小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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溶けそうな暑い中、共に頑張りましょう!

お読み頂きありがとうございます、楽しんでいただければ幸いです! m(_ _)m


第31話 ナリタ連山、近づく

 気が付くと、人質を取っていたナイトポリスに万が一の場合の為に持ってきていた『保険』を使用した後だった。

 

 ヘルメット超しでも鼻を襲う火薬の匂い。

 手には使用済みの磁石型グラップリングフックを付けた未だに噴射の所為で熱いパイルバンカーの試作機。

 足元には巨大なクギ状の鉄の塊を打ち込まれたコックピットブロックと、飛び散った()()()()

 

 そしてすぐ横には────

 

「ヒッ?!」

 

「ッ」

 

 ────顔を真っ青にして怯えた様子の()()()が俺を見ていた。

 

 

 

 

 

「お母さん!」

 

「カ、カレン?! どうして、貴方がここに?! それにそのヘッドバンドは、ナオトの?!」

 

 俺は離れた場所から、グラスゴーを使い動かなくなったナイトポリスから留美さんを下した後に出てきたカレンたち母娘を眺めていた。

 

 さっきまで熱かった身体も冷えてきたことで、パイルバンカーと俺の衝動的行動について反省点を何個か思い浮かべるとカレンたちの話し声が耳に届いてくる。

 

「カレン! 貴方、ナイトメアになんかに乗って……まさか貴方、最近噂になっている黒の騎士団の────?!」

「────そんなことはどうだっていい! お母さんこそなんで……どうしてこんなところにいるの?! ま、まさかお母さんもリフレインを────?!」

「────ち、違うわ! 確かに古い知り合いから渡されていたけれど使うか迷って……結局怖くなって、ここに来て返すつもりだったわ!」

 

「ま、“迷った”って……もういい加減にして! 貴方はいつもそうよ!」

 

「か、カレン────?」

「────日本を滅茶苦茶にしたブリタニアにすがって、男にすがって、今度は“薬を使おうか迷った”ですって?! “怖くなって返しに来た” って、どれだけ……」

 

「カレン────」

 「────もう私の名前を呼ばないで! ほっといてよ!」

 

 カレンは涙を浮かべながらただただ叫んだ。

 

 それは子供の頃以来、久しく目にしなかった『カレン』だった。

 

「だって……」

 

 「“だって”何よ?!」

 

「ナオトはもういないから、“せめて私だけでも”と思って。」

 

「…………………………は?」

 

「“ずっと、そばに居るよ”って直接口に出来なくても……いつか貴方がもう、私を必要ないと思う時まで居たかった。 でも、貴方はブリタニア人になっても幸せにはならなかったのね? ごめんね、カレン。 契約違反でクビになっても話せば良かったわね────」

「────まさか全部……全部、私の為にしていたと言うの?」

 

「だって、貴方は私の娘よ? 自分の子供の幸せを願わない母なんてそう居ないわ。 それとも、やっぱり嫌?」

 

「……………………………………………………」

 

「それだったら……私、明日にでも屋敷を出るから……」

 

「…………う────」

 

 

 そこでカレンはやっと留美さんの行動原理が全て自分にあると察し、ただただ留美さんに抱かれるまま、泣いた。

 

 俺は複雑な心境のまま、それをヘルメットの下から見ていると横から声を掛けられる。

 

「珍妙なモノを作ったな、スバル?」

 

「ゼロ……」

 

「まさか歩兵用の、対KMF武装が出てくるとは思わなかったぞ。」

 

 そうだ。

 そう言えばルルーシュの前でパイルバンカー(試作兵器)を披露してしまったのだった。

 これは大きな(痛恨の)ミスだ。

 

 どうする?

 

 どうすれば……

 

「あれは()()()だ。」

 

「ほう? それにしては多大な成果を見せつけたようだが?」

 

「確かに。 だが今回は運が非常に良かった上にあらゆる条件が有利に重なった偶然だ。  そもそもこの武器、『歩兵武器』としては失格だが、ナイトメアの武装として転換の余地があった。 結局、兵装は間に合わなかったが。」

 

「面白いな。 出来次第、私に報告しろ。」

 

 うわぁ~。

 嫌だなぁ~。

 声だけからでも、マスクの下が『魔神ガーゼロ』の顔をしているってわかるよぉ~。

 

 馬鹿。

 

 熱くなった俺の馬鹿。

 

 出来るなら過去の自分を殴りたい。

 

 ………………………………………………どうしてこうなった?

 

 

 

 

 あれからリフレイン中毒者や後遺症の持つ者たちを保護するために軍警察を呼んで彼らがちゃんと仕事をするのを見届けていた。

 

 あるものは足の自由が利かないらしく、担架に乗せられてから救急車の中へと消える。

 

 勿論、その人混みの中に留美さんの姿はない。

 

 今頃は、カレンが彼女を連れて屋敷に戻っているだろう。

 

 予定とかなり違ったが、彼女たちが無事に和解できる状況に持っていけて良かった。

 

 ルルーシュには、『スバル』は目を付けられたけど結局ヘルメットを外すことにならなくて良かった。

 

 ……しかし暑いな。

 それに掻いた汗もべたべたするし。

 

 俺はヘルメットを取って、目に入りそうだった汗を袖で────

 

「────へぇ?」

 

 俺は反射的に振り向きながら拳銃を構え、背後から聞こえた声の持ち主をちゃんと目にする。

 

「これはまた面白いな。 まさか()()()とここで出会うなんて。」

 

 彼を観ていたのは、白い拘束衣を未だに着ていたCCだった。

 

「(何でここにCCが?)」

 

 

 

 スヴェンは単に思い出せなかったのか(あるいは忘れたのか)、原作でのリフレインエピソードの最後にCCは静かにルルーシュを見守っていた描写があり、『嘘の涙は人を傷つけ、嘘の笑顔は自分を傷つける』と言う意味深いモノローグをしていた。

 

 今回も感傷に浸っていた彼女は帰り道中、運よく見たのは丁度スヴェンがヘルメットを取った直後だった。

 

 スヴェンにとっては、『運が悪い』以外のなんでもないが。

 

 

 

「(いや、それは今いい。 問題なのは、メイクをしていない素顔を見られたことだ。)」

 

「“なんで私がここにいる”、と聞きたいようだな? 散歩だよ。」

 

「……………………」

 

「どうした? 喋らないのか? 案外お前は学園の外では退屈な男なのだな、“スヴェン”とやら? ああ、それとも“スバル”と呼んだ方が良かったかな?」

 

『CC』。

 見た目は15、6歳の少女の見た目をしているが文字通り『不老不死』。

 既に長い時を生きてきたおかげか自分に危険があろうがなかろうが自由気ままな性格で、あのルルーシュでさえ扱い方に頭を悩ませる程の自由人だ。

 そんな奴が俺の素顔を見てスヴェン=スバルで、“面白い”とまできた。

 今何とかしないと、マウントを取られたまま俺を困らせるのは火を見るより明らかだ。

 

 一か八かだ。

 せめて釘をさせればいいが、もし俺の見当違いだったら……

 

「なら、俺もお前を“()()”と呼ぼう。」

 

 

 

 スヴェンの言葉に飄々としていたCCは口をつぐみながら今まで見せたことの無い、キッとした真剣な目つきを彼に向ける。

 

「貴様、どこでそれを聞いた? 何故知っている?」

 

「さぁな。 どこと何故だと思う?」

 

「……………………………………」

 

 尚スヴェンは己の仮面(ポーカーフェイス)深く感謝していた。

 

 「(設定資料で見た、CCの名前が初期のモノで合っていて良かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!)」

 

「……フフ。 お前、あの坊やとは違う意味で本当に面白いな?」

 

「(『坊や』って『ルルーシュ』のことだよな? って違うだろ俺! このままだと俺の素顔を見てオサラバする気だぞこいつ(CC)は!)」

 

「じゃあな。 気が向いたらまた────」

「────待て。 お前に話がある。」

 

 また風の赴くままのような態度に戻ったCCがこの場から去るのを何とか引き止める。

 

「なんだ? 私はもうお前に話すことなど何も────」

「────俺は()()()()()()()()()()()。」

 

「ッ……話とはなんだ?」

 

 良し、グイグイとあっちから食いついてきたな?

 予想通りだ。

 

 明らかに呼び止められて嫌そうな顔を浮かべる彼女を、半ば強引な手で『取引』のテーブルへとつかせる。

 

「俺は別にお前の『それ(願い)』を妨害するつもりはない。 むしろ手助けしたい。」

 

「……ハッ。 何を言うかと思えば。 私はもう坊やと契約を結んでいるのだぞ? お前の助けなど必要ない。」

 

「だが使える駒は多いに越したことは無いだろう? だからこれは『契約』ではない、これはお互いの利の為だ……そうだな、『同盟』……いや。 『不干渉』に近いな。 

 俺は可能な限り、お前の頼みを聞く。 代わりにお前は単純に、俺の事を誰にも伝えなければいい。 ああ、気が向いたのならこちらの頼みも聞いてくれるとありがたい。 無論、こっちの方はいつでも断ってもいいぞ。」

 

「……正気か、お前?」

 

「前もって言うが、これにはあらゆる連絡手段を含んでいる。 例えば……()()もな?」

 

「…………………………………………」

 

 スヴェンが最後に言ったことに対して、CCの眉毛がピクリと反応する。

 

 実は彼女、作中でも時々見かけると思うが突然特に誰もいないのに喋り出すときがある。

 

 それはまるでどこかの誰かと喋っているようで、信じられるかどうかは別としてその時はいわゆる『世界』に『意識』を通して本当に『()()』と会話しているのだ。

 

 これは、CC以外には恐らく片手でも多すぎるほどの者しか知らない機密事項に近いことだ。

 

 今スヴェンが言ったことは明確にそれを意識したものらしく、CCの興味を引くには十分だった。

 

「………………お前の事を伝えなければ、私の頼みを聞くのだな?」

 

「“可能な限り”、だが。 (さぁ、どう出る? 作中随一の気楽かつ傍若無人?)」

 

「………………………………生意気な若造だ、たかがピザ作りが得意のくせに。」

 

 「(やっぱりピザ食べとったの、お前かいな?!)」

 

 CCはここでくるりと背中を見せてそのまま歩き出しながら手を上げて振る。

 

「その調子で作り続けろ。 ()()()()()()()ぞ?」

 

 ようやくそれを最後に、彼女はビルの屋上から姿を消してスヴェンはやっと長~いため息を出す。

 

「(今のは、彼女が承諾したのも同然……ルルーシュに漏れることは無い、あれはあれで義理堅いからな。 あとは俺の頼み事は基本的にスルーされるとして……彼女の頼みごとと、『願い』だな。)」

 

 尚スヴェンはこの時知らなかった。

 

 自ら悪魔との契約をしていたことに。

 だがそれは、またあとの話となる。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

『リフレイン作戦』からまた数週間後、俺はかなり充実した時間を過ごしていた。

 

 まずシュタットフェルト家の屋敷では留美さんがミスをしなくなり、カレンも(出来るだけ)自然体で彼女と接するようになった。

 

 クソビッチ(シュタットフェルト夫人)? 

 

 アイツなら愛人たちが互いを陥れようとしてそれがジョナサン様(シュタットフェルト当主)にバレないよう動いててんやわんやで『留美さんいじめ』どころではなくなった。

 

 なんてことはない。

 愛人たちに互いの事を知らせたり、アポイントがかち合ってしまうなどのちょ~~~~~~~~っと調整をしただけだ。

 

 フハハハハハ!

 踊れ踊れ道化ども!

 この私の為にぃぃ!

 

 あと留美さんってなんとなくだが、俺のフォローもしてくれているような気がする。

 恐らくカレンから俺が『情報屋』まがいの事をしていると聞いたからだが、明らかに俺が『黒の騎士団員スバル』として活動していることも意識しているっぽいのは、気の所為か?

 

 俺が聞いてもカレンは“流石にそっちは頼まれた通りに黙っている”と答えたし。

 

 留美さん自身に聞いても、ニコニコするだけでスルーするし。

 

 助かってはいるからあまり深入りしていないけど。

 

 そしてアッシュフォード学園でも奇妙なことが俺の周りで起きていた。

 

 今まで余所余所しくしていた奴らが向こうから来たのだ。

 

 話を聞くと原作のように四六時中、学生に質問攻めされたらしく、上手くクラブハウスなどに立ち寄れなかったらしい。

 

『やっと先輩たちやアリスに部屋から出してもらったですー! “あのホテルジャックで目立っちゃったからライブラの充実した個室で匿って”とか“危ないから”なんて知らないです! あ、スヴェン先輩! プディングを大量に作ってみたです! 食べますー?』

『と言うかアンタ食べなさい。 一応それ、ナナリー用に作った失敗作だから。』

 

 これがライブラとアリス。

 と言うかシャーリー、ミレイ、ニーナ……お前ら、なにこの子(中等部)の部屋に押し入って籠っているの?

 

 ライブラの部屋はあれか? お前たちに取ってアラモ*1か何かか?

 

『スヴェン、都合悪かったらいつでも言ってね? 生徒会の書類整理とかならルルーシュたちに押し付けるから。』

『あ、スヴェン君。 えと……時間があったらでいいんですけど、この理論を読んでどう思うか感想をくれますか?』

 

 ミレイがなんか申し訳なさそうな顔(優しい目)をするし、ニーナはな~んか頬を紅潮させてモジモジするし。

 

 二人とも、熱でもあるのかな?

 

 とまぁ、女性陣がなんか異様なほどにやんわりと接してくるのだ。

 

 どうしてこうなった?

 俺、何かした?

 なんか怖いんですけど?

 

 


 

 

「フゥ~ン……そ。」

 

 そして目の前には俺の話を聞いて、ジト目アンジュリーゼとニヤニヤしながら腕と足を組みなおす毒島がいた。

 

 紫でした。

 

「フフ! 恵まれているな、スヴェン?」

 

 何に?

 

 ちなみに今いる場所はいつしか、俺がBダッシュしてナナリーの『にゃ~』を録音する為に走り去ったテラス。

 

 珍しくここに足を運んだら毒島が既に居たので、自然(?)とアンジュリーゼもここに来た。

 

 バリバリバリバリバリバリ。

 

 おい、なに次から次へと食っていやがる?

 

 以前見せた『淑女』らしさはどこに捨てた?

 やっぱり『アンジュ』になったのか?

 そこんとこどうなの?

 

「ん? 毒島、その腕の動きは……怪我でもしたのか?」

 

「よくわかったな? 一応見えないよう、肩に肌色の包帯も巻いているのに。」

 

「一瞬紅茶を飲むときに躊躇したからな。」

 

「よく見ているな?」

 

「当たり前だ。」

 

 「フゥ~~~~~~~~ン?」

 

 なんだアンジュリーゼ、その声は?

 縮退炉(しゅくたいろ)をチャージしているのか?

 頼むからバスター三号みたいになるなよ?

 

 え? 『意味が分からない』って?

 奇遇だな、俺もだ。

 

「最近、夜の租界に出ると噂されている輩と接触を図ろうとした。 そいつはブリタニア人の兵士を次々と襲っては殺しているらしくてな? このままだと租界の治安や、裏社会のパワーバランスなどに支障が出てきてしまうのでアンジュと探しに出た。」

 

 まさかのアンジュ呼びデタァァァァ?!

 

「まずは話をしようと思ったのだが……潜んでいた私たちを逆に奇襲したのだ、問答無用でな。 この肩の傷だが、その輩とやらに付けられたのだ。」

 

 え。

 

「今思い出してもむかつくわよ……しかもビルとビルの間が狭い横道にいた私たちを上から襲撃するなんて、ただものじゃないわ。」

 

 奇襲されたとはいえ毒島とアンジュリーゼの二人が応戦して、毒島に怪我をさせただと?

 どんな化け物だよ?

 

「しかしよく怪我だけで無事だったわね、私たち? ……冴子?」

 

 

 アンジュリーゼの他愛ない独り言に毒島が考え込む。

 

 彼女が思い浮かべるのは先日の夜、明らかにアンジュリーゼより自分を先に狙った刺客が去り際に言った言葉。

 

『違う。 お前たちじゃない。』

 

「(あれは、どう言う意味だったのだ? まさか誰かをおびき出す為の行動だというのか?)」

*1
地球で起こったテキサス独立戦争中で有名な籠城戦が行われた砦の名前




あ、暑いぃぃぃぃ……
空調ががガガガがガオガイガー…… _:(´ཀ`」 ∠):_ …

アンケートへのご協力、誠にありがとうございます。 次話かその更に次の話辺りに反映させるかと思います。

『ブリタニア絶対殺す狂犬』を加入させますか? *注意事項*作者はロストストーリーズ未プレイでゲームが完結していないので『高い可能性(ほぼ確定)でキャラ崩壊アリ』とだけ前もってここに書きます

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