小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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少し長くなってしまいましたが楽しんで頂ければ幸いです。


第270話 言い方と嫉妬(ヤキモチ?)

「あ。 お帰りなさいませ、ご主人様!」

 

「ああ、ただいま。」

 

 ルルーシュは自室に戻ってはゼロの仮面を取りながら、C.C.からの挨拶を反射的に返す。

 

 そして流れのまま、彼は蓬莱島の一角にある食堂から持ってきた出前ピザをテーブルに置きながら、先ほどの会談で見たスバルの様子を思い返していた。

 

「(奴の顔には見事なほどに何の感情も窺えなかったが、一瞬だけ『驚き』と『納得』が見えたな……)」

 

「ハグハグ……ハグ……………………?」

 

「(つまり彼自身、自分の出自に目星を付けていたということになる。 それにこの蓬莱島の例もある。 血筋か? いや、彼自身の才能によるものだろう。 未だに貴族階級や富裕層が秘匿している現状で、これだけ政治……『自治』に精通しているのはかなり類稀なものだ。 本来、『新興の領地』にとって一番の脅威は他国の間者による内政干渉や内戦の扇動からの介入だが、海水船を移民局としての再利用し、マオたちによる移民の面接と選別によってスパイがこの島に入り込む可能性はほぼゼロに等しい。 あり得るとすれば、あとから反感を覚える場合だが、先住民の元EU市民たちの器の大きさと親切さで概ね『感謝』でカバーされている。 今の体制はちょっとやそっとでは揺るがないものとなっている。 俺も『セオリー』は理解しているが、あくまで『知識』としてだ。 桐原泰三と神楽耶がいるから元々この二人に『補佐』として就いてもらうつもりだったが……考えてみれば、アイツにとってこれも『周りが笑顔』の延長線なのだろうな。)」

 

「????????」

 

「(それに、彼の本心を他の者たちに聞かせられたこととディートハルトに釘を────)────ん? どうした?」

 

「あ。 えっと……その……」

 

 いつもならモグモグと忙しく口を動かしてピザを頬張るC.C.が、無数のハテナマークを頭上に浮かばせながらまじまじとピザを見ていたことに気付いたルルーシュが声をかけると、C.C.はもじもじと何か言いにくそうに口ごもった。

 

「何かあるのか? お前の好きなピザだぞ?」

 

「は、はい……そ、そうですよね────」

「────なんだその奥歯に何かを詰まらせたような言い方は?」

 

「“おくばにつまらせた”??? えっと、歯磨きはちゃんと教えられたとおりに────」

「────そういう意味で俺は────!」

「────ヒッ?!」

 

「……いや、今の言い方は悪かったからそう畏まるな。 このピザに、何か悪いところでもあったか?」

 

「……ご主人様は、油っこいものが好みなのですか?」

 

「は? お前、何を……」

 

 ルルーシュはそう言いながら手の付けられていないピザスライスを手に取り、口に含むとピザ独自のペパロニサラミ、ベーコン、オニオン、ピーマン、そして油たっぷり含まれたチーズの味が────

 

「────ぬ? (なんだこれは……本当に『ピザ』なのか? 少々、味がきついような気が……ああ、なるほど。)」

 

 実はC.C.とルルーシュだけでなく、アッシュフォード学園の生徒会やアマルガムの主なメンバーたちはこれまで口にしてきた主な嗜好品は出前や外出ではなく手作りの物を食してきたため、舌が肥えていた。

 

 特に臭みの無いモッツァレラチーズの甘味にトマトソースの酸味を、本場に近いマルゲリータピッツアと出前のピザは『別物』と区別しても遜色ない代物である。

 

「(記憶を失っていても、『違和感』が残るのはピザ女も同じだったか。 そう言えばこの頃、スヴェン……スバルも暇がなかったな。) そうだな、今はこれで我慢してくれ。 いつも口にしているピザを作っている奴は今、別の事に取り込んでいる。」

 

「例の、寂しそうな眼をしたご主人様の友人ですよね?」

 

「……ああ。 (『寂しそう』、か。 言われてみれば……彼は他人や周りへの配慮ばかりで、彼自身は自分の感情を極力出さないようしている……ように見えなくもない。 もしいつか、彼が暴走するようなことがあれば……)」

 

 ルルーシュはここでギアス嚮団の最奥にて見た、『スヴェンの過去』らしき映像や、今まで彼のした数々の事を踏まえた上で没頭するとつい最近見る、彼の夢の言葉を思い出す。

 

「(“人間なんて滅べばいい”か。 もし、アレが俺の無意識による産物だとすれば……)……彼を『人間不信』に、させるものか。」

 

「へ?」

 

「いや、何でもない。 今のは独り言だ、忘れてくれ。」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 人間の習性というものは恐ろしいものである。

 

 チクチクチクチク。

 

「(俺がライ?)」

 

 現にスバルは会談後、脳を金槌で打たれたかのような感覚の中でも無意識に明日の献立の下準備をしたり、今のようにぬいぐるみを編んだり、ほぼ反射神経(オート)で意識しなくても作業に没頭して気持ちを落ち着かせようとしていた。

 

 無論、付き添っていたカレンが下準備を手伝うと言って聞かず、芋づる式に次々と人が来て気まずくなってきたのでスバルは近くにある部屋に避難し、ひっそりとぬいぐるみを編む作業に没頭していた

 

 チクチクチクチク。

 

「(いやー、でもなぁ……俺がライだったら、イカルガに収容されている奴は?

 いや待てよ。 今思うとエルやユーフェミアの影武者という前例があったじゃないか。 という事は、俺かあいつがクローン? あるいは二人ともがクローン? ……胸糞悪いが、エデンバイタル教団とギアス嚮団のデータに該当するような────)」

 

 ────ズキズキズキ。

 

「(いてて、頭痛が……いやそんなことをするよりも手っ取り早くラクシャータに聞いてみるか。 もう俺の血液検査の結果を持っているし、ライの方もされていない筈がないしな。)」

 

 チクチクチクチク。

 

「(でもそれだと何故ルルーシュはライの事を会談で言わなかったのだろう? まぁ大方ライの存在は秘匿する方針だろうな。 何せ血筋で言えば、日本とブリタニアの繋がりになるからなぁ~……つーかやっちまったよ。 アゲイン。)」

 

 チクチクチクチク。

 

「(疲れているところに急な会談、豪華な参加者が勢ぞろい、度肝を抜かれるような新事実に質問攻め……)」

 

 チクチクチクチク。

 

「(癒しが……癒しが欲しい!)」

 

 ガチャ。

 

「……ん?」

 

 スバルはぬいぐるみを仕上げているとドアが開かれ、私服の上に割烹着と三角巾ではねっ毛のショートヘアを無理やり押さえ込んでいるカレンが入ってくる。

 

「スバル、明日の用意とかできたよ。」

 

「(カレンにしては)早かったな。」

 

 「今なんか失礼なことを考えなかった?」

 

「気のせいだ。」

 

「む~……ま、ライラちゃんたちが手伝ったから早く終わったんだけれど。」

 

「ハイです! あ。 でもでも? カレン先輩も筋がいいです!」

 

 そんなカレンの後ろからひょっこりとライラ(カレンと同じく割烹着と三角巾着用でさらにお団子ヘアー)がカレンの言葉を肯定しつつも褒める。

 

「そ、そう? 久しぶりだからちょっと自信がなくて……」

 

「(うーん、照れる和風カレン! レアな表情に服装! 写真を撮りたいぃぃぃぃぃ!)」

 

「料理をし続ければきっと大丈夫なのです! ……スヴェ……スバェア……スー先輩、その手の中にあるぬいぐるみ、なんです? クマ?」

 

「(“スー先輩”?!)」

 

「(“スー先輩”って、新たなあだ名が出来たな~……え。)」

 

 慣れない『スバル』を口にしようとしたライラにカレンがギョッとし、スバルは和みつつも彼女の視線を追って自分の握っていたぬいぐるみを見て彼もギョッとする。

 

 彼の手の中には黄色のクマっぽく、胴体より大きな頭と比較的大きな耳につぶらな瞳と背中に天使の羽っぽいものが付いたぬいぐるみだった。

 

「(いやこれ完全にアレだよな?)」

 

「可愛いです~♡」

 

「(ライラが欲しがりそうだから良しとしよう!) ……欲しいか?」

 

「いいのですか?!」

 

「ああ。 (それにアマルガム側にいる女性陣でぬいぐるみがないのはライラぐらいだしな。)」

 

「可愛いです~♡ えへへ♡ 名前はなんです?!」

 

「……『ケ〇ちゃん』で口調は関西弁……コックニーだ。」

 

「……“ワイの名はケ〇ちゃんや! よろしゅう~なぁ~♪”」

 

「ブフ?!」

 

 スバルがぬいぐるみ────ケ〇ちゃんの名前とコックニーの口調と伝えるとライラは顔をぬいぐるみで隠し、それっぽく喋りだすとカレンが思わず噴き出してしまい、肩を震えながら顔を逸らす。

 

 ちなみにスバルは────

 

「(────よし、アッシュフォード学園の制服を友〇中学校の制服にアレンジして着せよう。 そうしよう。 同じCL〇MPやしええやろ!)」

 

「でもケ〇ちゃん、クマじゃないなら何です?」

 

「……獅子の(黒くない)グリフォンだ。」

 

「(いや、それはないと思うよスバル? どこからどう見ても珍獣じゃん────)」

「────なるほど! 似ているです────!」

「────それでいいの────?!」

「────ほぇ?????」

 

「(ッあああああああああああああああああ! ナナリー級の癒し発見やぁぁぁぁぁぁぁぁ!)」

 

 どこからどう見てもゲテモノ珍獣にしか見えないぬいぐるみをスバルが『獅子のグリフォン』と称し、それに納得したライラはカレンのツッコミに無数のハテナマークを頭上に浮かばせ、スバルは必死にポーカーフェイスを維持しながらも内心で悶えた。

 

「(心が癒される! 浄化や浄化! これアカンヤツやて! 頭ナデナデしたいぃぃぃぃぃぃぃ!) そうか。 良かった。 欲しくなかったのなら、別の────」

「────スー先輩の作ったものにハズレなんてあるワケないです!」

 

「(ああああああ、もおぉぉぉぉぉぉぉ! 尊い! キラキラ! 尊死! くらえい、頭くしゃくしゃの刑!)」

 

 クシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャ。

 

「きゃああああ♪ 頭のお団子さんがバラバラになっちゃうですー!♪」

 

「(良ぉ〜しよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし!)」

 

「きゃああああ~♪ きゃああああ~♪」

 

「・ ・ ・」

 

「(ハッ?! カレンのジト目?! 攻撃が来る?!) カレンもタバタッチのメンテが必要ならいつでも持ってきてくれ。 直してやる。」

 

「あ。 うん! そうするね! ……ねぇスバル?」

 

「なんだ、カレン?」

 

「体調、本当に大丈夫?」

 

「松葉杖を使って動き回るくらいは大丈夫だが?」

 

「でも……顔色が良くなさそうだからさ。」

 

「(メイクは完璧だと思ったんだが……やっぱりカレンは見抜いちゃうか。 野生の感って怖えぇぇ! ……よし、嘘半分ではぐらかしながら気を逸らすか。) 捕虜と先日会っただろ?」

 

 スバルはため息を吐き出しながら目をカレンから外し、天井を見上げる。

 

「捕虜……あ?! あ、あの黒いランスロットの────!」

「────ああ。 あまりにも容姿が似ていたからな、びっくりした。 それにことが事だけに、俺は自分の調査をラクシャータに頼む────」

 「────そんなことしなくていい!」

 

「ひゃわ?!」

「ッ?!」

 

 突然スバルの言葉を無理やり遮るために声を荒げたカレンに、ライラがびくりと肩を震わせてケ〇ちゃんを落としそうになり、スバルは思わず目を見開く。

 

「カレン?」

 

「ッ……」

 

 スバルが視線をカレンに戻すと目が合った僅かな瞬間だけカレンの顔は『怯え』を示していたが、すぐにカレンは目を床へと向けて表情を複雑そうなものへと変えては自分の腕を掴む。

 

「その……どんなことがあっても……私にとって、スバルはスバルだから……」

 

「カレン……」

 

 スバルはこのようなカレンを見るのは初めてな事もあり、どう反応すればいいのか迷った────

 

 「────って、しんみりしちゃっているところ悪いんだけれどさ?! ライラとスバルってなんだか仲がいいよね?! 良くない?! 学園で見た時よりも良いのは私の見間違いかなー?! ……な、な~んて! アハ、アハハハハハハハハハハハ!」

 

 だが次の瞬間、気まずい雰囲気を作り出したのが嫌になったのかカレンは早口で無理やり話題を変えた。

 

「(なんというベタな────あ゛。 そういやカレンに学園の事を説明していなかったぁぁぁぁぁぁぁ!)」

 

 スバルの胸はスゥーっと冷えていき、彼はライラを見るとお互いの目が合う。

 

 そして彼のアイコンタクトを合図に、ライラはコクリと小さくうなずくとスバルはホッとしたのだが……

 

「スー先輩と私は(学園)公認の恋人同士なのです! エッヘン!

 

「・ ・ ・ ・ ・ ・」

 

 「(アプォォォォォ。)」

 

 語弊を含む言葉を誇らしそうに胸を張るライラに対し、カレンの周りが急激に冷えていくにつれてスバルは冷や汗を流しながら、顔芸を披露しそうな衝動を必死になんとか内心にとどめた。

 

「????????」

 

 そしてどこか放心していたスバルが気にかかった────ゲフンゲフン────メンテナンス作業からの休憩に食堂へと来たは良いが、せっせと作業をする子供たちだけの姿が見えたのが不安となり、近くの部屋からの話声に聞き耳を立てていたオルドリンはドア越しに聞こえてきたライラの言葉に複雑な表情を浮かべるが、急にハッとする。

 

「(そ、そう言えばヒルダさんたちの話に! それにい、今考えればレオンハルトという前例や……ティンクも! え?! え?! え?!)」

 

 オルドリンはどんどんと膨れ上がる考えに、ふらついた足取りでその場から離れていった。

 

 尚、後にこれが波乱を呼ぶのだが……今はスバルたちに話を戻したいと思う。

 

「(今ドアの向こう側に誰かいたような気が────)」

「────スバル。 正座。」

「え?」

「正座────」

「────ちょっと待てカレン────」

「────正座────」

「────何か思い────」

 「────せ・い・ざ。」

 

「……はい。」

 

「えっと、私はまだ用事が────」

 「────ライラちゃん、ステイ。」

 

「……ハイデス。」

 

 痛む足を出来るだけ無視しながら正座を強いられたスバルと、叱られた猫のようにしゅんとしたライラが『キューピッドの日』の顛末を無言の圧力で見下ろすカレンに話し終えることの数分後────

 

「────な、な、な、な、な~んだ~! ミレイさんのトンデモイベント絡みか~!」

 

「(だから最初に言おうとしたのに……)」

 

「う~……言葉が足りなかったです~……」

 

「アハハハハハハハハハハハハ! あー、ビックリしたぁぁぁぁぁ! (でもそっかー……ミレイさんがねぇ~……あれ? 何このモヤっとするような、納得いかないような感じ?)」

 

 先ほどの『ゴゴゴのカレン』から一転した彼女は照れ隠しに笑いつつも複雑な心境になる。

 

「そうだぞカレン。 お前の素直なところは魅力的────」

「────へ────」

 ────パァァァ────

「────だが短期なところが玉に傷だ────」

 ────ムスッ────

「────あ、そ。」

 

「……スー先輩とカレン先輩、もしかして噂通りの仲です?」

 

「へ? 噂?」

 

 ジッとスバルとカレンのやり取りを黙って見ていたライラの言葉にカレンが聞き返す。

 

「(“噂”って……もしかしてアレか? “俺とカレンが付き合っている~”の?)」

 

「ライラちゃん、噂って何?」

 

「う~ん……中等部の間で“二人が只ならぬ仲”とか──── 」

「────へ────?!」

「(────ああ、やっぱりそっちか────)」

「────“勉学と私生活共々手取り足取り教えあっている”とか────」

「────へぇぇぇぇ────?!」

「────え────」

「────あ! あとあと、“夜の個人的補習”? をしているとか? です────!」

「「────ブフォ?!」」

 

「でも“夜の個人的補習”って、どういうことです────?」

「「────ライラ/ライラちゃんにはまだ早い────!」」

「────じゃあ何時なら大丈夫です?」

 

 真っ赤になったカレンと焦るスバルの答えに、ライラにそう聞き返された二人はアイコンタクトを取る。

 

『どうするスバル?』

『どうするも何もあるか。 夜の“アレ”を言うのはまずいだろう────』

『────そうじゃなくて! 私とアンタの噂────!』

『────なんだそっちか。 簡単だ、俺に任せろ────』

『────へ。』

 

 どうでもいいことかもしれないが、ここまで一秒未満足らずの時間を要したと追記する。

 

 チクッ。

 

「???」

 

 そんな様子のスバルたちを見て、胸奥で何かがチクリとする感覚に疑問を持ったライラは首を傾げた。

 

「コホン……まずはそうだな、“夜の個人的補習”は単純に黒の騎士団活動のおかげで単位が危なかったことで確かにあったことだ。 それと俺とカレンは別に付き合っていない、単純に主と家に雇われていた従者の関係だ。」

 

「あ、そうなんですか! なるほどです~。」

 

「ちなみにライラは“中等部で噂”と言っていたが、誰から聞いた?」

 

「エカトリーナちゃんです! あと何人かハァハァしながらモジモジしていたです!」

 

「(………………………………触れないでおこう。)」

 

 筆記者も同感である。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 その夜、アマルガム用の地区にあるアパートのリビングでは、小さな女子会が開かれていた。

 

 参加者は主にアマルガムでも年少者のほとんどを除いた者たちかつ秘匿が必要なメンバーたちを含んでいたため、天子や神楽耶たちを含めた先のパジャマパーティより規模が小さくなってしまうのは仕方のないことだろう。

 

「あの……なんですか、これ?」

 

 ちなみにその輪の中でオルドリン(肩出し薄着で白の紐パンがチラ見する丈の短いチュニック)は困惑していた。

 

 既に察しているかもしれないが、ここでも簡潔なパジャマ姿を披露しようと思う。

 

「『第一回、プチ女子会inパジャマ』ですよ!♪」

「わぁぁぁぁぁ~♪」

「「……」」

「ぅ……わ、わぁぁ……」

 

 困惑するオルドリンにユーフェミア(ラベンダー色のぶかぶかチュニック)が答え、ライラ(長袖長ズボン)が楽しそうに便乗し、コーネリア(ラベンダー色のサイズきつめのチュニック)はユーフェミアとライラの二人に見られながら困惑気味かつ消え入りそうな声で復唱する。

 

「何そのネーミングセンス……あ。」

 

 あまりにもあっけらかんとした空気にここ数日当てられていたせいか、あるいはゴーイングマイウェイなユーフェミアに本心をそのまま口に出してしまう。

 

「ご、ごめんなさい。 思わず、その……」

 

「………………………………色々と言いたいかもしれんが私から言うことは一つだ、女性のオズ。 慣れろ。」

 

「そんな無茶を言わないでくれるかしら!」

 

 毒島(いつものポニテ+丈の長いワイシャツオンリー)に内心どころか思わずツッコミを口に出したオルドリンに、他の者たちは和んだそうな。

 

『“こういった洗礼は久しぶりだなぁ~”と思っていただろ』?

 

 そうとも言うネ。

 

「それだと、あのマリーの筆頭騎士は務まらなくなるぞジヴォン卿?」

 

「ウッ?!」

 

「……私も色々と言いたいが、今日のパーティは私たちのためだという。 もう少し……いや、気を抜けすぎるのも良くないか。 (おそらく、他にも目的はあるのだろうが……)」

 

 コーネリアもどこか複雑そうにそう答えながら、このパーティの真意について考えていた。

 

 実はこのパーティの理由付けはオルドリンがグリンダ騎士団と合流、そしてコーネリアとダールトンがエリア11に潜入するためそろそろ出発するからとなっているのだが、参加者を見れば他の理由があるのは一目瞭然だった。

 

「ほれ、特別におはぎちゃんを抱かせてやろう。」

 

「あら可愛い────じゃなくて! 何この豪華すぎるメンバーのラインアップは?! それに遠目に見ただけだけれど前回よりも充実化していない?! この島も実質、領地化しているし?!」

 

「まぁ落ち着けジヴォン卿────」

「────どうしてコーネリア皇女殿下はそこまで落ち着いて────?!」

「────まずはお菓子でも食べてみたらどうだ?」

 

「……いただきます。」

 

 夜食を手渡されたオルドリンはこの時初めてコーネリアの疲れた様な目を見て、『あ、これはコーネリア殿下も半ば諦めているわ』と察しては、ポッ〇ーモドキが入ったマグカップを手にしてはカリカリと食していった。

 

「(あ、美味しい。)」

 

 甘すぎずかつさっぱりした甘みにどこかヒートアップしていたオルドリンの雰囲気は一気に緩んでいく。

 

「あ、では私も────!」

「────ユフィは食べすぎるなよ?」

 

「ギクッ……ちゃ、ちゃんと配慮して食べているから大丈夫ですよ────?」

「────腰回りが2センチほど大きくなっているのにか?」

 

「ギクギクッ……」

 

「あの、お姉さま?」

 

 ユーフェミアもオルドリンに続こうとマドレーヌを掴もうとした手をひっこめ、しょぼんとしているとライラが横から声をかけた。

 

「お姉さま用に、おからクッキー作ったですよ?」

 

「“おからクッキー”?」

 

「満腹感が出る、カロリー控えめの甘いクッキーです!」

 

 「んもうライラちゃんグッジョブ、大好きッッッッ!!!!!」

 

 ギュウゥゥゥゥ!

 

「えへへへへ~♪」

 

 これでもかというぐらいご機嫌になったユーフェミアの抱擁に、ライラは照れる声を出しつつもとある考えが内心浮かんでいた。

 

『(あ。 ユフィお姉さま、シャーリー先輩よりちょっと胸が大きいです)』、と。

 

「(クッ! 私も時間さえあれば菓子程度………………………………………………………………………………………………………………いや、それは今関係ないな。) それで私たちを呼んだ理由は何だ、レイラ・マルカル?」

 

 コーネリアはユーフェミアとライラのやり取りにハンカチをかみたくなる衝動に抗い、皇族であるために『食事を作る』を実践どころか『食』も経験したことがないことから目を逸らし、レイラ(前回同様の薄着ネグリジェ+白の紐パン)に話しかける。

 

「……最初はこれからの、エリア11の事を話そうと思っていたのですが……今日の昼の事で少々……」

 

「今日の昼? どういうことだ?」

 

「まぁそれよりも定番の『恋バナ』でもしようではないか。」

 

 レイラの煮え切らない返事にコーネリアが聞き返すと、毒島が遮って話題を変える。

 

「“恋バナ”???────」

「────“恋バナ”────?!」

「────ちょっと待て。 それのどこが定番なのだ!」

 

『恋バナ』と聞きライラはハテナマークを頭上に浮かべ、ユーフェミアはキラキラと目を光らせ、コーネリアはギョッとした。

 

「神楽耶様が言うのだから間違いないのだ────」

「────意味が分からないのだが────?!」

「────という話は次の機会にするとして、コーネリアたちはクレア女帝を祖先として持つ、直系で間違いないだろうか?」

 

「これはまた懐かしい問いを……そうだが、それがどうしたというのだ?」

 

「ならばクレア女帝が生前掲げていた、真の思想に関しては知っているだろうか?」

 

「“真の思想”、ですか?」

 

 ライラの頭を撫でていたユーフェミアは毒島の言葉で険しい顔になった姉のコーネリアを見る。

 

「……それをどこで聞いた? もしや……」

 

 コーネリアはスッと視線を毒島から、さっきからどこ吹く風のようにのほほんとぼりぼりワニのマスコットが描かれたチョ〇ビ(スバル命名)を頬張っていたアンジュ(黒のタンクトップに黒いレース柄パンモロ)に移すとアンジュはむせた。

 

「んぐ?! ゲホゲホ! ち、違うわよ! 私じゃなくてゼロだからね?! (しまった! だから呼ばれていたのか!)」

 

「???? なんでアンジュを見たのですか、お姉さま?」

 

「あ、ああ……そう言えばユフィには伝えられていなかったな。 実は、彼女────」

「────あ、そこは私自身言いますから。 私、スヴェ────ゴホン! ……スバルと同じでハーフなのよ。 それに……言っちゃっていいのかしら、コーネリアさん?」

 

「正直、今更だとは思うが……」

 

「だよねぇ……でもほら? 一応、機密情報だからさ? その理由でサエコやレイラに伝えていないわけだし。」

 

「「???」」

「アンジュとコーネリアさんたちは知り合いなのですか?」

 

 ハテナマークを浮かべるユーフェミアと彼女に抱っこされているライラの横でレイラが問いをかけると、アンジュは少々気まずそうに体をよじらせる。

 

「……『ニールス・リ・ブリタニア』は知っているわよね?」

 

「えっと……マーリン騎士団の団長……そしてクレア女帝の母違いの義弟ですよね?」

 

 元令嬢、それもブリタニア貴族のレイラはEUだけでなくブリタニア帝国のなり立ちや歴史も一通り習っていたので、かつて第二神聖ブリタニア帝国で功績を挙げたマーリン騎士団の騎士団長であるニールスの事も知っていた。

 

「ん。 私の先祖様。」

 

「「ええええええええええええええええええええええええええ────?!」」

「「「「(────やっぱりショックを受け────)」」」」

「「────じゃあ私とアンジュ/アンジュ先輩って親戚ですね────!♪」」

「「「「────そっち?!」」」」

 

 ユーフェミア&ライラの天然さに、思わず室内にいた半数の女性がツッコみを入れる。

 

「(なるほど。 あのアンジュがユーフェミアの事を気にかけていた理由の正体はこれだったのか……)」

 

 毒島はユーフェミアを保護してから何かとユーフェミアの身の周りの事の手伝いなどを何故アンジュがしていたかが腑に落ち、長らく持っていた疑問が解消した。

 

「(ああ、ユフィもそんな顔が出来るような日が来るとは────)────ゴホン! 一応機密事項なのでな、彼女の家族も表立ってそのことを公言しないように言い渡されていたが……まぁ、色々とある。」

 

 その反面、コーネリアはほろりと表情が緩みそうだったのを気力で乗り切った。

 

「それで“今日の昼”とは?」

 

「おそらくですが、シュバールさんはクレア女帝の思想の遺志を引き継いでいるかと思われます。」

 

「……なんだと?」

 

 そこからレイラは毒島とアンジュと話し、昼の会談で知ったスバルの目的を含めた予想などを、彼女なりにまとめ上げた話をし始めた。

 

「♪~」

 

 余談ではあるが一言も喋らずに終始、ご機嫌なマーヤ(ベビードールフリル付きショーツ+黒のガーターベルトにニーソ)は鼻歌交じりにレイラたちの話を聞きながら夜食を楽しんだとここで書き足す。

 

「そう言えばライラ、どうやってリア・ファルに密航したの?」

 

「ほぇ?」

 

 そんな会話の横で、ユーフェミアはふと思い出した疑問を膝抱っこ中のライラへとぶつけた。

 

「だって気が付いたら貴方、この島にいなかったのよ? 皆慌てていたわ。」

 

 ちなみにこれにはユーフェミア本人も例外ではなく、うっかり(?)変装せずに素顔のまま探しに飛び出そうになるほど慌てていたのは秘密である。

 

「よくここから中華連邦の辺境まで気付かれずにいられたわね? どうやったの?」

 

「う~ん……ちょっと気持ちが悪くなるロングの髪の毛をした男の人の後をつけただけです。」

 

「そ、そう……う、う~ん……(そんな人、いたかしら? ロン毛と言えばシンさんですけれど、気持ちは悪くないですし……)」

 

「ねぇお姉さま? 『恋』って何です?」

 

「え?! う~ん……『誰かを慕う事』、ですよ。」

 

「クロヴィスお兄様みたいな人です?」

 

「それとはちょっと違うような……そうね、その人の事を思ったり、近くにいると胸の奥がむず痒いような、ほっと安心するような、温かくなるような……そんな気持ちにさせちゃう人の事、かな?」

 

「……」

 

「それと、自然とその人の安心と安全を願う人……あと胸のドキドキが止まらない? かしら?」

 

 どこか表情がスンとなるライラを前にユーフェミアはさらに語りだした。

 

「『恩』とは違うです?」

 

「きっかけにはなると思うけれど……ちょっと違うかしら?」

 

「……」

 

「ライラ?」

 

「ありがとうございますです!」

 

 何時もどこかニコニコと笑顔が絶えない表情がスンとしたまま考え込むライラにユーフェミアが思わず声をかけると、ライラはパッといつもの調子に戻る様子を見せた。

 

「(今のは何だったのかしら?) そ、そう。」

 

「よくわからないけれどわかったです!」

 

「どう……いたしまして?」

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