小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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筆が乗り、少々長いカオスになりました。


第282話 第二次東京決戦6

「……」

 

 レドは静かに、慎重に、かつ出来るだけ早く作業が進められる様に没頭していた。

 

 その作業とは『政庁に仕掛けられているであろう罠の解除』である。

 

 言葉にすると簡単だが、コーネリアに助けられる見返りとして頼まれた以上、難易度は高い。

 しかし彼がこうして迷いなくたどり着けたのは、『もし自分が工作員ならどんな罠を仕掛けるか』と考えた結果、ニーナ率いる技術チームインヴォークが政庁で何やら忙しく交代しながら何かを設置しているところを彼が見て、何をしているか聞いたところ『ソーラー発電やバッテリーに頼らない電力』を以前聞き、調べると案の定罠らしき機器があった。

 

「ダミーが多いな。」

 

 だが高難易度の理由はそこではなく、彼が今解体しようとしている爆弾(らしき)装置が非常に複雑で、明らかに自分より力量のある者によって設計されていたからである。

 

 しかし幸運にも『罠』────特に『爆弾』────は実力者が設置すればするほどに解除は困難ではあるが決して『不可能』ではない。 むしろ、一定の条件下では逆に解体がしやすくなる。

 

「(逆にそうでなければ怖いが、幸いこの手口は以前に見たことがあるな……)」

 

 その『一定の条件』の一つが、『設置者の癖を知っている』ことである。

 

 何かを極めた者は多くの場合、基本に忠実であると同時に独自の『こだわり』を持ちやすくなる。

 

 レドのような裏仕事を任される「子飼いの人員」は、他にも多数存在する。そして、仕事の一環として、他の工作員が知らぬ間にその仕事を確認することもある。レドは過去の経験から学び、命令がなくても自発的にそのチェックに出向いていた。

 全ては『生き残るため』だった。

 

「(今じゃ、他人を助けるためにこれを使っているんだから、人生何があるかわからないものだな……)」

 

 解体作業は順調に進み、数分後には手が止まった。

 そして彼の額には大粒の汗が浮かび、動揺が目に見えていた。

 

 「最後に残るのが赤と青の配線ってどんなB級映画の爆弾だよ?」

 

 レドは思わず、心の中に浮かんだツッコミを口に出してしまった。

 

「いや、分かる! 分かるぞ! シンプルなデザインなほどミスは少ないからな! それは兵器でも装備でも同じだ! だがこんなものが現実(リアル)にあるワケがないだろう?! バカか?! バカなのか、これを仕掛けた奴は?! いやバカなんだろう────!」

 

 ────レドの独り愚痴はまだまだあるのだが展開を進めるため割愛させていただく。

 

「ゼハァ、ゼハァ……ええい! 切ればいいんだろ! 切れば!」

 

 プツン。

 

 レドは勢いに任せて赤い配線をペンチで切ると、それまで巨大ジェネレーターに繋がっていた端末の一部の電気がフッと消えた。

 

 「……いや、『運命の赤い糸』を切って正解なのか?! なんなんだこのエリア?! 無茶苦茶すぎる!」

 

 

 それ、二回目ですよレドさん?

 

 

 汗だくになったレドの怒りに満ちた叫びは虚しく壁に反響するのだが、今解体した物が原作では自分を無慈悲にも消滅させた兵器の起爆装置だったとは彼は知り由はないだろう。

 

「はぁ……コーネリア皇女殿下に連絡を入れるか。」

 

 ちなみにコーネリアはこの時、レドの連絡を読んでガッツポーズや安堵出来る余裕はなかったと追記しておく。

 

 ……

 …

 

 

「よし、学園に彼女たちが到着したか。 (エルとやらだけだと少々心許なかったが、これならば問題はないだろう。 しかし思ったよりやるな、グリンダ騎士団……いや、この場合はグラストンナイツと姉上(コーネリア)か。)」

 

 トウキョウ租界の上空から戦場を見下ろしつつ、ブリタニア軍と黒の騎士団双方の戦線を入ってくる報告からオーバーレイ表示した地図を見る。

 

 実はこのトウキョウ決戦、原作と同様に『作戦目標は政庁を占拠、あるいはナナリー総督の確保』でルルーシュはゼロとして通している。 だが実際の目的は原作から色々と離反したせいで、『なるべく死者が出ない間にナナリーの奪取とクロヴィスの拉致』に変わっていた。

 

『死者が出ない』のはコーネリアやダールトンがこの戦いで協力する条件であり、『ナナリーの奪取』はもちろんルルーシュ本人が皇帝シャルルから彼女の身柄を確保するため。 そして『クロヴィスの拉致』はディートハルトの諜報部からこの戦いの前にライラとスヴェン(スバル)が接触した報告を聞き急遽付け足した作戦目的である。

 

 別にクロヴィスの身に何かあればライラが悲しんでそれに連鎖するかのようにスヴェン(スバル)が持ち前の意外性で何らかの斜め上の独断を取ってしまいかねないのが怖いとかではなく単純にほぼ廃嫡寸前でもクロヴィスはまだ(一応)皇族という事から多少なりとも捕虜にすれば後に控えている政治的交渉の場で日本側が有利になれるからである。

 

 もう一度念を押すが別にライラをナナリーと時折重ねてしまうからではなく、クロヴィスの確保自体に利用価値があるからだ。

 

 と、ルルーシュ本人は自分に言い聞かせながら軍の配置を修正していた。

 

「(まったく……まさかサイタマゲットーであれほど追い込められた姉上と、こうした絶(・)妙(・)な(・)シ(・)ョ(・)ー(・)を繰り広げる日が来るとは思いもしなかった……もし敵対していれば、シュナイゼルと皇帝だけでなく彼女も警戒対象にいれなければなかった。 正直、その余裕があるかどうか……それにラウンズに対抗できる戦力が足りていたことも僥倖だ。)」

 

 そう思いながらルルーシュはジノとカレン、アーニャとアヤノにベニオ、そして────

 

「(────スザクにはスバルを当てたが、まさかノネット・エニアグラムが防衛陣から飛び出るとは姉上との相談で“可能性” として危惧していた。 一時は肝を冷やしたが、なるほど。  サエコ・ブスジマとレイラの見立て通り、本気で奔走する彼の実力は目を見張るもの……いや、想像を絶するな。 皮肉だが、彼のこの戦い方に『幽鬼』という呼び名がぴったりと合ってしまう────)」

『────ゼロ。』

 

『ん? 何かね、博士?』

 

『この空域に近づいてくる物体があるのだが、こちらのセンサーでは上手く判別できない。』

 

『そうか、こちらに回してくれ。』

 

 蜃気楼の近くで飛んでいたウィルバーのイカロスからの通信に返答するとイカロスからデータがそのまま送られるが、ルルーシュは持ち前の情報処理能力と機体のドルイドシステムで解析処理を行う。

 

「(何だこれは? ミサイルにしては予測値の重量が……それになんだ、この反応? いやそれよりもこの温度だ。 異常に高い……高すぎる。 はて、俺はこれをどこかで見たような気がするのだが……)」

 

 しばしの間ルルーシュは並列思考で自分の記憶を漁る。

 

「(皇子時代? いや、あの時と言えばチェスや読書ぐらいだ。 スザクと知り合った時? それこそまさかだ、そんな余裕はなかった。 学生……引っかかるがその正体がわからん。 ならばゼロとしてか? それにラクシャータが連想される……ん? ブリタニア軍の動きが……)」

 

『ラクシャータ』というキーワードを中心に検索し始めて数秒後、ブリタニア軍の動きによって自分の中にあった『疑い』が『確信』へと徐々に変わっていきルルーシュは目を見開かせながら通信を開く。

 

『(まさかア(・)レ(・)を兵器化したというのか?! “全ての不可能を除外して最後に残ったものが如何に奇妙なことであってもそれが真実となる”とはよく言ったものだ!) こちらゼロ、黒の騎士団及びプレイアデスナイツの総員に告ぐ────!』

 

 

 


 

 

 

 えー、こちらは勝手に動く体の中で、第三者として観戦しているスバルです。 どうぞー。

 

「ぬあああああああ!」

 

 ハイ、というわけで、ただいまヒッグスコントロールシステムとシートに直接連結された強化スーツで、何とか人体への被害が少ない『オレ』が、スザクとノネットを相手に奔走中でーす。

 

 時折スザクが逃げた先で、ヴィンセント・ウォード部隊と遭遇するがもう『オレ』のさばき方が尋常じゃないといっておく。

 

 まず、一番近いヴィンセント・ウォードの腕かフロートシステムを長刀でぶった切り、盾にしながらサブアームでアサルトライフルを分捕り、自前の得物も使って敵部隊のKMFを行動不能にしてついでに盾にしたKMFからエナジーフィラーを頂戴する、非常に野蛮かつ合理的な動作だ。

 

 ヴァイスボルフ城と同等、もしくはそれ以上だ。

 

 今まで遭遇したブリタニアの部隊は多分、オルドリンとソキアが租界の環状線を中心に反撃に出た部隊だろう。

 

『オズO2』で見たような気がするし、きっとそうなのだろう。

 

 で、その隙をノネットが狙わない筈がないのでエナジーフィラーを抜いたKMFを彼女の方向に回転しながら投げ出す。

 

 無論、普通ならヴィンセント・ウォードを迂回して突撃してくるのだが、エナジーフィラーを抜いているので自分で飛べない友軍を平然と見捨てられるノネットではない。放り投げられた機体を受け取って高度の維持が困難になり、緩やかに落ちていく他のヴィンセント・ウォードに手渡すか、近くの高層ビルの屋上に投げ出す。

 

 ……いや『投げ出す』っていくら何でも扱いが雑じゃね?

 

「らぁぁぁぁぁ!」

 

 その間にエナジーフィラーを残ったサブアームで補給しながらスザクを手ぶらになった右腕の輻射波動(ワイドレンジ)で攻撃する。

 

 通常、ワイドレンジの輻射波動なんて近代のKMFに対しては近距離(あるいは辛うじて中距離)でしか脅威にならない。

 

 だが生憎と租界内は高層ビルでいっぱいでフロートシステムの強みである三次元的な動きがそうそう取れないのだ! シンプルになって『お得♡』というわけだ、やったね☆

 

 え? 『それだと周りのビルとかに攻撃が飛び火してそう』だって?

 

 御尤もである。

 

 今までの反撃で一体どれだけの巻き添えが軍と民間の双方に出たのか考えたくもない。

 

 現にさっきの荒々しいやり取りだけで輻射波動によってビルのガラスが溶けたり割れたりしているからな、それらの落下地点に誰かいたら串刺しか斬首刑だ。

 

 もし誰がいたらと思うと心が痛む────

 

『────こちらゼロ、黒の騎士団及びプレイアデスナイツの総員に告ぐ!』

 

 そこで超合集国の周波数から慌てた様子のゼロからの通信が入ってくる。

 ちょっと珍しい。

 

『南東から接近中の物体を複(・)数(・)キャッチした! ブリタニア軍も一部だが戦線離脱の兆候を見せている!』

 

 なんやて?

 

『艦隊の半分はイカルガと星団(リア・ファル)以外すべて民間人を誘導している部隊と連携しすぐに避難、あるいはこの戦域から離脱せよ!』

 

 はい?

 

『藤堂と四聖剣たちは飛来してくるこれらを迎撃せよ!』

 

 え?

 

『まてゼロ! 一体どういうことだ?!』

『気安く言うけれどさ、そもそもこっちは租界内と外からのブリタニア軍とドンパチやっている状態なんだけれど?』

『落ち着けお前たち!』

『ゼロ、ブリタニア軍よりの脅威だと思わせる根拠があるのか?』

 

 おおお、出てきたよ、アンチゼロの千葉と朝比奈さんの抗議、その二人を諫める仙波、そして冷静に物事を見る藤堂の追及が。

 

『接近している物体の温度は計測不可能なほど高い! 速度と高度からミサイル、それも恐らくは戦術兵器の類と思われる! 卜部! お前の部隊の近くに瞬時警報システムがある、すぐに作動しろ!』

 

 は?

 

『IFF情報を送る、できるだけ追撃しろ!』

 

 ちょっと待て。

 

 “温度は計測不可能なほど高い”って、それってもしかしてクリーンでエコなアレのことか?

 

 内部でウランとサクラダイトが干渉しあい、核分裂反応を起こして爆発……と呼ぶよりは本来発生するはずの熱反応や放射能ごと『消滅』させる桃色のアレ────毒ガス以上の脅威を持つ大量殺戮兵器の『フレイヤ』なのか?

 

 でもちょっと待ってくれ。

 

 俺は確かにその開発者であるニーナをあらゆる手で人間────特に日系人への嫌悪やユーフェミアへの依存などをあらかた阻止したはずだ。

 

 この間もアマルガムのケアを行っていた時に『元気か?』とメッセージしたら既読が付いた瞬間、『ありがとう』って返事を返して来たし。

 

 ピ、ピピ、ピピピピ。

 

 次第に10、20、30と、数が段々と山ほど多くレーダーはゼロが言っていた識別信号でいっぱいになっていく。

 

『全軍、こいつらを排除しろ!』

 

『迎撃しろと言われても、ミサイルだろ?』

『一体何が特別なんだ?』

『要は撃ち落とせばいいだけだ!』

『撃て、撃ち落とせ!』

 

 ゼロの慌てた声とは裏腹に、黒の騎士団側の通信は割と呑気なものだった。

 

『なんでしょうか、この反応────?』

『────ミノキケーン! ミノキケーン! ミノキケーン────!』

『────プレイアデスナイツ部隊、ミサイルの迎撃を第一優先事項に変えます────!』

『『『『────了解!』』』』

 

 リア・ファルからはオペレーターをしているユーフェミアと補佐をしているピンクちゃんの音声、そしてゼロと似て慌てているレイラとサンチア達の承諾する声がスピーカーから出てくる。

 

 本当に?

 

 いや、本当なんだろうな。

 

『もしかして役に立つかな?』と思い、ユーフェミアがオペレーターをすることを知ってからあのなんちゃってハ〇兼ピンクちゃんにはラクシャータによって予測されるフレイヤらしき反応に某ピースのパー〇さんのセリフを言うように仕込んでおいた。

 

 それにゼロたちもあわてているという事は、ほ(・)ぼ(・)確実という事になる。

 

 そう考えた瞬間、さっきまで痛みで悲鳴を上げていた体は背筋を中心に冷えていき、額から汗が湧き出る。

 

 いや、まだだ。

 

 まだそ(・)う(・)と決まったわけではない。

 

 確かにブリタニア軍の半分ぐらいが撤退の様子を見せている。

 

 確かに原作では『そう』なった。

 

 そもそも俺がいることで原作の流れは、変わっている筈だ。 変わっている筈なんだ!

 

 あんな無差別爆撃というか消滅なんて、起こるはずがない!

 

 あ(・)ん(・)な(・)悲(・)劇(・)を(・)起(・)こ(・)し(・)て(・)は(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)────!

 

『────やばい!』

『一つ抜けた!』

『だが落下地点は租界の外だ!』

『バカ、オオタでもギリギリ外延部の外だ!』

『オオタ周辺の奴らは逃げろ!』

『間に合わねぇ!』

『とりあえず身を隠せ! KMFや装甲車を使って民間人たちを守れ!』

『着弾す────』

 

 ────カッ!

 

 黒の騎士団の通信が遮られ、夜空が一瞬桃色の光によって照らさられる。

 

 ドォォォン!

 

 そして、夜空を照らしたそれの輝きはすぐに爆音と共に半径数(・)メ(・)ー(・)ト(・)ル(・)ほどに拡大し、接触したすべてを押しながら消滅させていく。 ほぼ時間差なく範囲内が真空状態になると、周囲の大気だけでなく破壊と消滅を逃れたもの全てを吸い寄せていく。

 

 ドグン。

 少(・)し(・)違(・)う(・)が(・)フ(・)レ(・)イ(・)ヤ(・)だ(・)。

 間(・)違(・)い(・)な(・)い(・)。

 

 疑惑が完全なる革新へと変わった瞬間、俺の心臓が脈を一際大きい脈を力強く打つ。

 

 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

 気が付けば全身の血の気が引いていく中で俺は両手で頭を抱えながら、ただただ叫んでいた。

 

 

 


 

 

 一つ目のミサイルが落ちた瞬間、トウキョウ租界の内外双方のあらゆるところで起こっていた戦闘行為が停止した。

 

『おいおいおいおいおい!』

『じょ、冗談じゃない!』

『これが、“風の冬”?!』

 

「バ、バカな……」

 

 ブリタニア軍の通信を無視し、コーネリアは『ユーフェミアが死んだ』と聞いた時以来のショックに頭が真っ白になり、動揺から動きと思考を止めていた。

 

「兄上……なのか?」

 

『やばいぞ!』

『お、おい! どこに行く?! 勝手な行動は────』

『────うるせぇ! さっきの全軍撤退メッセージに従っているだけだ!』

 

 これにより、さっきまで『風の冬』の発令で出た撤退命令を無視するようにコーネリアやグラストンアイツに言い聞かせられていた多くのブリタニア軍の部隊が独自に撤退し始める。

 

『あいつらは放っておけ! 取り敢えず残っている対空砲の照準を変えろ! 全部だ!』

『KMF部隊も黒の騎士団なんかよりミサイルを撃ち落とすのに手伝え!』

 

「兄上……貴方は、本当に────?」

『────姫様!』

 

 ギルフォードの声にコーネリアはハッとする。

 

「ギ、ギルフォード卿! 政庁にいるはずのダールトンたちと協力し、ナナリーやクロヴィスの身の安全を確保しろ!」

 

『先ほどダールトン将軍から連絡を受けとりました! 脱出用の飛行艇の準備をしていると聞きましたが……姫様、例の“協力者”とは一体────?』

「────ピースマークだ! 詳しい話は省くが敵ではない! 真の敵はこのミサイルを撃ち込んできている者だ!」

 

 カッ! ドォォォン!

 

『また落ちた!』

『どこだ!?』

『爆発地点に誰かいたか?!』

『き、消えた! 今はっきりと見えた! ただ消えた!』

『こ、ここから逃げるぞ!』

『おい! お前ら戻ってこい!』

『対空砲に誰か代われ!』

 

『コーネリア皇女殿下、発射地点を特定して元を叩けば────!』

「────ダメだ! こ(・)れ(・)以(・)上(・)減(・)れ(・)ば(・)数(・)が(・)足(・)り(・)な(・)く(・)な(・)る(・)────!」

 『────全軍に告ぐ!』

 

 ミサイルがまたもどこかに着弾して言い争うダールトンとコーネリアの通信を、オープンチャンネルで黒の騎士団とトウキョウ租界に残ったブリタニア軍の双方に呼びかけたゼロの通信が遮る。

 

『ブリタニア軍も今わかると思うが、これは無差別攻撃だ! 超合集国軍にはミサイルの迎撃を最優先するよう命令した! 捕虜になっていた諸君らの同胞たちも解放した! この状況下ではブリタニア帝国や超合集国は関係ない! 停戦を提案する!』

 

『これは────?!』

「────ゼロ、こちらはコーネリア・リ・ブリタニアだ! 司令官代理として貴官の停戦を受け入れる! 全軍、私が全ての責任を受け持つ! 対空砲火!」

 

 この瞬間、トウキョウ租界に残ってどうしたらいいのか分からないブリタニア軍の大部分が黒の騎士団への警戒態勢を解き、ミサイルの迎撃に集中する。

 

 カッ! ドォォォン!

 

『また着弾した!』

『おい、やばいぞ! 地面が割れていく!』

『このままだと階層構造が崩壊してしまう!』

 

 やがて絶対的危機によって『一蓮托生』が生み出す妙な連帯感にブリタニア軍と黒の騎士団はオープンチャンネルで平然と会話を交わしていた。

 

『弾が無くなった!』

『俺のを使え! 銃身がイカれて撃てない!』

『エナジーだ! エナジーフィラーの予備を誰か持っていないか?!』

『あっちに大破したグロースターとかがある! 持っていけ!』

『政庁周辺の暁部隊はガレスの弾幕を抜けたミサイルを撃て!』

 

 フレイヤのインパクトによって感覚がマヒしていた要因も大きかったかもしれないが、その光景は泥沼の殺し合いをしていた一年前とは大きな違いだった。

 

『敵はどこから撃っているんだ?!』

『元を絶たないと!』

『それができないから迎撃だろうが!』

『ゼロやコーネリア皇女殿下やラウンズ達なら何かできないか?!』

『というかそのラウンズ達が見当たらない!』

『まさか逃げやがったのか?!』

『いや待て! ありゃクルルギ卿とエニアグラム卿のKMFじゃないか?!』

『それに幽鬼もいる!』

『三機とも早い!』

 

 

 


 

 

 死にたくない死に だがこのまま逃げたらルルーシュやナナリーや たくない死にたくない死にたくない カレンやレイラや毒島たちがいる 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!

 

「ぐ、ぐぅ……」

 

 激しい機動をボロボロの蒼天にさせつつ、内心で広がる氷のような冷たい感覚を気合で抑え込み、歯を食いしばる。

 

 唇を慕ってアゴに液体っぽい何かが付いている感じがするが今は無視だ。

 

『お、おい! 地面が割れていくぞ?!』

『階層構造がキャパオーバーしているのか?!』

『その場から民間人たちを動かせ!』

 

「レイラァァァァァァ!」

 

 俺は全力で叫ぶ。

 

『────シュバールさん────?!』

「────タイプAF装備を────!」

『────受け取ってください! 未完成なので私もドローンで援護を────!』

 

 レイラが何か言った気がするが、聞こえない。

 取り敢えずは網膜投影システム越しに、リア・ファルから飛んできているタイプAF装備の軌道を読んで蒼天を動かす。

 

 近くにスザクとノネットがいるが後回しだ。

 

 今は死にたくない。

 

 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。

 

 ガコォン。

 

 リア・ファルからセットで撃ち出された、ガウェインの身長以上の長さがある背部推進機関が元々蒼天にあったフロートシステムと連結し、輻射波動のある右腕をすっぽりと覆う大きくて細長い超高速弾体加速装置が装着される。

 

 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないから逃げたいけれどもう逃げられない間に合わない。

 

 ピピピピピーン♪ ビー!

 

 推進機関ドライバーのインストールが完了した事を告げる音が出て、右腕の長距離狙撃ライフル砲身のドライバーエラー音が続く。

 

 タイプAF装備は開発途中で未完成だ、流石に100%とはいかなかったみたいだがマニュアル(手動)で何とかなるはず。

 

 たかが制動制御装置とライフルの反動軽減装置と背部推進機関等の同期と調整が終わっていないだけで撃ち出すには何も問題はない!

 

 出力を上げて機体を今より早く飛ばし、スザクとノネットから蒼天を一気に離す。

 

 後ろから討つなんてことはないと思いたいが今は邪魔なだけだ。

 

 体の前半から血が去っていく感覚や圧し掛かるGを無視して暗くなっていく視界内で激しくブレるライフルの照準をミサイルの一つに合わせ、引き金を引く。

 

 ガァン!

 

 輻射波動に使うはずのエナジーがライフルに転換され、装填された弾丸が風を切ってミサイルの近くで爆発した……と思う。

 

 開発途中だがこの弾丸は普通のではなく、学園でニーナからちょろまかしたデータやその後の論文をもとに作ったものだ。

 

 効果は単純に『爆発で散布された成分でフレイヤの鎮静化』というもので、これでたとえ落ちてきても不発に終わる。

 

 理論上は。

 

「クッ!」

 

 何せライフルの反動で機体から腕ごともげてもおかしくないのに補正装置なしで飛んでいるんだ。

 

 速度がほぼ半分近くに低下した上に機体の機動と姿勢はぐちゃぐちゃになっている。

 

 とんだ暴れ馬────いや、じゃじゃ馬だぜこいつはよ!

 

 俺は無理やりクルクルと三次元的に回転し続ける機体を無理やりいうことを聞かせるように操縦桿とフットペダルを半ば本能に従って激しく動かし、機体中のブースターで姿勢を立て直す。

 

 少々手こずったが、この状態の癖(・)は大方覚(・)え(・)た(・)。

 

 ガァン! ガァン! ガァン!

 

 撃つごとにKMFの姿勢がまたも不安定になり、俺は姿勢を立て直してはまたも特殊弾丸を撃ち出していく。

 

 レーダーを見ている限り、全て直撃はしているし周りの皆も撃ち落としている様子だがミサイルの数は減っていない様子だった。

 

 カッ! ドドォン! ドォォォン! ドォォォン!

 

『数が多すぎる。』

 

 それを無慈悲に、更なる光と爆音たちが俺たちに伝えてくる。

 

『おい、なんだこの揺れ?』

『もしや、地震か?!』

 

 何やら地上が騒がしい。

 

『きっと階層構造の全体にガタが来ているんだ! 民間人の避難はまだか?!』

『政庁にまだ飛べるすべての航空機を使うんだ! 他は合集国軍の航空艦に乗せる!』

 

 政庁だと?

 

 カッ! ドォォォン!

 

『えー、こちらはシブヤの地質監視所だ。 この放送を聞いている軍、および民間全ての者にトウキョウ租界地域全域警報を伝える。 トウキョウ租界の東部から高速で広がる揺れがある。 続報を待て。』

 

 カッ! ドォォォン!

 

『私はオックスフォード大学のマーク・ドミンゲス博士だ。 今トウキョウ租界にいる全ての者たちに聞いて欲しい。 帝国か超合集国のどちらに所属しているかは今重要な問題ではない。 この事態を乗り越えるために、我々は情報を交換せねばならない。』

 

 ガァン! ガァン! ガァン!

 

 ビィィィィィィィ!!!

 

 あまりの無茶に蒼天がとうとう文句を訴えてくる。

 

『腕と体中が痛いよ』? 知るか、俺もそうだ。

 

『まず今もなお現在トウキョウ租界を襲ってくるミサイルの影響により、租界の基盤が弱くなっていることはもう分かると思うが、エリア11はもともと────』

 カッ! ドォォォン!

『────帯である。 全ての者は直ちに屋内シェルターへ避難してくれ。 だが決して地下にはいくな、活性化の予兆が見られる。』

 

 ビィー!

 

 蒼天の画面に『弾数ゼロ』という表示が浮かび、ライフルを腕から切り離してから出力を上げた遠距離の輻射波動でミサイルを撃ち落とす。

 

『ちょっと待ってくれ! じゃあ何か?! ミサイルが意図的に階層構造の下にある地脈を活性化させたとでも言いたいのか?! 誰が何のためにそんなことを?!』

 

『わからん。 私もこんな反応はセント・ヘレンズ山以外で見たことがない。 何が実際に起きているかにせよ、我々の下で連鎖反応が起きている。』

 

『ま、まさかそれって────』

『────大地震の予兆か、あるいは────』

『────計測器がイカれた! 全員備えろ!』

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