小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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脳溶けるほど暑すぎてヤバい。 _(X3」∠)_


第275話 激戦の裏

「……」

 

 トウキョウ租界にいたシュナイゼルは笑みを崩さず、ただ黙り込んだまま報告によって更新されていくデータを反映した地図を見続けていた。

 

「(さて、頃合いだろうね。) ナナリー、クロヴィス。 私はアヴァロンに移るとするよ。」

 

「へ?」

「あ、はい?」

 

「アヴァロンの中から戦局をより見渡せる。それに足の速さで必要な局面に対処できるからね。ギルフォード卿は?」

 

「それが、昼過ぎの閲兵式(えっぺいしき)から出ていらっしゃって……予定通りならば前線に出ているかと。」

 

「そうかい。」

 

「何か気がかりでもあるのですか兄上? 彼を呼び戻しましょうか?」

 

「いや、彼が前に出て周りを鼓舞しつつ戦う雄姿こそ兵士たちに最大の効果があるからね。 それはそれで一向に私は構わないよ。」

 

「そ、そうですか……」

 

 シュナイゼルはナナリーとクロヴィスたちに見送られながら退室するとカノンが小声で話しかける。

 

「殿下、ギルフォード卿ですが閲兵式後に誰かから連絡を受け取って南方向へ移動したとの情報が入っています。」

 

「ほぉ。 それはそれは……ちゃんと監視はつけているのかい?」

 

「ダメでしたか?」

 

「上々だよ。」

 

「しかしこのまま政庁を離れてもよろしいのでしょうか?」

 

「ここの守りは現状で最善とも言える。 ニーナ君のおかげでね。 何か気がかりでもあるのかい?」

 

「……グリンダ騎士団に、クルルギ卿がいることですね。」

 

「そのために皇帝の承知の上でジノたちを置いている。」

 

「(ああ、やはり殿下は素晴らしい……こうも前もって的確な采配を幾度となく見せつける殿下はどこまで見渡しているのだろうか?)」

 

「(正面の戦力は一見すると超合集国の主力かに見える……だが肝心の黒の騎士団が居ない。 後方に待機しているとは考えづらい。 これまでのゼロを(かえり)みれば、彼の得意技は相手と自分側が双方使える『(ピース)』を把握した上での陽動や隠し玉によって生じた隙への強襲。 しかし父上の予期せぬ登場とパフォーマンスで揺すぶられているのか、今回の計画はあまりにも彼らしくない。 このことを知った上での茶番ならば、父上は……いや、今そのことを考えても時間を浪費するだけだ。)」

 

 シュナイゼルは滑走路へと出て、日本海や東シナ海ではなく、東京湾の方角を見る。

 

「(……全てが終わった後に世界はどう変わり、誰が生き残るのだろうね。 ゼロか、黒の騎士団か、帝国、父上、それとも……)」

 

 ……

 …

 

 

「ふぅ……」

 

 ラウンズの衣装ではなく、数少ない私服を身にまとったスザクは日本海での戦いを全く感じられない、静かな山中にある場所を目指しながら、古ぼけた石段を登りつつ襟元を少し緩めて服装内に籠った熱気を逃がす。

 

「(果たしてこれで良いのかな?)」

 

 彼は一歩一歩踏むごとに、果たして自分の行いが正しいかどうかを悶々と考え込んでいた。

 

 というのもスザクは昔から自分の要領が少々良くないことは子供のころから薄々感じていたが、行政特区でユーフェミアと瓜二つな女性がゼロに殺されたことで頭がカッとなり、感情のままに動いた挙句に喪に臥せっている時に口が上手く胡散臭さ100%な少年の納得してしまう説明に流されるまま親友を黒幕と決めつけてしまい、裏切った。

 

「(彼なら“考えが単調過ぎる”とか言うだろうな……殴りかかった後に。 それにしても、8年なんてあっという間だったな……)」

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 皇暦2009年の夏のとある日、まだセミが鬱陶しい時期に見知らぬ来訪者のために幼いスザクは神社の敷地内から離れているように父の枢木ゲンブから強く言い渡されていた。

 

「(それで“ハイそうですか”ってな納得できるかよ! それに今日はブス子(毒島)が道場に来るって聞いて────いやいやいや! ブス子の事は関係ない!)」

 

 だがいつもは世話係などに任せっきりで自分に関心のない父にそう言われて大人しくスザクが引き下がるわけもなく、彼は敷地を囲っているフェンスに老朽化でできた子供一人分なら通れる穴を通って戻ってきていた。

 

「ッ。 やっぱ道着から着替えてくりゃ良かったか? ……今更か。」

 

 スザクはフェンスに引っ掛かり、少し傷がついた道着を見ては山中の中を歩きだす。

 

 念を押すようだが決してその日ブス子────毒島冴子が道場に通っていたことは関係ないと再度記しておく。

 

 ジャリッ。

 

「(なんでこんなに見回りが多いんだよ?! もしや今日来るのは来賓か何かかよ!)」

 

 スザクは身をかがめながら進んでいると、いつも以上にSPが居たことに舌打ちをしながら苛ついたままSPの監視を潜り抜けると自分と年が離れていない様子の見知らぬ少年が簡易的な車いすに乗っていた少女と共に土蔵を見て立ちすくんでいた場を見る。

 

「(なんだありゃ? 来賓のガキどもか? 男のくせにヒョロヒョロ────)」

 

「────どんなところなのですか? わたしとおにいさまのあたらしいお家は?」

「……」

「おにいさま?」

「あ、ああ! 素敵なところだよ! 日本にしては珍しい石造建築で真っ白な壁に……は、花をあしらった窓がいっぱいあるよ!」

「まぁ……ユフィお姉さまのおへやみたいなばしょなのですね!」

 

「(壁が真っ白? 石造だから当たり前だし……『花』はタンポポ(雑草)だぞ?────)」

「────誰だ?!」

 

「う。」

 

 車いすに乗っていた少女の問いに、ヒラヒラの服を着た兄らしき少年が顔を引きつらせながら答える様子にスザクは内心呆れていると黒髪の少年に気付かれたような言葉に対し、反射的に身を隠す。

 

「こそこそしていないで出て来い!」

 

 イラ。

 

「偉そうに言うなよ、何様のつもりだお前?」

 

「そういう君こそ誰だ?」

 

「その土蔵は俺のだ。」

 

「“ドゾウ”ってなんのことですか、おにいさま────?」

「────お前、もう黙れ────!」

「────それにさっきから聞いていたけれどお前ウソばっかだな────」

「────黙れよ────!」

「────いいや黙らないね! “真っ白な壁”は石でできているから当たり前だし、花も雑草じゃねぇか────!」

「────え────?」

「────やめろ! それ以上言うのなら────」

 

 黒髪の少年がスザクに殴りかかるが腰の入っていないパンチ────否、それ以前に足が上半身についていないことを利用してスザクは少年を転ばせる。

 

「よ、弱えぇぇぇ……お前本当に男か────?」

「────だから黙れよ! これでも皇子、なんで上手く攻撃が────?!」

「────は! “おうじ”ってことはブリキかよ! いいぜ、代理戦争────だ!」

 

 ドガッ!

 

「ふっ?!」

 

 転んで体を持ち上げたまま地面を睨んでいた黒髪の少年────ルルーシュをスザクはほぼ容赦なしに蹴り上げるとルルーシュの肺から空気が吐き出される。

 

「おら立てよブリキ野郎!」

 

 ドガッ!

 

 息ができないことに思考がフリーズし、痛みで星が視界の中で散っていくルルーシュはなされるがままにスザクに立たされてはまた殴られる。

 

「やめてください! 殴るなら、おにいさまじゃなく私をなぐってください!」

 

 スザクは車いすの少女────ナナリーに懇願されるとハッとしては文字通りに背を向けて走り出した。

 

 果たしてそれが恥ずかしさか、閉鎖的な国の異常さに気付いたか、一方的ないじめに対する戸惑いか、あるいは後悔の念で胸中がいっぱいだったからかはスザク本人でさえも未だに理解できていない。

 

 次の週、よくわからないモヤモヤした気持ちと未だ自分を咎めるどころか簡潔に土蔵に住むこととなったブリタニアの皇族兄妹を淡々と事務作業のように説明しては他に何も言ってこない枢木ゲンブの興味を引こうとしたスザクは土蔵に戻ってきていた。

 

 もう一度言うが、道着を着たまま来たのは決して毒島が道場に珍しくまたも通っていたからではない。

 

「なんだこりゃ?」

 

 そんなスザクは土蔵の前に洗濯物が平然と干されていたことに戸惑った。

 

 それは別に洗濯物があったことや、服装がヒラヒラとした異国の物だった等ではなく、単純に先日の事があったというのにブリタニアの皇子がまるでそこを私有地化のように扱っていたことによる戸惑いだった。

 

「(ヒラヒラで、まるで女の服みたいだな……男のくせに────ってブス子か、俺は?!)」

 

「お前、どいてくれないか。」

 

 スザクが声に振り返るとそこに立っていたのは顔や手足のあざや擦り傷を不器用に応急処置をした様子のルルーシュが敵意を含んだ仏頂面で視線を返していた。

 

「“お前”じゃない、枢木スザクだ。」

 

「……日本国首相の息子か。」

 

「そういうお前はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、ブリキの皇子だろ? 何してんだ?」

 

「……見ればわかるだろ、洗濯を干しているんだ。 ナナリーの……妹の分も陰る前に干したいんだ。」

 

「枢木家の使用人は?」

 

「あんな奴ら、こっちから願い下げだよ。 ここは俺が居れば十分だ。」

 

「じゃあ家事も洗濯も料理も、男のお前が一人でやるっていうのか?」

 

「お前、本当に何も聞かされていないんだな────」

「────あ? どういう意味だよ────」

 

 ……

 …

 

「────どうしたスザク君?! 集中がいつも以上に乱れているぞ?!」

 

 フ、ドンッ!

 

「ぐはぁ?!」

 

 スザクは背中から走る衝撃から視界の中で星が散り、見知った道場の天井を見上げていると自分を叱る男性の声にハッとする。

 

「す、すみません藤堂先生!」

 

 ルルーシュ達によって土蔵(秘密基地)を奪われてからさらに数日後、久しぶりに藤堂が軍の仕事を抜け、直々に道場へ来ていたことを知ったスザクは久しぶりに通ったが手合わせに全く身が入らなかった。

 

「はぁ……今日だけで4、5回目だぞ? 何かあったのか? もしや……闇討ちとかか?

 

 藤堂は小声でそう問いながら、ちらりと道場の端で大人しくかつニコニコしていた毒島(幼)を横目で見る。

 

「い、いえそんなことは────!」

「────それとも、噂の客人とやらか────?」

「────う……父さんに、聞いたんですか?」

 

「……毒島ほどのレベルでなくても、スザク君はもう少し動揺を隠す方法を身に着けた方がいい。 君の事だ、喧嘩でもして負けたか────?」

「────負けていません! 返り討ちにしました! 俺とほとんど年が変わらないのに、ブス子と比べて弱すぎ────」

 

 ブワッ!

 

「────うお?!」

 

 スザクが『ブス子』を口にした瞬間、寒気がするほどの殺気に彼の体中の毛が逆立ちしてしまう。

 

「ん? どうかしたのかね枢木の?」

 

「やややややややややんのか冴子テメェこの野郎?! 竹刀無しで勝負しろ────!」

「────断る────」

「────藤堂先生は審判をやってくれるよな────ってはぁぁぁぁぁ?!」

 

 いつもは乗り気でスザクの挑発に乗る毒島の意外な答えに彼は驚愕の声を出す。

 

「お前よりも、歯ごたえのある奴を見つけたからな。 フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ……」

 

「(怖えぇぇぇぇぇ! ブス子のヤツいつもより怖えぇぇぇぇぇ!)」

 

「……その客人が、スザク君の良き(ライバル)になればいいがな────」

「────あんな変な野郎が友達なんて御免だね!」

 

「弱いからか?」

 

「その上枢木家の使用人を全員追い返した上に用意した食事も捨てているんだ! 恩知らずだよ!」

 

「……毒殺を警戒しているのかもしれないぞ?」

 

「ブリキ野郎どもじゃあるまいし、父さんがそんなセコイ手を使うかよ! やるなら正面から正々堂々の戦争だ! だろ、藤堂先生?!」

 

「………………フ。」

 

「あ?! 何か言いたいかよ、毒島?!」

 

「光のある道しか見ていない小僧だな、お前は。」

 

「は?」

 

「コホン! スザク君、毒島君……私は知っての通り軍人だが戦争は嫌いなのだよ。」

 

「はぁ?!」

「え? 何故ですか? 先生ならば、ブリタニアに負けることはないとお爺ちゃんが言っていましたが?」

 

「まぁそうだな。 『負ける』ことはなくとも『勝つ』自信もないな。 できれば、戦わずにこのまま時代が流れていくのを願っている。」

 

「しかし先生、戦乱の世は武人として名を上げるチャンスなのでは?」

 

「戦争はそんな生温い思想だけで戦い抜けるものではないのだよ。 自分が生き残ったとしても良い人間や立派な友人たちがなんの意味もない死を遂げていくのが『戦争』だ 結局のところ、『戦争の勝敗』は『理不尽な死』の先にあるんだ。」

 

「しかし戦は常に戦略によって勝敗を左右されてきました。 それは今までの歴史で証明されています。」

 

「では聞くが、軍は戦力を用いて何かを成す機関だ。 その戦力は主に、二つの種類がある。 なんだと思う?」

 

「二つの種類? ……善悪の大義名分?」

 

「『他人への強制と弾圧』と、『弾圧と強制からの解放』だ。 軍もテロもスポンサーに何がいるかどうかでラベルが変わるだけだ。」

 

「しかし先生は、『戦略家』として群を抜いて優秀と────」

「────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 それに、私がほかに進める道が見つからなかったからだけだ。 私個人としては年金が出る年齢までひっそりと平時に職務を全うし、辞退……したかった……」

 

「「……」」

 

 結局気まずい空気のままその日の手合わせと稽古は終了し、スザクそのまま帰っていると────

 

「おらぁ!」

 ドッ!

 

「う……」

 

「ブリキ野郎が!」

 ドッ!

 

「ぐ……」

 

 ────道場から少し離れた町の郊外で、数人の日本人の子供たちが地面で身を丸くしていたく一人を囲んでは蹴っていた場に出くわした。

 

「根性見せろ! それでも男か、ブリキ野郎!」

 ドッ!

 

「ぐぁ!」

 

「(地面にいるアイツ……もしかしてどっちつかずの混血か?)」

 

 身を丸くしていた子供は黒髪だったので一見すると日本人なのだが、周りの子供たちの叫びからしてハーフだと察したスザクはただ黙って、他の皆と同じようにその光景を見ないフリをしたまま素通りしていった。

 

 「こらぁぁぁぁ! クソガキどもがぁぁぁぁ!」

 

『可哀そうなヤツ』と内心で考えていると、茶髪の青年が叫びながら蹴られている子供を庇うと今度は周りを見渡す。

 

「同じ日本人の血が流れている子供を無視するのかよお前らは?! それでも日の本の民かよ?!」

 

 「な……オと……サ…………」

 

「(なんだアイツ。 変なの。)」

 

 駆け付けた青年に呆れながらその場から遠ざかるスザクの耳に届いたのは上記のか細い声だった。

 

 

 

 

「で?」

 

「いや、その……」

 

 土蔵の前で焚火をしていたルルーシュはぶっきらぼうにそう答えると、スザクは言いよどむ。

 というのも、ルルーシュは土蔵からあまり離れたくないのか離れないのか、ずっといるので友達がいないどころか、同い年で『枢木ゲンブの息子』という先入観無しで接してくれる者が近くにいないためスザクはあの日から日課のようにルルーシュの元を訪ねていた。

 

「俺にそんな話をして、何か俺にしろと?」

 

「別にそんなんじゃねぇよ! ただその……お前、ブリタニアの皇子だろ? 同じブリタニア人なのに、扱いがさ? お前は使用人とかを追い出しているのに、町では────」

「────話を聞いていれば暴力を受けていたそいつ、ハーフなんだろ? ブリタニア人じゃないよ。 それに俺は俺自身とナナリーの世話と生きることで手一杯なんだ。 そんなことを気に掛けられるほど余裕はないし、今の俺では何もできない。」

 

「でもお前、皇子じゃん。」

 

「そういうお前こそこの国の首相の息子だろ? サクラダイトの利権がなければ何もできないのか?」

 

「どういう意味だよ?」

 

「……さては君、バカだな?」

 

「バカって言うなよ! バカって言ったやつがバカなんだぞ!」

 

「なんだその屁理屈は!」

 

「俺が知るかよ!」

 

「そう言えばそうだったな、君はバカだったな!」

 

「あの……お兄様? どなたでしょうか? おきゃくさまですか?」

 

「ああ、うるさくてバカなカラスがガーガー鳴いているよ。」

 

「だからバカって言うなよ! うるさくもねぇよ!」

 

「あ、いつものひとですね。 あまりおもてなしはできませんが、わたしでよければおはなしをうかがいますけど?」

 

「う……お、覚えていろよお前!」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「(う、う~ん……今思い返したら俺ってやっぱりバカだったな。 もう少し周りに気を配って見て、考えていれば……いや、過ぎたことを気に病むんじゃなくて『今』と『これから』の事だよな。)」

 

 ジャリッ。

 

 スザクが石段を登り終えた靴底がると、そこにはまるで彼を待っていたかのようにギルフォードの姿があった。

 

「クルルギ卿、わざわざ今この状況下でここに私を呼び出す理由を聞こうか?」

 

「(ギルフォード卿、話に聞いた通りに真面目な人だな。 それが“玉に傷だ~”とかはさておき……ううん、僕はルルーシュとかじゃないんだ。 ここはもう正直に答えよう。) 実はとある人から連絡がありましたので、ギルフォード卿に────」

 ────ドドドドドドドドド、ガシッ────!

 「────もしや姫様か?!」

 

「あ、違います。」

 

 前振り無しの速度でギルフォードに近づかれ、がっしりと肩を掴んでワクワクと期待に満ちた目のしたギルフォードにスザクが天然の返しをするとギルフォードは見るからにがっくりと項垂れて気落ちする。

 

「そ、そうか。 早とちりをしてすまない────」

「────そうだぞギル。 まぁお前のそのまっすぐなところがレディたちに受けるらしいが。」

 

「あ、貴方は?!」

 

 近くの茂みがガサガサと音を鳴らし、中からラフな私服姿のダールトンが手を振りながら出てくる。

 

「いや、まさか本当に一人で来てくれるとはびっくりだぞギル!」

 

 その陽気な口調と態度はとても一年間もの間、音信不通だった知人が再び出会った様子ではなかった。

 

「ウチの息子を、一人か二人護衛につけるものだとてっきり────!」

「────ダールトン卿! 今までどこで姫様とデ────ほっつき歩いていたのです?! 正直羨ま────音沙汰もなしで生死とくれば最悪の事態を考え込んでしまい……もしや血の繋がった本当の息子が────?!

「────ギル、落ち着け。 剣を鞘に戻して冷静に話し合おう、な────?」

 「────問答無用! 貴方を殺し、私も死んであの世で謝罪を────!」

「────だから落ち着け、これには深い理由が────!」

「────深い、理由、だと────?」

「────これで息子の一人か二人いればスムーズに事が運んでいたのに…… まぁいい! 胸を貸してやるぞ! 来い、ギル!」

 

≪……ブリタニアも熱血少年漫画な殴り合いをするんだな~。≫

 

 スザクは(深く)考えることをやめて、久しぶりに日本語で独り言を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………………………(『帝国の先槍』が接触したのが噂のダールトン将軍……だよな?)」

 

 ダールトンより更に距離を置いた茂みの中から、上記の様子をマイク付き望遠鏡越しに見ていたレドは放心してしまいそうになっていた。

 

 ガサッ。

 

「ッ! (後ろ?!)」

 

 少なくとも、背後に近づく人影に気が付くのが遅くなるまでには、

 

 カチンッ!

 

 レドは振り返ると同時に腰の拳銃を引き抜こうとして、撃鉄の引かれた音に動きを止める。

 

「そこそこ優秀のようだな……クルルギ卿の尾行を任されるぐらいには。 兄上の部下……いや、マルディーニ卿辺りか?」

 

 興味深そうにレドの背後に立っていたのは未だに愛用している銃剣を持ったネリス────『ブリタニアの魔女』コーネリアだった。

 

「そういうアンタは……いや、もういい。 オレを撃つのならそうしてくれ。」

 

「命が惜しくないのか?」

 

「オレが死のうが生きまいが、何も変わらないさ。 どうせなら……」

 

「なら私たちに協力しろ。」

 

「は?」

 

「私はな、これでも人を見る目を持っている自信がある……まぁ最近はちょっと疑うようなことが……いや、それは今関係ない。 お前が受けている命令はクルルギ卿の監視、あるいはギルフォードの尾行だろう?」

 

「……オレの身柄を拘束して、後でひっそりと殺すのか?」

 

「いや? その任務、()()()()()()()。」

 

「は?」




目の前で苛めに合っていたのが気にかかっている/自分の相手/獲物のルルーシュではなかったのでスザクはスルーしました。

余談で何故か()泣き腫らしていた毒島を見たスザクがからかったおかげで無事(?)、いつも以上にフルボッコされました。
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