

 

「♪~。」

 

 ニッコリと愛想のいい笑みを浮かべながら再び鼻歌を発するマーヤの隣では、心の中で冷や汗を掻くアンジュがいた。

 

「(いくらニュース報道が具体的な事しか言っていないことに嬉しくても浮かれすぎ! ヴィレッタも機密情報局とロロの事とかの調整で手いっぱいな様子だし、もう本当にこの子だけにシャーリーやエルたちを任せなくて良かったわ! ……でも国歌、ね。)」

 

 アンジュは先ほどの事を思い出すと、“一度はちゃんと()()()()()()()()歌ってみたいな~”とふと思い浮かべたそうな。

 

「(電球とかが爆散した時は慌てちゃったし、思わずスヴェンから追及があると思ったら彼、何も言わずに箒を出して割れたガラスの片付けを始めるし……)」

 

 彼女は少し前に突拍子もなくスヴェンに前触れもなく、音楽室に誘いだされた時を思い出す。

 時はバベルタワー事件辺りへと戻り、アッシュフォード学園に戻ってきてヴィレッタに『スバル=スヴェン』と正体を明かして間もなかった日へと遡る。

 

 ……

 …

 

「な、何よ? 急に“来てくれ”だなんて?」

 

 音楽室にはどこか照れているのか、少しだけ気まずそうに肩より長くなった自分の髪を弄るアンジュが目をそらしながらスヴェンにそうぶっきらぼうに問いかけていた。

 

 と言うのもその日、アンジュはスヴェンから短く『音楽室に一人で来てくれ』というメッセージを受け取ったからである。

 

 そして彼女は同年代でもかなりの戦場や修羅場を潜り抜けたとしてもまだ18歳。

 恋愛小説や少女漫画などに対して興味津々なお年頃である上、男女のアレやコレに興味は十分すぎるほどにある。

 

 つまり今の彼女は“これってもしかしてもしかするともしかするのかしらぁぁぁぁアハハハハハハハハハハ?!”という内心の奇声と考えから少々キラキラと美化した脳内妄想に心臓が太鼓のように力強く鼓動しているのを、必死に隠していた。

 

「ああ、これを見てくれ。」

 

 そうしてスヴェンがアンジュに渡したのは一枚の紙であり、アンジュがそれを恐る恐る手に取って図面を見ると彼女の表情は一気に冷めたものへと変わった。

 

「……何よコレ。」

「歌詞。」

「見りゃ分かるわよ!」

「ならなぜ聞いた?」

「……」

「なんだ、その目は?」

「別に。 で? これで私にどうしろと?」

「歌詞があるのならアカペラだが?」

「……」

「もしかして歌えないのか?」

「そんなこと誰も言っていないわよ! 歌えばいいんでしょ、歌えば! ……と言うかこれ、スヴェンが考えた物かしら?」

「…そうだ。」

「いま間が無かった?」

「気の所為だ。」

「……あ、そ。 これって何をイメージしたヤツ? テーマは?」

「イメージはアレだ、皇暦1860年代辺りに日本の首都である京都が壊滅し、国が内乱中に二つの対立する忍びの集落の次期頭領がお互いの集落に居る異性に好意を持った所為でどうにかして秘密裏に融和を結ぼうとするイメージの背景に桜が散る様なテーマだ。」

ものすごく具体的ね。 もしかしてどこかの誰かを連想しながら書いた歌詞かしら? (もしかしてブリタニア側のグリグリ団とか?)」

「いや? (『漆黒の蓮夜』とかから連想した繋がりとは言えねぇ。)」

「フーン……いいわ。」

「曲なら一応用意してあるから聞くか?」

 「ならなんでさっき“アカペラ”何て言ったのよ?!」

「(面白いから。) 曲、聞かないのか?」

 

 尚この後に、スヴェンの仏頂面(ポーカーフェイス)と突然の一方的なリクエストにかなり少々イラっと来たアンジュは彼の度肝を抜くため、アンジュは少し本気を出すと室内の電球などが爆散するのだが、スヴェンは『クロスアンジュ』の事もあってただのほほんと『凄い肺活量だな』と思いながら、自分が何をしたのか自覚して気まずくなったアンジュを他所に淡々と部屋を片付けていったそうな。

 

 ……

 …

 

「(あれ?)」

 

 そこで思い返したアンジュはふとこう思った。

 

「(つーかアイツ、全ッ然動じなかったわね? いつもの事だけれど……もしかして()()()()()とか? 一応、代々口頭でしか伝えられていない秘密だけれど……『アイツ(スヴェン)』ってだけで、説明が出来ちゃうのがなぁ~。 でもそうだとすれば、なんであの時を口実に詳しい事を聞いてこなかったんだろ?)」

 

 アンジュは腕を組み、ウンウンと考えこむがどうしても答えは出なかった。

 

「(ま、いっか! 思いっきり歌ったけれどなんかスカッとして、ストレス発散にもなったしね!)」

 

 

 アンジュさんや、今の台無しでっせ。

 

 

 


 

 

 今までのあらすじ。

 

「では行くぞ皆! せーの────!」

「「「「「────“わ~れ~らが~思い~♪ ゆ~め~、見~る明日~♪

 そ~れ~はど~こまでも~♪ 自由に、笑顔で~♪ 駆けられる大~地~♪

 た~だ~、それだけ~♪ ただ、それだけ~♪

 あ~、雲よ空よ~♪ 聞いて~おくれ~♪

 我等~の願いは~♪ 友と、互いの為~

 た~だ~、そ~れだけ~♪ た~だ~、それだけ~♪”」」」」」

 

『暇と言うか気まずい時間を持て余していたからお腹を空かせているであろう実行部隊の為に腹持ちする食事と女性陣たちの為に糖分増し増しなデザート類をカレンとライラたちと一緒に作っていたらいつの間にか食堂に来ていた毒島やオルドリンやアリスたちが何やら合唱し始めて今では誰もがノリノリで歌っている。』

 

 俺も訳が分からんよ。

 だって料理している間は“なんか騒がしいな”と思う程度だったけれど、全部終わった頃にはリズムが合わされて嫌でも注意がそっちに逸れてしまうのだよ。

 

「「「♪~」」」

 

 あ、ライラと一緒に来た孤児たちも自分たちなりに歌(声?)を出している。

 

 アカン、なんか泣きそう。

 

 それに浮かれて笑っているレイラとアリスとオルドリンが何だか姉妹っぽくて可愛い────じゃなくて!

 

「いい歌だね、スバル。」

「ですですー!」

 

 うん。 確かにホッコリするカレンに同意するライラと同様に、俺もいい歌だと思う。

 これは相当時間をかけて、考えられたものだろう。

 何せ歌詞がいかにも『軍歌』と言うか『国家の歌』っぽいし、何より人種や出自がバラバラなアマルガムに合っていると言えば合っている上、非常にシンプルだ。

 

 だがどうしてテンポが完全に『赤い人が新生ネオの総帥になった時の歌』なの?

 

 いや、その時の赤い人のように『精鋭とも言える戦力のある組織』という点においてはアマルガムと似ているというか一致するけれどさぁ?

 それにあの世界と言うかシリーズから取ったネタ技術とかこっちではクレイジーなダイヤモンド並みの開発精神でどんどんと再現させちゃっている天才たちもいるけれどさぁ?

 

 おいそこ、『どっちもお前の所為やんけw』とか言うなし。

 

「気に入ったか、スバル?」

 

「毒島。」

 

「なんだね?」

 

 そのウキウキな笑顔は別の意味で怖いからこっちへ向けるのをヤメテ。

 

「この歌の出所は何だ? もしやとは思うが、お前が考えたのか?」

 

 もしそうだとしたら以前、アンジュに『バジリ〇ク』のエンディングテーマを歌わせたことに対して全力で謝ろう。

 

 いやちょっとそこで待て俺。

 一旦落ち着こうか? 困惑するのは目に見えている。

 動くその度にギシギシと痛む身体やその他もろもろの所為で気が動転している様な気がする。

 かの人が言ったように、まだ慌てる時間じゃない。

 

 毒島の言葉を待ってから慌てるとしよう。

 

「非常に残念だが、違うな。」

 

 え、ちゃうの?

 

「この歌を考え上げたのはマーヤだ。」

 

 ……………………………………え? 何?

 

 俺、オープン型と密閉型のごちゃ混ぜ無理やりドッキングしたコロニー内でその中途半端な危険性を持った建造の不公平を軸に演説するの?

 

 それ以前に俺、確かにちょっとした悪ふざけで『亡国のアキト』介入時にアポロンの馬車降下中に“これが重力に引かれることか!”とかを口にしたけれど、俺は別にアステロイドベルトに避難したり夢見るピンクツインテ少女に男性へのトラウマを植え付ける原因になったりして逃げるように地球圏に戻っては偽名を使った上にサングラとタンクトップの軍服のかなり砕けたスタイルの行動とかはしていないぞ?

 

『サボテンの花が咲いた』イベントもなかったし────あ。 そう思ったら少し胸の奥がチクチクとするような……

 

 そして何故に俺は“夢見るピンクツインテ少女”の単語でユリ〇コスプレをしたフ〇イ並みのプロポーションを持ったツインテヴィ〇ィアンの連想を浮かべた?

 するならユーちゃんが居るから、さっちん風ツインテのル〇ルリ艦長コスプレしたユーちゃん────ってあかん妄想やこれは。

 

 ハ〇ーン様風にグレたユーフェミアなんて、悪夢すぎる。

 何よりコーネリアも加担しかねない。

 

 いやその線で行くとユーフェミアがセレー〇化してコーネリアがハ〇ーンに……っていくら何でもごちゃごちゃ過ぎるぞ俺! *1

 

 これ以上のメダパ〇状態になる前に現実逃避をストップしてマーヤに戻そう。

 初めて出会った時に色々とテストした────と言うか聞いた────けれど、マーヤって本気(マジ)で転生者とかじゃないよね?

 

 ただの登校拒否気味だった、超高性能なモブ子だよね?

 

「毒島、聞いていいか? マーヤから“逆〇ャア”や“コロニー落とし”や“伊達じゃない”や“男同士の戦いに割り込むな”とか“人類は地球上のノミだ”とかなどの言葉を、彼女から聞いたことはあるか?」

 

 頼むから“聞いたことがある”とか言わないでくれよ、ぶっちゃんや?

 

「最後と似通ったものは聞いたことがあるな。 確か、“一般人の事なかれな態度は家畜と同等ね”だとか。」

 

 『逆シャ〇』じゃないからセーフっぽいけれど色々とごちゃ混ぜなネタを含んだ返しが来たよオイ。

 

 キリキリキリキリキリキリキリ。

 

 ステイ、胃痛ちゃん! ステイ!

 胃薬でまた無理やり弾圧するぞコラァァァァァァァ!

 

「ああ、それとレイラから伝言だ。 “キュウシュウブロックの義勇軍は合衆国中華から出港した艦隊と合流し、目下別ルートで避難中”ということだ。」

 

 キュウシュウブロックの義勇軍ンンンンンンン?!

 

 そんなことになっていたのか?!

 てっきり工作員とかの小規模な感じだと思ったが、『軍』とな。

 

「それと、指揮を執っている篠原少佐だが、前に一度師匠(藤堂)から聞いたことがある────」

 

 ────シノハラショウサって。

 毒島が何かを言っているけれど思わず“どこぞの重工業の御曹司だよ?!”とツッコミを入れそうだったことを怒涛の出来事で気が遠くなる中でグッと堪えている所為か耳に入らなくなる。

 

 …………………………………………………………良し。

 

 ちょうど良い言い訳を思いついたからさっさとここからトンズラしちまおう。

 っと、その前に────

 

「────毒島。 ムスペルハイム作戦で、俺とカレンが対峙したKMFのパイロットはどこに居る? リア・ファルの独房か?」

 

「ん? ああ、あの黒いランスロットに乗っていた者ならば零番隊が地下都市の者たちと共にイカルガで保護したと聞いているぞ。」

 

「そいつの姿を見た者はいるか?」

 

「カレンが見たとは思うが、ゼロによって早々に保護されたから容姿は私も知らんな。」

 

 ああ、やっぱりか。

 

 道理で俺と容姿がかなり似ているライ(仮)に関して騒がられていないと思ったらルルーシュが察してくれて隔離したか。

 

 うーん、こりゃ『借り』の内に入るのか?

 入らなければいいが……っと、もう一つ聞くことが出来たな。

 

「あの地下都市からデータ等の入手は出来ているか?」

 

「ああ、そちらはレイラの指示によってリア・ファルに出来るだけ詰め込んだ。」

 

「“出来るだけ?”」

 

「爆破した────」

 

 ナイスやレイラたん!

 

「────ユキヤが。」

 

 Oh。

 コードギアス作中の爆弾魔ならば確実だな。

 

「フム……君のその嬉しい様子を見るに、彼女はこれを見越していたのか。 流石だな。

 

 え? 今なんて?

 俺がデータの方に興味を持つことをレイラが予想していた?

 

 そうだったら毒島やマーヤとは違う意味で“恐ろしい子!”なんだが……ま、まぁいいか!

 

 実質アマルガムを組織として動かせているのはレイラのおかげがかなり大きいのは事実だからな!

 では早速、格納庫へ避難でレッツゴー!

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 グラグラグラグラグラグラグラ

 

『格納庫に逃げよう』と言った俺を、体(主に上半身)がマグネチュード7ぐらいの強さで揺れている今の俺は殴りたい。

 

 グラグラグラグラグラグラグラ

 

 「どうしたらこんなにボロボロになるまで酷使できるのぉぉぉぉぉぉ?!」

「ボスちょっと落ち着いて!」

「シュバールさんが青を通り越していつも以上に白くなっているよ?!」

 

 俺の両肩を右&左手で掴みながら俺の体を揺するのは涙目で訴えるラフな作業服ポニテアンナをなだめようとするクロエとヒルダの声を他所に俺の思考はガクガクと震える。

 

 それに乗じてせっかく引いていた首の痛みも増加中……と言うか地味ズキズキとして痛い。

 

「いいいいいややややややそそそそそそそののののののののすすすすまままんんんんん────」

 「────ファクトスフィアはもとより、メインカメラとサブカメラにモニターに対物センサーも全部壊れているし無理やり入れた腕部のギミックも長時間撃ち続けた所為で両腕の関節はガタついているし新装甲を当てにするのは嬉しいけれど当てにし過ぎてひび割れているし背部ブースターに補佐噴射機のノズルもクールダウンを無視したマニュアル動作でグチャグチャになっちゃっているし────!」

 

 ほぇ~。

 そんな状態でよく動いていたな、蒼天。

 

「────まぁまぁまぁ、データと機体の本体は無事だったからそこまでにしなさいアンナ。」

 

「ソフィ博士はBRSのデータさえあればホクホクですけれどね、毎度毎度出撃する度に機体がオーバーホールが必要な状態で戻って来るのはかなり心が痛むんですよ?!」

 

「ならラクシャータとミルビル夫婦が提案したように、壊れる前提でスペアパーツの増加と交換システムを充実すれば? この間の紅蓮もパーツ交換できたし、毒島機の背部パーツ交換もすんなりと行えたじゃない?」

 

 「いやですよ! 何だか負けたみたいで癪ですッ!!!」

 

 ケラケラと笑うソフィに対し、wZERO部隊でしょぼくれ&気の小さい人見知りなアンナがこんなにも逞しく変わるなんて……

 

 胸の中が温かくなる中、俺は『亡国のアキトに介入してよかった』と心から思いながらホロりリとする。

 

「「ボスのその気持ちわかります!」」

 

 う~ん、クロエとヒルダのこのムードメーカーで前向きぶりな姿はヴァイスボルフ城でもかなり癒しになったな~。

 

 っとと、俺の話を伝えよう。

 

「その……機体の耐久力に考えが────」

 「「「「────あるの?!」」」」

 

 “いや、ねぇよ!”と言う鋭いツッコミを、荒い鼻息と血走った眼で急接近した女性技術者たちと入れたい衝動をグッと堪える。

 

 何気にヒルダとクロエの胸、大きいな。

 特に頭一つ分ほど俺より背の低いクロエって身長の割に────ええい、また脱線しそうだった!

 

「耐久力を上げるのなら、従来のKMF骨格に固執するのはどうかと思う。」

 

「……まさかシュバールさん、“一から作り直せ” とか言わないでしょうね?

 

 顔は笑っているけれど目が全く笑っていない、険しい表情のヒルダがメルトダウン寸前でゴザル。

 腰に両手を当てながらずいッと顔を近づかせる仕草で胸が垂れる様子は普通ならイイのだが、さきほど弾圧した胃がムズムズする。

 

「いや、それは現状では余りにも負担がかかり過ぎる。 俺が言おうとしていたのはビルキースの事だ。」

 

「ビルキース……あの寝癖おんn────アンジュって人用にミルビル夫婦が作った、専用機のナイトメア?」

「そもそもアレってナイトメアの部類に入るのかしら? ブリタニアで失敗作の烙印を押された可変型KMFのサマーセット……の亜種?」

「どっちかっていうと、あのウィザードって胡散臭いおじさんのアグラヴェインの様な“オーダーメイドの大型ナイトメア”?」

 

 俺の出した機体名にヒルダ、クロエ、アンナのオブラートもへったくれもない

 辛辣で素直な感想に、内心で同情の気持ちをアンジュと(特に最近は落ち込み気味な)オイアグロに送る。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 パシャ、パシャ。

 

 シンたちがリア・ファルに戻って来て作ったデザートや軽食やガッツリ食べたい派の為のおでんに対しててんやわんやしている間、俺はひっそりと自室に戻って顔を洗っていた。

 

「フゥ……」

 

 冷たい水が染み、化粧が洗い流されると目の下に目立つクマと少々こけた頬をした自分の素顔が鏡の中から視線を返す。

 

 理由は考えるまでもない。

 

 行政特区に事件からほぼ毎日、本格的にうろ覚えでも自分が知っている有能なコードギアスの人物を何とかこちら側に引き込む────少なくとも敵対はしないように────奔走してきた結果だ。

 

 不幸な出来事を回避したのはまぁ……後味が悪くならないような『ついで』だ。

 

 だがそのおかげでかなり不確定要素や過程が大幅にカットされたR2に向けての準備はできていると思いたい。

 

 フレイヤ開発フラグを折って、黒の騎士団の井上さんや吉田たちの多くの人たちが意味のない死に方をせずにここまで来られた上に紅蓮とカレン捕獲のフラグも折った。

 

 その代わりにエナジーウィングの入手は無くなり、俺の存在も結構大々的に出したが……

 

 ダメだ、備蓄した過労で自己嫌悪とネガティブな思考になっている。

 

 おつりが返ってくる程のプラスをしたと思いたい。

 

 こういう時、取るべき行動はただ一つ。

 

 たった一つだ。

 

 寝る。

 

 ライ(仮)とかギアス嚮団のデータ閲覧とか毎回俺の機体の損傷が酷い事への対策とか諸々含めて明日にして今は寝る。

 

 

 身体は睡眠を求めているのだ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 とある合衆国中華の港ではエリア11から避難してくる義勇軍を護衛する為に黒の騎士団と旧中華連邦の混成艦隊が出港した後、今度は義勇軍の受け入れ作業に移行していたため酷く混雑していた。

 

 義勇軍の受け入れに蓬莱島を使うつもりだったが以前の『百万人の奇跡』とは違って入港してくる船が想定されていた数より圧倒的に多かった事と船の種類がバラバラだったこともあり『入港可能な船は蓬莱島、その他は合衆国中華に』という体で準備が進められていた。

 

 そのガヤガヤとした港の一角で、黒の騎士団の諜報部に所属する青年は顔をひそめながらディートハルトと向き合っていた。

 

「局長、本当によろしいのでしょうか?」

 

「不満かね?」

 

 青年は諜報部でもかなり優秀の部類に入る若手であり、ディーハルトにこうした『密会』に呼び出されたことに内心ワクワクしていた。

 

 ディートハルトに頼まれた任務の内容を口頭で聞くまでは。

 

「“不満”ではなく、この行動に関する“必要性”の説明を求めたいですね。」

 

「フム……君は今の合衆国連合とブリタニアの国力差がどれほどあるのか理解していると思ったのだが?」

 

「……ある程度は。」

 

「ではハッキリと言葉にしよう。 現在の合衆国連合が一丸となって、上手くまとまった行動を取れても知れていると。 確かに中華連邦の大部分がそのまま生き残ったことは好ましい、だが国としてはまだまだ発展途上だ。 EUも去年の『方舟事変』で国の防衛機能が一時的に瓦解した所為で今や全盛期の3分の1程度の領土に縮小し、死に絶え直前だ。 歯痒い事だが、今の我々ではブリタニアと外交のテーブルに着くことすら難しい状況だ。」

 

 ディートハルトはオブラートに包もうとした青年の意図を無視し、スラスラと上記を口にしていった。

 

 ディートハルトの言ったこれ等を分かりやすく例えると外交による抗議は『物理的な衝突』を『言葉による合戦』に変えただけであり、発言力も各国の戦力や貿易に依存した物である。

 

 コードギアスの世界だけでなく、現実にも当てはまるのだが一応リアルではこの様な問題を解決する案の一つとして『国際連合』がある……のだが、結果は御覧の通りである。

 

「今の合衆国連合でブリタニアが注目しているのは黒の騎士団にいる藤堂とゼロ、それとシンクーだけだ。 それも『戦時の脅威』としてだ。 その枠に、あの『アマルガム』という組織も入りつつはある様子だが……今は置いておこう。」

 

「お言葉ですがこの行動が諜報部の所為であると明るみに出れば、『アマルガム』から黒の騎士団に対する心証を悪くするのでは?」

 

「バレなければ『嘘』と『事実』に変わりは無い、それを見込んで君を選抜した。 それに今あの組織は協力的ではあるが……そもそもあの組織の構造は表面上まとまっている体をしているだけで実際は各々の価値観で動いている、雲のようなあやふやなまとまりに過ぎない。 ()()()黒の騎士団と連携を取らずに静観を決め込めこんだり、ゼロの不利益になるようなことをしない保証がどこにもない。 背後の安全を確保しなければ、勝てる戦争にも勝てない。 これは合衆国連合を見て、君も分かるだろう?」

 

 青年がディートハルトにそう尋ねられると、今の状況下の構図を思い浮かべては頷く。

 そもそも合衆国連合に加盟している『国』は元々、個々の軍を持たない────あるいは領土に比べて小規模な治安維持用の軍────中華連邦の属国や周辺国が主なメンバーであるので仕方がないと言えばそれまでなのだが、ゼロの方針は意図的にか合衆国中華以外は黒の騎士団の軍事力に依存するように仕向けられていることもまた事実だった。

 

「外交やプロパガンダは何も『戦時下』にのみ限定されたことではないということだよ。」

 

「……なるほど。 それならば、納得できます。」

 

「ウム。 成功を祈っている。」

 

 青年が船の乗組員の上着を羽織り、ディートハルトに渡されたキャリーケースを手に取ってからその場を後にする。

 

 青年が停泊している合衆国中華の船に乗り込み、それが迎えとして出航したことを双眼鏡で確認したディートハルトはひっそりとほくそ笑んだ。

 

「(悪く思うなよ、少年。)」

*1
作者:そもそもセレー〇を知っている人がどれだけいるか…… (汗




『信念は言葉ではなく、行動に移さなければ価値がない。』
-トーマス・カーライル


後書きEXTRA:
スバル:イケボハルトに神父ががガガガが。
作者:(;^ω^)
青年E+少年E:なんでさ。
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