時は夜。
そして場所は『日本』と言う名を取り戻した国の東京内にある政庁にある、少々大きめな一室にソレは『いきなり』訪れた。
「第一回、チキチキゲスト付きブリタニア女子パジャマパーティ~♪」
「わ~♪」
「わぁぁぁぁぁぁ!♪」
「「「…………………………」」」
「…………………………わ、わ~……」
そして三人の期待に満ちた視線に耐えられず、コーネリアも消え入りそうな声を渋々出す。
「そしてゲストはこちら! 桐原泰三さんの孫、毒島冴子さん!」
「よろしく。 それと『さん』はいらないぞ?」
「あ、そう言えばそうでしたね! てへ☆」
上記のやり取りを見ていた一人はジト目になっていた。
「……一応
「だってアンジュちゃんはブリタニア人でしょう?」
「いやだからって────」
「────???────」
「────何でもないわ。 (のほほんとしているこの子に言っても無駄ね……)」
「にしても、ユーフェミア皇女殿下が生きているとはねぇ~。」
「色々と事情がありまして……」
「まぁ、最初は
「流石はエニアグラム卿ですわ♪」
「そういうマリーベルは知っていたのかい? 妬けちゃうねぇ~。」
「まさか! 私も可愛い妹が生きていて驚いていますわ!」*1
「(そう言いつつも『驚き』の体を装っていることをちらつかせているのがマリーらしいと言えば、それで済むけれど……)」
オルドリンはそう思いながら隣で固まっていた女性────モニカを見る。
「大丈夫ですか、クルシェフスキー卿?」
「え、ええ……その……色々ありましたので。 それに、これで何故エルンスト卿だけが呼ばれていないのかも理解しました……」
「エルンスト卿はやはり噂通りの方なのですか?」
「ええ、まぁ……ヴァルトシュタイン卿と肩を並べるほど武勇に優れている反面、その……柔軟性に欠けるとも。」
「(あのクルシェフスキー卿が『頭でっかち』をものすごく言いまわさせるほどに?!)」
……
…
「↑↑↑ふぇぇぇぇ~……」
「「「「「(久しぶりに『エルンスト卿の意外な仕草』が出た!)」」」」」
政庁の敷地内にある、別の場所では新大陸へコーネリアたちと同時の出立に準備していたドロテアから上記の気が抜けるような息を吐きだしながら鼻を押さえ、それに気が付いた周りの直属部隊の者たちなどが注目していたことに気が付く。
「……な、何を見ているお前たち! まだまだやるべきことはあるのだぞ?! 帰還後もだ! 気を抜くな!」
「「「「「イエス、マイロード! (このギャップ感がたまらないんだよな~。)」」」」」
君たち、帰還後は『直属部隊』じゃなくて『親衛隊』に改名すればいいんじゃないかな?
色々な意味で。
……
…
「しかし驚いたぞユフィ、急にパジャマパーティだなんて。」
「だって、せっかくこれだけ多くの知人たちが集まっているんですもの♪ 次の機会があるかどうかもわかりませんし……」
「??? ユフィたちは私やマリーたちと共に新大陸に帰るのだろう? その時にでも、またすれば────」
「────あれ? 言っていないのですか?」
「何をだ?」
「ナナリー
「ああ、引き継ぎ作業がまだ残っていると聞いて……ちょっと待て、『たち』と今言ったか?」
「はい、ライラも残るです!」
「え?!」
「なに?!」
「あらあら?」
オルドリンとコーネリアは驚愕し、マリーベルは平然としつつも笑みを絶やさない毒島を見た。
「えっと……それはやはり、クロヴィス殿下も引き継ぎ作業の為に残る影響でしょうか?」
「あ、その説明もアリでしたですね。 でもモニモニの言った理由とは別に、私が残りたいと思ったからです。」
「……もしかして『モニモニ』とは私の事なのでしょうか?」
「ダメ、です?」
「ウッ……ダメ、ではないですけど……」
「(あー、なんだか昔のナナリーを見ているみたい。)」
「ア、アハハハ……」
上目遣いで不安そうにモニカを見上げるライラを見たユーフェミアは幼い頃のナナリーを連想し、視線を本人に移すと図星だったのかナナリーは苦笑いを浮かべた。
「ですが、いずれ引き継ぎを済ませたクロヴィス殿下は帰国するのでしょう?」
「それでも多分、私は残ると思うです。」
「それはどうしてだ、ライラ?」
今まで黙っていた毒島の質問にライラはもじもじと気まずそうに身をよじらせては近くの枕を抱いた。
「だって、今の方がずっと楽しいです。」
「「「今?」」」
「だって……
「「「ッ……」」」
言葉と共にどこか真剣な表情をしつつも悲哀が混じった雰囲気を発するライラにコーネリア、マリーベル、そしてユーフェミアが息を呑んだ。
コーネリアは自分がエリア11の総督に就任したことで半ば引きずられるように学校を中退したユーフェミアを連想し、ユーフェミアはスザクに学生でいられることを羨ましがっていた自分を思い浮かべ、マリーベルは幼少期に『反逆元皇女』とのレッテルを貼られて一から今の地位にのし上がった経歴を思い出す。
「……」
そしてナナリーは一度ならず二度も急に目まぐるしい勢いで境遇や待遇が変わったことで戸惑いを覚えた自分を思い浮かべた。
「でもでも! 今は周りに色んな人がいて、凄く楽しいです! 先輩たちに教師たちに蓬莱島の皆、良い人ばかりで私を『私』として見ているですから────!」
「────それだけですか、ライラ?」
「ほぇ?」
「「「(マリー/マリーお姉様?)」」」
「その『皆』の中でも、特に気持ちが強い人などいませんか?」
「へぅ……」
マリーベルのニコニコとする顔の裏側に
「その……はい……です……」
「あらあらあら♪ どんな人ですか?」
「ふぇ?! えっと……………………………………………………見返りなしでも手を差し伸べてくれる、お……」
「「「『お』?」」」
「お、王子様みたいな人ですぅぅぅ……」
ライラは消え入りそうな声を発しながら顔を完全に枕の中へと埋めた。
「(あらあらあら?)」
「(耳が真っ赤に?)」
「(ふむ……
「(ふぅ~ん……『王子様』、ね。)」
アンジュは平然としながら、スバルが以前に
「(ま、ぶっきらぼうだけど確かに王子っぽいところはあるわねアイツ。)」
「ウフフフフ……『王子様』ですか。 その気持ち、分かります♪」
「「「ナナリー?」」」
「私も、騎士の誓いをしてくださった方がいますので♪」
「「んあ?!」」
「きゃ♡」
「ナナリーにも騎士が!」
「あ~、だから総督になってもナナリー皇女殿下はずっと騎士候補を断っていたのか~。」
「ご想像にお任せします、エニアグラム卿♪」
「(…………………………………………レイラたちにも話しておくべきことが二つになったな。)」
「(き、き、き、き、き、騎士の誓い~? 誰だろう? ………………………………ま、ま、ま、ま、ま、まっさかねぇ~?)」
モヤ。
「????? (え? 何、今の?)」
アンジュは胸の中で
少々声が出しにくいこの空気を壊したのはユーフェミアだった。
「でもでもでも! 何だか小説みたいで素敵!」
「「「……確かに。」」」
「小説の出来事か……憧れるよな、普通? モニカはどうだい?」
「エニアグラム卿も分かっていて話題を私に振りましたよね?」
「「「え?」」」
「ドウダロウネ。」
「ではもう一度言いましょう。 私はあまり小説はあまり好きではありません。」
「「「ええええええええええ?!」」」
「何故だ? クルシェフスキー卿ならば、好きな様に受けるが?」
「私は架空の物語────特に恋愛を中心したものは嫌いです。」
「な? 雰囲気と違うだろう?」
「で、ですが! 小説はいいモノですよ! これなんてどうです?!」
ユーフェミアは近くの棚から私物の本を取り出してはモニカに手渡し、モニカはパラパラとページをめくっていきとあるページの内容を音読し始めた。
「……『彼の指は焦がれる思いを宿したかのように熱く、彼女の理性を溶かしていき────』」
「────はわわわわわ────?!」
「(────これって所謂、官能小説────?!)」
「(────何を読んでいるんだユフィ!? やはりチェックをさらに厳重に────!)」
「『────“あ。 ダメ、これ以上は。” そう告げた彼女の声は拒絶しながらも己の
「────むきゃああああああああああああ?!」
耳まで真っ赤になりながら奇声を上げたユーフェミアは無理やり本をモニカの手から奪った。
「え? 読ませたかったのでは────?」
「────音読させる気はありませんでした!」
「(ユーフェミア皇女殿下……意外……)」
ちなみにオルドリンも耳まで真っ赤になっていたと追記する。
「はう……」
刺激が強かったのかナナリーも真っ赤になっていた頬を両手で覆っていた。
「??????」
ライラはよくわからなかったのか逆にクールダウンしながらハテナマークを頭上に浮かべていた。
「「(凄いものを読んでいるな~。)」」
アンジュと毒島は割と冷静だった。
「ですがこの内容、要するに不同意性交なのでは?」
だが一番冷静だったのはモニカの様子で、彼女の一言で妄想を走らせていた女性陣は一気に冷たい水をかけられたかのように熱が逃げていくのを感じた。
「ええええっと……でも────!」
「────だってこの女性、明らかに嫌がっているのに行為を続けているなんて────」
「────フィクションですから────!」
「────ならばこの女性の同意を明白に示すべきですね────」
「────一応一般小説ですから────!」
「────ならば尚更質が悪いですね。 このままの表現だと、この男性はただの強姦魔ですから。」
「「「ウッ。」」」
「モニカ……前にも言ったけどさ? ちょっと現実性に欠けている夢を持たないのは自由だけれどそれを他人に押し付けるのは────」
「────非現実的なことを非現実的だと言うところのどこがダメなのですか? フィクションでも現実に基づきながらで犯罪まがいな出来事無しの内容がいいのでは?」
「はぁ~……モニカ、アンタ『非現実的な夢』に対して偏見を持ちすぎていないかい?」
「そうかしら?」
「(少年に会って何かが変わると思ったが……効果なしか。 頑固だねぇ~……もっと会わせるべきかな? でも上手い口実を見つけなければ……)」
ニコニコニコニコ。
「ね、ねぇマリー?」
「何ですか、オズ?」
「何その笑顔?」
「ウフフフフ♪」
「(何か絶対に企んでいる顔だ、コレ。)」
しかしそうは内心で思いながらも藪蛇を突きたくなかったオルドリンであり、夜は更けていくのだった。
…………
………
……
…
後日、アッシュフォード学園では
「あ、おはようございますスヴェンさん!」
「ああ、おはようカーラさん。」
「……」
「カレンも久しぶりー!」
「え。 あ、うん。 久しぶり。」
カレンが正式に帰学したというニュースはすぐさま学園中に広がり、行方不明になっていた表向きの理由は『ブラックリベリオン時に瓦礫の破片によって頭に怪我をし、記憶喪失の状態で保護されていた』。
詳細は省かれていたものの、誰も不信がることなくそれを受け入れていた。
「カレンさん! 机、またすごいことになっているよ?」
「えぇぇぇぇぇぇ……」
「処分しておきましょうか、お嬢様?」
「う~ん……目を通してからかな?」
「畏まりました、お嬢様。」
「朝から令嬢と従者のやり取り!♡」
「いいわ~♡」
「尊い!♡」
しかし記憶喪失の
「はぁ~……」
「朝から大変ですね。」
「……うん、そうだね。」
「「……」」
クルッ。
「せ~んぱ~い!」
ドン!
そんなカレンとスヴェンたちの背後からタックル気味に抱き着いてきたライラを二人は同時に振り向いて受け止めた。
「「おはよう、ライラ。」」
「おはようござい……???」
そんなライラは朝の挨拶を中断し、ジッと愛想のよい笑みを浮かべ続けるスヴェンを見上げた。
「ど、どうしたのライラ?」
「……本当にスヴェン先輩です?」
ギクッ。
「当たり前じゃないですかライラさん。 私が別の誰かに見えますか?(キラッ。)」
ライラの言葉に固まるカレンの横でスヴェンはニコニコしつつも『優男の仮面』をかぶり続けた。
「う~ん……じゃ、
「はっはっは。」
「……カレンさん。」
「な、なにアリス?」
「先に言っておくけど、私はライラで手一杯だからね?」
「ウ。」
その後もハラハラする様な出来事が続いた。
「ねぇ、何だか最近のスヴェンって変わった?」
ピクッ。
「うん、以前より人当たりが良くなっているよね!」
ピクピクッ。
「前も優しかったけれど、どこか距離を置く感じもあったしね。」
ピクピクピクッ。
「あれじゃない? カレンが見つかった上に元気になったからストレスが無くなったとか?」
「……チャンスじゃない?」
「チャンスかもしれないわね。」
「チャンスよね。」
その昼休み、クラスメイト(主に女性陣)たちのヒソヒソ話を聞いたカレンは誰もいないタイミングを見計らった上にヴィレッタの協力も得て誰もいない校舎裏でスヴェンに迫っていた。
「どうしたのですかお嬢様?」
「ちょっと! もっと自重して!」
「その気迫、元気ですね────」
「────いや、
スン。
「……そうか。」
カレンの言葉に『スヴェン』の顔から表情が抜け、いつも以上のポーカーフェイスに変わる。
「しかし何が問題なのだ? 資料によればこれがスヴェンの普通だが────?」
「────いやそれって毒島さんたちが情報源でしょ────?!」
「────それの何が問題なのだ? ちゃんと君の『従者』としても、『スヴェン』としても────」
「────『良い人過ぎ』なの! スヴェンは……ま確かに勘違いさせるようなことはするかもしれないけれど、アンタの場合は度が過ぎるの! 今朝もライラに違和感与えていたでしょ?!」
「ふむ……そういうものか、わかった。」
「本当に分かっているのかどうか分からない顔で言われても……ねぇ?」
「なんだ?」
「貴方はその……本当に
「ああ。 物心ついたのは『この者を捕獲してこい』と言われてスヴェンの写真を渡されたときから始まっている。」
「……………………………………………………………………そっか。 でもやっぱりアンタがスヴェン役をするのはどうかと思う。」
「彼自身が僕に頼んで来たのだが?」
「……(スバルも私のフォローしている時もこんな気持ちだったのかな?)」
「はぁ~……」
俺は久しぶりに森乃モードになりながら盛大なため息を出しながら、机の上に置いてある処理待ちの書類を見る。
書類の所々には『合衆国日本の暫定首都の移動』やら『日本帰国計画』やら『
いやどうしてこうなった。
いや、分かっている。 分かってはいるんだ。
こうなったのは自分にも責任があるということは。
でもさ、考えられるか?
合衆国日本の首都を蓬莱島から東京に戻すことは予想は出来ていたし、蓬莱島の政務も黒の騎士団が『100万人の奇跡』と共に来るまでは俺も携わっていたことは認める。
だが急に桐原のじっちゃんとゼロに迫られて『蓬莱島は特殊なケースなため、合衆国日本の自治領にしたいと思うのだがいい名称は思いつかないか?』と聞かれて思わず『蓬莱共和政府なんてのはどうだ』なんて即答したら桐原のじっちゃんは笑い始めるわ、ゼロは意味ありげな『フ、やはりな』と答えて来るわでいつの間にか『スバル』が新たに改名して合衆国日本の自治領となる『蓬莱共和政府』初の自治領主に仕立て上げられていた。
……なんでじゃい?!
いやね、理解はしているんだよ? 頭の中ではね? 一応ね?
原作より
でも自治領の自治領主になるなんて想像できなかったよ。
最初は抗議したさ。
何せ『合衆国日本にもブリタニア帝国にも超合集国にも属さない第三の勢力』なんてのは聞こえは良いが、色々と問題が残っていると思ったからな。
軍事力は? 軍と民間への補給は? 政府態勢は? 対外交渉のシステムは?
軍事力はアマルガム。
補給は以前の自足自給に加えて甘味などを軸にした近辺の国との貿易。
政府態勢は以前と変わらないどころか、人口が減るので再び合議制で物事が定められる方針(と言っても最終的判断は自治領主に委ねられている)。
対外交渉は合衆国日本を直接通さないものの桐原のじっちゃんやレイラたちなどの協力者を経由する。
……うん、見事に外堀を埋められていた感じでチェックメイトだったよコンチクショウめ。
と言う訳で、ゼロとの交渉で未だに機密事項的な捕虜として身を預かっているライを、俺が蓬莱島────いや、蓬莱共和政府の領主として活動している間は俺の影武者としてアッシュフォード学園に送らせてカレンたちに見てもらっている。
最初は不安がられていたが、どうもライは俺の言うことだけ素直に聞くらしいし、ロストカラーズでは問題なくアッシュフォード学園に通っていたから『咲世子さん的事案』にはならないだろ。
多分。
………………
……………
…………
………
……
…
そしてある日、カレンからの提案にまたも俺の平穏が乱されることとなる。
「ねぇスヴェン? 恋人にならない?」
どうしてこうなった。
……『時間(とき)は、動き出す』。 [壁]д゚)