超合集国決議第壱號により黒の騎士団総司令のシンクーは上陸作戦を開始し、それに対してビスマルクの指揮下に置かれた九州沿岸沿いの防衛陣は激しい攻防を繰り広げていた。
原作で殆ど九州沿岸沿いだけが描写されていたが、この大規模な上陸作戦が『陽動』だということを今まで何度もゼロによって苦い思いをさせられたブリタニア軍は日本海および先日の『ゴトウ租界の乱』によって地域の支配下が曖昧になった東シナ海に面した沿岸にも手広く哨戒パトロールを展開した。
そしてその予感は的中した。
日本解放作戦を功績を挙げる好機と見たインド軍区のマハラジャはまるでこの時の為ばかりにと秘かに生産しつつ保有していた全ての戦力を導入した。
カラーリングを超合集国用に変えたサザーランドや暁に無頼改には出来るだけ簡易的な飛翔滑走翼を装備させ、その他には以前に黒の騎士団が太平洋で見せたようにスラッシュハーケンをヘリやVTOL機に連結させていた。
旧式のグラスゴーに無頼や、飛翔滑走翼が間に合わなかった機体にはバズーカ砲などの遠距離武装を装備させて船の砲台として運用。
そのほかにコーネリアによってエリア18となって以来、埃を被っていた自在戦闘装甲車両バミデスのホバーを簡易的なフロートシステムで補助して海上への展開を可能とさせた海兵(?)部隊などが鹿児島など、南方向から進軍して来ていたことが発覚。
幸か不幸か、去年の『キュウシュウの乱』で防衛設備が充実されたことと前もってゴトウ租界の乱が起きたことによって超合集国の上陸艦隊が撤退の動きを見せたのは日没間際だった。
しかしブリタニアはこのことを『勝利』と見ることはなかった。
なぜならばこの間にキュウシュウエリア周辺の要である、マゲシマ基地が超合集国の手に堕ちたからである。
時間は少しだけ、ちょうどシンクーの天愕覇王荷電粒子重砲をビスマルクが防いだ時へと戻る。
…………
………
……
…
ドォン……ドドォン……
最初は上陸部隊を警戒していたマゲシマ基地の者たちは自分たちを素通りした超合集国軍にホッとしながら、海上に反響した砲撃音が九州方面から響く中で安堵していた。
「ふぅ……」
「一瞬、ここに来るのかと……」
「こちらに敗残兵たちが急転回しないとも限らない! 装甲車のレーダー、および巡回中のKMFにファクトスフィアによる警戒を怠るなよ!」
指揮官はそう言いつつも、内心では部下たちのように胸をなでおろしていた。
しかし────
「────あれ?」
「どうした?」
「いや……なんか変な鳥が飛んでいたような気が……」
「鳥? カラスとかか?」
「でも羽ばたいていなかったし……う~ん……」
「虫じゃないか?」
「今日は一段と蒸すからな。」
「ヘルメットの中がすぐ汗臭くなるしな……」
『こちら歩兵部隊より司令塔へ。』
『司令塔だ、どうした?』
『探知機に何か表示されていませんか? 他の班から妙な目撃報告を受け付けているのですが。』
『“妙な目撃報告”? もっと詳しく説明しろ。』
『その……鳥や虫の類ですが、どうも────』
『────そんなことで通信チャンネルを開いたのか? 歩兵部隊だろう! 調査はしたのか?!』
『各部隊の隊長たちが、“黒の騎士団と何らかの関係性が?”という話が────』
『────こちらは何も見えていない。 ポートマン部隊、何か報告することはあるか? 些細な事でもいい。』
『こちらポートマン部隊、先ほどキュウシュウ方面から逃げてきたと思われるクジラが泳いできたぐらいだ。 その他は“静”そのものだ。』
『クジラか……そう言えば奴らの肉は美味かったな……』
『私語は慎め! ……この戦いが終わったら、ホンシュウエリアに掛け合って手に入れてやる。』
『『イエス、マイロード!』』
パトロール中の歩兵部隊の一人が足を止めて空を見上げたころから、『違和感』がポツポツと島中に蔓延していった。
だが超合集国の艦隊が島を素通りしてキュウシュウエリアに進軍したこと、司令塔からレーダーとファクトスフィアに何も映っていないこと、そしてブリタニア軍の勝利を疑っていないことが重なった所為でそれらは以後報告されることはなかった。
そして
「未確認飛行物体が、島の沖合から急速接近中────!」
「────もしや巡航ミサイル────?!」
「────なぜもっと早く探知が出来なかった────?!」
「────もう島の上空に────!」
「────早すぎる────!」
『────司令塔から各部隊へ通達! 未確認飛行物体が飛来中────!』
ブツン。
あらゆる電子機器が一斉に停止したことで、突かれた蜂の巣のように慌ただしかった司令塔はさらに混乱していった。
「電気が────?!」
「────通信途絶────!」
「────電源が切られた────?!」
「────攻撃か────?!」
「────バックアップバッテリーに移せ────!」
「────機器の反応なし────!」
「────マニュアルで再起動だ────!」
「────ゲフィオンディスターバーか?!」
司令塔が慌てている間にも、島の周りの水中にいたポートマンⅡも焦っていた。
「機体が動かない────?!」
「────脱出機能も作動しない────!」
「────まさかゲフィオンディスターバーか────?!」
島中のあらゆる電子機器が停止した同時期、歩兵部隊が装着していたヘルメットにも影響を与え、視界が真っ暗になった歩兵部隊は────
「────ゲホ、ゲホ────!」
「────目が! 目がぁぁぁぁぁ────!」
「────な、何も見えない────!」
「────オェェェェ────!」
────ヘルメットを脱いだ瞬間、目と喉を襲ってくる激しい刺激に鼻に来る異臭に悶えた。
「くそ! ヘルメットを取るな! バイザーも開くな!」
「だが何も見えないぞ?!」
「訓練を思い出せ! 二重バイザーの表だけを開けろ!」
「そんなドマイナーな操作方法、覚えているか!」
「そう言っても────ぐはぁ?!」
「お、おい?! どうし────ぐぇ?!」
視界が奪われた歩兵部隊を、ガスマスクに黒ずくめの全身ボディーアーマーをした者たちによって次々と無力化されていく。
『へ! 駐留部隊なんざワンパンよ!』
『この強化スーツ、すごいですねアシュレイ様。』
『来て良かっただろ?!』
『だからって隊長……ワザワザこの作戦に志願するのはどうかと……』
『人生楽しけりゃいいんだよ!』
『『『『隊長……』』』』
アシュレイはガスマスクの下で満面の笑顔を浮かべていたものの、内心では複雑な心境だった。
彼がこの作戦に志願したのは『面白そうだから』というほかに、『マゲシマ基地の早急な無力化にガスを使う』と提案したシンが気がかりだったこともあった。
何せヴァイスボルフ城からのシンは一転しているかのように見えるが、いつまた以前のように変貌するかわからなくて不安を感じていた。
今回使用された『ガス』というのが小型ドローンによる催涙ガスだったので、アシュレイの心配は杞憂に終わったのだが。
『(けど流石はジャンとシャイング卿だな。) よしお前ら! 基地に向かって他の奴らと合流するぞ!』
「ヒュウガ様、島に駐留しているブリタニア軍を制圧したと、アシュレイとアキトたちから連絡が来ました。」
「……時間通りだな。 流石はアシュレイ達と、
馬毛島の南にある沖合の水中をゆっくりと進んでいるディーナ・シーのCICでジャンの報告をシンは時計を見ながら満足そうに独り言を零す。
「……」
なお、ジャンは『魔女の森』での阿鼻叫喚や地獄絵図を思い浮かべては静かに身震いしたと追記する。
「では、撤退している超合集国軍にこの島を制圧したことを。」
「よろしいのですか?」
「ヴァルトシュタイン卿はギャラハッド一機だけでかなり小回りの利く敵の戦力だ。 ならば彼を足止めするより、ブリタニア軍を警戒させて防衛部隊の大部分をこの戦域に残すことのほうが効果的だ。 それと、いつでもKMFが出撃できるように待機だ。」
「我々に任されたことは新型兵器のテストと陽動だったと聞きましたが……明らかな戦闘行為は超合集国に任せるはずでは?」
「……少しだけ、胸騒ぎがする。」
…………
………
……
…
「マゲシマ基地が敵の手に堕ちた?!」
トウキョウ租界の政庁近くにある格納庫で、KMFのチューニングを行っていたシュネーが帰ってきたスザクからマゲシマ基地の事を聞いた第一声が上記のこれだった。
「うん。 僕もつい先ほど聞いたばかりだ。」
「しかし、なぜ? 例のインド軍区から出撃した艦隊はカゴシマ租界に進軍していたはずでは?」
「どうも別動隊が動いているみたいかもしれないとマルディーニ卿と宰相閣下が口にしていたよ。」
「それは……少々まずいのでは?」
「うん、まずいね。」
「(ちょっと待てクルルギ卿、そんな雑な説明でシュネーが満足するとでも────?!)」
「────しかしこれでなぜ我々やエニアグラム卿のグリンダ騎士団が待機されているのかわかりました────」
「(────納得するのか────?!)」
「────やはり黒の騎士団は侮れないですね。」
「(シュネーに外出の事をどうやって説明しようか迷っていたけれど、これはこれで良かった……のかな?)」
レドがポーカーフェイスを維持しつつツッコみたい衝動を必死に抑えている横にいたスザクは内心ではホッと胸をなでおろしていた。
「それでスザクさんはどこに行っていたのですか?」
「う……そ、それは────」
「────オレを探しに出ていたんだ。」
スザクが言いよどんでいると、彼の後ろからレドが手を振りながら助け舟を出す。
「そういうレドもどこに行っていたんだ?!」
「軍に入る前の事絡みの急用で、ちょっとな。」
「“急用”で“ちょっと”って────!」
「────一応クルルギ卿から許可はもらっていたからな。 大方、オレの帰りが遅かったからクルルギ卿も探しに出たんだろ?」
「……レドお前、何かいいことでもあったか?」
「え?」
「愛想がいつも以上にいいというか……スザクさんの事を、なんというか……」
「いいや? いつも通りだぞ? そういうお前はクルルギ卿の事となると変に大人しくなるな?」
「はぁ……そうやってまた茶化す。」
「(う~ん……まさかレドがこうやって僕を助ける日が来るとはね……コーネリア皇女殿下は何を彼に言ったのやら。)」
……
…
『息災のようで何よりだよ、コーネリア。』
「兄上も元気そうで何よりです。」
政庁の執務室では化粧をする時間が無く、未だにほぼ
横には部屋の主である現総督のナナリー、元総督のクロヴィス、そして部屋の外ではラウンズのノネットに、頬の腫れが少々目立つギルフォードがいた。
『まぁ、ね。 それで何か言う事はあるかい、コーネリア?』
シュナイゼルはいつもの愛想笑いを浮かべていたが、その場の空気は緊張に満ちていた。
それも無理がないだろう、何せ行方不明になっていたとはいえ、こうしてコーネリアは現に生きて帰ってきている。
それ自体は良いことなのだが、問題は生きていたにも関わらず連絡も寄越さず総督の責務を無断で放棄していたことが良くなかった。
『今まで連絡をしてこなかったものだからね。 皆、心配していたのだよ?』
「それは……」
実を言うとコーネリアは、原作とは違う理由でブラックリベリオン中に行方不明になっていたのだが、最終的に感情で動いた挙句、反ブリタニア勢力と手を組んでブリタニアの闇に身を投じて挑んでいたことに変わりはなく、その後に何をすればいいのか、彼女にしては珍しく(?)まったくもってノープランだった。
「実は、少々込み入った事情がございまして……して兄上はバトレー将軍の事をご存じで?」
コーネリアの言葉に、クロヴィスの首回りにはブワリと汗が噴き出し、シュナイゼルはわずかに眉毛をピクリと反応させていた。
『…彼が、どうかしたのかい?』
「地方で、彼の最期に立ち会いました。 その際に、
しかし、アマルガムのレイラや毒島、それに生きていたユーフェミアたちと話して新たな目的のために動き出すと決めた今では話が違ってくる。
『色々? 例えば?』
「おそらく、兄上やクロヴィスや
「どうかされましたか、クロヴィスお兄様?」
「ななななななななななななななな何でもないよナナリー? オホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ。」
ここでコーネリアは目を泳がせながらダラダラと汗を流しナナリーの心配する声に挙動不審になるクロヴィスに横目を送る。
これは博打嫌いなコーネリアによる、一種の『賭け』だった。
そもそも『責務の放棄』などが有耶無耶になるような、シュナイゼルやシャルルが気にかけている話題を出せば切り抜けられるといった『
『ふむ……それは大変興味深いね。 後で少し場所を変えて話そうか、コーネリア?』
「ええ。 それと私が戻っていることは────」
『────私から皇帝陛下に掛け合おう。 君が今までどれだけ全身全霊で各エリアの平定などで帝国への献上をしていたのかは皇帝陛下もきっとご存じのはずだ、きっと色よい返事をくれるだろう。』
「(ダメもとで言ってみたが、兄上相手ではそう簡単にはいかないか。)ありがとうございます兄上。 それで、できれば私もエリア11の防衛に加わりたいのですが────」
『────それは少々難しいね。 何せ君が行方不明になってから一年経っている。 私は君の事を昔から知っているから微塵も疑ってはいないが……新大陸や本国からの兵士や将校たちも大勢来ているからね、果たしてその者たちが私と同じように思えるかは言い難いところだ。 私から話してもいいが、内容が分からないことには……』
「(やはりそう来たか。) その話は兄上が先ほど言ったように、ここで話すのは……」
『確かにそうだね。』
「ところで、皇帝陛下は?」
『今は
「そうか。 (さて……どこまで兄上相手にできるだろうか? レイラたちの話によれば、兄上は『ギアス』や父上に関する情報などをかなり重宝しているとのことだが……)」
余談だがこの時のレイラたちの話はスバルが以前に原作知識を思い出すために書いた『メモ』兼『予言書』の事である。
メモにはR2の時期に起きるであろう出来事が大まかに書かれている他、主要人物に関しても簡単で
コードギアスや他の作品を知っている者からすれば、ダラダラと単語と単語をつなぎ合わせて芋づる式に書き上げたメモなのだが、第三者からすれば、身内や本人しか知りえない心情や個人情報などが書かれていれば、多少の意味不明な部分を除けば文字通りに宝の山であった。
未だに『シャーリーの中はルキアなのに容姿と性格はオリヒメで健全な家庭環境持ち』で出てくる人物名らしきものをどれだけ探しても『該当者なし』と返ってくるので意味が分からないままなのだが些末な事である。
尚もしこのことを書いた本人であるスバルに発覚すれば世間体などを気にせず、ポーカーフェイスを崩した彼は頭を抱えながら奇声を上げていただろうとここで断言する。
またの名を、『原作ニーナの顔芸を公衆の前で披露してしまう』とも。
…………
………
……
…
「……なるほど。」
場所は政庁内でつい最近まで実質シュナイゼル専用の執務室へと変わっており、画面越しのシュナイゼルは顎に手を当てながら僅かにだけいつも以上に口端を上げていた。
部屋の中にはコーネリアのみおり、ドアの外には警備の姿もおらず、画面越しと言えども文字通りにコーネリアとシュナイゼル(+カノン)だけの会談がついさっき終わったところである。
通信回線は以前、ゼロがバベルタワー事件直後に復活宣言で使ったオメガラインを模したシステムを個人用に開発された物であり現在使用されている周波数と器具がパスコード入力時と完全に一致していなければ通信がそもそも繋がらない上、使う度にパスコードは変わるので傍受は理論上『不可能』となっている。
これを開発した者たちを集めれば力業のごり押しで何とかなるかもしれないが、その者たちは既に念入りの『行方不明者』となっている。
元々この通信方法は予定以上にエリア11に留まり過ぎたシュナイゼルをカノンが何とかできないかと考え、独断で開発し始めたものだが、どこからか情報を入手したらしいシュナイゼルが『面白いね』と一言したことで当初の予定より早く完成した。
このことが皇帝や皇帝派に発覚すればいくらシュナイゼルでも不敬罪まっしぐらなのだが、先の『世界中の通信ジャック』が起きたので今となってはどうとでもなる。
「しかしまさか、皇帝陛下が不死の研究をしていたとは……」
『私も最初は自分の耳を疑いました。』
「そう驚くものでもないよ、コーネリアにカノン。 古来から不老や長寿の類は為政者────特に国が栄えていれば栄えているほどに魅力的な願望だ。 『寿命』という、命に制限を持つが故の『人の性』だね。」
「では殿下は『不死』の事をどう思いに?」
「興味はあるが、自分から何が何でも手に入れたいとは思わない課題だね……二人のその顔はなんだい?」
『「い、いえ! その……他意は────!」』
「────意外だったかい? ……いや、白状しよう。 私自身、自分に驚いている。 だが皇帝陛下は
『「???」』
「だが今は黒の騎士団とゼロだね。 有益な情報をありがとう、コーネリア。 君には……そうだね、前線で部隊を引いていてこそ最大の効果を得られるだろう。 ギルフォード卿の部隊用にヴィンセントがあったはずだからそれを使うと良い。」
『あ、ありがとうございます。』
「うん、期待しているよ。」
さらに、珍しく歯切れの悪いシュナイゼルにコーネリアとカノンが頭を傾げていると、どこか遠くを見ていたようなシュナイゼルがいつもの様子に戻っていく。
「……カノン、ちゃんとクルルギ卿とグリンダ騎士団に例の話を伝えたかい?」
「ええ、もちろんですが────」
「────エニアグラム卿が心配かい? 数少ない友人なのだろう?」
「彼女とは単なる腐れ縁ですよ。 強いて言うなら『反面教師』です。」
「その割には何か言いたそうだね? 言ってごらん?」
「……では言いますが、殿下がなぜ相互不信を誘うような言伝をこの局面で送る意図に少々……」
「カノンは狩りはしたことはあるかい?」
「まぁ……私は汗をかくのが嫌いなので見学だけで済ませていました。」
「いくつかにバリエーションに分かれるが……獲物が賢いものだと特に方法が限られてくる。そんな相手に対して、一番効果的な方法を知っているかい?」
「『誘い』……でしょうか?」
「惜しいね。 『自由意志』だよ。」
「はい? (『自由意志が効果的な狩りの手段』? 相変わらず、時々殿下の言うことはしっくりこないわね……)」
「……♪~。 (さて、舞台は整えられた。 どうやって攻めてくる? 二分化したこの世界にどのような影響を残す?
どうやって、私を負かす?)」
多方面での展開が多くて申し訳ございません……
これがRTA気味R2の恐怖…… (錯乱