小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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ようやくここまで書くことができました。

偏に読者皆様のおかげです、読んでいただき誠にありがとうございます。

急展開気味ですが、楽しんで頂ければ幸いです。




追伸:
すごく蒸す、ガッデム。

追伸2の問い:EUは死んだ! 何故だ?!


第273話 超合集国

 次の日、超合集国憲章の批准式典会場のある蓬莱島はいつも以上に各国からの船、ブリタニアから横流しされた試作品のフロートシステムを無理やり付けた元地上戦艦や武装民間船などがひっきりなしに到着している所為で朝からごった返していた。

 

 この日だけは蓬莱島も移民の受け入れに一時的なストップがかけられ、総動員で警備や各国の使者たちの対応に当たっていた。

 

「そこ! 列を乱すな!」

 

 蓬莱島の警備隊長であるハメルはいつも以上にキビキビと仕事をしていた。

 

「なぁ~、ハメル少佐? そこまで眉間にしわを寄せていたら老け顔になるぞ?」

 

「余計なお世話ですクラウス中佐! 今日がどのような日なのか理解しているのですか?!」

 

「理解しているよ? うん、理解している。 せっかく元気になった娘のノエルちゃんと時間を過ごして疲れをいやすため寝込むにはちょうどいい晴天日和だと思ったのに急にアシュレイのガキに叩き起こされて手伝いをしろだのと言われて前から手伝っていた『バニーカフェ』みたいな催し物を黒の騎士団のおっさん組と一緒に企画していたのが胸がデカくて怖~い姉ちゃんに潰されたと聞いてノエルちゃんにバラされて変態呼ばわりされて生きた心地が────」

「────あ。 うん、なんかすまない。 聞いた私が悪かった。」

 

 目からハイライトが消え、長い愚痴のような独り言を延々と口にし続けながらうつむくクラウスの只ならぬ迫力にハメルは思わず同情から謝罪の言葉を並べた。

 

「あれ? ハメルお前……鍛えているのか? なんだか軍服がピチピチなような気が────」

「────私だって他人に訓練を課す身として、模範となるように────」

「────それともMサイズに変えたか?」

 

「……ソンナコトハナイゾ。」

 

 尚この後、あまりにもサイズがぴったり過ぎてハメルは着替えたと追記する。

 

 

 ……

 …

 

 

『会場のセットアップ、来客者たちへのおもてなし、および全世界にむけての報道準備は順調です。』

 

「そうか。」

 

 車の中で移動中だったゼロは携帯電話越しにディートハルトとのやり取りをしていた。

 

「藤堂や四聖剣、そしてシンクーたちは?」

 

『シンクー様や藤堂将軍たちは島に到着次第、控室に向かわせます。』

 

「わかった。 私も用事を済ました後、会場で合流する。」

 

 ピッ。

 

 ルルーシュは携帯の電源を切るとゼロの仮面をかぶった。

 

「ジェレミア、コーネリアたちは?」

 

「そちらも順調とお聞きになっています。 ただ……」

 

「ん? どうした?」

 

「帝国もエリア11の周辺にさらなる戦力を集結していると、ウィザードが仰っていました。」

 

「なに?」

 

「彼の見解によりますと、各国境付近の部隊の様です。」

 

「(……考えたな。 これ以上各国境の戦力が低下すれば、まだ超合集国に加盟をしていない国は独自で攻勢に出れるチャンスを見極めるため様子見に徹する可能性が出る。 加盟すればブリタニアとの敵対の意志を宣言するようなものだからな、リスクは大きいだろう。 逆に加盟せずに己の戦力だけで守り切れば超合集国とブリタニアの衝突がどう転がっても疲弊した後、発言力を保てる。 シュナイゼルだろうな。) そうか。 ジェレミア、インド代表のところにまで移動しろ。」

 

「わかりました。」

 

「(前から固有戦力や裏ルートを保持しているマハラジャに、国境付近に軍を配備すれば『睨み』としての時間稼ぎができるはず。)」

 

 

 ……

 …

 

「お引き取りください。」

 

 ジルクスタン王国の首都内にある応接間では、黒の騎士団の使節団らしき者たちに上記の言葉をとある女性が言い放つ。

 

「……で、では日を改めて────」

「────結構です。 ジルクスタン王国は現状ブリタニアにも、合集国にも()()()()加担いたしません。 よって加盟の打診もお断りします。」

 

 使節団たちは狼狽えつつも粘ろうとするが、次第に取り付く島もない態度をし続けた女性────アイーシャ・イナヤットの拒否に折れて連合国家にジルクスタン王国が加盟しないことを重い気持ちのまま蓬莱島へと持って帰った。

 

「……ふぅ。 (命とは言え、これで本当にいいのかしら?)」

 

 彼らの旅客機が滑走路から飛び立つと、アイーシャは張りつめていたポーカーフェイスを崩しながら後悔の念が入ったため息を出しつつ、潮風によって暴れる長髪を片手で押さえて首都の光景を見る。

 

 そこには哨戒に当たっている駆逐艦とヘリが平和そうな海の上を渡る穏やかな景色であり、とてもではないが世界の戦を糧に国全体の経済を回している軍事国家の首都付近とは思えなかった。

 

『アイーシャ・イナヤット』、28歳。

 ジルクスタン王国では少々珍しいピンクブロンドの長髪に、平凡なプロポーション。

『可愛い』より『綺麗』系の顔を持ち、身長も体格も同年齢内では小さめ。

 

 どこにでもいる様な、ジルクスタン王国の民の一人である。

 

 家柄は特に何の変哲もない一般市民ではあるが建国当時から代々首都に住み続け、王家を支える職に就くことが忠義の示し方と重んじる一族の出であり、彼女も例外ではない。

 

「(特にブリタニアがユーロ・ブリタニアと共に本格的なEUの侵攻を開始して、経済は右肩上がり。 そして加速する世界のテロ活動とそれらへの対処……一見すると、今までにない絶好調だけれど皆、この状況がおかしいことに気が付かないのかしら?)」

 

 かなり平凡な一族の出の彼女が、兄や父たちや叔父と違うところがあるとすれば戦に名誉や誇りや富を見出せられず、争いを()()()()()()()と思っていることだろう。

 

 軍事国家には似つかわしくない思想ではあるが、外交の交渉などにはうってつけだった。

 

 というのも、ジルクスタン王国の長所は同時に短所でもあった。

 

 ぶっちゃけると王国は戦闘に特化した者たちがEUやアフリカから来た移住者たちを配下に立ち上げた国家であるので、文官などの事務局に就けられる人材は数が少なく貴重なことをアイーシャは幼いころからそれとなく察して、真っ先に職としてロックオンし、10年前から従姉妹のナディラと共に王家を支える立場に就いた。

 

 とはいえ、全ては聖神官シャムナによる政治を実現させる方針が主な仕事である。

 

「(今までのように、この方針の裏には我々が見えない利点があるのでしょうか?) このままでは()()()にしか……」

 

 アイーシャはそう考えながらため息交じりに、思わずボソリと独り言を口にしてしまいハッとしては口をつぐんで周りに誰も居ないことにほっとした。

 

 

 

 

「……」

 

「姉さん? どうかしたの?」

 

「ッ。 いえ、何もないのよシャリオ。」

 

 同時刻、王国の首都にある神殿内でシャリオに膝枕をしていたシャムナの様子がいつもと違うことに彼は声をかける。

 

「もしかして予言? やっぱり加盟すべきだった?」

 

「いいえ、予言によればしないことが正しいらしいわ。」

 

「そっか。」

 

 シャムナの言葉に納得したシャリオは目を閉じて転寝をする。

 

 その反面、シャムナは複雑な心境を周りに悟られないようにスンとした表情を浮かべていた。

 

「(今まで予言が外れたことはなかった。 でも霧がかかったように()()()()()()()といった現象も初めて……『彼』が居れば聞けるのだけれど────)────ねぇシャリオ?」

 

「何、姉さん?」

 

「客人がいつこちらに来るか、聞いていないかしら?」

 

「さぁ? 少なくとも開発局からは何も聞いていないよ?」

 

「……そう。」

 

「別にアイツが来なくても、困ることなんてないよ。 今の僕なら姉さんの剣として十分動ける。」

 

「それも彼のおかげだけれど?」

 

「……前から言っているけれど、僕はアイツが嫌いだ。」

 

「シャリオ────」

「────わかっているよ姉さん。 それに、必要な事なんだよね?」

 

「ええ。 この戦いでブリタニア帝国だけでなく、()()()()()()()()()()()わ。」

 

 

 ……

 …

 

「ハッハッハ! ゼロについてきてよかっただろ~?」

 

 蓬莱島にある海上の黒の騎士団に宛がわれた控室では酒を少々(?)飲み過ぎた様子の吉田が卜部と朝比奈の首に腕を回し、絡んでいた。

 

「いや、まぁ、その……どうします、これ?」

 

「俺に聞かれても……ストッパー役の井上はどこだ?」

 

「玉城と杉山が国賓の迎え用に、バベルタワーの人たちとかに声をかけまくって『衣装変え放題カフェ』を企画していたのを聞いたから二人の折檻……あー、『説教中』だとさ。」

 

「……そ、そうか。」

 

 卜部が思い浮かべたのはいつもにこにこしている井上がふとある日、黒の騎士団の新入りなどと共に夜遅くまでバカ騒ぎを続けていた玉城たちを黙らせるため、表情を変えずに次々と団員たちを物理的に淡々と店の外に投げ飛ばす()()()()だった。

 

「骨折者が出なければいいが……中佐は?」

 

「ん。」

 

 朝比奈が指をさしたのは控室の一か所にある、衝立(ついたて)だった。

 

「……ちゃんと攻勢に出ると思うか、千葉のヤツ?」

 

「ボクとしては複雑だけれど、ソワソワするお二人を見ているだけで胸やけがしそうだからとっとと白黒つけさせて欲しいかな?」

 

「だよな……そういや、C.C.は?」

 

「んー、どうもまだ『体調不良』らしいよ?」

 

「病気になっていなけりゃいいが……」

 

「もしかして卜部さん、ああいうのが好み?」

 

「バカ言え、俺の好みは────」

「────案外玉城の野郎が言っていたように“おめでた状態”だったりして!」

 

「「(こいつ/この人、こんな人だったっけ?)」」

 

 卜部と朝比奈は普段から真面目そうな吉田がケラケラと笑いながら玉城レベルのジョークを出す姿を見てそう思ったそうな。

 

「…………………………」

 

 衝立の裏では千葉によってメイクを施され、いつも以上に気まずい顔をした藤堂の姿があった。

 

「あの、中佐? あまり動かないでください。」

 

「化粧をするなど初めてでな。 それに案外……その筆? みたいな物はこそばゆい。」

 

「メイクブラシを使わなければ、アレですよ?」

 

「“アレ”?」

 

「白塗り。」

 

「……それはそれでいいのでは────?」

「────せっかくの晴れ舞台ですのでダメです。 日本の文化を知っている者たちだけならばいざ知らず、そもそも中佐は最低限の身だしなみだけを────」

「(────よし。)」

 

 藤堂は説教モードに入った千葉を前に、内心ホッとした。

 

 理由は単純に、朝比奈や卜部に仙波(というかほとんど仙波)が千葉の背中を押すような言動に、藤堂はどう対応すればいいのか困っていた。

 

 余談で仙波は先日、ラクシャータによって強化された暁の試運転から体調を崩してしまい、別の場所で休んでいた。

 

「(これで時間が稼げればよいのだが────)」

 

 ────ガチャ。

 

「お~い、皆そろそろだぞ────げ。」

「どうした扇?」

「吉田が酔っている。」

「誰だ、吉田に酒を飲ませたのは?」

 

 部屋のドアが開かれ、扇と南が入るなりへべれけモードの吉田を見て扇はげんなりとし、南は呆れながら室内を見渡すと双葉綾芽、日向いちじく、水無瀬むつきのオペレーター三人娘たちがそそくさと人混みの中に紛れようとするが、他の者たちによって前へと逆に押し出される。

 

「なるほど……何故だ?」

 

「う。」

「だって、その……」

「“吉田さんが酔うとすごいって聞いた”って、あの子が言ったから……」

 

 三人の視線先にはサヴィトリによって正座を強要されていたベニオが居た。

 

「だ、だって玉城大先輩がそう言っていたから────」

「────うん。 もうそれで充分だ……朱城(ベニオ)は飲んでいないよな?」

 

「はい! 飲んでいません────!」

「────飲もうとしたところを、私が止めたの────!」

「────でも『ジュース』って書いてあったよ────?!」

「────よくラベルを見なさい。」

 

「……ほ、ほら! “1%未満”って────!」

「────ちょっとでも度数があったらアルコールに分類されるの────!」

「────ケチ! 頭でっかち────!」

「────う?! 頭……でっかち……ですって?」

 

 ベニオの『頭でっかち』呼びにサヴィトリは明らかにダメージを受けてタジタジになる。

 

「「「「「「(仲良しだな~。)」」」」」」

 

 そして二人のコントに周りの人間は全員、ホッコリしたそうな。

 

「(確かアルコールを飲んだら体の成長も遅くなるはず……いや、俺は何を考えているんだ。)」

 

 南だけはちょっとだけ邪な考えが脳をよぎったそうな。

 

「(でも甘酒なら……)」

 

 注意、『ちょっとだけ』である。

 

「そういえばカレンさんたちは?」

 

「あ。 あー……スバルのところ。」

 

「「「「「……」」」」」

 

「ちょ、ちょっとベニオ……少しは空気を読みなさいよ。」

 

 正座をものともしていないベニオの質問に扇が答えると部屋内に気まずい沈黙が広がり、回復したサヴィトリが注意する。

 

「なんで?」

 

「“なんで”って……その────」

「────だってすごいじゃん!」

 

「……そうだな、すごい奴だよスバルは。」

 

 扇がどこかぎこちなさそうに答えるとベニオの頭上にハテナマークが追加された。

 

「(だけど『不気味』だというところは相変わらずで、いつの間にか『アマルガム』って組織を人知れずに創り上げて、その戦力は噂の英雄皇女のグリンダ騎士……いや、下手をしたら黒の騎士団と匹敵しかねない。 

 組織の規模としては黒の騎士団が上で『結果で示す』というところでは一緒だが、トップであるゼロの正体は未だ殆ど謎のほかに組織内でもお互いが何をしているのかまでは完全に把握できない仕組み。

 だがアマルガムに関してゼロは『詮索と深入りは不要』と厳しく団員たち全員に言い渡している……まるで()()()()()()()()()()()()。 だとするとアマルガムは別の目的でスバルを使って立ち上げたのか? それとも……)」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

『こちらは蓬莱島上空です! 賛同した国などの数多くの船が停泊しています! 合集国憲章の批准式典が今、まさに始まろうとしています』

 

 合集国所属のヘリによる中継は世界中の報道局に送られていた。

 

『つまり、これがどういう影響を────』

 

 その中でも特にエリア11は注目を示すかのように急遽、評論家などによるコメンタリーのついた生中継を流していた。

 

『────この合集国憲章を批准(ひじゅん)することで、えー、我がブリタニアに対抗する巨大な連合国家を誕生させるつもりですね。』

 

『なるほど、つまりはEUの“共和制新政府の統合体”と捉えてよろしいのでしょうか?』

 

『そうですね、形としては非常に似たもののようです。 ただ、こちらの地図をご覧になればお分かりになると思いますが、EUの一部の自治州も興味を示している、あるいは加盟するとのことですから────』

『────しかしEUはほとんど分裂し、崩壊間際だと先月仰ったばかりだと当局は記憶していますが?』

 

 アナウンサーの指摘に評論家の愛想の良い笑みがピクリと反応するが、すぐに評論家は顔を元に戻しながら言葉を続けた。

 

『ええ、確かにそう言いましたがEUでも今日まで独自に州境を守れたことが大きい要因で、特に人口と自治を支えるインフラが高い基準点を持つのポーランドやイタリア、ルーマニアなどが連合国家に賛成を表示したことで次々とEUの自治州が前向きに検証しているとなると話は別ですね────』

 

「────なぁ会長?」

 

「今の生徒会長はあなたでしょ、リヴァル?」

 

 アッシュフォード学園のクラブハウスでは、ニュース報道で評論家がのらりくらりかつ長々とした回りくどい説明にさっそく聞く興味を失くしたリヴァルに、真剣な表情で見ていたミレイがぴしゃりと彼の言葉を訂正する。

 

「んじゃあ先生で……先生はスヴェンと連絡取れた?」

 

「うーん……どうです、ヴィレッタ先生?」

 

「(こんな時だけ私に振ってくるのか……) ああ、一応シュタットフェルト家で安静にしているようだが……まぁ色々とあるらしいからしばらく休学すると聞いている。」

 

「で、ロロは?」

 

 ヴィレッタからそれらしい説明を受け、リヴァルはルルーシュ(に変装したエル)に問いかける。

 

「この頃は物騒なことが立て続けに起きたからな。 過剰なストレスからロロは体を壊したままだ。 状態次第で俺も付き添いとして、実家に帰ることを視野に入れている。」

 

「なんだよ~、ロロだけじゃなくてルルーシュもいなくなるのかよ~……ブラックリベリオン後に逆戻りか~……というわけで先生! プールでパァッとしましょうよ?!」

 

「……ですって、ヴィレッタ先生?」

 

「リヴァルお前……いくら何でもミーハー過ぎるぞ?」

 

「んが?! ちちちちちち違うって! 俺はミレイ会長────先生を誘ったつもりなの!」

 

「で、パーティはどうするミレイ────?」

「────まさかの無視────?!」

「────一応、寮生活を送っている生徒たちには外出を控えるよう、言伝をシャーリーたちに頼んでいるが、去年みたいなことが起きらないとも限らないからブリタニア軍が近くに部隊を────」

「────ッ。」

 

「「ミレイ/会長?!」」

 

 ミレイは貧血を起こしたのか突然倒れそうになり、近くにいたヴィレッタとリヴァルが彼女を支える。

 

「大丈夫か?」

 

「……そう、ね。 ちょっと……気が遠くなったわ。」

 

「休んだらどうだ?」

 

「……(なんだったのかしら? 今、去年の事を思い出そうとしたら……血の気が引いていくような、おぞましい光景が……)」

 

 ……

 …

 

 

「予想通りの『連合国家構想』ですね。 確かに基盤を整えることが出来れば、脅威にはなるかもしれませんね……整えれば、の話ですが。」

 

「連合国家の戦力は国ごとに編成された物。 ゆえに連携に欠く、文字通りに『烏合の衆』。」

 

 場はトウキョウ租界の政庁へと移り、ニュース報道を見ていたカノンがそう独り言を零すと近くのビスマルクがコメントを付け足す。

 

『────つまり牽制の為に、ブリタニア軍は主にキュウシュウ、旧中華連邦、ホクリク方面を中心に軍の配備がされて────』

 

「────このように、配備先まで宣言する必要性はあるのですかシュナイゼルお兄様?」

 

「十分あるさ。 いいかいナナリー? 『戦争』とは、何も兵士だけが行う行事ではない。 『戦争』……それも規模が大きければ大きいほど、物理的衝撃が始まる前から始まっているものさ。」

 

 集まったラウンズ達の後ろで放送を聞いていたナナリーが隣に座っているシュナイゼルに問いかけると、シュナイゼルはいつもの様子のまま丁重に質問に答えて画面の中に映し出される、合集国最高評議会代表である神楽耶と天子が合集国憲章の説明をする姿を見て微笑を浮かべた。

 

「(各国代表を説き伏せたのが黒の騎士団だとすれば連合の指導者は自然にゼロだとみて良いだろう……ふむ、前に見た時より天子の目がしっかりと自立した人の目をしている。 という事は……) でも、それを一気に解消する方法が一つある。」

 

「そうなのですか?」

 

「ああ。 ()確信が持てたよ。 その方法は────」

 

『────に抵触する場合には、この憲章に基づく義務が優先されるものとします。 最後に合集国憲章第17条、“合集国憲章を批准した国家は、固有の軍事力を永久に放棄する”。』

 

「なに?!」

「軍事力の、放棄?!」

「つまり……なんだ?」

「国が自軍を捨てるということ。」

「え。」

「(なるほど……ゼロめ、異なる色を全て黒に染めあげるか。 やはりシャルルの子だな。)」

 

 少々顔色の悪いローマイヤとスザクが驚愕し、小難しい言葉で半分聞き流していたジノの疑問にジト目のアーニャが捕捉を足し、ビスマルクは神楽耶を通して大胆な宣言をしたゼロを昔のシャルルと重ねた。

 

『これはそれぞれの国が武力を持つのは騒乱の元。 その上で、各合集国の安全については国家に属さない黒の騎士団と契約します!』

 

『その契約、受諾した。 我ら黒の騎士団は超合集国より資金や人員を提供してもらう代わりに、我らは合集国のすべてを外敵から守る盾と同時に敵を制する剣となろう!』

 

『それぞれの国が武力をもつのは騒乱の元。 超合集国では最高評議会の議決によってのみ、軍事力を行使します。』

 

 天子の宣言にゼロが高らかに答えると神楽耶が付け足すように最高評議会代表として最初の道議(どうぎ)────『日本解放の為に黒の騎士団を派遣』が告げられる。

 

 その結果────

 

『────賛成多数により、超合集国決議(けつぎ)第壱號(だいいちごう)として黒の騎士団に日本解放を要請します!』

 

『いいでしょう! 超合集国決議(けつぎ)第壱號(だいいちごう)の進軍目標は、日本!』

 

 パチパチパチパチパチパチパチ!

 

 ゼロの宣言にスクリーンに映し出された者たちは拍手を送り、それを見ていたブリタニア側は緊張が高まった。

 

「(さて……私ならば今のタイミングで『何か』をするが……どう出る、父上?)」

 

 ザザザザザザザザザザザザ!

 

 突然トウキョウ租界内────否、世界中の画面にノイズが走り世界中の者たちは差があれど、誰もが動揺した。

 

 画面に映し出されたシャルルの映像に。

 

「皇帝陛下が?!」

「お戻りになられた!」

 

「(これは……なるほど、意趣返しですか。 意外ですね……しかしこれで私なりの確信が持てた。) カノン、トロモ機関の準備は?」

 

「え?!」

 

 その中でシュナイゼルだけは涼しく今起こっていることを受け入れていたどころか、驚いていたカノンに平然としたまま問いかけた。

 

「じゅ、“順調”だと聞いております。」

 

「なるほど。」

 

 ……

 …

 

 

「どうした?! 何が起きている?!」

 

 イカルガ内にいたディートハルトと中継をライブ修正していた彼の諜報部は、突然の出来事に慌てていた。

 

「回線がジャックされています!」

 

「予備のラインに変えろ!」

 

「ダメです! こちらのコマンド入力を受け付けません!」

 

「ハッキング?! そんな馬鹿な! もう一度チェックしろ! (いや違う! 一つだけ方法がある! だが────!)」

『────それで、儂を出し抜いたつもりか────?』

「────結果が出ました! 以前、バベルタワー時にゼロが使った回線が使用されている模様!」

 

「な?! (バカな! ラインオメガは、私が独自に作った彼専用の回線! なぜ、皇帝が────?!)」

 

 ……

 …

 

『────その程度か、ゼロよぉ?』

 

「ッ?! (ブリタニア、皇帝?!)」

 

 ルルーシュはゼロの仮面の下で、突然現れたシャルルが自分を指摘する言葉に動揺した。

 

『だが……悪くない。 貴様の憲章とやらで、三つ巴だった世界はブリタニアとそうでない者に色分けられた。』

 

「(生きて……いた?!)」

 

『至極単純、そして明快(めいかい)! 畢竟(ひっきょう)、この戦いこそが世界の行方を制するということ!』

 

『『『『『オールハイルブリタニア!』』』』』

「「「「「日本、万歳!」」」」

 

 シャルルの演説に聞いていたブリタニア軍、そして旧日本人たちがそれに張り合うかのように声を上げる中でルルーシュは仮面の下で狼狽えていた。

 

 それはシャルルによる演説や放送を乗っ取られたことやその場に満ちた圧倒的な熱気に対してではなく、ただ単純に────

 

「(────なぜだ?! なぜ、毎度毎度『ここぞ』というときに、なぜこうも予想外のことが起きるのだ────?!)」

 

 ────予想外の出来事で、かつてないほどの動揺と苛立ちを怒りに変えていた。

 

「(どう確率論の要因を配慮し、見積もってもあまりにも非科学的────いや、非現実的だ! これはもはや呪いの類としか思えん! このままでは、エリア11のナナリーが! 潜入させている咲世子たちに計画の前倒しを────ダメだ、こちらの準備がまだ完了していない!

 ならばオズ(オルフェウス)たちへの合図を────いや、このまま決行すれば帝国軍に包囲されて孤立する可能性が!

 ならば北からブリタニア軍を迂回し、奇襲を────ダメだ。 例の壁はまだ開発段階で実用と信頼性に欠けるし、それ以前にこの間の潜入路も例外だった、これ以上迷惑をかけるわけにはいかない! それ以前に、比較的に安定しているエリア11の地を黒の騎士団が荒らしてみろ! 内外双方から反感と不興を買うことになる! ええええい、くそ! 急すぎる! 時間が────!)」

 

 ルルーシュは文字通りにグルグルと動揺する気持ちと湧き上がる衝動を理論で抑え込もうとし、さらに衝動の正当化を正論で否定しようとしながらまたも動揺していき、現在で決行可能な案を思い浮かべては現実的な策へと絞っていった。

 

「……………………よし。」

 

 彼は仮面に内蔵されたインカムを携帯に接続させると、とある電話番号を入力していった。




追伸2への解答:政治腐敗と事なかれ主義の市民による衆愚政治化が進んだシステムの寿命。
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