『新手か?!』
『新型機か?!』
『赤いランスロット?』
『それと……カカシ?』
『ゲヒタバー発生装置、見っけ────って敵KMFの反応がうじゃうじゃ過ぎー!』
『ソキア、敵のKMFは気にしないで! 対空迎撃だけに注意して!』
『こんなのアリの巣じゃなくて蜂の巣にゃー!』
『地獄の仮想訓練を思い出すのよ!』
『おおお! なるほど!』
『(流石はマリーね! きっとあの時、口にしていた『来るべき戦い』が『今』なのね!)』
『怯むな!』
『数ではこっちが上だ! 囲んで────うわぁ?!』
租界のリニアカーに搭載されたゲフィオンディスターバーを守っていた暁たちの上空に現れたフロートシステム付きのランスロット・グレイル、そして見たことのないシェフィールド・アイにびっくりしつつも迎撃態勢に入るが、手に持ったバズーカや取り付けられた機銃が発射する前にランスロット・グレイルのMVSが次々と切り落とされて戦闘不能状態へと陥っていく。
『(早く! でも冷静に! かつ敵を殺さずに! あの時の感覚を思い出すんだ、オルドリン・ジヴォン!)』
『は、早い!』
『本当に同じKMFか?!』
『データにある量産機以上じゃないか!』
『撃とうと思った瞬間に避けてやがる!』
『こんなの無理じゃないかぁぁぁぁぁ?!』
『(うーん、流石はオズ。 たとえ私がウァテスシステムをフルに使って友軍を強めても、これじゃその友軍が瞬殺だにゃ~。 しかも相手を殺さずにやっているんだからどれだけの技量……って、エニアグラム卿から一本取っていたんだった。) こんなの、私でもついていくので精一杯にゃ~。 でもでも! ウァテスシステムでACOハーケンを使えば────!』
ソキアのシェフィールド・アイから合計12のACOハーケンが射出されると、それぞれが内蔵したワイヤーを使って時間差のない一斉攻撃を着弾させてリニアカーを破壊する。
『────多くのホールインワンドンピシャ攻撃が可能になるというわけサ!』
ACOハーケンの『ACO』は『
ソキアのシェフィールド・アイはこれを12個ほど搭載しており、多数の敵に対しての広範囲な攻撃を想定されているが一対一でのシナリオでは敵の死角や全方面の攻撃が可能である。
早い話が『機動的なウォリアー』シリーズ内で登場する、有線式の準サイ〇ミュ兵器の『〇ンコム』である。
『ゲフィオンディスターバーの反応、消えていくにゃー。』
『なら次に行くわよソキア!』
『オーケーオズ!』
ゲフィオンディスターバーの反応が無くなったことを確認するとグレイルとシェフィールド・アイはそのまま連結し、暁の無力化しただけでその場を後にする。
「……え?」
「暁とゲフィオンディスターバーだけを破壊した……だと?」
「ふ、ふざけるなよ! 俺たちは“眼中にない”ってか?!」
「いたぞ、黒の騎士団だ!」
「照準を合わせろ!」
「一斉射!」
「げぇ?!」
「やばい!」
「ブリタニア軍の歩兵部隊!」
「総員、銃を取って応戦! 白兵戦だ!」
「マジかぁぁぁぁぁぁぁ?!」
「パイロット訓練しか受けていないぞ?!」
「やるしかないんだ!」
暁のパイロットたちはそれぞれコックピット内から身を乗り出しながらボルト式の
……
…
『ナイトメアのコックピットを開けて、両手を首より上にあげて出てこい!』
「チィ! ゲフィオンディスターバー対策さえ、間に合っていれば!」
租界外延部に配置されたブリタニア軍の部隊はすぐその場へと駆け付けた黒の騎士団の暁部隊に包囲され、騎士たちは機能停止をしたKMFから降ろされていた。
歩兵部隊も同様に黒の騎士団のKMFによって武装解除をされ、KMF部隊に続くかのようにその場に現れた黒の騎士団の上陸部隊に身柄が拘束されていく。
『よーし! 一列に並んだよな?! せーの────!』
『────ちょっと待て玉城!』
その光景の一つでは、外延部のいわゆる『崖』部分の前に立たされたブリタニア軍を今まさに撃つような態勢を取っていた玉城機を、近くにいた仙波が止める。
『貴様、何をしている?!』
『何って見せしめだよ!』
『そんなことをする必要はない────!』
『────あるさ! こいつらをいちいち拘束してちゃ時間がねぇ!』
『なんだと?! 頭を冷やせ貴様! そのために黒の騎士団が制圧に取り掛かっている!』
『け! 俺の艦が間に合っていれば、こんな損な役割に……』
『(そんな性格だからだよ、バカ者が……ワシも子守などしたくはないというのに……)』
仙波が思い浮かべたのは作戦前に、『玉城のフォロー兼監視役を誰が務めるか会』だった。
「俺はこのイカルガを……そして杉山に吉田、南に井上たちはそれぞれ小型の浮遊艦を指揮するわけだが……」
「そうなのよねぇ~……この配置を見たら玉城のことだから、ぜっっっっっっっっったいにゴネるわよ?」
「“なんで俺だけのけ者なんだ~”辺りか?」
「毒ガスの時もそうやって騒いだ挙句、奪取に失敗しちゃったしな。」
「「「「………………………………藤堂さん、お願いします!」」」」
「「いやいやいやいや、お前/君たちで決めろよ。」」
扇たちがその近くで考え事をしていたような藤堂に声をかけると卜部と朝比奈がツッコミを入れる。
「(こういうときだけは気が合うな、この二人。)」
そしてそんな卜部と朝比奈の様子に対して仙波が内心でツッコミを入れていた。
「玉城君か。」
藤堂は腕を組み、少しの間だけ考えているようなそぶりをしてから再び口を開けた。
「…………………………方法がないこともないぞ?」
「そうなのですか中佐?!」
ぺらッ。
「ここにちょうど、『半自動人員配置図』があるのだが────」
「「「「────中佐、それってただのあみだくじですよね────?」」」」
「────『半自動人員配置図』が、あるのだが。」
「ああ、とうとう藤堂さんでさえも玉城の扱いが投げやりに……」
「無理もないだろう……玉城のヤツ、蓬莱島のそこら中の店を回ってはツケ払いにして奢っていたもんな……」
「黒の騎士団の新団員たちに人気がある上に人当たりもいい所為で、余計に質が悪いし……」
「藤堂さんや四聖剣たちも、何度も玉城を何とかしようとしているのにさほど効果はないし、強面な軍人の所為で悪者扱いされるし……一部は千葉さんの指導をご褒美と思うやつらに羨ましがられ────ああいや何でもない。」
ひそひそと扇たちが話している間、藤堂があみだくじを用意していると卜部が鼻歌を歌いだす。
そして朝比奈が歌いだした。
「思い出すは~、ジジイのこと~────♪」
「────ジジイとちゃうわ────!」
「────おっと。 仙波、玉城君のフォローを頼む。」
キリキリキリキリキリキリ!
そんな藤堂の無慈悲な言葉とあみだくじ『半自動人員配置図』の結果に、仙波は膝から崩れては項垂れながら痛みが走る胃の上に手を置いた。
「ウッ?! 胃、胃が……」
仙波も胃痛組にカモーンカモーン。
……
…
『ナナリー、クロヴィス。 ゼロが現れた。』
「ゼロが…… (お兄様が、ここに……)」
「ゼロ…… (私から、足を奪ったテロリストが来たか!)」
コーネリアからの通信に、政庁中にいたナナリーたちはそれぞれ別々の事を思った。
『安心しろ二人とも。 私とギルフォード、グラストンナイツにグリンダ騎士団がいる。
「グリンダ騎士団……というと、エニアグラム卿ですね。 コーネリアお姉さまの、友人の。」
『ああ────』
「────確か、エニアグラム卿に振り回されてお姉さまは良く軍学校時代にため息をされていたという────」
『────ギル、貴様────!』
『────だだだだだ断じて私ではありません姫様────!』
『────では誰が────?!』
「────あ。 エニアグラム卿ご本人からお話を伺いしました。」
『………………………………』
「えっと……ダメでしたか?」
ナナリーは首を傾げ、画面に映ったコーネリアは固まり、クロヴィスはプルプルと肩を震えさせて笑うことを堪えていた。
『………………………………ゴホン! ま、まぁとにかくだ! このような状況で、彼女以上に頼もしい人を私は知らない。 守りは万全に近いと見て良いだろう。 危惧することと言えば……』
「コーネリアお姉さま?」
『いや。 そこの文官……ローマイヤと言ったか? ナナリーたちのことを頼んだぞ。』
「……イエス、ユア・ハイネス……」
プツン。
コーネリアからの通信が切れると、ローマイヤはナナリーたちに振り返る。
「実は、宰相閣下から命令書を預かっております。」
「兄上から?」
「ローマイヤさん、命令書とは?」
ローマイヤは一瞬戸惑うような仕草をして目を泳がせるが、間を開けながらも言葉を続けた。
「……“脱出の準備をせよ”、とのことです。」
「なんだと?!」
「ですが、それでは……」
「あくまでも備えだと書いてあります。 万が一の場合、お二人が脱出しなければここにいる兵士たちは動きたくとも動けません。」
「確認だが……あくまでも、備えなのだなローマイヤ?」
「はい。」
「……ナナリー、ここはその準備だけでも進めた方が良いかもしれない。 脱出しろと兄上が言うのなら、何か考えがあるはずだ。」
「クロヴィスお兄様……逆にそれで兵士や市民たちの間で更なる不安が広がりませんか?」
「何、私が独断で始めたことにすれば問題ない────」
「────え?! ですがそのような事をすれば────」
「────既に私は去年の事で評価は落ちている。 ここは兄である私に任せてくれ。」
「……わかりました。 ですが万が一の場合、クロヴィスお兄様たちは脱出してください。 私はここに残ります。」
「んな?! ですが、ナナリー様は総督────!」
「────ローマイヤさんも、その時が来れば貴女も脱出してください。」
クロヴィスは唖然とし、ローマイヤは冷や汗を掻いた。
「(ば、バカな! ここに残れば、どうなってしまうかは容易に想像ができるはず! いやそれ以前に、宰相閣下による緊急時の対応に背くことに……なんとしてでも、この命だけは完遂させねば私が────!)」
……
…
騒がしいトウキョウ租界とは対照的に、ルルーシュは蜃気楼をゆっくりとできるだけ租界の大部分がレーダーに映るよう浮遊させていた。
「(よし。 租界の孤立は順調に進んでいる。 要塞化は……グリンダ騎士団の横やりで上手くいっていないか。 ブリタニア政庁近くにあるこの識別コードは確かグランベリー。 そしてマリーベルから指揮権を奪ったのはナイトオブナイン……手強いな、ノネット・エニアグラム。 流石は母さんの、『閃光の再来』と世間から呼ばれるだけはある。 いや、この場合『短期決戦の狙いがトウキョウと見抜き、これほどの戦力を事前に用意していたシュナイゼル』と言えばいいのか────)」
ピー!
「────来たか、ナイトオブラウンズ!」
そんな蜃気楼の中でけたたましい音が鳴り響くとルルーシュはタッチパネル式のキーボードで拡散構造相転移砲を使って飛来してきたハドロンスピアーを相殺する。
「この反応、ナイトオブスリーのジノか!」
『流石はゼロ! 中華連邦で見せたそのレーザーでハドロンスピアーの軌道を曲げるとはね!』
「(ちょうど良い、生徒会の鬱憤含めて────)」
『────ゼロ────!』
「────やはりお前も来たかスザク! しかし、お前たちの相手をするのは俺ではない! カレン! スバル!」
ドゥ!
『おっと?!』
『この攻撃は!』
遠くから飛んできた、レーザーのように圧縮された二つの輻射波動をジノのトリスタンとスザクのランスロットは躱す。
『スバル!』
『ああ、外したな。』
リア・ファルの格納庫内では他のKMFが発艦したにもかかわらず、最後の最後まで出撃しなかった蒼天を気遣うかのようにカレンが言葉をかけている横でスバルは蒼天を調整していた。
『蒼天、大丈夫?』
『あともう少しで誤差修正が終わる。 それよりもオレを待っていて良かったのかカレン?』
『え? う、うん……ダメだった?』
『いや、カレンがいると安心できる。』
『え?!』
『ん?』
『そ、そっか……(やっぱりルルーシュの言う通りなのかな?)』
カレンがここで思い浮かべたのは、トウキョウ租界に進軍するためイカルガ艦隊が潜水する前の出来事だった。
……
…
「え? 今、なんて?」
リア・ファルに来て東京の上陸作戦をレイラたちと話し終えたゼロがイカルガに戻ろうとして付いて行こうとしたカレンがガランとした格納庫内でキョトンとしていた。
「カレン、君にはイカルガではなくリア・ファルに残ってくれ。」
「……それって、何かの隠語?」
「いや、言葉通りの意味だ……強いて言うのならば、君にはできるだけスバルの近くにいることを頼みたい。」
「え。」
「ん? どうした?」
「いや、その、ええええっと……いきなりどうしたの? らしくないけど? ……もしかして影武者?」
ジトッ。
「ウッ……君の中での私の評価はいったい────ゴホン! とにかくだ! 君には、できればスバルの『手綱』となってほしい。」
「スバルの手綱?」
「ああ。 君もすでに知っているとは思うが、彼は群を抜いてすこぶる優秀な人間だ。 言うなれば……そうだな、野生の駿馬のようだ。 彼はどこまで駆けていき、優秀過ぎるが故に一人で先走ってしまいがちだ。 その上、責任感が強すぎて全てを自分で片付けようとする。 その走った先に待っているのが平原や荒野に森……崖であっても、な。」
「が、『崖』って────」
「────つまりはその、なんだ。 『見ていて危うい』のだ、彼は……って何だ、その顔は?」
「うんにゃ~? アンタがそんなことを言うのがちょっと珍しくて────」
「────茶化すな、カレン。 私自身、そんな自分にまだ驚いているのだ。」
「でも、ゼロの言っていることは……なんとなく分かるかな……」
「(何だその顔は……『憂い』? てっきり喜ぶところかと思っていたが、何故だ?) そうか。 ならば話が早い。 レイラやサエコたちは気が付いている様子だが……レイラは恩があるからか直接言わず、サエコは自ら頑張って活躍してスバルの負担を下げようとしている。」
「うん……あの二人ってすごいよね。 私なんかより────」
「────しかしだ。 逆に彼女たちの行動が、スバルをさらに追い詰めているかのように伺える。」
「え?」
「さっきも言ったが、今の彼は野生の駿馬。 だからこそ君に頼みたい。 君は彼に対して遠慮がない口が利けるし、
「……その『手綱』が私? ……いいのかな? それに……」
「ん? すまない、今のを聞き取れなかった。 なんて────?」
「────ううううううう、ううん! 何でもない! 任せて! 任されちゃいました! あはははははは!」
「そ、そうか。」
一瞬だけ今までの人生の中でも見たこともないほどに曇った顔をカレンがしては笑顔に急変したことに、ルルーシュは内心引いていたとここで追記する。
……
…
「(“言葉を素直に受け入れている”、か……それもやっぱり、私のせいだよね────?)」
────バシン!
そして現在、ゼロとの会話を思い出していたカレンは憂鬱な気持ちを無理やり吹き飛ばすかのように頬を両手で叩いた。
「ええい! らしくない! こんなんじゃダメでしょうが紅月カレン! しっかりする! うん! 切り替えよう!」
『カレン────』
「────↑ほやぁぁぁぁぁ?! ななななな何、スバル?」
『あー、カレンはどっちを相手に────?』
「────鳥みたいな奴────!」
『────そうか、じゃあ帰ったら久しぶりに照り焼きを作ろう。 レモン入り炭酸水付きで。』
パァァァ。
「え?! やった! んじゃあ────!」
『────ああ────』
「────とっとと────!」
『「────終わらせよう/終わらせる!」』
『流石は紅蓮タイプというべきかな────!』
『────ジノ!
『────は?』
その意味をジノは次の瞬間知ることとなる。
どちらからともなく、形状が非常に似た青の蒼天・ムラクモ式改と赤の紅蓮・ムラクモ式がほぼ同時に背中に付いたフロートシステムと電力駆動プラズマ推力モーターハイブリッド式ブースターの出力を上げてランスロットとトリスタンに急接近し、その速度はKMFのセンサー類が敵の急接近に警報を鳴り、騎乗者の耳に届くより早かった。
いつもは軽口を叩いたり、戦いと言えども余裕の笑みを絶やさないジノであったがこれにはさすがの彼も真剣な表情になりながらフォートレスモードのトリスタンをより早く前進させて、蒼天と紅蓮が反応できる前に素早く人型形態に変形しようとする。
だが蒼天と紅蓮は予測していたかのように、同時にバックパックから無数のミサイルを後方へと放っていた。
ミサイルの一つ一つは小型な物なので大した威力ではないのをジノは頭では理解していたのだが、一気に周りから警報が鳴る上にモニター中が『敵』を示す信号だらけになれば『受け』より『避ける』を選んでしまうのは『生物』としての本能なので仕方がないだろう。
ドドゥ!
次に蒼天が圧縮したロングレンジの輻射波動が放たれたことで既に回避運動に入っていたランスロットに、時間差で紅蓮が放った輻射波動が掠る。
『じゃあ行ってきます────!』
『────いってらっしゃい。』
ランスロットとトリスタンがそれぞれ別々の方向へと飛んでいくと、分断された二機を追うかのように息の合った蒼天と紅蓮がその場で分かれる。
『私が相手だよ、鳥野郎!』
『紅蓮のパイロットはやっぱり女、それも強気! 好みのタイプだ────』
『────んな?! お、お、お、お、お前! お前こそ、軽そうなタイプの男! 大っっっっっっっ嫌い!』
奇しくも原作とはちょっとだけ違う、カレンとジノのご対面となった。
『この動き! (まさか君は?!)』
『枢木スザク、か。 (よっしゃー! フレイヤ搭載していないっぽいぞ! 『事前にニー
『待ってくれ! 僕は────!』
『────そこを退かないのなら押しとおる! (いやっほーい! フレイヤのない東京決戦じゃーい! 勝ったなこれは。 気がラック楽だクマー♪)』
……
…
「よし、これでスザクたちはクリアした。 あとは────」
ルルーシュは蜃気楼のレーダー範囲を拡大し、政庁から一直線に自分へと向かってきていたKMF信号を見て、メインカメラをズームしてフロートシステムを全開にして近づいてくるモルドレッドを見てはニヤリと笑みを浮かべる。
「────アーニャか。 確かにその火力は危険だが、俺のKMFを即座に撃たなかったのは間違いだったな……ベニオ班!」
「アレがゼロの機体……(スザクたちを警戒してまだ気が付いていない、今のうちに接近して────)」
────ピー!
アラート音にアーニャはモルドレッドのブレイズルミナスを展開する準備をするが、敵がただの暁であること、ゼロに気付かれる可能性が上がること、そしてこれから行う『ゼロが苦手と思われる至近距離からの強襲』から操縦桿を操る指の動きを止めた。
「(モルドレッドの装甲なら問題ない。 それよりもゼロの機体に取り付いてシュタルク・ハドロンを────)」
────ピピー!
「真上?! (しかも近い!)」
『『どおおおりゃあああああ!!!』』
ギィィィィィガリガリガリガリガリガリビキビキビキビキビキビキビキ!!!
上からの反応に今度こそアーニャはブレイズルミナスを展開させるが、遥か上空に出来るだけ高度を上げてからフロートシステムからエナジーを切り離し、落下していたベニオの紅鬼灯可翔式とアヤノのアレクサンダ02改がそれぞれ長刀状のアマルガム製バスタードソードを突き出し、耳をつんざくような音と共にブレイズルミナスがひび割れていく。
『硬い! 固ゆで卵どころか、丸い岩石みたいに硬い────』
『────私たちのビーショップロングレイの切れ味を特と味わいな────!』
『────生意気!』
……
…
『ゼットランド! 敵陣の左翼へかく乱砲撃の斉射三連! グランベリーは政庁の防衛装置とグラストンナイツたちと共に
『『イエス、マイロード!』』
ノネットの命令により政庁の周りから外部へと飛ぶ弾幕が厚くなっていく。
『(戦略上、ゲフィオンディスターバーさえオズたちが破壊してくれれば一気に押し返せる! はず!)』
『(ここにマリーカさんが到着する前に、戦況がブリタニア側に優位であればいいが!)』
ティンクとレオンハルトたちがそう考えている間、ノネットと言えば────
「(────全く、マクロの視点じゃ全く判別ができない! ジノたちがイレギュラーな伏兵やゼロを探しに出て行ってはいるが……少年が出ていると仮定すれば────)────よし!
『────何ですかエニアグラム卿────?!』
「────戻ってきた早々に悪いけれど私も出て敵を引っ掻き回す! 援護しな!」
「「「「「(……“コーちゃん”?)」」」」」
コーネリアのあだ名である“コーちゃん”に頭をひねりそうだったブリタニアの者たちであったが、大軍の黒の騎士団による猛攻に対して防衛陣を張るのに必死だったのでそれも一瞬だけであった。
…………
………
……
…
『シンバシ、スガモ、イケブクロのゲフィオンディスターバーを発見。 グリンダ騎士団が沈黙させるとのことです。』
トウキョウ租界から千葉を挟んだ、太平洋にいるアヴァロン艦隊に上記の報告がスピーカーから流れる。
「これで政庁だけでなく、租界の防衛機能も徐々に復活する。」
「戦力的に逆転しますね、殿下。」
「そうだね、そしてグラウサム・ヴァルキリエ隊の
「ッ……無論です、殿下。」
「それとエリア24に付けていた『目』からの報告は?」
「途絶えたままです。」
椅子に座っていたシュナイゼルは笑みを崩さずに目を閉じて、僅かなため息を出す。
「(ああ、全てが想定内だ……盤石だ……盤石
「(今の殿下から『覇気』に似た何かを感じる……あの殿下が何かに期待している? もしや、
あのブラッドリー卿に?)」
……
…
「ヴィンセントの整備点検を急がせろ!」
「トウキョウ租界はもう見えてきたぞ!」
「レーダーと肉眼で周りに注意しろ! 敵が気付いてもおかしくはない距離だ!」
「明かりが消えているな……ゲフィオンディスターバーか。」
紫をメインカラーにしたカールレオン級、『スレイプニル』のブリッジは慌ただしかったが艦長であるルキアーノは対照的に落ち着いたまま独り言をこぼしていた。
「展開が予想より早いのは、恐らく例のアトミックパワーやジノたち、そしてエニアグラム卿が連れてきたグリンダ騎士団だろうな……」
「(グリンダ騎士団……) レオンが、あそこに……」
同じくブリッジのスクリーン越しからでも伺える激しい戦いの閃光等を見たマリーカが零した上記の小声がルキアーノの耳に届くと、彼はツカツカとした足取りでマリーカに迫る。
「ソレイシィ卿。
「あ、え?」
「“何を思っている”、と聞いている。」
「わ、私は……ッ。」
マリーカはブリッジにいたオペレーターと他のヴァルキリエ隊全員が感情の籠っていない視線を向けていたことに、彼女はびくりと肩を思わず震わせた。
「言い当ててやろう。 君は今、婚約者であるレオンハルト・シュタイナーの身の安否を恋慕によって思い浮かべていただろう? 戦場は、そのような気持ちが介在して良い場所ではない。」
「わ、私だってヴァルキリエ隊の一人です! そのような気持ち、切り替えて見せます!」
「いいや。 今の卿はシュタイナー卿が心配で堪らない雌の顔をしている。 そのような卿が戦場に出れば、犬死するだけだ。 この艦に、卿は残れ。」
「わ、私は……いいえ! 噂が全く宛にならないほどのブラッドリー卿や、先輩たちが戦場に行くのを黙って見ていられません!」
「……卿は……『無垢』だな。」
「……え?」
今までマリーカが見たことのない、苦虫を食いつぶしたかのような顔をするルキアーノに彼女は思わず唖然とする。
だがそれも一瞬だけのことで次の瞬間、ルキアーノは真剣な表情と目をマリーカに向け、彼女は思わず背筋をピンと伸ばしてしまう。
「ソレイシィ卿、卿にヴァルキリエ隊隊長として命ずる! 卿はヴィンセントで先行し、グリンダ騎士団と合流次第エニアグラム卿の指揮下に入れ!」
「は、はい! ……え?」
「はっきりと言わなければならないか? 戦場は命の取り合い、奪い合い、廉価特売で売り買いがされる冷酷な市場だ。 卿はここにいる資格と覚悟がない!」
「あ……う……」
「聞こえなかったのかソレイシィ卿? それとも、命令違反で牢に入れられるか?」
「い……イエス……マイロード……」
ルキアーノの冷たい視線と言葉にたじろぐマリーカであったが、今まで感じたことのない有無を言わせない圧力に彼女は頷き、ふらふらとしながらも重い足取りでブリッジから出ていく。
ブリッジ内に気まずい空気は────
「……ブラッドリー卿……
お見事ですわ。」
────流れていなかった。
ヴァルキリエ隊でも恐らく最古参のリーライナの言葉にルキアーノが発していた冷酷な空気は消え、年相応の青年の物へと変わる。
「諸君らから見たソレイシィ卿の評価に私も同意している。 これから我々が望んで行くのは血と鋼の匂いが充満する、圧倒的な虐殺と破壊の道だ。 リーライナたちから見た評価は?」
「この数か月間、様子を隊員たちと見ていましたが……我々が行く道に、彼女が賛同することはないと意見が一致していますわ。」
「……ソレイシィ卿は戦に身を置くべきではないと私も思ったからな。」
ルキアーノはそう言いながらブリッジを歩き、黒い煙が黙々と上がるトウキョウ租界の画像を見ながら悪質な笑みを浮かべていく。
「さて……始めるか、『フィンブルヴェト』とやらを。」
フォールアウトロンドン、MODなのにクオリティ高くて面白すぎ。 |д゚)