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ダカダカダカッ!
すばる は にげる をつかった!
学校後、こっそりと裏口から脱出しようとした俺はナオトさんに捕まって、そのまま年季の入った木造の道場まで連行された。
しかし まわりこまれてしまった!だよトホホギス。
「ここが私の通う道場だ。 “通う”と言っても、気分次第で来る程度だが。」
そして後ろから前に出た毒島はそう誇らしく、完全にドナドナ気分の俺へと告げる。
ちなみにカレンは途中で『飽きたからもう帰るねぇ~!』でもうここにいない。
ちくせぅ。
道場内から活気に溢れた声が外まで響き、俺はとある単語と俺の『絶対に会ってはいけない人物』リストの上位の者の姿に固まった。
「む?
「今日の私は非番だ。 スザクは父親といる。 今日は何か外せない用事があるらしい。」
毒島が話しかけたのは正座から立ち上がった『
日本軍の中佐で、原作では日本侵略の際にブリタニアが使用するナイトメア相手に純粋な状況分析から生じた戦術と戦略、そしてそれらを扱う指揮で通常兵器を使い、勝利したことから『奇跡の藤堂』と日本軍と後のレジスタンスの希望として担ぎ上げられる人物。
ある意味、あのルルーシュと渡り合える思考能力を持ちながら本人自身も戦えるという数少ない『文武両道』の人物だ。
軍人の出立ちの所為で固定概念や義や先入観などに囚われやすく、時々それらが足を引っ張るが。
しかも毒島の言った『枢木』と、藤堂の言った『スザク』は十中八九、『枢木スザク』の事だろう。
こちらもまたコードギアスの中心人物……と言うか、『もう一人の主人公』とも呼べるような存在だ。
その『枢木スザク』が居ないのは良かったが────
「────ッ!」
藤堂鏡志朗の視線が俺に向けられた瞬間、ヒシヒシと伝わってくる覇気に思わず身構えてしまい、隠し持った(手作りの)暗器に一瞬だけ手が伸びると彼の目が細められて俺は身体の動きを止める。
「………………毒島くん、彼は?」
「半瀬昴と言う者です。 ナオトに何度か勝ったことがあるらしいので、今日は両名とも連れてきました。」
「ふむ……」
藤堂鏡志朗がジッと俺を見ては────
「────毒島。 彼と一試合をしてみてはどうか?」
「え────?」
「────良いのですか、先生?!」
俺の言葉を、目をキラキラと輝く毒島が遮った。
なんだ?
今までクールに徹していた彼女が、急に水を得た魚みたいに元気になったぞ?
いや、もっと具体的な例えをするのなら血の匂いを嗅いだサメだな。
「うむ。 私から見ても、彼ならば君と渡り合えると見た────」
「────あの────」
「────ではすぐに着替えて参ります先生────!」
「────だから私────」
「────うむ。 君も着替えてきなさい。」
「……………………………………………………………………………………はい。」
俺の意見は無視ですか?
そうですか、
ミーンミーンミ~~~~ン。
またもドナドナ気分のままと今度は短命な蝉の気分も混ざり、剣道着に着替えさせられてからまた道場内へと戻される。
主にナオトさんに。
『おい、アイツ……』
『今度の餌食は新入りか? ……先生が間違えるなんて考えにくいが……』
『おい、誰か救急車を前以て呼んどけ。 “毒島案件だ”と言えばすぐに来るはずだ。』
そして周りから聞こえてくる声に、なぜ毒島が嬉しがっていたのか分かったような気がした。
てか最後のヤツ、『毒島案件』ってどいうこと?
ドナの?
「行ってこい、昴!」
「ナオトさん、恨みますよ?」
「骨は拾うぞ?」
「死ぬ気は毛頭ない。」
「だろうな! まぁ……頭部への直撃だけは何としてでも防げ。」
荷馬車が~ゴトゴト~子牛を乗せて行く~♪
そう言われながらナオトさんに背中を押されるまま俺は中央の開けた場所に足を運び、同じく剣道着に着替えた毒島が構えると俺も反射的に構える。
それだけで周りは静まり返ること数秒間、先に訪れた沈黙を破ったのは毒島だった。
「先手が欲しいのならくれてやるが?」
「いえ、レディファーストですので。」
「では────」
その瞬間、明確な
「────参る!」
まるで血に飢えていた猛獣が檻から解き放たれた幻覚を目の前にしたような気分の中、嬉しそうな毒島が鋭い突きを俺目掛けて繰り出す。
「(うをぉぉぉぉ?! マジかぁぁぁぁ?!)」
予想以上に速い『それ』には、
藤堂の『三段突き』。
同じ世界とは思えない、最先端技術が満載されている
使用者は違うが、他メディアで見たものと目の前の毒島の動きは酷似していた。
それを俺は反射的に持っていた竹刀をそのまま上げながら、左右へと一撃目と二撃目を避け、本命と言うか最後である突きを受け流すとバックステップで距離を取り、竹刀を構えると毒島もまた竹刀を元に戻そうと────
「────両者、そこまでだ。」
「え?! せ、先生?!」
「……」
「なぜです?! まだ一度しか────!」
「────そこまでだ、毒島。」
だが藤堂の制止の声により、試合は続くことは無かった。
俺としてはスッゲェ助かるが、毒島はブッス~と頬を膨らませて不機嫌になり、いつの日か俺に再試合を約束させた。
というか地味に毒島の気迫が怖い。
これ、もうすでに誰かを
それに予想外に
本当に瞬きの一瞬だけだから『気付くのはもはや不可能に近い』と思いたいが……
…………………………どうしてこうなった?
「スッゲェよ昴! 毒島のアレを初見で防いだの、初めて見たぞ!」
「ナオトさん、夜でも良いので『ビッグモナカ』と『ラムネ』を1ダースずつお願いします。」
「え……………………そ、そんなに食べれるのか?」
「半分はカレンの時間稼ぎ用です。」
でないと俺の食べる分が無くなる。
「へぇ~? そういうときもカレンのことを考えるのか?」
なんだ?
ナオトさんが急におっさんみたいにニマニマし始めたぞ?
「アザラシのぬいぐるみもこの間、屋台で勝ち取ってプレゼントしていたもんな~?」
いや?
それは原作で彼女の部屋で見たことのある
そもそもナオトさんが今日みたいに、射的の屋台へと引っ張ったのが事の発端じゃないか?
なんかそう考えたら腹が立ってきた。
「取り敢えず、『ビッグモナカ』と『ラムネ』を1ダースずつお願いします。 でないと留美さんに北東から二番目の畳の下に隠してあるナオトさんの本の隠し場所を教えます。」
勿論そんなことが言えることもなく、俺はただナオトさんを脅すだけに押しとどめた。
「お、おお……わかった。」
そしてまたもドン引きされるとは何ぞや?
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藤堂 視点
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藤堂にとって、スザクの次か同等の問題児お気に入りである毒島がある日突然、いつものようにフラッと道場に来ては見慣れない子供を連れて来た。
彼の第一印象は『チグハグ』だった。
見た目や仕草は年相応の子供の振る舞いだったが、浮かべていた笑みは舞踏会や会場などで汚い政治家たちが互いを騙し合うときによく使う『仮面』に似ていたという印象を藤堂に与えていた。
「(加えて私の覇気をぶつけた瞬間、彼は立ちすくんだり泣いたりするどころか一瞬だけ闘志を示していた。)」
そう、それが何よりも藤堂が感じた『チグハグ』と言う印象を裏付けていた。
軍人である藤堂の覇気は、並大抵のものであるならばすぐさまに『恐怖』と『従属感』を本能に叩き込む、いわば『威嚇』にも使えるレベルのモノだった。
「(それを僅か九歳である子供が、臆せずに戦う構えを取るか。 そんなことをしたのは毒島以来だ。)」
藤堂は未だに試合を中断させられてどれだけ不服なのかを訴える毒島を見ながらそう思う。
「(それだけでも『何かがある』と思わせるには十分だ。 だというのに、見よう見真似で毒島がほぼ完ぺきな状態で繰り出した私の三段突きをいなすとは……しかも
最初の突きに対し、竹刀を上げたがそれを受け止めるのではなく敢えて躱し、二つめの突きも躱すなどと……どれだけの思考能力と身体能力があればできるのだ? 九歳の子供に?)」
藤堂の『三段突き』は文字通り、三つの突きの一つ一つが本命になり得る威力を持ち、敵に一度目や二度目の突きをどうにかしても、三つ目の突きが待っていると思わせないほどの連続攻撃。
「(しかも三つ目の突きに関しては、躱すどころか受け流してすぐに迎撃態勢に入っていた。毒島やスザクも研鑽を重ねれば出来るかも知れないが、今は無理だろう。 私が思わず、止めに入るほどの者……『
それは果たして、容赦のない毒島から彼を守る為か? あるいは────)」
「────先生? 何かいいことでもあったのですか?」
藤堂は気付いていなかったが彼の頬は緩み、僅かながら笑みになっていた。
「ん? いや、何も。 (全く……末恐ろしいよ、新しい世代が。)」
この時は丁度、日本の桜が咲き始めていた春の皇歴2010年4月であったこともあり、そよ風で桜の花びらが道場周りを舞っていた。
尚、藤堂のこの考えを
彼に信じられるかどうかは二の次として。
そして皇歴2010年8月10日、日本に対してブリタニア帝国は宣戦布告を行い、空陸海からの同時四方面の電撃侵略を開始することとなる。
皇歴2010年9月、内閣総理大臣である枢木ゲンブは自宅で己の銃で自らの頭部を撃った状態で発見される。
死因は徹底抗戦を宣言し、立て続けの敗戦に敗戦を重ねた責任感からの
日本政府はこれを機に、正式にブリタニア帝国へと降伏を申し出た。