黒の騎士団が貸し切りにした旅館(の旧館)で、古参メンバーたちを労う慰安旅行が行われていた。
「皆の者、芸で
出された料理をほぼつまみに普段は飲まない者たちにも相当酒が回った頃に突然聞こえてきた耳鳴りに皆が静まり返った時、突然神楽耶が上記を言い放った。
「「「「「え。」」」」」
誰もが唖然としながら、いつもとはちょっと違う神楽耶の古風な言葉遣い、真っ赤な顔と据わっている目、そして彼女が手にしていた酒で彼女が酔っているという結果に誰もが瞬時に思い至った。
「お、おいおい神楽耶様よぉ? 酔っぱらっているのかぁ~?」
失敬。
約一名、『
「未成年だろぉ? しっかりし────」
「────芸をしなかった者は、
「「「「「え。」」」」」
「それが嫌ならば……そうじゃな、ここに居る冴子に首をささげよ。 芸をするか、
「「「「「………………」」」」」
シ~ン。
宴会場は更に静まり返り、神楽耶の近くにいながらシュンと体を小さくしているゼロもあってか空気が重くなった室内で誰もが『ヤバイ』と思い浮かべて固唾を飲んだ。
「♪」
その場に切迫した緊張感が漂う様子に、『我先に』とピザを頬張りながらニヤニヤする一人を除いて。
「あ、あのぅ……神楽耶様? 『芸』と急に仰られても……」
「(『芸』か。 それならば、酒の一気飲みを前歯の一つを体質のほとんどが水分で出来ているクラゲに吸い上げさせてクリア────って、できるかぁぁぁぁぁ! 何を考えているんだ俺は?! ……おおおおおおおお落ち着け俺、いざとなれば俺だけでもこの場から逃げ────)」
「────ちなみに妖術などの類は禁止じゃぞ?」
ギクッ。
「「「「「『妖術』?」」」」」
神楽耶の言葉に殆どの者たちが首をかしげる中で、ゼロとスバルが一瞬だけ的確な指摘に対して身震いをする。
「そうじゃ。 忍術や剣術ならばまだしも、南蛮の妖術など邪道中の邪道。 クズ以下のクズ。 『芸』から程遠いわ。 ほれほれ、歳を取った大人などがこんなに大勢いるのじゃ。 何か一つでもやって見せろ。」
「「「「「………………」」」」」
こんな異常事態で一人だけ────スバルが
「(こんな神楽耶、原作で見ていないからちょっと『緊張』とは違う意味でドキドキするなぁ────)」
「────時にそこの『スバル』と『ネモ』とやら!」
ビシッ!
「え?! はい?! 俺ですか?!」
「「「「「(スバル/スヴェンが動揺している?!)」」」」」
「なんなのじゃ貴様は?! 裏でコソコソコソコソコソコソと隠れておるゼロ様の『
「ッ?! (ま、まさか
神楽耶が突然自分を名指しにしたことにビックリしたスバルと、静かに静観していたネモ(の衣装を着たライカ)に神楽耶は愚痴を言い放ち、マーヤは驚愕する。
「せ、せせせせせせ『2Pカラー』?!」
その反面、
「何を驚いておる? 桐原殿を誑かした上に組織を結成し、アオモリでゼロ様の物真似をしただけでなくEUから難民を引き連れて蓬莱島の『りふぉーむ』でまるでゼロ様の国外追放の策略を先んじて行い、その国外追放にて着ていた白いゼロ様の衣装に少し手を加えた挙句、天子様の結婚に乱入して世界中に報道されたカメラに向かって堂々と『ねも』なぞ名乗ったのじゃ。 これのどこが『
「(た、確かに俺のやってきたことと言えば原作で起きたことに対して先回りや対策を前もってしたことは考えると今までゼロがやったことに類似していると言われればまぁ確かにそうだが……『2Pカラー』はないだろ流石に────?!)」
「────そもそもじゃ! 調べ上げれば調べ上げる程に出るわ出るわ、貴様のやってきたことが────!」
「────う……くッ!」
神楽耶から発された怒涛の指摘にスバルはタジタジと身じろぐ横で、その場にいた殆どの者たちはこう思ったそうな。
『いつもはゼロ以外の事は全く興味無さそうなのに、神楽耶/様って意外と
未だにズラズラと愚痴が続く神楽耶の姿を見て、内心で引いていた約一名を除いて。
「(どれだけゼロの崇拝者なの、この人?!)」
マーヤ君、他の誰でもない君がそれを思うのかい?
「ほれほれほれ。
「……というわけで玉城! 出番だぞ!」
「ここでオレに振るのかよ、スバル?!」
「お前、
「芸と
「それでも第2特務隊隊長か?!」
「それも関係ねぇ────!」
「────フン。 流石はコソコソとする者同士、同
「ッ?! 俺と……玉城が……『同レベル』……だと?!」
ドサッ。
神楽耶の言葉に動揺した様子のスバルは明らかに落ち込むようなトーンで上記を発した後、ぐったりと背中を壁に寄りかかっては天井を見上げる。
「普通、そこまでショックを受けるかよ。」
「さて……次は誰じゃ?」
神楽耶は次の標的に銃口(笑)の照準を合わせるかのように、凍り付いた周りをじっくりと見渡し始める。
サッ!
「お、オイお前ら?! どういうつもりだ?!」
「「「「南シールド!」」」」
「なんだよそれ?!」
「図体がデカい割に、運動神経ゼロのお前は正しく『
「意味が分からん!」
「つまり身代わりになれ!」
「断る!」
扇たちの動きはかつてないほど速かったことが幸いし、神楽耶のよどんだ目には扇たちではなく南に収まる。
「………………………………………………」
「ゴ、ゴクリ……」
「………………………………………………ケッ。」
彼女から発された声は短い反面、神楽耶の表情は汚物を見るかのようなものへと変わった。
「お主、南
「「「「え。」」」」
扇たちは一斉に南を見ると、彼が明らかに顔色を悪くさせながら汗を流していた様子に前から持っていた『疑惑』が『確信』へと変わっていった。
無論、このままでは
「なんじゃお主? 気が付いていないとでも思うてか? このでくの坊が。」
「う?! 」
「隠れておりながらもまるで舐め回すかのような、ねっとりとした視線で妾の足をじっくり見たりの。 何故、
「そ、そんな……そんな冷たくて優しい目で見下さないでくれ! 傷つける言葉を言わないでくれ! オ、オ、オ、オ、オ、オ、オレは見るだけでいいんだ! それだけで満足なんだぁぁぁぁぁぁぁ!」
「……このヘタレが。 デカいのはその図体だけだったようじゃな?」
「うああああああああああああああああああああああああ?! くぇrちゅいおp%*$(%#()^!$ギギギギギギギギギギギ?!」
ドサッ。
「うわ?!」
「南、大丈夫か?!」
「ブクブクブクブクブク……」
「白目をむきながら泡を?!」
「しかも全身痙攣しているぞ?!」
「って、ぜったい大丈夫な訳ねぇだろうが……」
「オーホッホッホッホッホ! 愉快! 愉快じゃ!☆」
「(この笑い方……ものすごくデジャヴを感じるのは俺の気のせいだろうか?)」
「なんだ、ゼロ? 私の顔に何かついているのか?」
「い、い、い、い、いや……なにも。 (今はよそう……やぶ蛇を増やしたくない。 というか、なぜ俺の周りだけ
横目で自分をゼロが見ていたことに気が付いたC.C.の言葉に再び存在感を小さくさせることに専念する。
「しかしつまらん……つまらんぞ! 酒の席に芸の一つも無いとはつまらん! 『ねも』かスバル! その仮面を取れ!」
「「「「エ。」」」」
「(ッ。 それだけはマズい! 神楽耶の言動から既に予想はしているかもしれんが、仮面を取ればそれらは『事実』と変わる! 無論、スバルならば対策を立てているかもしれないが予測不可能な案件が多数ある! リスクが高すぎる! ええええい、何故この俺が!) あの……神楽耶? 一つ宜しいですかな?」
しかしここでスバルの隣からマーヤが居なくなっていたことに気が付いたゼロは敢えて自分へと注目が行くように、勇気を振り絞って神楽耶に話しかけた。
「はい、なんでしょうかゼロ様?!♡」
「なぜ、その……天井を見上げているのですか?」
「????? 見下せば、自ずとこうなろう?」
「(つまり、『あまりにも見下したせいで見上げている』ということか?)」
「だから何で
ゼロは大量の汗を仮面と衣装の下で掻きながらも、再びC.C.を見ていた。
「あああああ! もうしょうがないわね! カレン、立って!」
「え? い、井上さん────?」
「────女は度胸! 脱ぐわよ────!」
「────へぁ?! 井上さんちょっと────↑↑↑むきゃああああああああああ────?!」
「────まったく何なのよその叫びは?! 男どもが動けないのなら、私たちが何とかするしかないでしょうが────?!」
「────それで何で『脱ぐ』になるの────ってちょっと変なところさわ────!」
≪────ええやないか~、ええやないか~────♪≫
「────良くないです────!」
≪────そうは言うても体は正直やで────♪≫
「────井上さん、ビンタするよ────?!」
「(────
「ふ・ざ・け・る・なぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
目をこれでもかと見開かせていた男性陣を無視したゼロは瞬きをしていると、神楽耶が叫んだ。
「見せつけか?! 見せつけておるのかぁぁぁぁぁ?!」
「きゃ~♪ お止しになってお代官────じゃなくて、神楽耶様ぁ~ん♪」
「自慢か?! 自慢なのじゃなぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」
「あ~れ~♪」
「「「「「「・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・」」」」」」
「(……夢だと思いたいが……これは現実なんだな。 ん?)」
ようやく部屋に戻ってきたマーヤと彼女が手に持っていた物を見てホッとする。
「(……なるほど! 多大な犠牲は払ったが、時間は十分に稼いだ! 条件はそろった、逆転のチャンスを使え!)」
「(マーヤ怖すぎだけどこの際、どうでもよかばい!)」
マーヤは手に持っていたものを脱力していたふり(?)をしていたスバルが素早く手袋を脱ぎ捨てては調整し、その間に彼女は
「うおおおおおおおおおおおおお!」
ギュオオオオオオン!
スバルが手に持っていたギターを勢いよく弾き、部屋の中の注目を集中させる。
「皆の怒り! 悲しみ! 困惑にイラつき! その全てを
ジャァァァァァァァァン!
スバルは必死にエレキギターを弾き、次第に弾く速度が弾き続けるにつれて速くなっていき、数秒後には左手でフレット間の弦を叩きながら右手の指で弦を引っ掻いていくトリル奏法────否、タッピング奏法で独奏を始める。
コレヲぉぉぉぉデメェラギギヤガレェェェェ!
「「「「「(ギターが人語を?!)」」」」」
「(神楽耶のパワハラを止めつつ毒島やここに居る全員を巻き込むためには────!)────ネモ! 俺が弾くところを見て続けろ!」
「……ああ。」
「(スザク級……とまではいかないが、身体能力がバケモノのカレンならすぐに対応できるだろ!) カレン!」
「な、なに?!」
「着崩れした浴衣を直して、俺に合わせろ!」
「え?! う、うん! ……うん?!」
…………
………
……
…
「ヴィレッタ先生~? 本当にこっちなんです~?」
一方で、露天風呂を堪能してから新館に戻ろうとしたミレイ、ライラ、そしてヴィレッタは旧館の中を彷徨っていた。
始めはのぼせかけたミーヤをシャーリーが連れて帰るところに遭遇し、『テルマエとかなり違う』という話を聞いてから三人は温泉を楽しんでいたのだがやはり深さも温度も慣れているものとは勝手が違うせいで思っていたより長風呂に入っていたせいでフラフラのまま旧館へと足を運んでしまった。
最初は旧館から戻ろうとしたのだが、『違う雰囲気を堪能してから』というミレイの提案にライラが賛同したことでヴィレッタは保護者として付いて行き、彼女自身も楽しかったのだろう、携帯電話の電池が切れかけていたことに気付かなかった。
「『正直ここまで入り組んでいる構造をこうも歩かれては分からん』としか言えない。 見取り図があれば楽なのだが……何故ないのだ?」
「不便よね~。」
「です~。」
昔ながらの
「ミレイはどう思う?」
「ん~……多分?」
「クッ! こんな時に携帯の電池が切れてしまうとは!」
「
「……今のはなに、ライブラちゃん?」
「『だじゃれ』という奴です!」
「ぶほ!」
「「??? ヴィレッタ先生?」」
「い、いや……気にしないでくれ。 (た、たまにスバルさんが口にする
「しかし……ミレイはなぜ携帯電話を置いていった?」
「だってヴィレッタ先生がいつもしっかりしているから、つい……」
全員が予想以上の長風呂を堪能したせいでもある、とここで追記する。
「『すれ違い』、というヤツです!」
「ライ……ブラさんは楽しそうですね? (いかんいかん、気が緩んでいた。 思わずミレイの前で『ライラ』と言いそうだった!)」
「だって知らないところの探検です! ドキドキするです!」
「分かるわ~♪ 私も小さい頃は近くの山とかに秘密基地を作ったものね~♪」
「そうなのか?」
「そうなのです?」
「え。 なにこの『仲間外れ感』は。」
ミレイは知る由もないが、ヴィレッタは早くに亡くなった両親の代わりに年下の5人兄弟の世話を見ていたり男性社会の中を生き抜いてきたので『遊ぶ』余裕はなく、ライラは箱入りだった上に『超』が付くほど過保護な兄によって『危険性のある遊び』から極力遠ざかれたのもあり、二人はそういった『泥んこ遊び』とは無縁だった。
そのせいで遅れながらもヴィレッタが『軍人』ではなく『女性』として扱われたことでより乙女を意識したり、ずっと窮屈だった生活を送っていた反動からかライラも
♪~。
そんな三人が歩いていると旅館にはあまり似つかわしくない、電子音染みた音が耳に届く。
「……音楽?」
「やっと人がいるところです!」
「結構騒がしいような気がする……」
「中、見ちゃう?」
「いや、ソレは流石に失礼だろう?!」
「「えええええええ。」」
「(……何で私が悪いような構図になっているのだ?)」
「と、言う訳で────!」
「────
「お、おい?!」
シャ────
『────キン〇~、キン〇~、キ〇グゲ〇ナァァァ! キン〇~、キン〇~、キ〇グゲ〇ナァァァ!』
「「「…………………………………………………………」」」
ヴィレッタの制する声を無視し、襖を勢いよく開けるとまるでアイドルグループかのように息の合った踊り(儀式?)を披露していた面々に言葉を失くした。
『キン〇~、キン〇~、キ〇グゲ〇ナァァァ! 探すのさ~! 今ここで~────♪』
────シャ。
「「「…………………………………………………………」」」
三人は目を点にさせたまま無言で腕を組み、襖の向こう側に広がっていた景色を思い返してお互いを見る。
「……二人に聞くが、私の見間違いでなければ……今この向こう側にいたのって────」
「────ゼロと神楽耶様や、黒の騎士団たちだった……よね?」
「ああ……」
「全員、ダンスしていたです?」
「「だよなぁ/ですよねぇ…………………………………………………………」」
さて、ある程度の事情を知っているヴィレッタやライラならばあまり問題はないのだが本来ならばミレイがゼロや神楽耶に黒の騎士団の面々がいる場に毒島やマーヤにカレンがいることに気が付いてもおかしくはない。
しかし『木を隠すなら森の中』とよく言うほどに何かを隠すには使われている手段であると同時に、
つまり、『あまりにも目立つ物を森の中に置くことで隠したいものから注意を逸らす』。
この場合、『ゼロや神楽耶たちが妙な踊りをしている』という、あまりにも現実離れかつ目立つ光景に注目の全てがいっていたため、その場にいた毒島やマーヤやカレンたちがいて踊っていたことをミレイは見落としていた。
誰からともなく三人は再び旧館を彷徨い、スタッフに出会っては新館に戻った。
「♪~ (き〇ぐぅ~、き〇ぐぅ~、き〇ぐげ〇な~♪ き〇ぐぅ~、き〇ぐぅ~、き〇ぐげ〇な~♪)」
余談だがミレイやヴィレッタの後ろでライラだけは器用に歩きながらも両腕を前に出してブンブンと振るい、『なんちゃってゲイ〇ーダン〇』をしていたとここで付け足す。
「うっ……」
「神楽耶様、しっかり!」
「だ、誰かバケツを!」
更なる余談だが、場の雰囲気に逆らうことができずにそのままゲイ〇ーダン〇をした神楽耶の酔いが回って早々にダウンしたことを合図に、
「(っしゃああああああ! 計画通りっ! なんとか凌いだぜ、コンチクショウが!)」
キリキリキリキリキリキリキリキリ!
「(うっ?! 胃、胃が……)」
このカオスだった夜、黒の騎士団とその他(笑)は共通の思いを持ちながら眠りについた。
『絶対に毒島と神楽耶には酒を飲ませては駄目だ』という思いを。
…………
………
……
…
「ふぅー……」
翌日、ルルーシュは盛大なため息を出しながら肩まで湯船に
というのも神楽耶にとっては久しぶりとなる激しい動きによって酔いが回ったせいからか、昨日の夜から唸るような声を出しつつも大人しく布団の中で寝込んでいた。
「(ようやく一人になれた。 全く、神楽耶の指摘に項垂れる
『フリ』ではなく『素』です。
さらにネタバレをするのならば、ギターもアンプもマーヤが独自に持ってきたものです。
「(しかも即興で耳に残るだけでなく、珍妙かつシンプルな踊りで周りを巻き込んでいく流れに持っていくとはな。)」
『即興』ではなく他作品ネタです。
弁解する訳でないのだが『閃き』
「(そこが俺と彼の一番大きな違いだろうな。)」
なお、何故ルルーシュが現在ゆっくりしているかと言うと例外なく『策』もある上に加えて『時間が早い』からである。
「(黒の騎士団は昨夜の酒が抜けきっていないだろうし、スバルたちは昼か夜風呂派だ。
────カラカラカラ~。
「おぉぉ、やっぱり広いなぁ~。」
「↑ひょ?! (女子の声だと?! ば、バカな?! 何故、男湯に?! しかもこの声、聞き間違う筈がない────!)」
「────あれ? 今、ルルの声がしたような……」
「(どうする?!
「あ、もしかしてルルが岩陰の所にいるとか────」
「────あ────」
「────な~ん……て…………………………」
ルルーシュが身を隠していた、一見パッと見ただけでは誰かいるか分からない岩陰に、シャーリーの顔がひょっこりと覗きこみ、目が合うと急に黙り込む。
「「………………………………」」
シャーリーは湯着を着たルルーシュを見て、彼は一枚のタオルだけを体に巻いた彼女に固まる。
「……えええっと、ルル……だよね?」
そして固まって数秒後、先に気まずい沈黙を破ったのはシャーリーだった。
「いえ、違います。 エルです────」
「あの……隠さなくてもいいよ────?」
「────何をだ────」
「────ほら、宴会場では大変だったって聞いたから────」
「────何の事だかさっぱりだな────」
「────エルから聞いているから。」
「…………………………………………(アイツ、よりにもよってなんてことをしてくれているんだ?!)」
静かに空を仰いだルルーシュは空中に『フハハハハハハハハハハハハハハハハハ!』と悪~い笑顔のまま爆笑するエルを想像した。
「(いや、切り替えよう。 以前のようにブリタニアと敵対していた頃ならまだしも、情報漏洩の相手がシャーリーだけならば……いざとなれば、こちらには
「うん。 ヴィレッタ先生から聞いた。 『変な踊りをするゼロを見た』って。」
「そ、そうか。」
「「………………………………」」
「えっと……今、ルル一人だけいるのかな────?」
「────え────?!」
「────だって更衣室のロッカー、使われていなかったから────」
「────い、衣装をそのままにするわけにはいかないから……その────」
「────そそそそそそっか! それもそうだね!」
「「………………………………」」
「あー……その……退いてくれれば、俺が背を向けて出るが────」
「────あの────!」
「────ん────?」
「────ちょっとだけ良いかな?!」
「……??? 何がだ?」
「い、い、い、い、い、い、一緒に! 入る! って────!」
「────は────?」
「ほ、ほ、ほ、ほ、ほら! 『
ザブ、ザブ、ザブ。
シャーリーは言葉を言い放つなり、そのままルルーシュの隣に座る。
「だ、だ、だ、だ、ダメかな?」
「(何故だ?! なぜこんなにも積極的なのだ、シャーリーは?! この行動パターン、あまりにも彼女らしくない!)」
ネタバレをするとシャーリーがこのように大胆な行動に出た理由は至極単純である。
先ほど彼女が言ったように、『ヴィレッタからゼロが
それも『神楽耶
そして『奇妙なダンス』といえどもダンスに変わりはなく、シャーリーも一応令嬢であるので気にならない訳がなかった。
「(ひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! ルルとお風呂! ルルとお風呂! ルルとお風呂ぉぉぉぉぉぉ!)」
つまるところ『ヤキモチによる衝動』ともいう。
「(何とかしなければどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする?!)………………………………」
「ねぇ。 聞いていいかな、ルル?」
出るタイミングを見誤ったルルーシュと突然『らしくない』行動に出たシャーリーの間にまたも気まずい空気が流れ出す前に、シャーリーが話しかける。
「な、なんだ?」
「ゼロってさ────」
「────そ、その前に俺から聞いていいか?」
「う、うん? なに?」
「いつ、聞いた?」
「うんとね……日本が返されるちょっと前に。」
「(時期的には、第二ブラックリベリオンの時か────)」
「────それでね、ゼロはやっぱり神楽耶様と結婚するのかな?」
「ッ……」
「私、
「そ、それは────」
「────それでね、前にルルが電話して相談した時を思い出して『ああ、私って自分に都合のいいことを言っていたなぁ~』って思っちゃって……今なら、ルルが私に何を言おうとしたのかわかる気がして……」
「しゃ、シャーリー────」
「────だから、良いよ。 結婚しちゃっても。」
「……………………………………………………………………え?」
「だってルルが結婚しちゃっても、私はルルの事を好きのままでいるから……多分、これからもずっと。」
「え?」
ルルーシュは消え入りそうな声と、普段のシャーリーからは程遠い複雑そうな表情をした彼女に思わず気の抜けた声を出した。
「シャ────?」
「────そ、それだけだから────!」
「────ま、待ってくれ!」
ルルーシュは立ち上がってその場から駆け出しそうなシャーリーを腕を掴んでは立ち上がる
彼自身、何故このようにシャーリーを呼び止めたのか分からなかった。
ただ、彼の中で『泣きそうなシャーリーは見たくない』という気持ちに駆られて身体が勝手に動いただけであった。
「(何故だ?)」
「る、ルル? ど、どうしたの?」
「(なんだ、この気持ちは……)」
「えっと……腕、痛いから離して────」
「────嫌だ。」
「へ。」
シャーリーだけでなく、ルルーシュ自身も自分の口から発されたことに驚いていたがようやく点と点がつながった様な、何かが腑に落ちたような気持ちになる。
「(ああ、なるほど……これが────)────待ってくれ。」
「……う、うん。」
「多分……恐らく……その……ええい! シャーリー・フェネット!」
「え?! あ、はい?!」
「君と俺が出会ったのは、偶然かも知れない。 だが、今では……えっと……」
「……」
「キューピッドの日でその……学園公認の
「ルル?」
「俺は、最初は『他人の為』と口では言いながらも本当は全部自分のエゴの為にしてきた。」
「……うん。」
「だが……手遅れになりそうなところでエゴだけではなく、本当に周りの為に動いてきた。」
「うん。」
「その中にはシャーリー、君もいた。」
「うん。」
「そして平穏になったが……恐らくこれからも、平時でもゼロは必要だろう。 戦場ではない分マシだが、立場故に過酷な未来や出来事が控えているだろう。」
「……うん。」
「だから、それを踏まえた上で……
「うん…………………………………………うん????????」
「よ、よくわからなかったか……君の言葉を借りるのなら、思いは力だ。 そしてここまで頑張れたのも、シャーリーを思っていたからこそ出来た。」
「うん?!?!?!?!」
「だから……えっと……嫌じゃなければ、余生を共にする前提で付き合ってくれないか?」
「……………………………………………」
「しゃ、シャーリー?」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ふ、不束者……ですが……よ、よろしくお願いしちゃうね?」
「あ……はい、こちらこそ。」
「「………………………………………………………………………………」」
……
…
「あら?」
同時刻、旅館のスタッフが見回り中に温泉の出入口にかけてあるのれんを見て足を止める。
「もう! バイト君、また男湯と女湯を間違えているわ! 『切り替えの時間が近いから』って先にしたら困るのはお客様だけでなくブツブツブツブツブツ……」
カラカラカラカラ。
「「「あ。」」」
そう言いながら男湯と女湯の切り替え時間がくるまで待ったスタッフは男湯からルルーシュとシャーリーを見て、三人とも声を出す。
「「……」」
「あらあらあら♡」
スタッフは呆気にとられた浮体の顔から繋がれた手を見て微笑ましい、ほっこりとした表情を向ける。
「……ハッ?! いや、その、これは違う────あ、違わない────ではなく────!」
「────ウフフフフ♪」
スタッフは慌てふためくルルーシュを見ながら分かったように頷き、器用に背中を向けないままその場から去る。
「………………………………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
「うぅぅぅぅぅ……」
「だ、大丈夫かシャーリー? (茹でたタコより赤いな……のぼせたか?)」
「死んじゃいそう~……」
「死ぬな、シャーリー!」
「………………………………責任、取って?」
「いいだろう────」
「────はう────?!」
「────あ、いや、俺はその────!」
「────も、もう……
パタ。
「シャーリー?!」
シャーリーとルルーシュ、(別の意味で)命がヤバくなる朝だった。
「うぃひへへへへ……こもちあいどるでびゅ~。」
「??? (何を言っているんだ? (それはそれとして、筋トレを続けて良かった。)」
後書きEXTRA:
シャーリー:取り敢えず次は喫茶店でお茶してそのあとのディナーまで映画館に行ってから夜景の見えるホテルから最後はぶどうジュースをワインと間違えて酔ったふりをしてそのまま部屋に休むことにしてそのまま勢いであっは~ん────って私気が早過ぎかしらううんルルもきっとそのつもりだよねだってあのそっけないルルが自分から言ってきたんだものきっとそうだよだから勝負下着を持ってきておいて損はなかったということで『うちに帰るの遅くなるかも』って連絡を入れた方がいいかなううんその方がいいわよきっとグィフヘヘヘヒヒヒヒヒッ!!!♡♡♡♡♡
【挿絵表示】
アンジュ:あの……シャーリー? なにそのモノローグ? (汗
シャーリー:あぁ! 私ってばついに大人の階段を登っちゃうのね────ごぱぁぁぁぁぁ?!
アンジュ:ぎゃああああああああ?! 鼻血が布団に付くゥゥゥゥゥ!!!
余談:
作者の務めている会社の様々な地域に散らばった各部署が社員ごとそれぞれのチームに統合されるらしいです。
ゴールデンウイーク明けに上記のニュースを言い渡され、『あ。 これは人員削減の口実だ』と思った作者でした。
それに伴い、リアルがゴタゴタしています。
余談その2:
同時に某OVAの『大隊! しゅうけーつ! 大隊! しゅうけーつ!!!』も思い浮かべました。 (汗