そしてカオスのです。 (今更
『第一皇子オデュッセウス・ウ・ブリタニア、“現皇帝の行いは国民の関心を欺くため他国を虐げている残虐な行為”と宣言し、自ら新大陸に駐留する軍の指揮を執る?!』
『第五皇女カリーヌ・ネ・ブリタニアと騎士ダスコ・ラ・クレルモン、去年設立した近衛隊を新大陸の太平洋側に配置。』
『借金取り締まりに大きな動きアリ! 大富豪や貴族たち大混乱。』
『超合集国連合に動きなし、第一皇子オデュッセウスと密約か?』
『各エリアの総督たち、守りに入る?』
『皇帝派に大規模な動きアリ! 太平洋に集結する軍の目撃多数!』
『戦乱の世、再び到来か?! 護身用の武器はこちらのリンクから!』
ブリタニア帝国の記事やゴシップ、アングラニュースサイトでは、これらの見出しで持ちきりだった。
真偽は不明だが、各エリアと本国に滞在する貴族たちは皇帝の次の動きが判明するまで治安の悪化を防ぐために保安局等を総動員し、一部地域では『非常時』として戒厳令が発令されるまで至っていた。
これらの出来事によってブリタニア帝国は実質的にほぼマヒ状態に陥り、かつてないほどの混乱による無防備な状態となったが、超合集国連合がエリア11を『日本』に返されたことで『決議の良い事例』と熱心に取り組んでいたことが、唯一の救いだったと言える。
「「「「「……」」」」」
そんな中、グレートブリタニアに招集された『帝国内最強』と名高いラウンズのほとんどが、珍しく唖然としていた。
しかし彼らは、神根島を中心に皇帝派の艦隊が次々と集結する壮大な光景に圧倒されたわけではなく、黒髪ロングでどこかタレ目のおっとりした印象の女性────9年前から容姿が何一つ変わっていないマリアンヌ・ヴィ・ブリタニアの登場に驚いていた。
「(……なるほど、こういうことだったのか。)」
いち早く我に返ったビスマルクはシャルルと目が合わせると、ビスマルクの表情はどこか納得がいくようなものに僅かに変わった。
「お久しぶりですな、マリアンヌ様。」
「ビスマルク、ちょっと老けたかしら?」
「歳月は私に優しくなかっただけです。」
「あと、髭も剃ったの?」
「これで赤子に引っ張られる心配もなくなりました。」
「赤子?」
「いえ、私の独り言です。 以前に引っ張られたことがございまして。」
「あら痛そう♪」
ビスマルクとマリアンヌの軽いやり取りに、ラウンズたちもようやく思考の歯車が動き出し、それぞれが自分なりに考えを巡らせ始める。
「(もしや、本当にマリアンヌ様? しかし亡くなられたはずでは……)」
「(ヴァルトシュタイン卿との会話からして、ご本人のようだが……)」
ジノとモニカは、目の前の女性が本当に『あの』マリアンヌなのかを見極めようとしていた。
「(どうやってあんなに若々しい肌を保っているのだろうか……?)」
……若干一名は放ってそっとさせておくとしよう。
「皆の疑問、『何故』は尤もである。 そして敢えてワシが答えるならば『仮死状態にあった』と返す。」
「仮死状態……」
「よろしいでしょうか、陛下?」
「何か、エルンスト卿?」
「帝国の元老院議会へ何の通達もなく、このままここに居座るのは────」
「────無論、計画の内である。皇帝とは帝国そのもの。すなわち、帝国はワシ自身と言える。行政、司法、立法、軍部を任せている者たちが異を唱えるなら、もう一度ワシの手元に戻すまで。」
そう言いながら、シャルルはグレートブリタニアのモニター画面に目を移し、ラウンズたちもその視線を追った。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
その瞬間、上空にあった雲の中から巨大な杖状────いや、『巨大な城塞』とも呼べる建造物が姿を現した。
その想像を絶する光景に、ラウンズたちは全員目を見開き、その存在感に圧倒されそうになったが、それぞれが持ち前の気合で何とか後退りをこらえた。
唯一、冷静さを保っていたのはマリアンヌとシャルルの二人だけであり、マリアンヌはまるで新しいおもちゃを目にした子供のように興奮していた。
「あれは?」
「カンボジアにあるトロモ機関で、シュナイゼルが秘密裏に開発していた天空要塞、ダモクレスである。」
「大きいわね……」
「全長2㎞はある。」
「あら、あの子でもやればできるじゃない。」
「(皇帝陛下と宰相閣下は、何故こんなものを……?)」
モニカはそのように考え、ふと悟った。
「(まさか、トウキョウ租界への攻撃はこのダモクレスが行ったもの? だとすれば、フレイヤを使ったのは陛下たち?) 陛下。」
「何か、クルシェフスキー卿?」
「皇帝陛下は、このダモクレスで何をするおつもりなのですか────?」
「────先ほど言った通りの事であるが、何か?」
「(まさか陛下たちは、『恐怖』で人々を無理やり従わせる気なの?!)」
モニカは内心で驚愕しながらも、表面上は『冷静』を保つためにゆっくり深呼吸をした。
「旗艦をグレートブリタニアからダモクレスに移す。 ビスマルク、エルンスト卿、ついて来い。」
「「イエス、ユアマジェスティ。」」
「陛下、私も────!」
「────クルシェフスキー卿にはグレートブリタニアを任せる。 ヴァインベルグ卿はアールストレイム卿と共にクルシェフスキー卿と協力し、護衛の任を果たせ。」
「……イエス、ユアマジェスティ。」
「(……なるほど、
ビスマルクは微笑を浮かべつつ、ダモクレスの上部にそびえ立つ城に目を向けた。
「(さて、どこまでが皇帝陛下で、どこまでがシュナイゼル殿下の意図なのか……)」
……
…
「各システムチェックの結果、オールグリーンです。」
「エネルギー回路、順調に始動しています。」
「フロートユニットの連結および出力、問題ありません。」
「各ブロック、異常なしです。」
「ローゼンクロイツ伯爵の艦隊をレーダーで捉えました。 陣形データを送ります。」
減速によって揺れるダモクレスの制御室では、兵士たちの報告が次々と通信で飛び交っていた。
「すべて順調ですね、殿下。」
「何か質問かね、カノン?」
制御室から少し離れた玉座に似た椅子が置いてある部屋の中でカノンの言葉にシュナイゼルがそう返すと、カノンは一瞬だけバツが悪そうな表情を浮かべた後、咳払いをして平静を装う。
「……殿下はなぜ、トウキョウ租界に
ここでカノンが言う『アレ』は、トウキョウ租界に対して行われたフレイヤによるミサイル攻撃だけではなかった。
ルキアーノたちを誘導したこと。
全ブリタニア軍に避難命令を出したこと。
コーネリアの復帰を了承したこと。
グリンダ騎士団にノネット、果てはニーナやロイド達……だけではなく、レドまで含まれたその他諸々ついての意味合いもあった。
「情報……いや、仮説のためだよ。」
「……ぇ?」
そして多くの意味を含んだカノンの問いに、シュナイゼルは短くそう答えた。
「おかげで報告と画像データは予想以上に興味深いものだった。 いや、
「そ、それは────」
「────本当に……実に面白いよカノン。」
シュナイゼルは、面白いものを思い出すかのように微笑みながら目を細めた。
「ぁ……」
その異様な表情に背筋がゾクッとしたカノンが思わず声を漏らしたその瞬間、シュナイゼルはいつもの穏やかな表情に戻る。
「ん? 何かね、カノン?」
「い、いえ……ですが果たしてよろしかったのですかと、その……」
「ああ、ゼロが演出した劇場……『超合集国連合』に、皇帝陛下自身が乗り気だったからね。 私の意図もきっとお見通しのはずだよ。」
「ならば尚更のことに、何故?」
「これは推測だが、皇帝陛下は私の策略と私自身をも利用しているのだろう。 目的まではわからないが、そうとしか思えない。 『利害の一致』、というやつだよ。 そうでなければ、私も無事ではいないだろうからね。」
「……殿下らしくないですね、自ら賭けに出るなんて。」
「そうかい?」
「ええ。 殿下はご自身をチップとして使うことは予想していましたが……皇帝陛下までが対象者だとはさすがに思いませんでした。」
「私を軽蔑するかね?」
「まさか。 ただ『らしくない』、と具申したまでです。」
「『らしくない』、か……それはどういう意味で言ったのかね?」
「それは殿下ご自身で判断するものかと。」
「ハハハハハ、手厳しいね。 (さて、先の攻撃で君がいることは分かっている。 そして超合集国連合が動ける大義名分は当分なくなった。 その為の抜け道もちゃんと用意してある。 今度は自分の動かせる戦力だけで挑みたまえ、
…………
………
……
…
「オデュッセウスお兄様、本気なのですね?」
トウキョウ租界の上空で、グランベリーがノネットに取られてから旗艦をネッサローズに変え、新たな自室にいたマリーベルは、困った顔をしていたオデュッセウスにそう問いかけていた。
『本気も何も、ここまでしたのだから最後までやり遂げるしかないよ。 それでマリーにはエリア11から移動してブラッドリー卿の追跡を頼みたいかな?』
「お兄様、その前に皇帝シャルルの牽制に南下すべきではないでしょうか? もうお聞きかもしれませんが、皇帝シャルルの呼びかけで神根島の周辺に大規模な艦隊が集結しつつあります。」
『もうそんなに?』
「はい……エニアグラム卿にも同様に通達しますか?」
『うん、そうだね。 彼女は皇帝直属のラウンズだから、どう答えるかが怖いけどね。 でも、拒否される可能性もあるし、最悪マリーの艦隊だけが動くことになりかねないか……』
「ご安心ください。私に
『そ、そうか! いや~、それは助かるよ! 一応軍部に声をかけたんだけど、私が声をかけたせいか反応が曖昧でね。』
「確認しますが、私の皇位継承権……それと、総督権もそのままですか?」
『うん、そうだね。 政治体制はそのままキープしつつ一応、各エリアの人々の意見も聞き入れるつもりだけれど、散々居座って“じゃあ返すねバイバイ” なんてできないから、少なくとも自治を望むエリアが国として機能するまでは続けるつもりだよ。』
ニッコリ。
「なるほど、それは良いことを聞きました♪」
『……マリー、何か企んでいないかい?』
「“企む”だなんて、そんな大それたことはしていませんよ?」
『そ、そうかい?』
オデュッセウスは、急に笑顔を見せたマリーベルに不安を感じたが、彼女に軽くはぐらかされた。
「それよりオデュッセウスお兄様。 今一度お聞きしますが……
『う、うん? うん、まぁ、そうだね。』
「ギネヴィアお姉さまは?」
『感動していたよ?』
「そうですか……では、後ほどご報告いたします。」
『ああ、頼んだよマリー。』
通信が切れるとマリーベルは座っていた椅子の背もたれに寄りかかり、目を閉じる。
「(ブラッドリー卿たちを追うには今の戦力と状況下では不十分。 それよりもオデュッセウスお兄様の慌て様はセントラルハレースタジアムで見せた時と同じ動作だったように見えた。 だとすれば、これ等の行動は恐らく……)」
彼女は思考を巡らせ、一つの仮説にたどり着いたが、眉間にしわを寄せる。
「(でも……
────ピッ。
端末から出た音にマリーベルは目を開かせ、メッセージを見ると驚きながらもそれを受ける。
「(このタイミングで……ということは恐らく────)────ハイ、なんでしょうか?」
端末に映し出されたのは、レイラだった。
『マリーベル皇女、私はプレイアデスナイツのレイラ・マルカルです。』
「黒の騎士団に協力していた傭兵団ですね? 初めまして……ではないですね。」
『ええ、まぁ……中華連邦での戦術、お見事でした。』
「ウフフフ、それを言うのならあなたたちの初の航空戦も見事なものでしたよ?」
『……こちらにも、貴女方のような優秀な人材がいましたから。 それと、ブリタニア帝国のことですが、貴女はどうされるおつもりですか?』
「お耳が早いですね。実はあなたたちに依頼しようと思っていたところでした。」
『……ええ。 詳細は直接会ってからの方がよろしいかと。』
「早いですね? ……もしや
『ええ。 実はエニアグラム卿からグリンダ騎士団のオズたちの様子を聞き、グランベリーに行きたいとのことで連絡しました。』
「……『考えていることは同じ』、との解釈で良いのかしら?」
『私だけでなく、貴女もそうおっしゃるのなら、ほぼ間違いないと思います……でもよろしいのですか?』
「??? 何のことでしょう?」
『少々……いえ、正直に言いますとかなりシビアで厳しい局面に苦労をしますよ?』
「あら、それは貴女にも当てはまることではなくて? 彼の近くに居るなら、これくらいどうということはありません。」
『……やはり考えていることが同じのようですね。 意外と似た者同士なのかもしれませんね、私たち。』
「
『フフ、まったくその通りですね。』
「ではもしや、サエコ・ブスジマはタイゾウ・キリハラの命で────?」
『────いえ、彼女は自分の意思でそばにいます。 タイゾウ殿の思惑に気付きながら、敢えて乗っている部分もあると思いますが。』
「あら、意外ですわ。」
『サエコの話では、幼少の頃に彼との縁があると────あ。』
ニッッッコリ。
「……あらあらあら、面白そうな話ですわね♪」
『あ、あはははは……で、では大きな恩を持つ者同士、これからもよろしくお願いしますね?』
「ええ、こちらこそ。」
ピッ。
「(さて────)」
マリーベルはすぐに端末を操作し、新たな通信を開く。
「────シュバルツァー将軍? ネッサローズを少しお任せしてもよろしいかしら?」
「グランベリーへようこそ。」
い、今
『メイクをし直して中華連邦以来着ていないネモ衣装をしてからグランベリーに着いたら何故かグランベリーをノネットに(多分)もぎ取られたグランベリーにマリーベルがいて俺たちを出迎えていた。』
な、何が何だか俺にもわからん……
「……」
隣にいるノネットも、少し顔が引きつってる。これはどうやらサプライズとかドッキリじゃないようだ。
「急な訪問に対応してくださりありがとうございます。」
レイラたんだけがちょっと違うというか冷静だったので知っていたっぽい。
それとな~んか『察している』感が拭えない。
「んんんんん? もしかして……」
チラッ。
「ん~……そういうことか。」
どういうことや。
横目でチラッと俺を(多分)見たノネットさんや、ちょいと説明を俺にもプリーズ。
って、あまり時間は割きたくない。
超合集国連合が全力でエリア11を日本に戻す
「急に来て申し訳ない、マリーベル皇女。 だが、ランスロットとヴィンセントのパーツを少し分けてもらえないだろうか?もちろん対価は払う。」
「あら?」
あれれ?
何か不味いことを……いや確かに不味いか。
ブリタニアで量産化の目途が立っているとはいえ、ブリタニアの最先端技術を使ったランスロットやヴィンセントタイプのパーツを他勢力に気軽に渡すわけにはいかないだろう────
「────そうですね……では傭兵団である、あなた方には依頼を一つ受けていただきましょう。」
はぇ?
おっとっと、思わず気の抜けた声を出しそうになったぞ。
『ヘルメットがなければ』、だがな!
「今、ブリタニア帝国の状況はご存じでしょうか? 南の神根島周辺に皇帝派の勢力が集結しています。彼らを牽制できるのは、今のところ私のグリンダ騎士団だけですが────」
「────そうか。 ならばなおさらパーツが必要だな。」
「え?」
理由は単純に、リア・ファルでパーツ不足が発生しているからだ。
元々新造艦であることもあり、アマルガムは黒の騎士団から支援を受けているものの、KMFなどのパーツはちょろまか────ゴホンゲフン、別ルート等から入手していた。
そして俺
幸運なことにKMFパーツはユニヴァーサルスタンダードだということからオズO2で登場した
え? 『だったらなんで素直にマリーベルの依頼を受けない』だって?
今のアマルガムは『プレイアデスナイツ』という傭兵団に偽装している。
そして現在の依頼主は『黒の騎士団のゼロ』となっている……らしい。
レイラたちの話からそう俺は勝手に解釈しているがほぼ間違いない。
その『プレイアデスナイツ』がエリア11の返還が宣言された直後、ブリタニア側についてみろ。
絶ッッッッッッッッッッッッッ対に世界中から邪険にされるとか注目を浴びる上に元依頼主であるゼロの面子が悪くなりかねない。
傭兵はこの世界でもあまり良くない固定観念というか、印象を持っているからな。
現に俺がwZERO部隊に潜入したときも、最初は全員怪訝そうに俺の様子をうかがっていたし真意も疑っていた。
あと平和な世の中になったあとに『テロ組織』として超合集国連合認定されて、グリンダ騎士団の粛清対象になるとか。
だが『依頼が終わって独自にどこか行った』となれば話は別だ。
最悪『どの国にも所属していない
それに、あの大量のフレイヤが来たことから多分
悪魔城〇ラ────じゃなくてラピュ〇ならぬ、『超大型浮遊要塞ダモクレス』。
なら下手に数を増やさず、少数精鋭でブレイズルミナスを突破して一気にフロートシステムを壊し、使用不能にさせつつ神根島にある遺跡を破壊する。
そうすれば、ラグナレクの接続は止まる……あるいは遅くなるはずだ。
ベストなのはダモクレスを攻略しつつシャルルかアーニャ(の中にいると思われるマリアンヌ)の二人が遺跡に入る前に動きを止める。
元々『ラグナレクの接続』は二人のエゴで行う予定のものだからな。
「パーツだけ? つまり、あなた方だけで大丈夫……だと?」
おっと、考え込んで黙っていた所為かマリーベルが確認を取ってきた。
「ああ、
「フム……」
あ。
そういえば、オルドリンとオイアグロの力も借りたいな。
二人は原作でもノネットやビスマルクが警戒するほどの実力者だし、頼りになるからな。
「オルドリン・ジヴォンとオイアグロ・ジヴォンは大丈夫か?」
それとなく、二人を話題に出して────
「「────なるほど……だから────」」
え? 何が『なるほど』になるんだ、レイラにマリーたん?
「────実はオズ、先の戦いで……」
マリーベルが視線を外し、何か複雑そうな表情をしている。
彼女の反応を見て、何とな~く察した。
多分だが、あれだろう。
オズO2の後編で、ダモクレス戦に参戦したオルドリンはバカスカと撃たれるフレイヤの所為で消滅する味方機や皇帝ルルーシュに完全洗脳されたブリタニア軍との全面衝突でただただほぼ意味もなく散っていく命を見てトラウマになりかけたシーンがあった。
それに近い、あるいは時期的に早まった分や『無慈悲なマリーベルの串刺し事件』を経験しなかったことを考えるとよりひどい状態かもしれない。
それなら仕方がないか。 どれだけ武力に才でてようが、なんだかんだでオルドリンは17歳な上にそれなりにぬくぬくと従者付きの貴族令嬢として育ってきたんだ。
どこぞのじゃじゃ馬アホ毛付き
「……そうか。 話をしようと思ったのだが……いや、一応話はしたい。」
「「え?」」
俺の言葉にレイラとマリーベルの声が重なり、ノネットの顔がニカッとした笑みをする。
一瞬カレンの笑顔が重なったが……何故に?
「えっと……ではエニアグラム卿、お願いしても?」
「ああ、部屋割りは変わっていないんだろ? 任せな。」
「では、私はマリーベルさんとブラッシュアップを済ませておきますね?」
『ぶらっしゅあっぷ』って何ぞや?
でもレイラの事だから、何か考えがあるのだろう。
何せ彼女に神根島に行くことを伝えた瞬間に『分かりました、出発は何時ですか?』って即答してきたし。
しかもどこか得心が行った様な顔までして……
「んじゃさっさと行くよ少年!」
グッ!
ノネットが俺の腕を掴み、すごいGが体に乗り掛か────
ビュン!
へ────
ダカダカダカダカダカ!
ちょ────
ゴォォォォォォォ!
待っ────早いし腕が痛いし轟音がするし引きずられて痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
…………
………
……
…
「エ、エ、エニアグラム卿?!」
「やぁ、オイアグロ!」
「そ、それと君の背中でぐったりしているのは────?」
「────ネモ。」
し、死ぬかと思った。
いやロスカラでノネットが結構マイペースと言うか強引というか、あのコーネリアを悩ませ&本気で困らせるぐらいに振り回していることは(原作)知識として知っていたが、いざ体験すると想像以上にゴイスーであるな。
語尾が少し変になったが気にしないでくれ、ちょっと疲れただけだ。
精神的に。
「『ネモ』? 中華連邦で天子様の式を……オズの知り合いだったのか?」
「そうだね。 彼女に話があるそうだよ?」
「そうか……果たして彼女を元気づけることが出来るかどうか見極めよう。」
なんだか『娘ラブなパパの面接』感が半端なく高い言葉のチョイス。
あとオイアグロの周りの気温が寒くなったような気がするが……空調の効き過ぎかな?
ガチャ。
ドアを開けると保健室などで嗅ぐ消毒液の混じった匂いが鼻をくすぐる。
「ぁ……エニアグラム卿……」
そして中には擦り傷や生傷を覆うように包帯が巻かれ、一瞬だけ怯えたような顔をしたオルドリンはノネットを見て明らかに安堵する。
「えっと……どなたでしょうか?」
そして近くで包帯を巻き直していた犬耳ヘアスタイル褐色ガーターベルト付き属性モリモリメイドのトトが俺を見て訝しむ表情を浮かべる。
取り敢えずヘルメットだけを取ろう。
カチャ。
「俺だ。」
「あ、貴方だったのですね。」
「そうだ、俺だ。」
「気付きませんでした。」
「フ、暇を持て余しているわけではないがな。」
「まぁ、そう言う遊びですのね?」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
ようやく! ようやくここまでこのコントを自然に続けられる人がまさかのまさかで真面目で委員長っぽいトト(神(?))だったとは!
説明しよう!
トト・トンプソンはオルフェウスとエウリアがギアス嚮団から脱走した後、『自分が一番年上だから』と謎の責任感に他の孤児たちの面倒を見ている間に
「また笑った……」
ん?
「なんだ?」
「い、いえ何も……ええ、何も……」
俺の声にハッとしては目をスッと逸らすオルドリンだが、やはりどこか浮かない顔をしている。
「一つ聞いていいかしら?」
「??? なんだ?」
「貴方は、怖くないの?」
『怖くないの?』、か。
ド直球に来たな。
というかやはりオルドリンは参っているな。
「怖いさ。」
「「「「え?」」」」
俺の本心にオルドリンだけでなく、周りにいた全員から意外そうな声が来る────ってなんでじゃい。
一期の終盤で全くフラグも何も立てていなかった井上さんなんて『え?』の次の瞬間にドカンとコックピットが撃たれて呆気なく死んだんだからな!
いつポッキリと突然死んでも全然不思議じゃないコードギアスの世界だぞ?!
そら怖いに決まっとるがな!
「で、でも貴方……いつも、その────」
「────意外か? だが怖くない方が俺にとっては不思議なことだ。 『恐怖』を感じるのは正常な状態と考えている。」
「でしたらその……シュバールさんはなぜ、いつも前線に?」
「そうだな、怖いが……それよりも自分が何もしなかったせいで、知人が傷つくほうが怖い。」
「「「「ッ。」」」」
隣のレイラからの質問に首を向けながら答えると、周りから息を飲むような雰囲気がする。
でもそうか……オルドリンは無理そうか。
「オズ、ランスロット・ハイグレイル……あるいはトライアルを貸してくれ。」
「え────?!」
「────な、何を────?!」
「────
ランスロットやヴィンセントタイプのパーツを流用するより、その方が確実だからな!
性能も折り紙付きだし、これならば────
「────あ、あなた怖くないの?!」
「だからさっきも言ったように怖い。 だがやるしかない。」
「「……」」
う~ん……ポカンとしているオルドリンとトト、可愛いな!
「あら、それはオルドリンが決められることでないわよ?」
え?
「所属が変えられたとはいえ、彼女はあくまで騎士でありKMFその物の所有者ではありません。 ですので先ほどの依頼を受けてくれれば貸し出す事も許可します。」
「え? で、でも私たちはエニアグラム卿────」
「────確かにオズたちの指揮官にはなったよ? でもラウンズである私がこのままグリンダ騎士団を指揮下に置いているとなると、色々面倒事になるからね────」
「────ちなみに依頼の報酬は『私自身』ということでよろしいでしょうか?♪」
「「「「え。」」」」
ゑ゛。
俺の(内心での)驚愕と、周りからの気の抜けた声が重なり、そんな俺たちを見ていたマリーベルの顔はニコニコと────
「────な、何を言っているのよマリー?! 冗談言わないで!」
さっきまで暗~い空気を発していたのが嘘かのように元気になったオルドリンの大声が室内に響いた。
「あら? 私、冗談を言ったつもりはなくてよ、オズ────?」
「────それは私が認めないわ! 前に言ったと思うけれど、マリーの相手はマリー並みに強い人じゃないと断固反対するわよ?!」
「ではオズは先の戦いで姿を見せた
「いや無理でしょ。 クルルギ卿とエニアグラム卿が二人がかりで対応したのに仕留められなかった相手なんてナンセンスよ。 そもそもアレ、完全に人間をやめているような機動だったじゃん。」
「では、セントラルハレースタジアムで未調整のヴィンセントでトライアルに騎乗した私に付いて来れた方は?」
「それも無理。 私より強いマリーにそうやって土壇場で付いていける人なんて私、初めて見たし。」
「ではもしその方が野心的な理由ではなく純粋に周りの為に力を使う男性だとしたら?」
「なにその理想高めの完璧人間? でも……そうね、尊敬に値するわ。」
「あら、尊敬だけ?」
「まぁ……マリーたちの事もあるし、その……『会って話がしたい~』とか『どんな人かな~』とかいろいろと思うところは────」
「────ですって────♪」
「────って、私の事じゃなくて今はマリーの話でしょう────は?」
マリーベルが満面の笑顔でこっちを見ると、オルドリンの視線も俺に移る。
……え?
もしかしてマリーベル、俺が
俺でさえ、つい最近まで知らなかったのに?
そもそもセントラルハレースタジアムの事、俺は言っていないぞ?!
アレを知っているのはマーヤ、アンジュ、ライラ、レイラ、毒島……だけのはず。
パチン♪
しかもこのタイミングでウィンクしてきたぞ、
……恐ろしい子?!
ハッ?!
そう言えばマリーベル、原作のオズではルルーシュの意図────ゼロレクイエムをルルーシュが新皇帝を名乗った時から既に察して、独自にエリア24を動かしていたな。
そこで『悪逆非道の皇帝ルルーシュ』は『悪意』を、『悪しき魔女のマリーベル』は『恐怖』を、世界のそれぞれ『西』と『東』で担当していた……と思う。
しかもマリーベル本人はスザクと同等の
はず。
すっかり忘れていたぜ。
つまりマリーベルは『スザク並みの武』に『ルルーシュ並みの戦略家』という大変ドちゃクソチートかつ、『サバイバーズギルトなどから来る不安定な精神』というデバフ持ちだったということに……
でもそのデメリットの『不安定な精神』を、俺がミス・エックスならぬ『
……………………………………………………………………………………………………恐ろしい子!*注*二回目
「え。 その意味ありげなウィンク何、マリー?」
「だって、彼が噂の
「え。」
頼む、オルドリン。 そんな宇宙猫のような目で俺を見ないでくれ……
思わず頭を撫でたくなる。
「ですよね、エニアグラム卿?」
「あちゃ~、やっぱりマリーベル皇女にはお見通しだったか。」
「え。」
恐ろしい子!*注*三回(ry
いや落ち着け。
きっとマリーベルの『報酬はわ・た・し☆』はオルドリンの気を紛らわすための冗談だ。
「と、とにかく! そんなことを認めるぐらいなら私がハイグレイルで出て頑張るわ!」
よっし! オルドリンの言質をゲット!
「そうか。 ならば
「へ。」
やっぱりぽかんとしたオルドリンは可愛いな~。
この後、リア・ファルは何の連絡もなく南下をし始め、それに連鎖するかのようにマリーベル率いる天空騎士団にノネットの指揮下にあったグリンダ騎士団が動き出す。
そしてイカルガも、彼らを追うかのようにトウキョウ租界から旅立った。
誰もが救助活動、瓦礫の撤去、復興工事に勤しんでいたために、あまり気を留めていなかったが、この時点で誰も想像すらしていなかったと言えるだろう。
まさかたったこれだけの戦力が『世界の在り方を選ぶための、雌雄を決する戦場へと旅立った』と。
すみません、展開を進めるために色々端折りました。
余談:
小悪魔マリーベル、久しぶりに降臨。
どうでもいい余談:
ちょっと色々あって疲れ気味&テンション低めな作者でした。