小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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カオスな第二東京決戦、続行中。

お盆休みに感謝。


第280話 第二次東京決戦4

 ドォン……ドドォォォン……

 パパン……パパパパパパパン……

 

「副会長~、じゃなくて会長~! 中等部の子たちの避難確認、終わった!」

「オーケーだシャーリー! ルルーシュの方は?!」

「教師と他の同級生たちもほとんど地下シェルターに入ったようですよ。」

「スゲェじゃねぇかルルーシュ! 流石体育の補習に真面目に出始めただけはある!」

 

 ギクッ。

 

「ああ、そうだな。」

「でもなんかいつもより遅くね?」

「ちょ、長距離はまだ慣れていないんだ。 (まさか私まで巻き添えを食らうとは! “サヨコ(咲世子)が代わりに出ている”、なぞ口に出せるか!)」

 

 遠くから銃撃音と爆音が微かにだが聞こえてきたことで、電気が停止したアッシュフォード学園を、バッテリー式の懐中電灯を持った生徒会員と教師たちが協力して学園内に残った初等部と中等部と共に大部分がシェルターに避難したことを、同じく懐中電灯を持ったシャーリーと汗だくのルルーシュ(に偽装中のエル)からの報告を聞いたリヴァルは満足そうに頷き、近くにいたミレイに振り返る。

 

「会長────じゃなくて先生、次はどう……ミレイ先生?」

 

 だがリヴァルが振り向いた先では難しそうな顔をしながら顔色を悪くしたミレイがブツブツと独り言を口にしていたことでリヴァルは一気に不安になっていく。

 

 「おかしい……何かがおかしい……前にもこんなようなことがあったような気がする……あの時はロロが……ロロは……ロロは?」

 

「どうしたんですか、ミレイ先生?」

 

「え?! う、ううん!! 何でもない! ちょ、ちょっと去年の事がね……」

 

「あー、あの時はブリタニア軍とか来て大変でしたもんねー……」

 

「ですがあの時と違って、ブリタニア軍も黒の騎士団もここに来る理由が無くなっているはずですからきっと大丈夫ですよ。」

 

「う~ん……ルルーシュの言う通りかな。」

 

「でも今回は()()()()()が居なくて────」

「「────“()()()()()” ?」」

 

「ッ?!」

 

 シャーリーが口にした名前に、リヴァルとミレイの二人がキョトンとした顔をするとエルはギョッとする。

 

「あれ? う~ん……」

「シャーリー、お前……勘違いしているんじゃね?」

「そう……かな?」

「そうだよ、『ララ』じゃなくて『ロロ』。 『ララ』だと女の子っぽいじゃねぇか……確かにアイツ、『異性だったら良かったのにベストファイブ』の上位ランカーだけれどさ。」

「う~ん……」

 

 シャーリー自身も頭を傾げてキョトンとしていると、リヴァルのコントによってとシャーリーのハテナマークがその場を埋め尽くしていく。

 

「…… (マズイ。)」

 

 その中で、エルは無表情を維持しつつ内心で冷や汗を掻いていた。

 

「(まさかこのタイミングで皇帝のギアスが解け始めるとは……いや落ち着け、これも想定できたはずだ。 皇帝が得たギアスは使いやすさの代償として強制力が弱くなっている仮説はマッドがしていた。 いざとなれば、私のジ・アイスで────)────ん?」

 

 エルは暗いクラブハウスのホールの中で、校庭の向こう側に何らかの違和感を感じ、目を向けると、月光によってキラリと光るものが目に留まった。

 

「ッ! 伏せろぉぉぉ────!」

「「────え────?」」

「────きゃ?!」

 

 パリン、バス! パリパリパリンバスバスバス!

 

 エルが叫びながら近くのシャーリーを抱きしめながら無理やり地面に伏せさせると、リヴァルとミレイが目を点にさせた次の瞬間に窓ガラスが割れていく音と共に何かが壁に抉り込んでいく。

 

「どわわわわわ?!」

「う?! (前にも、こんなことが……でもあの時は……)」

「なになになになに?!」

 

 リヴァルは尻餅をつき、ミレイは前のめりにしゃがむと頭の痛みに顔を歪ませ、シャーリーは目を白黒させながら急展開に目を回していく。

 

「(チィ、直接クラブハウスを攻撃するとは! しかし理由は何だ? もしや私の事がブリタニアにバレた? それならば私が一人だったところを攻撃すれば済むのにこれは大雑把すぎる! ならば────)────皆はクラブハウスの奥に行け!」

 

 エルは床に伏せたことで落ちてスイッチが切れた自分とシャーリーの懐中電灯を持つとそのまま立ち上がりながら電源を入れるとそのままクラブハウスのキッチンへと走る。

 

 バァン!

 

 するとクラブハウスの玄関ドアが乱暴に開け放たれ、ドカドカとした重いブーツの音をさせながら特殊部隊のような服装をした者たちが銃を構えつつなだれ込む。

 

()()()()だ、探せ!」

()()()()()()以外は無視しろ!」

「いたか?!」

「……こちら突入班、対象はキッチンに入ったと思われる。」

 

 一人が未だにゆっくりと閉まっていくキッチンへと続くドアを見つけてインカムに報告すると、入って来た者たちの半分がすぐにUターンしてクラブハウスから出ていき、残っていた者たちは慎重にキッチンへと近づいていく。

 

 カチャ、ピン!

 

 何人かが腰のベルトから下げていた手榴弾のピンを抜き、時間差を置いてそれらを投げ込むと未だに惚けながら床に伏せていたシャーリーたちは半ば本能的に耳を両手で塞ぐ。

 

 ババババァン!

 

 まるで夜が一瞬だけ真っ昼間に変わったような、あるいは目を焼き付けるような発光の直後に鼓膜が破れると錯覚させる轟音が連続でシャーリーたちを襲い、特殊部隊のような者たちは彼女たちを無視してキッチンの中へと入る。

 

『リィィィン』と、真夏のセミよりけたたましい耳鳴りだけが続く中でシャーリーたちが次に見るのは不可解な場面だった。

 

「────!」

「────!!!」

「────?!」

 

 キッチンに入って間もなく次々とマズルフラッシュが見えたと思いきや、今度は兵士たちが慌てて何かを叫びながらキッチンからすぐに姿を現す。

 

 目につくような白い霧が彼らを追う景色に全員、まるで異常気象をモチーフにしたパニック映画にでも出てくるような慌てぶりで持っていた銃を手放したりして身軽になるが間に合わず、霧に追いつかれていく最後尾の者から次第に動きがピタリと止まっていく。

 

 霧が広がるにつれて床、椅子、壁などが白いフィルムに覆われていき、この異様な景色に肝が冷えたと思っていたシャーリーたちは実際に辺りが寒くなっていたことと、霧の広がりが止まって拡散していく中でキッチンの奥から身だしなみが何一つ乱れていないエルの姿に体がさらに震えだす。

 

「……ケガはないか────?」

「────誰だお前!」

 

 耳鳴りがだんだんと消えていくと“ルルーシュ(エル)” の言葉をリヴァルが遮りながらガタガタと震える足のまま自分をミレイたちとの間に立ちはだかる。

 

「……誰って────」

「────黒の騎士団の関係者ってのは聞いた! そもそもお前、ルルーシュじゃないよな!」

 

「……ふ。」

 

「(あ、あれ?)」

 

 リヴァルの問いに“ルルーシュ(エル)” が目を伏せた瞬間、シャーリーは『寂しい』、あるいは『悲しい』といった雰囲気を感じ取って戸惑う。

 

「あいつらに何をした!」

 

「“何をした”って……そんなことはどうでも良いだろ? こいつらの目的は恐らく、()だ。お前たちはシェルターに入ってろ。」

 

 エルはそれ以上何も言わず、リヴァルたちを素通りして、ちらりと呆けたシャーリーを横目で見た。

 

「あ……」

 

 バタン。

 

 エルはクラブハウスから出ながらのドアを閉め、ポケットから出したゴツゴツとした()()()()()時計についているボタンを押しつつ『ジ・アイス』を展開させると彼を中心に辺りが白くなっていき、時計がギチギチと不穏な音を立て、針が動き出す。

 

「(さて……)」

 

 エルはそのまま歩き出すとパキパキと乾いた、凍り付いた地面を踏む彼の足音が響く。

 

 パパパパ、キキキキキィィィィン!!!

 

 銃撃音が加わり、弾丸が()()に当たって弾かれる音とそれ以上に耳に来る音が響くとエルの姿が消える。

 

「対象を見失った────!」

「────消えた────?!」

「────どこだ! どこに────?!」

 

 茂みの中にいた特殊部隊のような兵士たちは突然姿を消したエルに思わず口を開け、周りをキョロキョロと見ていると、口の奥からせりあがってくる鉄の味をした液体に溺れる感覚と喉を襲うズキズキとした痛みに思わず手に持っていた銃を手放し、いつの間にか喉に空いた傷口から流れ出る血の止血を試みる。

 

ガブォエェェェェェ?!

ガ?! ガガガガ?!

ご! ゴポポ?!

 

 どこからどう見ても致命傷なのだが、当人たちはあまりのパニックにそこまでの理性は残ってないだろう。

 

 むしろ『理解不能な致命傷を負った時はパニックに陥るな』などどれだけ訓練しても、『人間』という自己保身的な生物である時点で無理だろう。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「(よし、これで狙撃手組の三人は排除できた。 )」

 

 今まさに最後の足掻きで延命しようとする兵士たちからエルは目を離し、木々の中で身を潜めていた彼は残りの敵を確認しながらポケットから時計を見る。

 

「(“時間”は多めにあるが、“長さ”が分からない。 とあらば────)」

 

 エルは時計をポケットに戻してから隠れることを止めて出てくると彼を中心に周りが再び白くなっていき、温度変化によって葉っぱや草にできた水滴などが凍っていく。

 

「(────目立ち、おびき出して、粉砕するのみ!) さぁ来い、犬畜生ども!」

 

 パパパパ、キキキキキィィィィン!!!

 

 エルの無防備な姿、あるいは挑発的な言葉に潜んでいた兵士たちの何人かが発砲するがまたも弾丸が弾かれていく音が響き、窮屈なクラブハウス内と違って見えるようになった曳光弾により弾丸がエルの一定距離離れた空中で止まっていく様に兵士たちはざわめき始めた。

 

「なんだ?!」

「弾が逸れていく?」

「“黒の騎士団が人体実験のラボを襲った”っていう噂は本当だったのか?!」

「この化け物が!」

 

「フ、 この程度で私を殺そうとするか! 愚策! あまりにも愚策! 」

 

「くらえ!」

 

 ボシュ! ドォォォォン!

 

 近くの建物の二階からロケットが発射され、エルの立っていた場所に着弾して爆発する。

 

「やったか────うわ?!」

「な、なんだ?!」

「あ、足が! 凍って?!」

 

 ロケットを撃ち出した小隊の各々はもくもくと着弾点から煙が上がっている場所を見ていると急に下から襲ってくる寒気に視線を移すと、床ごと彼らの体と内蔵が急激に────それも感覚が追いつかない速度で凍り付き、そのまま絶命する。

 

「(これでさらに三人!) 私はもとより『滅び』を与える『魔王』の役割(ロール)を持ってここにいる! さぁ、寂々たる夜に恐怖に満ちた悲鳴の喝采を上げろ犬ども! ハハハハハ!!!」

 

 ……

 …

 

 パパパ! パパパパパパパ!!!

 

 呆けながらエルのアドバイスを取らずに姿を追ってクラブハウスの中から見ていたリヴァルたちはほどなくして上記の一連を見てはお互いを見る。

 

 そして先に思考が回復したのは意外にもリヴァルだった。

 

「な、なぁ逃げようぜ?」

 

「「……」」

 

「こんな、現実にあり得ないことが起きてるところに俺たちは関わるべきじゃないと思うんだが……」

 

「ねぇ? 二人は身に覚えがないかしら?」

 

「“身に覚え”って……そんな……わけ……え?」

 

 ミレイにそう尋ねられたリヴァルは言葉を続けようとしたが、彼女の言葉によって自分自身の胸奥にあった()()()に注目を向けると次第にその()()()の存在が増していく。

 

「あれ……え? ちょっと待て……え? だって……ルルーシュには兄弟が……兄妹が……兄妹で?」

 

 眉間にしわを寄せては次第に自分の言葉に自信を無くしていくリヴァルの横にいたシャーリーは立ち上がり、先ほどキッチンから逃げ出だそうとして物言わぬ氷の彫刻と化した兵士が慌てるあまりに捨てた拳銃を手に取り、クラブハウスから出ていく。

 

「「シャーリー?!」」

 

「(()()()()()! ()()()()()()()()()()()()?! あの人は()()! ()()の双子で、きっと同じ名前のロロのお兄ちゃん! ……だと思う────)」

「────うお?!」

 

 ドン!

 

「しゃ、シャーリー?!」

「ヴィレッタ先生?!」

 

 シャーリーが特殊部隊の亡骸を辿り、角を曲がると同じく角を曲がろうとしたヴィレッタとぶつかる。

 

「「………………」」

 

 二人はお互いの姿────特に拳銃を手に持っていることに視線を送る。

 

「……シャーリー、お前────」

「────ヴィレッタ先生は、()()()()()?」

 

「ッ……ああ。」

 

 ヴィレッタの答えにシャーリーの緊張が少しほぐれ、表情がホッとした。

 

「どうせ“ジッとしていろ”と言っても付いてくるんだろ?」

 

「う、うん……」

 

「だろ?」

 

「じゃあ、私は何をすればいい?」

 

「私から離れるな。 それと拳銃はこれ見よがしに持たずセーフティ……引き金の上にある小さなレバーを下にして制服の懐ポケットに入れておけ。」

 

「え? で、でも────」

「────『銃』を『所持』し、『見慣れない人』なぞ問答無用で撃たれる対象だ。 その何かをしたい気持ちは分かるが、一歩引いたところにいてくれ。」

 

「そ、そっか……うん、そうだよね!」

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

『オイお前たち、もっと下がれ!』

『取り付きさえすれば!』

 

 ザン!

 

『うわぁ?!』

『早い!』

 

「脆弱者が前に出てくるな!」

 

 未だに激しい攻防戦が繰り広げられている政庁付近で、コーネリアの指揮官型ヴィンセントが持っていたランス型MVSが、焦りから先走って突入を試みた暁の腰を貫き、そのままランスに串刺しになった元暁の残骸を横へと薙ぎ払って、近くの黒の騎士団機に当てる。

 

 ガァン! ボシュシュ!

 

 大破した二機の暁に備わっているモジュール式脱出装置が自動で作動し、圧縮空気ポンプによってコックピットが機体から切り離され、今では入手が容易になったことで出番が減少した化学ロケットエンジンがパイロットたちを戦域から離脱させる。

 

『姫様、こちら側にも租界の電力が戻っていくことで気が急いている者たちが出てきています。』

 

 コーネリアが戦況を再度把握している間、別の場所にいるギルフォードから通信が入ってくる。

 

「本国からの者たちか。」

 

『はい。』

 

「チッ。 戦場を知らない若い奴らめ。」

 

『姫様?』

 

「いや。 引き続き、奴らに政庁の守りに徹するよう気を引き締めさせろ。 事前に避難をしているとはいえ租界内には多くの民間人が残っている。 彼らを放置するわけにはいかない、そうであろう、我が騎士ギルフォードよ?!」

 

 『イエス、ユアハイネス!』

 

 コーネリアにしては珍しい、隠す気もなかった舌打ちに辛らつな言葉にギルフォードが不安そうな声で話しかけるとコーネリアは頭を切り替えて指示を再度強調すると今にもはち切れんばかりに存在しない犬耳と尻尾を動かしそうなほど大変嬉しそうなギルフォードの返事が返ってくる。

 

「フグっ。」

 

 余談だがそれを想像したコーネリアは吹き出しそうになり、笑い声を押し殺したそうな。

 

 

 なお今この時点で本来ならば黒の騎士団には大した戦力も残っていなかった。

 カレンと紅蓮は奪われ、藤堂と連携もとれる上に個々が優秀な四聖剣も半分が逝去していたなど、大幅な弱体化をしていた。

 だが色々と違ったことでブリタニア側は原作以上に本国などから大勢の兵士をエリア11に招集していた。

 

 無論、この状態では国境の守りも弱体化しかねないため、シュナイゼルは裏で情報操作などを行い、なるべく戦力の低下を防ごうとしたが、帝国もまた近年、次々と他国を植民地化していたため、治安維持のため軍部の部隊を次々と配置せざるを得なかった。

 

 これにより、ブリタニア帝国で足が軽く、すぐに命令一つで動かせる兵士たちはほぼ新兵同然で、実戦経験がなく、新型の機能に振り回されながらも功績を挙げる絶好の機会を待つ騎士たちが多数存在することとなっていた。

 

 一応同じ条件が合うのはコードギアス一期では皇族であるコーネリアの親衛隊と彼女の直属の部下であるダールトン将軍が保有するグラストンナイツ、そしてR2では同じく皇族であるマリーベルと彼女のグリンダ騎士団等は『異例』と見て良いだろう。

 

 これが原作で見たゼロや黒の騎士団たちが対峙した『無様なブリタニア軍』の理由と正体であると思われる。

 

「(優秀で自重が出来る兵士と指揮官が少なすぎる! 今はギルフォードとグラストンナイツが頑張っているが、『租界の守りが優勢』と明らかになれば無用な深追いと迎撃が始まってしまう! まだか小僧?!)」

 

 ……

 …

 

「……」

 

 激しい外部とは違い、静寂な政庁の中をレドは一人で歩いていた。

 

 彼が歩いている『そこ』は本来、如何な理由があろうと何人たりとも護衛(監視)付きでなければ自由に歩き回れない場所である。

 

「(『帝国の頂点に立つ皇帝陛下と、その次の立場にとなる()()以外は』、になるが。)

 

 レドはそんなことを考えながら、自分の姿をしっかりと捉えているはずの監視カメラを見る。

 

「(まさかコーネリア殿下がここまで手を回していたとは……やはりオレの事もまぐれではなく、読んでいたのか。)」

 

 レドはそのまま歩き、頑丈なドアの前で機密情報局のIDカードを出し、ドアの横にあるスロットにそれを差し込む。

 

 ピー、ガコガコガコガコガコガコォン。

 

 時間差で重たい音を立ててロックが解除され、ドアが開く。レドは前に足を踏み────

 

「なんだ……これは?」

 

 ────出せずに、自分の目の前に広がる光景に戸惑っていた。

 

「(これが、本当に『罠』なのか? こんな()()な光を放つ物が……いや、コーネリア殿下の言葉に従ってここまで来たんだ。 間違いはないはずだ。) ハァ……オレは工作員であって解体屋じゃないんだが……」

 

 ……

 …

 

「こちら警備室、です。 定時報告、異常なしです。」

 

『よし、分かった。 引き続き連絡を怠るな、いつ敵が混乱に乗じて侵入を試みるかわからないからな。』

 

 ギリッ。

 

「了解、です。」

 

 プツン。

 

「アハハ! “いつ敵が侵入を~”だなんてウケる~!♡」

 

「クッ!」

 

 憲兵が奥歯をかみしめながら答え、本部との通信が切れると、後ろに立っている少女────クララをにらむ。

 

 他の者たちもギシギシと歯を噛み締める音を出しながら、それぞれ職務に励んでいる────否、そう見えていただけに過ぎなかった。

 

「貴様、急に入って来て命令をして何様の────!」

「────あー、ハイハイハイ。 威勢は認めるけれどダメダメ全然ダメ。 どう? “異常を全て見過ごして、そのまま職務に就く”って気分は?」

 

「お前────」

「────私のコレ(ギアス)、すっごく使いにくいけれどその分『絶対性』ではピカイチだから♪ まぁ、単純な身体能力なら仔犬ちゃん(トト)が上だけどねぇ~。 あああ! お兄ちゃんだ!」

 

 クララは座っていた机の上から飛び降り、トテトテと素早く一つのモニターを食い入るように覗く。

 

「あ~、いいな~♡ 私もそこに居たかったな~……でもおチビちゃん(ロロ)の方が皆殺しに向いているんだよねぇ~……終わったらここにいる皆の首をプレゼントしたら喜ぶかな?」

 

 ウットリとする年相応の恋する乙女な表情を浮かべるクララのあっけらかんととした、物騒な物言いに室内にいた者たちはゾッとしたそうな。




外国への出張が控えているので恐らく来週の投稿はないと思います。
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