小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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作者:『次話が火曜日になると言ったな。 アレは嘘だ。』 ←シガーチョコ
おはぎちゃん:投稿できたよー。 ながいし『かおす』?だよー。


第296話 『□の名において汝、罪在りし者なり』2

『どうしてって言われても……()()()()()に決まっているじゃない。 貴方だってそうでしょう? 私との戦いで、生と死の境界線ぎりぎりのダンスでの充足感を貴方()感じていたでしょう?』

 

「(とてもじゃないが、やはり今のは彼女()()()()()。)」

 

 マリアンヌが発した通信を聞きながらランスロット・フロンティアの中にいたC.C.はCの世界で感じていた『違和感』を『確信』へと変えつつ、ドルイドシステムをフルに使った。センサー妨害で周りの空域の存在感を薄くさせた蜃気楼に気付いた敵を、次々と撃ち落としていく。

 

「(だがそうなると、アレは誰だ? Cの世界は人間の心と記憶が集まる『集合無意識』、他人に成りすますなんて芸当は事実上()()()に近い。 可能性があるとすれば『認識』を変えることだが……『認知を偽る』など、それこそ神の領域……)」

 

『ふざけるな! そんな……そんな! 人の事を……人殺しの事を、何だと思ってやがる?!』

『う~ん……遊び場?』

 

「(ルルーシュは、どう思っているのだろう?) なぁ、ゼロ────」

『────なるほど。』

 

「(今ので何に気が付いたのだ?) ゼロ、このままでいいのか?」

 

 心配したC.C.の言葉を、何かに納得するかのようなルルーシュが遮るとC.C.は念を押すかのように再度確認を取る。

 

『問題ない……と言いたいところだがいかんせん、時間も現時点で動かせられる人員が足りない中でこれが最も最適(ベスト)の行動だ。 ギリギリの合格点だがな。』

 

「そうか。」

 

『そろそろ例の洞窟に着く。 降りたらさっさと遺跡に入る。』

 

「KMFを置いてか?」

 

『俺の予想通りならば、この先KMFは必要ない。』

 

 

 ……

 …

 

 

『う~ん……遊び場?』

 

 アルビオンからの通信を聞いた瞬間、ダモクレスの制御室の中にいた者たちはカノン含めて唖然とする。

 

 「“遊び場”?」

 

 しかしシュナイゼルだけは疑問を持ったかのように、珍しく眉間にシワを寄せたがハッとしてはすぐにいつもの表情に戻っては座っていた席から立ち上がり、そんな彼の行動を見てカノンが声をかける。

 

「殿下?」

 

「カノン、退避命令を出してくれ。 君たちも自動迎撃システムを全て作動させた後、退避して構わない。」

 

「「「「「は?」」」」」

 

「さて、いくか。」

 

「で、殿下!」

 

 カノン、そして制御室にいた者たち全員が驚愕の表情をそのままに気の抜けた声を出すが、シュナイゼルは彼らの様子を気にするそぶりを見せずにそのまま端末を使ってから歩き出すとカノンが慌てて後を追う。

 

『遊び場? 遊び場?! 戦いが遊びなものか! 何かを成す為ならばまだしも、自分の娯楽の為だなんて! お前は、許せない!』

 

 「あの時から何かがおかしいと思っていた。 しかしこれで理解が……納得も、得心も……今、私がすべきことは……」

 

 レヴナント(スバル)と思われる少年が発した通信を背景音に。

 

「殿下、お待ちください! どこへ行こうというのですか?」

 

 「ブツブツブツブツブツブツ。」

 

「(殿下が、没頭されている?!)」

 

 しかしどれだけ声をかけても返事が返ってくるどころか頬杖をしながら長い独り言を続ける、眉間にシワを寄せるよりも珍しいシュナイゼルの仕草に、今の彼に何を言っても無駄だと悟ったカノンは後を追って自分の事に気が付くまで待つことを選んだ。

 

「(え?)」

 

 しかしとうとうとある格納庫内に辿り着いて、シャルルが自分専用に作らせた物と同じ小型艇が収納されている様子を見てカノンは思わず足を止めた。

 

「(もしや、殿下は────)────殿下! もしや、退却するのですか?!」

 

「ん? 何かおかしいかい?」

 

 ここで叫ばれてようやくカノンの存在に気が付くかのようにシュナイゼルが声を出す。

 

「殿下が、『逃げる』選択をするなど────!」

「────そうか────」

 

 パァン!

 

「────え?」

 

 鋭い、乾いた発砲音と同時にカノンは振り向きざまに拳銃を自分へと向けていたシュナイゼルから、お腹からくる違和感へ視線を向けるとジワリと赤くなっていく自分の服を呆然と眺めていた。

 

「(撃たれた────?)────ウッ!」

 

 自分が撃たれたと認識した瞬間、腹部からの痛みがカノンを襲ってカノンは思わず膝をつく。

 

「残念だよ、カノン。」

 

「で……んか……」

 

 カノンは苦しみながら上記の声を出しながら、目で訴えた。

 

『なぜ』、と。

 

「残念だよカノン……」

 

 それだけを言い残しシュナイゼルを、カノンは腹部の血を両手で押さえながら小型艇に乗り込む彼の背中を目で追った。

 

「(殿下……)」

 

『何かを成すためならまだしも! お前のような奴みたいに! 戦い自体を好んで、人殺しを平気でやれるなんて! 貴様のように、悲しみを! 理解を分かち合おうとしないお前こそ、【悪】だ!』

 

 

 続くレヴナントの通信はまるで、そんなシュナイゼルを責めるかのようだった。

 

 それ故かシュナイゼルは乗り込む直前、カノンを横目で見ながら口を開けた。

 

「恐らくもう、()()()()()()()()()()……さようなら。」

 

 それは一瞬だった。

 

 ほんの一瞬だけだがシュナイゼルは残念そうな眼を向けて、残念そうな声で上記をカノンに言い放ってから小型艇に乗り込んで、その場を後にした。

 

 

 ……

 …

 

 

 

 同時刻、記憶頼りに神根島にある洞窟内をゼロの衣装を身にまとったルルーシュとC.C.は歩いていた。

 

「……そう言えば今更だが、お前(C.C.)はここのことを知っていたな?」

 

「何の話だ?」

 

「とぼけるのか? ブラックリベリオン時にナナリーが攫われた時のことだ……それとも老いぼれて記憶が曖昧になったか??」

 

「バカにするな、ここ数百年のことなら細部まで覚えているぞ。 その前に私から質問だ。 お前なら先にあの巨大要塞を何がなんでも手に入れてから行動するかと思ったぞ。」

 

「確かに、このままシュナイゼル共々あの巨大要塞を鹵獲……いや、今の状況では悪手だ。 本音を語るのなら、そうしたかったが……時間も人員もないことを踏まえた上ならば恐らく()()な事だろう。」

 

「どういう意味だ────?」

「────続きはこの扉をくぐってからだ。」

 

「……お前にこれが開けられるのか? 筋肉痛になっても助けんぞ?」

 

「フ……バカにするなよ、ピザ女。 (多分)このぐらい、どうということはない!」

 

 遺跡の門の前にまで来たルルーシュは自分をからかうC.C.の言葉をあまり間に受け取らず、そのまま感化されて筋トレ(弱)してきたことを彼女に当て付けるかのように体全体を力ませて門を開ける。

 

 ゴゴゴゴゴ。

 

 一瞬だけまばゆい光が二人の視界全てを覆い、視界がクリアになると二人は夕暮れの光に照らされた図書館のような室内を見渡す。

 

「来たか。」

 

 その中にはまるで暇を持て余して立ち読みをしていた様子のシャルルが手に持っていた本を閉じ、C.C.とルルーシュへと開き直る。

 

「さて……単刀直入に聞くぞ、皇帝シャルル」

 

「ん?」

 

()()だ?」

 

 ルルーシュはシャルルの威厳のある姿勢と威圧感を与える視線に怖気づくことなく、真っすぐと正面から問いを投げた。

 

「貴様の問いは漠然過ぎるぞ、ルルーシュ。」

 

「では問い直そう。

『何故』わざと帝国を二分化するような行動に出た?

『何故』巨大要塞などを使って明確な悪となった?

『何故』わざわざ二分化した帝国の敵となった?」

 

「『必要』だったからである。」

 

 問いへの返しを一言で済ませたシャルルに対し、ルルーシュの抑え込んでいた感情が抑えきれず爆発しそうになっていった。

 

 「ならば『何故』母さんが生きていることを今まで隠してきた?!

『何故』俺やナナリーを日本に身一つで送った?!

『何故』俺たちがいるにもかかわらず、日本を占領下に置いた?!」

 

すべて、『必要』だったからである。」

 

 ギリっ。

 

「貴様────!」

「────そう言うところは変わらないなシャルル────」

「────C.C.────?」

「────お前、()()聞きたいことがあるんだろう?」

 

 C.C.の言葉にシャルルは視線先を彼女へと変え、目を細める。

 

「そうだ。」

「なんだ?」

「あの時、『何故』死のうとした?」

「……」

 

 シャルルの言葉でルルーシュは今まで見落としていた『小さな違和感』に気付かされたことが悔しかったのか、バツが悪そうに眼を逸らす。

 

「(そう言えばあの時、こいつ(C.C.)は自らの命を絶とうとしたな。 俺としたことが、何故今まで見落としていたのだろう? ……いや。 あの時はかなり焦っていた上に、C.C.が記憶を失くしたことで有耶無耶になってしまって超合集国のことで────)」

 

「────あの時は『死ねたから』だよ、シャルル。」

 

「ほぉ?」

 

 「(は?) は?」

 

「……『驚かない』ということは、『予想していた』と取っていいのか?」

 

「違うな。 ただの『確認』だ。」

 

 C.C.の質問に対して出したシャルルの答えに、考えを口にしたことで少し冷静さを取り戻したルルーシュは、再び口を開いた。

 

「そうか……ならば『何故』貴様は俺たちを止めようしなかった? わざわざ自軍が足を引っ張り合うように仕向けず、シュナイゼルとあの巨大要塞にフレイヤがそろっていれば容易に出来たはずだ。」

 

「止める? それこそ、『何故』だ。 これこそ、ワシが目指していた結末よ。」

 

「何?」

 

「そこからは、私が説明するわ。」

 

「ッ?!」

「この声は……マリアンヌか?」

 

「ええ。」

 

 本棚の向こう側から来た女性の声にルルーシュは目を見開き、C.C.は声の主を直感で言い当てると本棚が徐々に消え去り、安堵と憂いが入り混じったような表情をした私服姿のマリアンヌが姿を現した。

 

「久しぶりね、ルルーシュにC.C.。」

 

「母、さん……」

 

「それで? 説明してもらえるのだろうな?」

 

「ええ。 言葉足らずの夫に代わって説明するわ。」

 

 そう言いながらマリアンヌはシャルルを見て、柔らかく微笑んだ。

 

「ね?」

 

「んぐ……」

 

「(スバルからランスロットタイプに乗っていると聞いた時は納得したが、まさか()()()()とは予想外だ。)」

 

「さてと……言いたいことがいっぱいあるのだけれど、どこから話せばいいのかしらねぇ……」

 

「……最初から。」

 

「分かったわルルーシュ。」

 

 混乱していたルルーシュは思っていたことをそのまま口に出してはハッとして口を噤むが、マリアンヌはただニッコリとほほ笑んだ。

 

「ブリタニア帝国……いいえ、『人』が世界的規模に影響を与えられるようになってからの歴史は常に多くの血が流れるモノとなったのは理解しているわね?」

 

「ああ。」

 

「一番わかりやすい例えは戦ね。 人類は言葉を交わせる種族なんだし、お互いが許容さえすれば丸く収まるのにね────」

「────脱線しておるぞ、マリアンヌ。」

 

「あらやだ、ごめんなさいね? つい癖で。」

 

「いくらここと外の時間の流れ方が違うと言っても、時は進んでいるのだ。」

 

「そうね……『あの人』もそろそろ来るタイミングでしょうし。」

 

「(『あの人』?)」

 

「ここからはワシが話そう。 血が絶えない争いは知っての通り、ブリタニアがクレア女帝と彼女の側近たちの手腕にて共和国から帝国に戻ってからは一時低下した。 だが、何も変わらなかった。 彼女たちが老いて亡くなっていくにつれ、帝位に就くため皇室は再び政争……そしていずれ剣と毒と銃弾による競争の舞台へと転じた。 否、『逆行した』というべきか。」

 

「それが今と何の関係がある────?」

「────まぁまぁ、そうせっかちにならないのルルーシュ────」

「────だそうだぞ、ルルーシュ────」

「────お前も便乗するな、ピザ女。」

 

「……コホン。 時は流れ、やがてワシの父上がブリタニア帝国の第一継承者────即ち第一皇子として生まれた。 そして歴史が流れた中でブリタニア帝国の衰退を目にし、クレア女帝の意思を本気で継承しようと決心したのだ。 己や親族の為ではなく『民の為の政治』を目指そうとした理想家であった。」

 

 シャルルの言葉を耳にしたルルーシュの脳内をよぎったのはエリア11、中華連邦、そして蓬莱島の景色だった。

 

「(『クレア女帝の意思』、か。 確か『民衆は支配者のためにあるのではない』、『上は下なしには成り立たない』などといった数々のアレか……子供の頃、ナナリーが良く俺に読ませていたな。 小規模程度ならともかく、帝国ほどサイズとなると……)」

 

「父上は理想家であり、『異端』とも言われたが彼の思想を『異端ゆえに美しい』と魅入られた母上はそれを実現できるよう、父上を支えるために自らの意思で結婚を申し出た。 俗にいう、『恋愛結婚』だ。」

 

「(『恋愛結婚』……貴族、それも皇室にしては珍しいな。)」

 

「その二人が互いを支え合う姿と活躍をワシと兄上は誇りに思い、二人の助けになれるように昇進しようと決めた。

 だが……保守派の策略に、二人は……ワシらは嵌められた。

 父上は視察先で重症になり、それを知った母上はワシと兄上を連れて出たが……母上は、ワシら二人を庇って死んだ。 父上も状態が悪化し、ワシらがたどり着いたころには亡くなられた。 喪に耽ったまま帝都への帰り道に……魔の手は残されたワシら兄弟にまで伸びた。」

 

「(兄上……V.V.のことか?)」

 

「そして……ワシは()()()。」

 

「何?!」

「は?」

 

 ルルーシュ、そしてC.C.はシャルルの言ったことに驚愕した。

 

 

 ……

 …

 

 

「グっ!」

 

「うわ?! っととと!」

 

 遺跡の外にある洞窟内でスバルは力の抜けた足に再び力を入れて踏ん張り、彼を支えていたカレンは姿勢を正した。

 

「ちょっと、本当に大丈夫?」

 

「大丈夫じゃない────」

「────だったら────!」

「────だが、アイツが死んだと確認できるまで、休めない!」

「スバル……」

 

 スバルは歩みを止め、隣で肩を貸したカレンを見る。

 

「(まてよ……この先には門がある。 コードギアスで門を通れたのはギアスに何らかの関係を持った奴だけと仮定したら……) カレン、頼みがある。」

 

「え? な、なに?」

 

「この先にある扉を、もしも通れなかったら……()()()()()にいるアリスやマリーベルを手助けしてくれ。」

 

「???」

 

「頼む。」

 

「わ、わかった!」

 

 

 ……

 …

 

 

「(『死んだ』、だと?)」

 

 ルルーシュは先ほど『自分は死んだ』と言ったシャルルを前に複雑な心境のまま、ポーカーフェイスを維持した。

 

「そうだ。 母上が亡くなり、父上も亡くなったあの日、保守派の凶弾が兄上とワシを乗せた馬車を襲った。 ワシは兄上を庇い、心の臓を貫かれた。 母上の死、父上の死、そして自らの死に直面したそのとき()は悟った……理想の実現にはそれを貫き通す『力』が必要不可欠であると。 その時だった。」

 

 シャルルは挙げた自分の両手を見て懐かしむような表情をする。

 

「『ザ・デッドライズ』。 ()の中で目覚めたギアスをそう呼んでいる。」

 

「『ギアスに目覚めた』?! (自然に目覚められる類なものか!)」

 

「シャルル、それは本当にギアスなのか?」

 

 ルルーシュが横目でC.C.を見ると、彼の疑問を代弁するかのように彼女は問いを投げた。

 

「それは確かである。 そしてコレ(ギアス)は一度滅んだモノを蘇らせる能力である。 蘇った()()は兄上と共に世界に対して怒りを覚え、憎しみ、覇道(はどう)を、歯向かった者たちはことごとく葬った。」

 

「は! 言い方を変えているが、貴様がやってきたことは自分の都合の良いように大義(理想)を掲げながら行動してきた歴代の皇室と何ら変わりは無いではないか!」

 

「……ルルーシュ、貴様の言う通りだ。 そして全く同じことをワシに言ってきた者が────ム。」

 

 シャルルは何かに気付いたのか、口を噤んでルルーシュ達の背後に視線を送る。

 

「「???」」

 

 ルルーシュとC.C.が彼の視線を追うと────

 

「ようやく来たか。」

 

 ────奇妙な空間の中に、パイロットスーツを着た満身創痍のマリアンヌがあんぐりと口を開けながらその場にいた者たちを見ていた。

 

「(何だこれは?! 母さんが二人?! いや、皇帝の言葉から察するに────)」

「────『予定通り』、で良いのか────?」

「────ああ、そうだな。 (多分。)」

 

 ルルーシュは内心で蠢く混乱を一歩手前で必死に止め、C.C.の質問に答えた。

 

「は?」

 

「……」

 

 二人の『マリアンヌ』はお互いを見て一人の顔は困惑に満ち、もう一人は憐れむかのような表情を送った。

 

「貴女は、誰?」

「ただの『マリアンヌ』……かつて、平民だったころにそう呼ばれていたわ。」

「ふざけないで、私が『マリアンヌ』よ。」

「では聞くけれど……貴女は血塗られた覇道の先に、何を求めたの?」

 

「何って……もしも貴女が私と称するのなら、分かっているでしょう? この世の中が、綺麗ごとばかりじゃないということを! どれだけ良いことをやっても! 他人を助けても! 足掻いても! 全部崩れて、忘れられて、使い潰されるだけなのよ?! だったら! 『()()()』、()()()()()()()()()()じゃない!」

 

「……そう。 ならばそこが『貴女』と『私』との間にある、分岐点ね。 だって、私は足掻き続けることを────」

「────そもそも『ラグナレクの接続』はどうしたのシャルル? 邪魔されているの? 手伝う?」

 

「『ラグナレクの接続』を────『嘘偽りのない世界』を未だに欲するのか……」

 

「『未だに』? ……シャルルじゃないわね。 貴方は、誰?」

 

「ワシは神聖ブリタニア帝国、第98代皇帝のシャルル・ジ・ブリタニア……であると同時に、かつて聖エデンバイタル教国(きょうこく)の第一神聖皇帝シャルルと呼ばれた男である。」

 

「……『聖エデンバイタル教国(きょうこく)の第一神聖皇帝』?」

 

 パイロットスーツを着たマリアンヌは怪訝そうな表情を浮かべたその直後、腰に帯剣していた剣を抜くと同時に目にも止まらぬ速さで躊躇なく私服姿のマリアンヌの胸めがけて突く。

 

 ザクッ!

 

 しかしほぼ同時に動いたシャルルが庇い、代わりに刺されるが彼は倒れずそのままパイロットスーツを着たマリアンヌを見下ろした。

 

「もうよいのだ、マリアンヌ。 もう気を張る必要はないのだ。 衆目の目も無い────?」

「────何なのよ、貴方。 まるで本当に二人分の人格があるみたい……いえ。 これは、本当に?」

 

 ビキッ!

 

 その時、パイロットスーツを着たマリアンヌの体から何かがひび割れるような音がした。

 

「なに、これ────?!」

「────十分に楽しめたか、マリアンヌ────?」

「────私に何をしたの?!」

 

「……その体は現状で作ることが出来た中で、一番の出来で強靭な代わりに負担をかければかけるほどに寿命が……()()()縮んでいくのだ。」

 

「え。」

 

 ビキビキビキビキッ!

 

 徐々にパイロットスーツを着たマリアンヌの手足の先から血の気が引いていき、まるで皮膚が結晶化するかのような様子に彼女自身、『信じられない』と言わんばかりの表情で自分の体を見る。

 

「……急に寒くなったわ、シャルル。 どうしてかしら……」

 

 そんな彼女をシャルルはそっと抱き、ずっと気張っていた表情が優しいモノへと変わっていく間にも、彼の腕の中にいるマリアンヌの体はどんどんと色が白くなっていき硬質化していく。

 

「どこ……どこなのシャルル?」

 

「ワシはここに居る、安心せよ。」

 

「……私、我儘ばかりだったわね。」

 

「強者ゆえの我儘だ。 そこに、ワシは確かに魅力を感じたのだがな。」

 

「苦労させたわね。」

 

 「うむ。」

 

「そこは、否定────」

 

 ────バキッ! サラサラサラ……

 

 ガラスが割れるような、一際大きな音が『マリアンヌ』の言葉を中断させて動かなくなった彼女の体は風の中で舞う砂のように散っていきパイロットスーツだけを残した。

 

「……さらばだ、私の知らぬマリアンヌ……そしてワシのマリアンヌよ。」

 

 悲しそうな眼をしたシャルルは腕の中に残ったパイロットスーツを握り、その瞬間、一滴の涙が彼の頬を伝った。




というわけで胃が既にキリキリし出していますすが色々と明かしていきます。


*注*復活に奪還と空白期間などの予定もしていますので続きます。
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