小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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明けましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします。

かなり長めです。
まだカオスです。
温度差が激しくて地味にキツイです。 _(X3」∠)_


第297話 『□の名において汝、罪在りし者なり』3

「……なぁ。 お前、マリアンヌか?」

 

「ええ、そうよ。」

 

 C.C.はそそくさと複雑な表情で静かに悲しみに暮れるシャルルを見守るマリアンヌに確認をするような声をかけると、マリアンヌは苦笑いを浮かべながら彼女に答えた。

 

「最後に会ったのは?」

 

「私が暗殺される直前ね。」

 

「そうか……???」

 

 C.C.は納得した表情を浮かべたが、何かが気になるようで周りをきょろきょろと見渡した。

 

「(なんだ、この誰かに見られているような感覚は?)」

 

「なに、C.C.?」

 

「……いや、何でもない。 (姿は見えない……姿は見えないが……ルルーシュはマリアンヌを、シャルルはルルーシュを見ている。 あとは集合無意識だが、アレが『個』に目を向けることはない筈。 だったらこれは()の視線だ────?)」

「────でも本当に卵肌ねぇ~♪」

 

「・ ・ ・」

 

 そんなC.C.は後ろから抱きつくマリアンヌに、冷ややかな視線を無言で送った。

 

「……本当に、母さんか?」

 

「ルルーシュ……」

 

 ルルーシュの言葉にマリアンヌは頬擦りを止めては彼と向き合うように立つ。

 

「ええ。 今度こそ、正真正銘に貴方が知っている私よ。」

 

「……そう、か。」

 

「あら、信じるのね?」

 

「信じる、信じない以前に超現象が絡んでいるからな。 まずその確認だ、『第一神聖皇帝シャルル』とやらにな。」

 

「そうね。 彼が話せないのなら、私から────」

「────いや、これからは()が話そう。」

 

 黙っていたルルーシュは、目の前の出来事を考え直し、自分の仮説を確信へと変えるため行動に移した。

 

「皇帝シャルル、いや……第一神聖皇帝シャルル、話を続けてくれ。」

 

「その前に聞くがルルーシュ、貴様は『神』に対してどう思う?」

 

「??? なんだ突然?」

 

「答えよ。」

 

「……神とやらが実在しているかどうかは知らん。 そんな不確かな物より、目の前の事を見る方が有意義に使える。」

 

「確かにな。 しかしこう考えたことはないか? 神、全能、高次元者……呼び名は違えど、人は古来より『森羅万象に干渉する存在』を総じてそう呼ぶ。 ならば万物を支配するエネルギー法則────『集合無意識』と神は即ち同義であると言える。」

 

「そして、人が元々集合無意識の一部でありながら、なぜ『分かち合う』よりも『相違を貫く』ことを選べるのか。 それは集合無意識から個になったことでお互いの事を真の意味で理解できなくなったからと私たちは行き着いた。」

 

「より大きな視点から見れば、集合無意識はいわば『人の集積体』……つまり『人の過去』で出来ておる。」

 

「そして『争い』を作ることで『過去』を増やし続けていく。」

 

「私たちはこう考えたのだ。 個を元の集合無意識に戻せば人は元の一つになり、嘘……つまり相違を貫くエゴと隠し事が無くなると共に『争い』が無くなるのだと。」

 

「……哲学を実現させる手段が、この妙な空間か。」

 

「その通りだ。」

 

「常人なら唖然とする場面だけど、やっぱり私とシャルルの子ね。 準応力が高くて助かるわ。」

 

「(以前、C.C.から『ラグナレクの接続』について聞いていなかったら、俺は相当荒れていただろう。)」

 

 ルルーシュが思い浮かべたのは自ら特使としてシャルル本人が交渉の場に来た時、ブリタニア帝国と超合集国連合との間に停戦協定を結ぶ条件として交渉の場で冗談交じりに『日本の返還』を提案したところシャルルが即座に同意した直後、いつの間にか記憶が戻ったC.C.に気付くどころか彼女のからかいを真に受けて荒れに荒れてふとシャルルが零した独り言をC.C.にぶつけた時だった。*1

 

「(『ラグナレクの接続』……人の持つ意識を『独立した個』から『一つの集合体』へと変える計画。 『目標』と『結果』は聞いていたが、『方法』にまさか古代遺跡が関係していたとは……いや、ギアス嚮団が遺跡を拠点にしていた理由もそれか。)」

 

「C.C.、貴様がルルーシュに話したのか?」

 

「別に隠し通すほどのことでもなかっただろ? 急に私がいると邪魔だと言いながら、また私に協力しろと言ってきたのはお前たちだ。」

 

「(一度中止したものを再開したのか────?)」

「────さてルルーシュ……何故貴様を止めずにここまで来れたことは察しているだろう?」

 

「……俺がここに来ること自体が、貴様の計画の一部なのだろう?」

 

「左様。 この空間は集合無意識に干渉できる場所……『アーカーシャの剣』と私たちが呼んでいる思考エレベーターだ。」

 

「なるほど……しかし中止した物を何故再開した?」

 

「……昔の話をすることになるが?」

 

「時間はあるのだ、言ってみてはどうだ?」

 

 ルルーシュの問いにシャルルは目を離し、上空を見上げた。

 

「父上と母上を失い、後ろ盾を失った当時の私と兄上は、帝国内で功績を挙げることに必死だった。 そして皮肉にも兄上はコード保持者と接触してしまい、老いを知らぬ体となったことで表舞台に出られなくなった。 よって兄上は裏の世界を担当し、私は表舞台の政治と武勲を担当した。

 改革には多くの血が流れることが予想できた。 だから私は最小限勝つ最短の方法で権力の基盤を絶対なものにするため、そして出身を問わない採用をし始めたことをよく思わない貴族どもが人事に介入し、有能な者たちを戦場に送り込むことは予想できた。

 だから私は陣頭に立ち、兵を自ら率いていたその時だ。 マリアンヌに……貴様の母と出会ったのは。」

 

「母さんと、戦場で出会った? (これは初耳だな……)」

 

「ええ……あの頃の私は平民ながら戦場で次々と武勲を挙げていたわ。 そうすることでしか、身を守る術はなかったから……

 最初は呪ったわ。平民出身というだけで、無意味に見栄を張った作戦に駆り出され、仲間たちが次々に命を落としていくのを見て、偶然その場にいたシャルルに訴えようと彼のいる場所に無理やり割り込んだわ。 でも、どこか世界に絶望し、諦めていたシャルルの背中を見て、思わずこう言ってしまったの。

 “果たして殿下が真に求められる勝利とは血塗られた覇道の先にあるのか”と。」

 

「そのように意見されたのは初めてで、新鮮であったな。」

 

 

「本当にお前は怖いもの知らずだな、マリアンヌ?」

 

 C.C.の質問にマリアンヌは苦笑いを再び浮かべた。

 

「ええ、本当にね……最悪、不敬罪で首が跳ねられていてもおかしくはなかったわ。」

 

「(あの頃のナナリーは、やっぱり母さんに似ていたのか……振り回される日々を思い出す。)」

 

 ルルーシュはこの時一瞬だけ、遠い目をしたと追記する。

 

 

「しかし、私はマリアンヌの言葉を耳にしてふとした違和感を覚えたのだ。 そしてその違和感の正体を突き止めるために、マリアンヌを傍に置いた……そして、私は彼女の他人を思いやる言動にかつて理想に燃えていた両親の姿を重ねた。」

 

「そして私はそんなシャルルに惹かれ……恋に落ちた。」

 

「しかしマリアンヌは平民出身……よく思わない者たちにとって、私の急所と成り得ると思った貴族たちが他の皇族と手を組んで、私たちを追い落とそうと動き出したのだ。 よって、私がより早く皇帝の座に就くために兄上が色々と手を回して調査をした。」

 

「でも調査の結果、殆どが黒……それどころか、ラウンズさえ私兵化していたわ。 唯一免れていたのが堅ぶ────生真面目なビスマルクだった。」

 

「……『血の紋章事件』を知っているな、ルルーシュ?」

 

「当たり前だ。 クレア女帝が即位するきっかけとなった内戦以来の大事件だったからな。」

 

「そうだ。 ワシは多くの血を流し、粛清を行った。 しかし、勝利の後に待っていたのは戦後処理、人員不足、治安と権威の低下。 私とビスマルクとマリアンヌは日夜問わずに動き、兄上はようやくC.C.を嚮主として祀り上げていたギアス嚮団と接触したばかり……落ち着いたところでマリアンヌを第5皇妃に迎え、幼いころに交わした契約を反故することを兄上に……V.V.に言い渡し、納得させた。」

 

「どう納得させた?」

 

「私とマリアンヌの夢が、兄上とかつて誓ったモノと一致しているのだと……そして、()()()()()()()()()()()()()()()も。」

 

「?」

 

「私……いや、()()はこの身に『ザ・デッドライズ(ギアス)』を宿して以来、違和感を覚えていた。 『何度も似たような出来事を経験している気がする』、とな。 マリアンヌと出会ってからそれ等はより強く感じ、次第にこれから起きるであろう事象が夢として浮上してきたのだ。 それらは、ワシの知る世界と酷似しているようで、微妙に異なっていた。」

 

「(そう言うことか……) 並行世界……あるいはパラレルワールドか?」

 

「恐らくだがワシの体にギアスが宿ったように、ギアスだけでなく……そうだな、言葉にするのならば『可能性の世界に在る様々なシャルル・ジ・ブリタニアという存在の記憶』も宿ったのであろう……さて、ルルーシュ。」

 

「なんだ?」

 

「争いの根源……『相違』を消し、過去と現在すべての亡くなった者たちとの対話も可能となる世界に興味はないか?」

 

 「は?」

 

「ここ、『アーカーシャの剣』に……集合無意識に貴様が命令すればよい。 今この瞬間、この場所ならば、貴様の絶対遵守(ギアス)は絶対的な力を発揮する。」

 

「そ、それは…… (理屈は通っている……もしここが集合無意識と繋がっているのならば……人類の『意思』があるのならば俺のギアスは『神』に命令できるものとなる……しかし、何らかのフィードバック、あるい反動が────!)」

「────()()が怖いか、ルルーシュ?」

 

「ッ?!」

 

「フ、聡すぎるがゆえに迷う貴様の様子はワシに似ておる……しかし安心せい。」

 

「何?」

 

「先ほど貴様はワシに問いかけたな、『何故』と。 その答えが()()である。 貴様が言ったはずだぞルルーシュ、『撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ』と。 そしてどの記憶を辿っても、ワシと貴様は()()()相容れないのだ。 必ず、()()()()()()()()()()()()……おかしいとは思わなかったか? 何故ワシがこう、長々と話をするのかを?」

 

「ッ?!」

 

「マリアンヌ、お前はルルーシュにいつ言うのか不思議に思っていたが────」

「────私? 私は貴方たちの選択を尊重するけれどもちろん、シャルルの味方よ? それとシャルルの言葉で気が付いているかもしれないけれど、貴方とC.C.がここに来た時点で『ラグナレクの接続』は始まっているわ。」

 

「何だと?!」

 

「『ラグナレクの接続』に必要なのは『アーカーシャの剣』に一人以上のコードを持つ者が同時にいること、それと()()()()。 あとは、システムが自動的に動き出すようになっている。」

 

「(やはり口先だけでの時間稼ぎだったか!)」

 

 ルルーシュのハッとした表情を見たシャルルはルルーシュがゼロの仮面の下で幾度となく浮かべた笑みとよく似ていたものをルルーシュに向けた。

 

「だが、そんな貴様に一方的なチェックメイトをかけても、面白くない。」

 

 シャルルは真っ直ぐルルーシュを見据え、両腕を広げながら言葉を並べていく。

 

「さぁどうするルルーシュ? ワシをずっと討ちたかったのであろう? 先ほど言ったように、この時、この瞬間だけ貴様のギアスは絶対的だ。 いくらワシがコード保持者と言えども、例外ではない。 貴様自らの手で、ワシを葬ることも出来る。」

 

 微笑みながらそう話しかけたマリアンヌを横目にルルーシュは考えこもうとするが、シャルルはほくそ笑みながらさらに言葉を投げかける。

 

「ふ、予想外のことが起きた時に固まる癖は相変わらずだなルルーシュ? しかし、そのような時間が────余裕が貴様にあるのか?」

 

「俺は────」

「────一刻を争う時に、いまだ即決ができないとは────」

 「────うるさい! 貴様はその即決とやらで俺やナナリーを見殺しにした!! 母さんもだ! 生きていたのなら何故俺たちを今まで助けてくれなかった?!」

 

「さっきシャルルが言ったじゃない。 ()()()()()()()()()よ。」

 

「ならば、ナナリーのことを知っていてもそれが言えるのか?!ナナリーは目や足が不自由になり、一人ではできないことが沢山あった! 俺だけならばまだしも、幼いナナリーに────!」

「────()()()()()()()()()()よ。」

 

 「ッ!」

 

「このまま何もしなければ、ワシらの勝ちだぞルルーシュ。」

 

 シャルルの煽りにマリアンヌの平然とし過ぎた答え、そして『ラグナレクの接続』が進んでいる重圧(プレッシャー)に対してルルーシュは、吹っ切れたかのようにシャルルとマリアンヌを睨む。

 

「良いだろう! ならば自らのエゴで『過去』を望むお前を、母さんもろとも俺は否定してやる! 俺は『未来』が欲しい! 邪魔なお前たちは────!」

 

『────優しい世界でありますように。』

『────ここにいる皆がその時でも笑顔でいられますように。』

『────俺が言う未来とは時の流れで自然に訪れるモノではない。 生きる希望だ。 お前が任務を達成した先にお前を待っている未来は何だ? 何も変わらず、延々と言いなりになったままだ────』

 

 ────感情任せに『お前たちは消えろ』と言いそうになったところで、ナナリー、スヴェン、そしてルルーシュ自身が言ったことなどが脳内に浮かび上がり、ルルーシュは言葉を止めた。

 

「……」

 

「どうしたルルーシュ? 今更怖気づいたか?」

 

「……フ。」

 

 シャルルの言葉にイラつくどころか、ルルーシュはニヒルな笑みを浮かべては笑いだした。

 

「フハハハハハ!」

 

「「「???」」」

 

 ルルーシュの様子に、シャルルとマリアンヌだけでなく、C.C.までもが怪訝な顔を向けていた。

 

「ルルーシュ────」

「────ククク……良いだろう! そこまで俺にギアスを使わせたいのなら使ってやる! 集合無意識よ! ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる────いや、()()! 『俺は、()との明日が欲しい!』

 

「えッ?!」

「ぬぅあにぃぃぃぃぃぃぃぃ?!」

 

 バキン! ガラガラガラガラガラガラ!

 

 ルルーシュの命令(願い)にマリアンヌとシャルルが目を見開き、ガラスが割れるような音の直後に崩れていく周りの景色に驚愕する。

 

「フ……優しすぎるな、お前は。

 

 そしてその様子の二人を見ていたC.C.は、満足そうな笑みを浮かべながら誰もいない方向を向いては独り言のよう上記の言葉を零した。

 

「な、何故だルルーシュ────?!」

「────知れたことだ! 俺は、周りを犠牲にするやり方が気に食わないだけだ────!」

 「────バカを申すなルルーシュ! 貴様、()()()()()()ことにどれほどの代償が伴うと────?!」

 「────そんなもの、クソ食らえ。」

 

 ルルーシュたちがいた場所を中心に景色と共に『アーカーシャの剣』が崩れていき、次第にルルーシュ達がいた土台のような場所も崩れていくと当時に、まばゆい光が彼らを包み込んだ。

 

 「ルルーシュぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

『シャルルの叫びは心地良いな』と、ルルーシュが思いながらほくそ笑んだ姿を見た者は()()いなかった

 

 

 ……

 …

 

 

 

 目を開けて自分が洞窟内に居ると分かったシャルルはわなわなと体を震わせながら、突進してくるルルーシュの姿に思わず固まった。

 

「ルルーシュ、きさ────!」

 

 ────バキッ────!

 

「────ぐお?!」

 

 ルルーシュはランニングダッシュから飛び上がりによって体重を重ねたパンチをシャルルの顔にお見舞いし、殴られたシャルルは顔を手で覆いながらよろける。

 

「グッ……ククッ────」

「────まずは一発。 不死と言えども、痛みは感じるだろう?」

 

「しゃ、シャルル────」

「────はぁ~……」

 

 「ぐぉぉぉぉ……なんという骨格をしている……」

「これが、お前の選択かルルーシュ?」

 

 マリアンヌは激痛に悶えるシャルルに駆け寄り、C.C.は呆れた顔を背中を向けて痛む拳を擦るルルーシュに問いかけると、彼はすぐさま痛がることを止めた。

 

『やせ我慢』ともいう。

 

「……ああ。 あの二人にはまだまだ聞きたいことが沢山あるし、奴に謝らせたい人たちもいる。」

 

「面倒くさいな。」

 

お前が言うな。 お前が────ん?」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『夢だ。』

 

 また、そのような確信が今の俺にあった。

 そもそも、ふわふわと空中に浮いているかのような感じがするから、夢だと確信して良いだろう。

 

 周りは暗く、目の前も一面の暗闇。

 

 光源……いや、『光』そのものがない空間にいる。

 

 どれだけ手をかざしても、振り回しても、肌に空気が触れる感覚がない。

 

 そもそも『ここ』に空気は存在しているのだろうか?

 

『ここ』に来る前、俺は何をしていたのだろう?

 

 記憶はおぼろげだが、『何かをしようとしていた』気がする。

 

 何だったのだろうか?

 

 ……ダメだ。 霧がかかっているように、うまく考えがまとまらない。

 

 それにしても全身が気怠い。

 

 このまま眠気に意識を任せて、目を閉じてしまいたい。

 

 ポゥ……

 

 目の前が光り出した────いや、違う。 『光り出した』のではなく、『景色』が広がっていく。

 

 そこは、薄暗い室内だった。

 数ある明かりや豪華そうなシャンデリアは点けられておらず、光源は大きなガラス窓から差し込む月明かりのみだった。

 

 そのおかげで辛うじてだが、その部屋の中にある大きな階段の上段にいた誰かが階段の下端に居る別の誰かに話しけていたことも見える。

 

「何かしら、こんな真夜中に?」

 

 いや、『誰か』ではないな。

 

 上段に立ってドレスを着た、ウェーブのかかった黒髪のタレ目の女性に見覚えがある。

 

 ルルーシュとナナリーの母親、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアだ。

 

 と言っても、タレ目が台無しになるほどに険しい表情でもう一人を見て警戒しているようだが。

 

「────」

 

『もう一人』が何かを言った気がするが、何も聞こえない。

 

 そもそも『もう一人』の周辺が酷くボヤけていて相手が()()()()

 

「人聞きが悪いわね。 私は何もしていないわ。」

 

「────」

 

「さぁ?」

 

「────」

 

「お互いの為に人払いをしただけよ。 今更何を私がすると言うの? 言いがかりも止めてよね、夜更かしは良くないのよ。」

 

「────」

 

「『アーカーシャの剣』? それなら私じゃなくて────」

 

「────」

 

『もう一人』が何か気に障ることを言ったのか、マリアンヌの表情はより一層強張る。

 

「あの子たちは関係ないでしょう? そもそも貴方が『必要だから』と言ってきたからこちらでも用意できるものを色々と────」

 

「────」

 

『もう一人』が何かを言った瞬間、顔から感情を無くしたマリアンヌが流れる動作でスカートを内側から広がせていたパニエから、細身で先端の鋭く尖った刺突用の片手剣────レイピアを抜いては一気に階段を駆ける姿勢に────

 

「────おかぁさまぁ~。」

 

「ッ!」

 

 場違いにも寝起きの様子である、幼い子供の声によってマリアンヌは目を見開かせ、眠たそうに眼をこすっていた少女と彼女に付き添っていた二人のSPへと視線を移す。

 

 カチャ。

 

 「ナナリー!」

 

 パパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!!

 

 金属が擦り合う音とほぼ同時にマリアンヌが大声を出し、それに驚いたナナリーの名前が呼ばれた直後、耳をつんざくような発砲音が室内に響いた。

 

 パパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!!

 

「アグッ?!」

 

 ナナリーの近くにいたSPたちは短い悲鳴を上げながら体を貫通する弾丸らによって蜂の巣状態になって絶命し、レイピアを投げ捨ててナナリーを庇ったマリアンヌの体にも弾丸がめり込んでいき、マリアンヌのドレスが赤く滲んでいく。

 

「……ぁ……え────?」

 

 ────ザ、ザザザ。

 

 何が起きたのか理解できていないナナリーが出した声はノイズのような音と景色によって遮られる。

 

 ザザザザザザザザザザザザザザ!

 

 一面の景色が砂嵐によって中断され、やがてそれが消えると先ほどと同じ場所が見えた。

 

「う……ゼェ……ゼェ……」

 

 室内はさらに荒れ、弾痕も多く、『もう一人』がいなくなった代わりに、息も絶え絶えな瀕死状態のマリアンヌをシャルルが抱き上げ、目の前で起きていることが信じられない様子のV.V.が立ち尽くしていた。

 

「ナ、ナリーは────?」

「────医務室へ運ばせた! もう喋るな、マリアンヌ────!」

「────そ、そんな……ボクが、深入りしすぎたせいで────ハッ?! そうだ、シャルル! 君のギアスをマリアンヌに使えば────!」

「────ダメ、よV.V.……私が……『私』でなくなってしまう……でもその代わり……」

 

「な、なんだいマリアンヌ?」

 

「貴方が、私と……ギアスの……契約を……」

 

「ッ?!」

 

「で、でも! コードを保持していても、ボクは契約を交わしたことはない!」

 

「これは、賭け……」

 

「それに契約をしてギアスが上手く発現したとしても、それが君の望む形で自分を救えるという保証は────」

「────いいや! 兄さんならできる────!」

「────シャルル────?」

「────マリアンヌが発現するギアスを()()()()()()()! そしてそれでマリアンヌは助かる!」

 

 ザザザザザザザザザザザザザザ!

 

 またも視界が砂嵐状態になり、以前見た地下都市のような場所に変わった。そこにはビルの中から地下都市を見下ろすシャルルとV.V.の姿があった。

 

「兄さん、本当にいいのですか?」

 

「うん。 君の話を聞いて色々とボクなりに考えたけれど、アイツに一矢報いるには『嘘』が必要だ。 それも世界を騙せる規模のね。」

 

「しかし、兄さん────」

「────シャルル。 アイツは多分、君と同じかそれ以上の記憶を持っているとみて良いと思う。 何せ今のマリアンヌもあの様子だからね、そう思わないと説明が付かない。 だからそれを逆手にとる。」

 

「……だからC.C.に何も言わず、彼女が去るように仕向けたのですか?」

 

「ああ。 それとシャルルには『ラグナレクの接続』を目指してほしい。 その間にボクはボクで、アイツを消す方法を見つける。 ボクが『()()』までにね────」

「────しかし、それは────」

「────『ラグナレクの接続』は保険だよ。 もしも僕の方で方法が見つからなかった場合のね。 だから検証の一環として、『アーカーシャの剣』をボクに使え。」

 

 V.V.の愛想のよい笑みとは裏腹に、シャルルは心を痛めているような表情だった。

 

「しかし、それでは兄さん一人だけが取り残されることに────」

「────いいんだ、それで。 結果的にアイツを消せるのならな。 『初恋を殺した罪は重い』と知らしめられるなら、刺し違えても本望だ。 」

 

「……」

 

「ほら、未来の甥も言っていたじゃないか。 『悪を以て巨悪を制す』って。」

 

「兄さん……」

 

「さぁシャルル、契約だ────」

 

 ザザザザザザザザザザザザザザ!

 

 

 何だったんだ、今のは?

 

 ()()()()()()

 

 ……『俺』?

 

 ああ、そうか。

 

『俺』は────

 

 ザザザザザザザザザザザザザザ!

 

 視界が白黒の砂嵐に遮られて(感覚的に)数秒後、目の前に広がったのは夕焼けの中で宙に浮かぶ『アーカーシャの剣』らしき妙な神殿。

 

 そしてそこには()()()()()のシャルル、マリアンヌ、ルルーシュ、C.C.の四人がいた。

 

 ……ん?

 

『四人』?

 変だな、確かこの光景は『ラグナレクの接続』────思い出したぞ。

 

 確か(スバル)はマリアンヌを追って、神根島の遺跡にカレンと一緒に来ていた。

 洞窟の外にあったアルビオンを見てカレンに手伝ってもらいながら奥へ奥へと進んで、蜃気楼とランスロット・フロンティアを素通りして、大きな門が見えて……

 

 それから……

 

 ………………………………………………『それから』?

 

 ヤバいぞ。

 門をくぐってから()()()()()()

 

 それにどういうわけかさっきまで感じていた気怠さが()()()()()いる。

 

 倦怠感と共に綺麗さっぱり無くなっていて、目もばっちり冴えている。

 

 だというのにこの浮遊感はなんだろう?

 

 まるで『幽霊』……ならぬ、『幽体離脱』だな。

 このまま美女の三途の川越えを手伝う案内人が現れて半ば強制的に探偵にされたりして。

 

 え? 『ネタが相変わらず古いw』?

 

 うるさいよ。 こちとら10何年も過ぎて殆ど前世の事はおろか、他作品関連の記憶もかなり薄れてきているんだからフィーリングやその場の勢いで思い出したときに言うしかないの。

 

 ……まぁ、実際はさっきからシャルルとマリアンヌが話している話題が完全に外伝の『ナイトメアオブナナリー』の終盤に出てくる『神』────即ち『エデンバイタル』を殺して『優しい世界の具現化』する計画を口にしている。

 

 と、いうことはこの世界のシャルルは(実質)不死の『ザ・デッドライズ』のギアスを持っている?

 

 でもそれだとおかしい、アニメの『記憶改竄』らしき効果がなければ色々と説明がつかない。

 

『ジュリアス』とか、『ナナリー』とか、『ライラ』とか。

 

 もしかして『ザ・デッドライズ』に加えて『記憶改竄』をダブル装備?

 

 ……そう言えばこの世界でギアスはコード保持者との契約で得られる一方で、C.C.細胞を適格者に埋め込めて後天的に発現できるんだったな。

 

 ん?

 今、C.C.がこっちを見なかったか?

 

 いや、気のせいだろう。

 何せ俺自身、自分の体があるのかよく分からない状態だ。

 周りが騒がしくなった。

 

「ラグナレクの接続に必要なのはアーカーシャの剣に一人以上のコードを持つ者が同時にいること、それと願うだけ。 あとは、システムが自動的に動き出すようになっている。」

 

 シャルルがそうルルーシュに言い渡しながら、『勝利』を確信したかのような笑みを浮かべる。

 

 なるほど、ここだと『ラグナレクの接続』って自動的に作動するようプログラミングされているのか。

 

「だがそんな貴様に一方的なチェックメイトをかけても、面白くない。 さぁ、どうするルルーシュ? ワシをずっと討ちたかったのであろう? 先ほど言ったように、この時、この瞬間だけ貴様のギアスは絶対的だ。 いくらワシがコード保持者と言えども、例外ではない。 貴様自らの手で、ワシを葬ることもできる。」

 

 ……なんだかこのシャルル、すごくルルーシュを煽っていないか?

 それにこのドレス姿のマリアンヌも、さっきまで対峙していたマリアンヌとはなんというか……『雰囲気』が違う。

 

 まるで別人だ。

 

「ならば、ナナリーのことを知っていてもそれが言えるのか?!ナナリーは目や足が不自由になり、一人ではできないことが沢山あった! 俺だけならばまだしも、幼いナナリーに────!」

「────それも必要だったからよ。」

「このまま何もしなければワシらの勝ちだぞ、ルルーシュ。」

 

 ルルーシュも明らかに頭に来ている。

 

 多分、理解が追いついていないのと威厳を保つのに限界が来ているじゃないだろうか?

 構図はほぼ原作アニメ通りだが、マリアンヌが生きているかもしれないことを伝えたから、まだマシか。

 

 そもそも『ラグナレクの接続』のような、『生者も死者も関係なく個を失くして一つの群にする計画』の類は、どのメディアでも成功例は少なかったはずだ。

 

 例外があるとすれば、某『俺たちがガ〇ダムだ』の劇場版だが、それも『新人類』の中で『相手を許容できる』タイプ……だった気がする。

 

 つまり、良いことでも強制的に他人が否が応でも押し付ければ、結果は悲惨なことになる。

 

 ……まてよ?

 シャルルが『ザ・デッドライズ』を得ていて『ナイトメアオブナナリー』の設定も入り込んでいるのだとしたら、もしかしてシャルルは()()()()()()()()()()()のか?

 

 その体で考えると、ルルーシュを『ジュリアス』にした理由もV.V.とかの面倒事から遠ざけるためか?

 ルルーシュが原作でナナリーを遠ざけていたみたいに。

 

「良いだろう! ならば自らのエゴで『過去』を望むお前を、母さんもろとも俺は否定してやる! 俺は『未来』が欲しい! 邪魔なお前たちはき────!」

 

 それに考えると、まだまだシャルルたちが話していないことがある気がする。

 

 ()()()()()()()

 

「良いだろう! そこまで俺にギアスを使わせたいのなら使ってやる! 集合無意識よ! ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる────いや、願う! 『俺は、皆との明日が欲しい!』

 

「えッ?!」

「ぬぅあにぃぃぃぃぃぃぃぃ?!」

 

 マリアンヌとシャルルが素っ頓狂な奇声を上げた。

 奇遇だが、俺も叫びたいができそうにない。

 

 崩れていく景色の中、C.C.は真っすぐに俺の方向を見てはいつもの笑みを浮かべた。

 

「フ……優しすぎるな、お前は。」

 

 え゛。

*1
286話より

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