小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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第277話 第二次東京決戦1

 マゲシマ基地が陥落し、東シナ海ルートで進軍していた超合集国の艦隊が停泊する拠点となったニュースは一気にトウキョウ租界中のブリタニア軍、引いては租界内の住民にも行き渡った。

 

 無論、トウキョウへの直進を防ぐ守りの一部であるマゲシマ基地が落ちたことは兵士の士気低下や民衆のパニック、治安の悪化などによる二次災害に繋がりかねないので、緘口令が敷かれていた。

 

 最初こそ軍の上層部で留まってはいたのだが、どこからか情報は一般兵、アングラニュースの掲示板、さらには使用人用の裏サイト等には仕えている貴族家(あるいは富裕層)がトウキョウ租界から独自のルートで脱出を試みているなどのスレッドが次々と現れた。

 

 これによって租界内には緊張感が高まり、保安局のナイトポリスや保安部隊等は全員出動して病院やシェルターなどに配置された。

 

 それと並行し、駐留軍に本国からの正規軍も租界の外延部に陣を張っていた。

 

 ほぼすべての機体は『旧式』となりつつあるサザーランドやグロースターや装甲車なのだが、その数と総合的な火力は立派な脅威となる。

 

『……本当に、来ると思うか?』

『来るだろそりゃ。』

『前回のようなことにはならないだろうな?』

『租界構造の修正は済んでいる! 崩落させるにはその地区と政庁にある整備室が同時に承諾せねば崩落はできない!』

『……だが相手はゼロですよ?』

『それに噂では、例の幽鬼も黒の騎士団に雇われているとか。』

『自分はヴァルトシュタイン卿の機体も、そいつの所為で損傷したとか……しかも“光の剣”とかで。』

『なんだそりゃ────?』

『────レーダーにアンノウンのKMFを捕捉!』

 

 兵士たちはこの一言で引き締めながら、いつの間にかKMFのメインカメラを拡大して見れる距離まで近づいてきていたゼロの蜃気楼に驚く。

 

『ここまでの接近を許したのか?!』

『管制官どもは何をやっていたんだ?!』

『そんなことはどうでもいい! 今は目の前のゼロだ!』

『ノコノコと一人で来やがって!』

『総員、攻撃準備! ……よし、撃てぇぇぇぇ!』

 

 プツン。

 ヒュウゥゥゥゥゥン……

 

 照準を蜃気楼に合わせて今まさにサザーランドやグロースターに装甲車のモニターなどの電子機器が一斉に停止する。

 

「も、モニターが死んだ?!」

「機体が動かない!」

「エナジーフィラー、沈黙!」

「もしやゲフィオンディスターバーか?!」

「こんな広範囲な仕掛けを、どうやって事前に?!」

「内通者か?!」

 

 租界のそこら中を走っていたリニアカーに仕込まれたゲフィオンディスターバーが発動し、第五世代以前のKMFおよび未だゲフィオンディスターバー対策の施されていないエナジーフィラーに頼っている設備等が機能を停止する。

 

「フ、他愛もない。」

 

 リニアカーのダイヤを分析し、ゲフィオンディスターバーが一番効果的なタイミングで自分をおとりにするため一足先に蜃気楼で先行していたルルーシュは次々と電源が落ちていく租界を見てほくそ笑む。

 

『藤堂!』

 

『承知! 7号作戦、開始!』

 

 藤堂の号令にイカルガとイカルガを小型化したような可翔艦、そしてリア・ファルが東京湾近くの海中から浮上する。

 

『千葉、仙波、朝比奈、卜部! それぞれ租界の東西南北を制圧し、陣を張れ!』

『今度こそ!』

『承知!』

『取り返す!』

 

 さらに浮上したイカルガ等を追うかのように、潜水艦に似た密閉型の車両人員揚陸艇が次々と海上に浮き上がってきては推進速度をどんどん上げていく。

 

『篠原少佐は上陸した歩兵部隊を指揮し、先に潜入させた者たちと合流し租界の主要箇所の占拠! 電力が復帰した政庁は要塞化している、まずはKMFで無力化した後に取り押さえる!』

 

『了解です、中佐。 ゴトウ租界での借り、ここで返しますよ!』

 

『うむ。 期待しているぞ。』

 

『こうしてみると、ワニワ〇パニックを思い出すな~。』

 

『『『……』』』

 

『卜部さん……』

『え? ああスマン、通信が送信になっていたみたいだ。』

 

『卜部……』

『だから悪かったって中佐!』

『この戦いが終わったら味噌を分けてくれ。』

『え?』

『もちろん醤油もですよね中佐?!』

『うむ。 この後、千葉の手料理で宴会を開こう。』

『い、今は作戦中ですよ?!』

『そうだぞ! そういったものを“よくないふらぐ”と呼ぶらしいぞ?』

『『『『“よくないふらぐ”?』』』』

『ジンクス……つまりは良くない暗示のことだ。』

『うわ、出た。』

『仙波さんの“見た目以上に年上っぽい言葉”。』

『卜部と朝比奈も大概だがな……』

『『え。』』

 

 余談で卜部の天然かつ何気ないコメントから始まったコントで、緊張によって力が入り過ぎた藤堂と四聖剣たちの気が少しだけ緩んだのは秘密である。

 

『…………………………フ。』

 

 

 バラすなや藤堂ちゃん。

 

 

 ……

 …

 

 フッ。

 

「電源が!」

 

「(始まったか。)」

 

 政庁の電源が落ちてシュネーがびっくりする反面、レドはポーカーフェイスの裏で平然とこれを受け入れていた。

 

「これは恐らく、ゲフィオンディスターバーだ。」

 

「スザクさん、それって────」

「────前にランスロットがこれで止められたからね。 その時と似ている。」

 

『総員、政庁のエナジー供給元をバックアップに切り替えます。』

 

 ヴゥゥゥン。

 

「おおお!」

「すごい!」

「これが、サクラダイトに頼らない電力か!」

 

 政庁内のスピーカーからニーナの声が響くと電気が復帰し、そこかしこで感心する声が上がる。

 

「スザクさんのクラスメイトなんですよね、あの女性? すごいですね!」

 

「うん、そうだよ。 でもまだ喜ぶのは早いよ。」

 

「え?」

 

「政庁の設備が無事でも、租界内のライフライン、通信網、それと政庁内にもある第五世代以下のKMFなどのもの等はダウンしたままだ。 つまり、政庁の防衛設備以外に機動部隊として動けるのはグリンダ騎士団とラウンズ機、そして君たちコノエナイツのヴィンセントだけだ。」

 

 スザクはそう言いながらランスロットのコックピットに乗り込むと、シュネーとレドもそれぞれのKMFに騎乗する。

 

『スザクさんは何か考えがあるのですか?』

 

「実はシュナイゼル殿下からいくつか命令書を渡されてね、その中に今回のような状況も入っていた。 僕が敵の主力を正面から受け持ち、シュネーはグリンダ騎士団の砲撃種と共に援護。」

 

『背中は任せてください、スザクさん!』

 

「レドは他の者たちと政庁周辺の守りを固める。 頼めるかい?」

 

『イエス、マイロード。』

 

 ……

 …

 

『出たわね、()()()()()!』

 

『正式名は“ゲフィオンディスターバー”にゃ~。』

 

『でも“ゲヒタバー”はなんだかシュールで愛着が持てるね。』

 

 スザクたちとは別の場所で待機していたオルドリン(真)、ソキアとティンクがそれぞれの機体内から暗くなっては明るくなる政庁内からトウキョウ租界を見渡しながら平常運転のやり取りをする。

 

『うん、元気な事は良いことだよ! ……それでなんでシュタイナー卿はそんなに気を重くしているんだい?』

 

『その……レオンさんはどうもマリーカさんの事が気がかりらしくて……』

 

 そしてノネットは正に“自分は気乗りしていません~”と言った空気を発するレオンハルト機を横目で見ているとオペレーター役(に戻った)トトが答える。

 

『マリーカ……ああ! ソレイシィ家の良くできた娘だね! それについてだけど朗報……かどうかはこの状況だから分からないけれど、ラウンズ専用の定期報告でブラッドリー卿がヴァルキリエ隊と共にこちらに向かっているらしいよ?』

 

 『マリーカさんがこっちに来ている?!』

 

『いやまぁ……ブラッドリー卿と共にね?』

 

 通信越しでも分かるくらい、明るくなったレオンハルトの声にノネットがびっくりしつつも念を押した。

 

『さてと! 宰相閣下からの命令書によるとティンクはクルルギ卿の狙撃手と共に私とクルルギ卿の援護、他の皆は政庁周辺のガード……となっているけれど、ここはラウンズ権限でちょいと変更するよ! オズたちは租界を止めているゲフィオンディスターバーを探し出して片っ端から破壊していきな! この規模だと恐らく環状線を使っている! リニアカーを探し出しな!』

 

『『『イエス、マイロード!』』』

 

『ティンク、グランベリーも政庁周辺に置いとくからそこから援護しな。 (さ~て……少年をスザクと共に迎えに行くか!)』

 

 ノネットは期待から高まる胸の鼓動で震えそうな体を気合で制し、『ランスロット・クラブ(ベディヴィア)』を操作して戦局をより見渡せる高度に上げる。

 

 

 ……

 …

 

 

「ギルフォード卿! 各所との通信が取れません!」

「このままでは外の様子が分かりません!」

「ギルフォード卿!」

 

「そ、それは……その……()()が君たちにはあるではないか。」

 

「「「「「?????」」」」」

 

 政庁内の電源が復帰しても各防衛陣との連絡が取れなくなったことで慌てる士官たちの視線と言葉にギルフォードはチラッと近くにいたクロヴィスを見て口ごもり、そんな彼の意図を察せない者たちはハテナマークを頭上に浮かべた。

 

「だーかーらー! ギルフォード卿は“伝令しろ”って言っているんだよ!」

 

 そんな空気をぶち壊すかのように、横からジノが口を挟んでくる。

 

「し、しかし通信が送れても、受ける側の機器が使えない────」

「────何のための足なんだい! 飾りじゃなかったら走れ!」

 

「「「え。」」」

 

「ウッ。」

 

 KYな(空気読めない)ジノのズケズケとした物言いにクロヴィスはチクチクと痛む胸を掴み、ギルフォードは静かに目を手で覆いながら唖然とする士官たちの視線から逃れようとする。

 

「これだからジノはトリ(頭)。」

 

 そして自分の携帯────正確にはデータとブログ────にゲフィオンディスターバーの影響がないことを確認していたアーニャがボソリと上記の言葉を零す。

 

「防衛部隊、呼集(こしゅう)! 第五世代以降のKMFやゲフィオンディスターバー対策の該当機種で再編成! 敵はもう来ているんだ! アーニャ、モルドレッドは出せそうかい?」

 

「すぐには無理。 他機体のハンガーアウト中に電源が落ちたから、先に取り除かないとモルドレッドが出撃できない。」

 

「オーケー、んじゃ先にトリスタンで出とく────」

「────ジノ、焦っている?」

 

「え? 急になんだいアーニャ?」

 

「ジノがいつも以上に元気……ううん、無理やり明るく振る舞っている気がする。 何かあった?」

 

「…いいや? 私はいつも通りだよ?」

 

「……そ。」

 

 ……

 …

 

「チィ!」

 

 蜃気楼の中から政庁だけの電源が復帰した光景にルルーシュは舌打ちをする。

 

「(流石は兄上だな。 まさかニーナの“アトミックパワー(原子力)”とやらを既に実用化させて政庁に繋げるとは……)」

 

 ルルーシュがトウキョウ租界を墜とすために短期決戦を挑んだ理由は主にゲフィオンディスターバーで機能停止させた各電子機器とKMFの復帰がブリタニア側の戦力復活に繋がるためと、シンクー達に気を取られたあらゆるブリタニア軍の部隊等がトウキョウの異変に気付いて駆けつけてくる前に租界を占拠すれば、ブリタニア帝国は太平洋側で経済の貿易を保進しつつ中心となって注目を浴びた植民地を失ったということと、『ブリタニア帝国────引いては世界中への放送で煽るような宣言をした皇帝シャルルも決して無敵ではなく限界がある』という事実等を、超合集国だけでなく世界規模の国際社会に示すことができるからである。

 

「(少々予想外だが電力の復帰は政庁だけに留まっているならばこれがチャンスだという事に変わりはない。それに藤堂と四聖剣による四方の防衛陣、ゴトウ租界の篠原による歩兵部隊、そしてスヴェンのアマルガム等がいることで本命のオズや姉上(コーネリア)たちも何かと動きやすくなるだろう。 懸念すべき敵は、政庁周辺にいるラウンズと兄上が率いている遊撃部隊。 沿岸沿いのブリタニア軍が異変に気が付いたとしても、シンクー達や元インド軍区のマハラジャの部隊に背はそうそう向けられない筈だ。) 

 黒の騎士団斑鳩艦隊、およびプレイアデスナイツ部隊に告げる! ゲフィオンディスターバーによってトウキョウ租界のあらゆる機能は停止したが、政庁の電源はまだ生きている! 斑鳩艦隊は周辺を迂回しつつゲフィオンディスターバーを守りながら歩兵部隊の掩護! 歩兵部隊は各主要施設を占拠し、トウキョウ租界の戦闘継続能力を奪い取れ! プレイアデスナイツは私と共に残っている政庁周辺の戦力を釘付けにせよ! 敵に反撃の余地を与えるな!」

 

『よし、上陸するよお前たち! 総員、ちゃんと赤外線ストローブに電源を通したな?! 友軍の砲撃を受けたくなければ絶対に外すなよ! ゴトウ租界の借りをここで返す! イカルガたちの砲台は指定した位置に砲撃を集中してくれ! 航空支援、頼りにしているぞ!』

 

『了解。 全艦、照準を2度修正してくれ。 我々はなるべく主要施設にダメージを与えず、直撃で敵航空戦力の無力化と心理的な効果を狙っているだけなんだ。』

 

『……よし、こちら井上です。 いつでもいいですよ、篠原少佐。』

『杉山、井上と同じく。』

『吉田です! 援護射撃なら雷光でたっぷり経験ありますから任せてください!』

 

『それは心強い! 各部隊、レーザー照準器でターゲットを艦隊に送れ!』

 

『こちらブラボー部隊! チャーリー3の46地区に砲撃を頼む!』

 

『こちら扇。 もう一度確認するが、民間エリアへの砲撃は許可されていない。 使用する武装や誤射などに気をつけろ。』

 

『標的を捕捉……撃ちます!』

 

 ドドォン!

 

『……ターゲットたちへのヒット(着弾)を確認!』

 

 イカルガと周りの小型艦からの砲撃が暗くなった租界を照らし、反響していく爆音が第二次東京決戦の開戦合図となった瞬間だった。

 

 その時、ふとした考えがルルーシュの脳裏をよぎった。

 

「……しかし、『偽のニュースや噂で一般市民たちを事前に避難させる』とはな。 スヴェンはいつからこのことを予想し、()()()を施した? (それに、この手口はまるでシンジュクの時と同じだ……もしやあの時も彼だったのか?)」

 

 

 ……

 …

 

 

「そこの者たち、止まれ!」

 

 政庁へと続く道の検問所にはいつもの警備兵ではなく、より重装備した憲兵たちが走ってきていた歩兵たちを呼び止めていた。

 

「何用だ?! 所属とIDを────!」

「────私たちは西ブロックからの伝令です! 火急の連絡を政庁に届けに来ました、こちらがIDです!」

 

 ……ピ♪

 

「……よし、全員オーケーだ。 それで火急の連絡とは────?」

「────宰相閣下によるご命令で、“直接口頭伝達せよ”とのことだ。 内容は言えないが、政庁内にいる皇族の方々に関することだと────」

「────なに?! そ、それは────」

「────一刻も早く伝えなければいけないのです! 貴方は責任を────!」

「────よし! 護衛をつける────!」

「────感謝します────!」

「────オイお前たち! こいつらと共に────!」

「(────ああ、本当に感謝するよ。 ブリタニアの番犬ども。)」

 

「(さすがはオルフェウス兄さんだな……やっぱり潜入が様になっている。)」

 

「(粗削りですが、この方は慣れていますね。)」

 

 慌てる憲兵たちを見ては先ほどヘルメットの下で感謝を並べたオルフェウスがニヤリと笑みを浮かべ、彼の後ろにいたロロと咲世子はそれぞれ別々のことを思い浮かべていた。

 

 

 ……

 …

 

 

『偽装IDの許可、完了しました。』

 

「よし、引き続き潜入部隊の支援を続けてくれ。」

 

『イエス、マイロード。』

 

 アッシュフォード学園の地下深くにあるおかげでゲフィオンディスターバーの影響を受けなかった機密情報局アジト内では、ヴィレッタがルルーシュにギアスをかけられた機密情報局のエージェントたちに指示を出していた。

 

 というのも数日前、ヴィレッタは学園でマーヤとアンジュを通してレイラから頼みごとを受けていた。

 

「(まさかその頼みごとが、『機密情報局権限で政庁への潜入を手助け』なんて……そもそも既にアジトのシステムを使って政庁をハッキング済みだったことは恐ろしいが……恐らくスバルさんだろうな。 彼なら『もしも』の為に……だが何時だ? もしや私に正体を明かしたときに仕掛けていたのか?)」

 

 余談だが恐ろしいことに、ヴィレッタの予測はほぼ当たっていた。

 

 以前、視察に来たマリーベルやオルドリンたちを巻き込んだ『テロによる学園の占拠』を覚えているだろうか?

 

 その時、スバルに頼まれてユキヤが機密情報局のシステムに施した爆弾(仕掛け)*1は一種のコンピューターウィルスであった。

 対象のシステムを徐々に乗っ取りながら外部から操作権限を広める類のものであり、今では機密情報局のアクセス権限でそれなりに政庁の電子システムの掌握が完了していた。

 

 ルルーシュが先ほど思い浮かべていた偽ニュースやスレッドもこれによって広げられていた。

 

 

「(と言っても、物理的に隔離されている軍部のシステムにはエージェントを派遣しなければいけなかったが……先日の超合集国に関する騒ぎで潜り込ませることには成功した────)」

 

 ────ピリリ♪ ピリリ♪

 

「(ん? 予備回線の通信? 誰だ?) ヌゥ男爵だ────」

『────久しぶりだな、裏切り者め────』

「────キュ、キューエル?!」

 

 インカム越しに聞こえてきた声に、ヴィレッタは思わず立ち上がりつつも近くのエージェントの注意を引きながら『通信相手の場所を探れ』のサインを出す。

 

「生きて、いたのか……」

 

『随分と先生役に入れ込んでいたと思ったが、情でも移ったか?』

 

「……前回のことに関して、私はもう何も思っていない。 私自身、お前と敵対する理由は特段ない。 それに、バックにいた組織(ギアス嚮団)のことは私も聞き及んでいる。」

 

『……』

 

「(追跡はまだなのか?) かつては肩を並べて戦った同士だ、困っているのならば言ってくれ────」

『────黙れこの女狐め────!』

「────キューエル────?」

『────貴様たちに、私の何が分かる────!』

「────お、落ち着け────」

『────貴様らはいつもそうだ! 口では“助ける”だの、“力になる”だの、“相談に乗る”などと言いながら陰では報われない努力を嘲笑い、優越感に心を躍らせる! ……しかし租界がこのような状況下であれば、多少の事故が起きても仕方がないな。』

 

「な、何の話を────」

 

 ────プツ。

 

「中佐、相手はトウキョウ租界にいると思われます! 租界内のゲフィオンディスターバーで、正確な位置は残念ながら……」

 

 通信が一方的に切られ、追跡結果を聞いたヴィレッタは考え込む。

 

「(何故今になってキューエルは連絡をしてきた? それに先ほどの言葉はどういう意味が────)」

 

 ────ガタッ!

 

「「「「「中佐────?!」」」」」

「────お前たちはこのまま潜入部隊の支援を続けろ!」

 

 ハッとして急に立ち上がり、そのまま走りながら出ていき、腰の拳銃のスライドを引っ張って装填しつつもインカムを電話に接続しようとする。

 

 ザ、ザザザザ。 ピーガガガ!

 

「(ゲフィオンディスターバー! ならば自分の足で向かうしかないか!)」

 

 ポーン♪

 

 ヴィレッタは地上へ通じるエレベーターが図書館に着いた途端、クラウチングスタートからのダッシュでクラブハウスの方向へと走る。

 

「(思い過ごしで済めばいいが!)」

 

 ……

 …

 

「さて、裏切り者の粛清と行こうか────」

「────そ、ソレイシィ卿……」

 

「ん?」

 

 暗くなった租界内を、補助外骨格のようななスーツを着込んだキューエルに先導されるかのように旧純血派の騎士たちと元部下たちのうち、若い一人が胸の奥にしまっていた問いを思わず口に出してしまう。

 

 この者たちは『クロヴィス暗殺未遂』、『オレンジ事件』、そして『ナリタ連山事変』と立て続けに醜態を晒したことでエリア11の辺境に左遷されていたのだが超合集国の日本解放宣言と過去の功績、短い間とはいえ代理執政官の時にエリア11の警備体制の見直しから治安状態が一気に向上したことと元々一人一人がそれなりに優秀な者たちばかり、そして(差はあれど)ブリタニア帝国への忠義が高いという事から、地方からトウキョウ租界に呼び戻されていた。

 

「あ……本当にその……ヌゥ中佐────」

「────ヴィレッタ・ヌゥ男爵だ、言い間違えるな貴様。

 

「……本当にヌゥ男爵とトウキョウ支部の機密情報局が、黒の騎士団と繋がっているのですか?」

 

「正確には『ゼロと繋がっている』だな。」

 

「「「「「え?!」」」」」

 

 尚、何故この者たちがキューエルの呼びかけに応じたのは単純に『元上司だった』だけではなく、キューエルが()()()()()()()の身分証明を持っていたからである。

 

 そして所属している支部は何と『本国』。

 

 無論、ギアス嚮団によって作られた偽装IDなのだがそれを知る者たちはこの場にいない。

 

「これは機密事項なのだが、ヴィレッタがもたらした情報はゼロの正体についてなのだ。」

 

 キューエルの言葉にざわめきが広がり、全員が彼の続きを待つ。

 

「ゼロは……アッシュフォード学園との関係を持っているとのことだ。 恐らくは……学生だ。」

 

「「「「「……」」」」」

 

「なぜ……『学生』と?」

 

 静まり返る中、先ほどの若い者が再び口を開ける。

 

「理由としては、ブラックリベリオン後に教師たちがほとんど総代わりしたこと。 そしてブリタニア市民の間で広まっているデマの出所もトウキョウ支部の機密情報局と判明している……これ以上は、今の君たちに話せない。 (そうだ、あのヴィレッタでさえゼロの情報だけで男爵で中佐に特進したんだ! 私だって……俺だって!)」

 

 

 ……

 …

 

 

 ドドォン……パパパパーン……

 

「始まったわね。」

 

「ええ。」

 

 先んじて暗くなった租界に侵入していたマーヤは、地面や水道管に伝って聞こえてくる砲撃と銃撃音がビルキースの装甲越しに届くと、そうつぶやくと操縦していたアンジュも同意の言葉を返す。

 

「学園で、何も起きていなければいいけれど────」

「────でもレイラたちの読みだと、『もしもの可能性』があるから私たちがそっちに向かっているのでしょう? 全く、これだから貴女は────」

 「────嫌なら私の機体から降りても良いのよ? どう? 走っていく?」

 

「私の機体を、ラクシャータさんたちが間に合わせていれば良かったのだけれど……」

 

「それはスヴェンの機体と似たような物を要求した上に色々と追加の注文したからじゃない?」

 

「く! 何たる失態!」

 

「いやいやいやいや、自業自得だからね?」

 

「それでエルたちとは連絡がつかないの?」

 

「切り替えが早いわね貴女?!」

 

「そうでもなければ神様についていけないから。」

 

「まぁ……そりゃあそうなんだけれどもさぁ? ……もういいわ。 先ほどから定期的に信号を送っているけれど返事がないわ。 ゲフィオンディスターバーの影響かしら?」

 

「貴女、バカなの? 神様が学園に置いてきた通信機器は、地下深くにある機密情報局にあるレシーバーよ? 距離もあるし、ゲフィオンディスターバー対策がされていないわけがないわ。」

 

「貴女って本当に平然と他人をけなすわね?!」

 

 ニッコリ。

 

「ありがとう♪」

 

 クワッ!

 

 「褒めてないわよ、この狂信者!」

 

 「あらやだ、発情した雌犬の遠吠えが────」

 「────ガルルルルルルルルルルルルルルルルルルル!」

*1
146話より




急展開過ぎるR2、アニメや漫画はサクサク進められるけれど文章にするとかなりカオスな上にしっちゃかめっちゃか。 (汗
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