小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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第303話 『再認識』(挿絵)

「よっこらっせ。」

 

 そう言いながら、俺はアッシュフォード学園の中庭にあるベンチに腰掛ける。

 

『おっさん臭いw』? ほっとけ。

 

 サァァァ。

 

 座っているところが日陰になっているのもあるが、風も冷たくなってきたなぁ……

 

 さて。

『公認カップルの偽装』と言ったものの、実際には『付き合ってください!』に『はい』と単純にはいかない。

 

 なぜならばこれが原作アニメの『悪逆非道の皇帝ルルーシュが貴族制度を廃止した後の世界』ならまだしも、ブリタニア帝国が同じように弱体化したとはいえ貴族制度とそれに関連する思想が未だに根強く残っている。

 

 そしてカレンはあれでも一応貴族令嬢だ。

 

 どれだけ私生活で令嬢らしくないと言っても、丸出しのへそを掻く日向ぼっこ中のセイウチみたいに寝ていたりベッドの上でお菓子を食べたり────すまない、脱線した。

 

 取り敢えずカレンは『貴族令嬢』な反面、俺自身はその貴族令嬢の『従者見習い』兼『世話係』だ。

 

 つまるところ、カレンの原作アニメのように正体もバレていないから社会的に『名門家の貴族令嬢』のままであるのでお付き合いする相手も自ずと付き合うための条件が必要となる。

 

 そして貴族社会で重視されるのは……簡略化すると『出家』、『事業』、『功績』、『(表側の)評判』、『役職や将来性』、そして『交際に関する双方の当主による承諾』。

 

 これらに全てが『オーケー』が出て初めてお付き合いのスタートラインに立てる。

 

 ブリタニアの貴族階級はコードギアスでは大公、公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵、騎士の準だ。

 

 分かりやすく例えれば『亡国のアキト』のオーガスタ・ヘンリ・ハイランドは大公。

 ジェレミアは辺境伯。

 ロイドは(一応)伯爵。

 ヴィレッタは功績のおかげで騎士から男爵に。

 

 で、シュタットフェルト家は伯爵である。

 

 カレンは伯爵令嬢である。

 

 あのプリンマッドサイエンティストこと『あっはー』な上に毎日蓬莱島でラクシャータと口論を続けるロイドと同格の家である。

 

 また脱線した、話を戻そう。

 

『準男爵』とかの階級もあるにはあるが通常でメジャーな階級順だと伯爵は(一応)中途半端とは言え、庶民や『ほぼ庶民同然の半貴族的』な騎士爵や『一応貴族で世襲が出来る』男爵家からすればかなり上位の存在だ。

 

 それも『同級生』や『クラスメイト』なんて弱~い接点を使ってでも無理やりお近づきになりたい人が後を絶たなかった……絶たないぐらいだ。

 

 今までは病弱(の設定)を理由に使って世話係の俺が全部断っていたが、『もう演技は嫌だ』と駄々をこねたカレンが元気な姿を披露したから使えない。

 

 ライの所為……いや。

 俺が影武者をやらせたから俺の所為で、従者見習いとしての防波堤も正直に言うとあやふやだ。

 

 そりゃあ俺も一応貴族の出だが、ハンセン家は男爵家だ。

 ハッキリ言って(爵位的に)雑魚ではあるが、ギリ貴族。

 

 全く以ていい思い出はないが、連絡をいずれするとして……あとは他の条件だな。

 

 カレンと付き合うのなら、ジョナサン(カレンパパ)様と留美さんからオーケーをもらわないといけない。

 

 多分、留美さんは即答するだろう。

 だが問題はジョナサン様だ。

 

 彼はブリタニア人の貴族にしては珍しく温厚で物わかりが良いが、今の彼からすれば今の俺は『カレンの従者見習い兼世話係』の認識のままだ。

 

 まぁ……『裏で何かやっている』と思いつつも暗黙しているかもしれないが。

 

 貴族は有望な者を自身の派閥に加え込んで縁戚(えんせき)関係や力をより大きくさせる、あるいは一族を嫁がせて出世に繋がる投資────つまり『付き合い』やその先の『婚約』以上の『結婚』までをも見据えて人間関係を築こうとする。

 

 無論、『ネモ』や『蓬莱共和政府』に原子炉などを打ち明ければジョナサン様もオーケーを出すだろうが……

 いい意味でも悪い意味でも生粋の貴族である彼の事だ、絶対に俺やカレンとの接し方や扱いを変えるだろう。

 

 それはなんというか……想像しただけでも『違う』というか、『虚しい』というか……それ以前にリスクが高すぎる。

 

 ジョナサン様や留美さん、カレンや俺にとっても良い結果に繋がるところが見えない。

 

 だから取り敢えずそう言うのはなしにして、俺自身が────

 

「……」

 

 ────む。

 

 今の今まで気付かなかったが、誰かが近くにまで来ていたか。

 

 学園だから気が緩んでいたのもあるが、没頭しすぎてここまでの接近を許すとは……

 

「……」

 

 いや。 相手からは敵意や害意が全く感じられないからそれもあるか。

 

「……」

 

 取り敢えず、狸寝入りをして出方を見るか。

 

「「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」」

 

 相手は微動だにしない。

 

 俺の出方を見極めているのか?

 

 相手は誰だ?

 

 普通ならば声をかけている。

 それにこの息遣いからして、相手は小柄だ。

 

 ……ライラか?

 いや、彼女も『せんぱ~い!』とか声をかけてくる筈。

 

 もしや『サプライ~ズ! です!』の流れか?

 それにしては全く気配を絶つ気が無いのはどうかと思うが……

 

「……………………………………」

 

 このまま『見られるだけ』ってのも割と苦痛だな。

 うん、割り切って目を開けよう。

 

 

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「おはよう、スヴェン。」

 

 あ、何故か俺の顔を覗き込んでいるアーニャだ。

 

「寝たふりはもういいの?」

 

 しかも寝たふりのことがバレている?!

 

 流石は最年少ラウンズ……おそロシア。 *1

 

 ん? アーニャがもっと近くに来て────

 

 ポスッ。

 

 ────何故か隣に座り込んだぞ?

 

 ……なんで?

 

「……」

 

 

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 しかも何だろう……やさぐれR〇Nっぽく見える。

 

 っとと、『優男』の仮面をつけなくては!

 

「どうかなさいましたか、アールストレイム卿────?」

 「────鳥肌が立つ。」

 

 スゴイ辛辣だなオイ?!

 

「しかし────」

「────アーニャで良い。」

 

 呼び捨ては流石にダメでしょ。

 アーニャもアーニャで名門家の出なんだし。

 

「では、アーニャ卿で────」

 「────却下。」

 

「……アーニャさん────」

 「────アーニャで良い。」

 

 な、なんだこの不愉快な(プレッシャー)は?!

 あ、今のは木星の男とアステロイドベルトから帰ってきた女帝をミックスしたような感じだな。

 

「…………………………」

 

 めっっっっっっっっちゃこっちを見て無言で抗議しているアーニャがちょっと怖い。

 

「で、ではアーニャで。」

 

「ん。 よきにはからえ。」

 

 何がどこでそうなる?

 

「アーニャは────」

「────あとその薄気味悪い笑顔もやめて。」

 

 ご注文が多いですね、お客様?!

 

「そうか。」

 

 でもこれでいつものポーカーフェイスに戻る理由ができたのは助かる。

 

「ん。 よろしい。」

 

 なんでそんなに上から目線なの、アーニャんちゃん様?

 

 それよりも────

 

「────アーニャは何をしているんだ?」

 

「日向ぼっこ。」

 

 見たまんまかい。

 

「しかし、なぜわざわざここ(学園)に?」

 

「ジェレミアから貴方のことを聞いた。」

 

 ああ、なるほど。

 ギアスキャンセラーの件ね。

 

「……ありがとう。」

 

「ッ。」

 

 アーニャからの礼に思わず息を吸い込み、相変わらず無表情だが、本当に感謝されていることは感じられる。

 それと同時に胸から────否、身体の芯からジンワリと温かくなっていく感覚が広がっていく。

 

 何だろう……ナナリーの時と似ている。

 

「……? なに?」

 

 おおおっと、ジッと見つめ過ぎたか。

 

「いや、その……感謝されることは何も────」

「────貴方バカ?」

 

 酷い!

 

 でもこれが『アーニャ』なんだよなぁ~。

 

「……その笑顔ならいい。」

 

 おっとっと、ポーカーフェイスが崩れていたか。

 

「……なぁ、アーニャ?」

 

「何?」

 

「参考までに聞きたいことがあるんだが、貴族の付き合いは学生の身分でもどのくらい思慮しなければいけないことなんだ?」

 

「……………………………………家の当主による。 放逐主義者なら割と自由。」

 

 ふむふむふむ。

 

「でも爵位と地位にも左右されがち。 表面上を気にするタイプなら特に。 『付き合いは成人してから』というのが一般的……特に次期当主はチェックが激しくなる。」

 

「なるほど。」

 

 つまり、『成人』してようやく世間に認められることか。

 そうと決まれば行動あるのみだ。

 

「参考になった、ありがとう。」

 

「ん────」

「────あ! アーニャ発見です!」

 

「じゃあ。」

 

 

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「ああ。」

 

 俺と同じくアーニャもベンチから立ち上がるとほぼ同時にライラの声が響き、アーニャはライラとアリスのいるところへと小走りに走っていく。

 

「……」

 

 あとはたまた何故かアリスがジト目攻撃をお見舞いしてくる。

 

 俺、話をしただけなんだが……

 どこにジト目をする要素があるんだ?

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

「で、私に話って何?」

 

 次に俺が声をかけたのはアンジュだ。

 

 こいつはこれでも俺の知り合いの中で『生粋のブリタニア貴族令嬢』として長年生きて来たし、話がしやすい。

 

「単刀直入に聞くが、貴族に認められるための『成人』には何が含まれている?」

 

「……へ?」

 

 ん?

 俺の言葉を聞いて、身構えていたアンジュが豆鉄砲に撃たれた鳩みたいに目を点にした?

 

「な、な~にその質問は! 突然ね! ウハ、ウハハハハハハハハハハ!」

 

 今度は明らかに作り笑いをしている。

 そもそも身構える要素はどこにあった?

 

「??? 何を聞かれると思った?」

 

 ギクッ。

 

「……ピーヒョロロロロ~♪」

 

「お前、歌は綺麗なのに口笛は下手くそだな────」

「────ほっときなさいよ! そこはあえて触れないフリだったでしょ────?!」

「────そもそもお前に俺が何を聞こうとしたころを掘り返してほしくないと感じたからワザとさっきのことを言ったんだが?」

 

「……聞かないの?」

 

「聞いて欲しくないのだろう?」

 

「……ごめん。 でも、私の一存じゃ話せない。 ううん、話さない方がいいと思うの。」

 

「だろうな。 それで『成人』という定義についてだが────」

 

 

 

 


 

 

 

「お待たせ!」

 

 後日、アッシュフォード学園前にある校門にて待っている様子のスヴェンに笑顔のカレンが駆け寄る。

 

「早いな。」

 

「『人を待たせているから』ですんなりと断ってきちゃった♪」

 

「ちゃんと場所は選んだか?」

 

「うん、人がいるかいないかの通路で言った。」

 

「(よし、あとは噂が勝手に増大していくのを待てばいいか。) 『効果は抜群だ』、だな。」

 

「……どういう意味、それ?」

 

「(やべ、あまりにも嬉しいカレンを見て思わず口に出してしまった。) こっちの例え方だ、気にするな。」

 

「ふ~ん? ま、作戦が成功していいけど♪ で、これからどうする? 『学園にいたままは面倒だから』って校門まで来たけど……」

 

「そうだな。 租界……ではなく、東京内を見て回るか?」

 

「そうだね。」

 

 そしてスヴェンはカレンを先頭に『トウキョウ租界』から『東京』に変わりつつある町中を散策した。

 

 当初は行く当てなどなく、ただ気持ちの赴くままの様子だったカレンがやがて行き着いた先にあったのは二人が見知ったところだった。

 

「新宿の再開発地区?」

 

「うん。 東京になるからちゃんとした場所にようやくするって聞いたから。」

 

「……『二年』、か。」

 

「あっという間だったね……」

 

「ああ。」

 

「「…………………………………………」」

 

 毒ガス(偽)の奪取にカレンたちが失敗し、ルルーシュとC.C.が出会ってから二年間、まるで変化のなかった再開発地区が整備されている様子を二人は黙り込んで見ていると、急にカレンが口を開けた。

 

「ねぇ、スバル?」

 

「なんだ?」

 

「外でもそれとなくアピールしとく?」

 

「何をだ?」

 

「ほ、ほら! アレだよアレ! アレアレアレアレ!」

 

「(……ああ、公認カップルの偽装か。 学園内で俺とカレンはよく一緒に居たから今度は外でも一緒にいれば良いか。) そうだな。 どうする?」

 

「うーん……どうしよう?」

 

「(何も考えていないんかい。) ……一緒に下校するとか?」

 

「それはまぁ、するとして? 他は何が良いかな?」

 

「(俺に聞かれても……一応、前世のエロg────ゲフンゲフン、ギャルゲーとかから得た知識はあるが……『極端』に類するものとかもあるからなぁ……そうだ!) カレン、近くのカフェかなんかで座らないか?」

 

「そうだね、ずっと立っているのもなんだし。」

 

 

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「カフェラテでいいか?」

 

「ミルクと砂糖、アリアリで!」

 

「じゃあテーブルを確保していてくれ。」

 

 ………

 ……

 …

 

「う~ん、久しぶりのコーヒー美味しい~♪」

 

「(ほぼミルクと砂糖のミックスにコーヒーが入っているけどな。)」

 

「で、次はどうする?」

 

「椅子同士を隣合わせにする。」

 

「……うん、これでいいの?」

 

「ああ。 次はイヤホンを使い、音楽に集中する。 それだけだ。」

 

「へ? そ、それだけ?」

 

「ああ。」

 

「……なんか思っていたより地味。」

 

「ほとんどは俺がクリアしなければいけないことだらけだが過程はまだまだあるからな、こういう行動が良い。」

 

「ふ~ん? コードレスじゃないんだ?」

 

「線があった方が、音質が良いからな。」

 

「そうなの?」

 

「ああ、無線だとどうしても劣る。」

 

 カレンは言われるがまま右にいたスヴェンから渡されたLのイヤホンを左の耳に入れて目を閉じる。

 

 ♪~。

 

『目がくらみ~そうな♪ 蒼いダ~イヤも♪ ガラスに変わってしまう~!♪ き、を、つ、け、ろ~!♪』

 

「(これって……スバルの声? え?! ギター弾いているし、歌っている?!!)」

 

『ホーリーロンリーナイト、急げ! 自分を信じて~!♪』

 

「(よく他の部活から声をかけられているからすごいとは思ったけれど……アカペラでアップテンポかつサビが入る歌も作れるって……)」

 

 パチッ。

 

「(やっぱりすごいなぁ────って、めっちゃ近い?!)」

 

 カレンは閉じていた瞼を開けてスヴェンを見ると、彼の顔が真横にあったことにギョッと目を見開きながら固まってしまう。

 

「(あ、そうか! 左に座っている私がLのイヤホンを使ったら────!)」

『────ねね、見てあそこの二人。』

『イケメンに美少女の学生!』

『眼福……』

 

 音楽ではなく周りに気を配ったカレンの耳に近くを通る者たちのヒソヒソ話が届き、次第に彼女は徐々に気恥ずかしくなっていく。

 

『いいなぁ~。 彼氏欲しい~。』

『お似合いだよねぇ~。』

 

「(え、えええええええええ?! そそそそそんなこと言われてもぉぉぉぉぉぉ!!!! ス、スバルは?!)」

 

「……(う~ん、やっぱアカペラだと限界があるな。 この際、バンドでも作るか? 衣装はC〇DE BL〇CK風にして、アンジュも────)」

 「────てりゃ────!」

「────おわ?!」

 

 カレンが掛け声をかけると彼女は首を回して無理やりイヤホンを自分の耳から外し、スヴェンは彼女とアイコンタクトを取る。

 

『ど、どうしたカレン?』

『どうしたも何も、何これ?!』

『??? 自然とカップルに見えるようにしただけだが?』

『近いよ?!』

『……さてはお前、目を開けたな?』

『だって息がかかっていたもん!』

『そりゃ、密着できるようにワザとコードが短い方を貸したんだ。』

『で、でもでもでも!』

『他に何かカップルとして見える方法でも思いつけるか?』

『うっ。』

 

 スヴェンの質問にカレンはアイコンタクトを外し、目を泳がせてから口を再び開ける。

 

「あ、あだ名とか?」

 

「あだ名? それだとカー(カレン)ちゃんになるぞ?」

 「やっぱなしで。」

「それとも『レンちゃん』とか?」

「はうあ?! ず、ずるいよ()()()()()!」*2

「グッ!」

 

 スヴェンの『レンちゃん』呼びにカレンの顔は一気に紅潮し、カレンの『スーちゃん』呼びにスヴェンのポーカーフェイスが崩れる。

 

 ちなみに周りや通りかかった者たちからは和むような視線が送られていたと追記する。

 

「……よ、呼び名は今まで通りでいいか?」

 

「う、うん! 今まで通りでいいよね!」

 

「「(じゃないと心臓が持たない……)」」

 

 

 

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 ……

 …

 

 

 ガガガガガガ。

 

「「「「……」」」」

 

 上記と同時刻、殆んど何もないような荒野では地鳴りに近い音を出す掘削機が動いている様子を数人ほどがジッと見ていた。

 

 顔や体、作業服にはオイル、土、汗などによる汚れが付いており如何にして彼らが苦労しているのが伺えた。

 

 ガガガガガガ……ゴゴゴゴゴゴゴ……………………

 

「???」

「止まった?」

「いや、装置は動いている。」

「じゃあ何で音が変わったんだ?」

 

 やがて掘削機の音が変わると周りにどよめきが広がるが、文字通りに掘削機が地面に開けた穴からまるで壊れた蛇口のように水が豊富に逆流する光景にどよめきはすぐさま歓声へと変わる。

 

「おわ?!」

「水? ……水だ!」

「乾いた大地に水が!」

()()、バンザーイ!」

 

 そんな喜ぶ者たちの様子を近くの丘の上にある車内から涼しい表情をした、ジルクスタン王国の文官たちが見ながら手に持っていたタブレットに書き込んでいく。

 

「これで六つの内、全てが『当たり』ということになるか。」

「もしや本当に王国の利になる行動だけをとっている?」

「しかし、あの金髪の小僧はブリタニア人、しかも帝国の元宰相だぞ?」

「だが今まで奴が提案した企画は全て国力の回復に繋がるモノばかりだ。 王国の繁栄────」

「────これが我々の信頼を得つつ、油断を誘う算段かもしれぬと肝に銘じておけ。」

「そもそも土の質があまり良くない大地だ、どうやってこの障害を越える?」

「17ページに書いてあったぞ。 この……『すいこうさいばい(水耕栽培)』という方法を取るらしい。」

「なんだそれは?」

「新しい、土壌に依存しない作物の育て方と書いてある。 帝国ではその手の研究がアリゾナ州で進められていたらしい。」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「……殿下の読みがまた当たったようです。」

 

「そうですか。」

 

 ジルクスタン王国の王都にある屋敷の一室でシュナイゼルに携帯電話から耳を外したアイーシャがそう声をかけるが、彼本人はさほどそれに対して反応せずにただ新聞やアングラジャーナリストによる書類が広げられたテーブルから目を離さなかった。

 

「……そんなことをせずとも、パソコンを使うことぐらい大丈夫だと思いますが?」

 

「君たちが私を信用していないのは分かるから、閲覧できるサイトなどを制限するだろう? それならば誰もが見られるコレで十分だ。」

 

「(普通なら『できない』、『不可能に近い』という事柄をこの男は軟禁状態である現状でも、本当に持ち前の知略と一般人が得られる情報を掛け合わせるだけで事足りているのだから末恐ろしいわ。)」

 

 そこでアイーシャの脳裏にふとこのような考えが過ぎった。

 

『もしこの男に更なる手腕を振るわせたら?』

『もし超合集国────ひいてはブリタニア相手に、参謀として使ったら?』

 

『もし』、『もし』、『もし』。

 

 数々のIF(もし)が次々とアイーシャの中で湧き上がり、最後には『どれだけの成果を上げられるのだろう?』という、今まで一度もしたことがない考えに身震いをして自分の考えに蓋をした。

 

「……」

 

「??? カレンダーを見て、どうしたのですか?」

 

「……いや、『今日はいつだったかな』と思っただけさ。」

 

「はぁ……」

 

「(なるほど……カノンが自社ブランドの新商品の評価を待つ気持ちがコレだったのか。)」

 

 シュナイゼルはそう思いつつ、ただ静かに日課に励むのだった。

*1
アキト:同じギャグを使うのはどうかと思う。

*2
ようやく出せました! アイデア、誠にありがとうございます藤原妹紅さん!

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