「これでご満足いただけましたでしょうか?」
「……うむ、何も問題は見当たらぬ。 そちらはどうかね?」
「ええ、今朝読みましたが特に日本に滞在を続けるブリタニア人が不当な目に合わないような手回しが実に充実していますね。」
アッシュフォード学園のミレイたち、そしてスバルを含めた黒の騎士団たちが修学兼慰安旅行を楽しんで(?)いる間、東京にあった元ブリタニア帝国の政庁を合衆国日本の首都としての機能を存続させるための引き継ぎ作業を元総督であるナナリーと合衆国日本代表として超合集国最高評議会議長を担っている神楽耶の補佐兼首相代理の桐原の淡々としたやり取りが響く。
「(ふむ……『お飾りの総督』と周りは噂しておったが、この娘中々どうして……)」
様々な報告書に書類などがきっちりと用途ごとに分けられて置かれたテーブルを挟んで座っていた桐原は、ニコニコとした愛想のよい笑みを向かい側に座っているナナリーに向けつつも目は左右にいるコーネリアとマリーベル、更には護衛としてのギルフォードたちを見渡す。
「(コーネリア皇女は新たなブリタニア帝国の国防総省に拝命されると聞く。 よってナナリー皇女の書類のブラッシュアップはできても骨組みの内容までに手を付ける暇はない。 とすればマリーベル────?)」
「────フフ♪」
「(む。)」
桐原の視線が自分に移った瞬間、笑みを浮かべたままのマリーベルは短い笑いを出した。
「どうした、マリー?」
「いいえ、何も。 ただ
マリーベルの言葉にコーネリアがギョッとし、桐原の護衛を買って出た藤堂と四聖剣の仙波の眉毛がピクリと反応する。
「「「「???」」」」
逆にギルフォードや朝比奈に卜部、千葉などは怪訝な表情をできるだけ押さえるがハテナマークを頭上に浮かべるような空気を出す。
一見するとマリーベルの言葉は当り障りのない返事なのだが、今の状況と桐原の容姿などを配慮すればこう聞こえなくもなくなる。
『作業が思っていたより遅いですね? 歳ですか?』とも。
「(やはり『英雄皇女』、マリーベルか。 グリンダ騎士団の設立に以前からテロの鎮圧活動に加えて先のダモクレス事件の功労者。 それに見た目も最大限に引き出す服装に振る舞い……
マリーベルが何等かの理由でこの会議を早く終わらせたいことに興味を桐原は出したが、すぐに行く先の可能性を見出しては最近の彼女の動きと照らし合う。
「(そう言えば、オルドリン・ジヴォンが傍に控えておらぬな。 それに記憶が確かならば、今日は
「(桐原の返しを略すれば『そっちも色々と手を回しているようだが? 早くそちらに戻りたいのか?』、と言ったところですね……そしてそれは『イエス』、ですわ。) あら、それはいけませんね。 ウフフフ♪」
「(マリーベル皇女も、まだまだ若いのぅ~。) ホッホッホ♪」
ニコニコニコ。
「(マリー、頼むからタイゾウ・キリハラをこれ以上煽るのは止めてくれよ?!)」
パタッ。
「ふぅ……」
その時、ナナリーがテーブルの上に書類の束を置く音と小さく出したため息によってその場にあった緊張感が薄れていく。
「あの、
「「ッ。」」
ナナリーが困った様な笑みを浮かべながら、そう口にする。
「私も、最近まではそのような駆け引きと相対する機会はなかったのですがせっかく長年にわたる戦いが終わったのです。 交渉の場ならともかく、
「「「「………………」」」」
「(ナナリー皇女も、若いのぉ────)」
「────私は確かに若輩者で公の場での経験も少なく、夢見がちなのは否定しません。」
そこで言葉を止めたナナリーは不安からか、少々ぎこちない笑顔を浮かべながら再び口を開けた。
「ですがどんなに人が己をどれだけ『強者』や『優れている』としても、『
ナナリーは一瞬考えるそぶりを見せてから、再び桐原たちを見る。
「(えっと……確かスヴェンさんが言っていたのは……)
「(ブリタニアの皇族が日本語を?)」
「(しかも
「(へぇー……幼いのに、そこまで勉強するのか。)」
「(若いのに、色々と苦労したのだな……)」
「(『傲慢が服を着て歩いている貴族のイメージが変わる前兆にある』、か。)」
桐原やコーネリア、マリーベルなどの人物たちを前に毅然とするナナリーを見て卜部、千葉、朝比奈、仙波の四人はそれぞれの思惑を抱く横で、藤堂はダモクレス事件が勃発した直後に桐原に言われた言葉を思い出す。
「(確かに、二年……いや、一年前から一部の貴族はブリタニア、中華連邦、EU問わずにその片鱗は見え隠れしていた。 それが今の平和な世になってようやく開花していくことを桐原殿は言っていたのか。 軍人としては存在意義が怪しまれる時代になって複雑な気持ちだが、一人の人間としては喜ばしいことだ。)」
…………
………
……
…
「突然挑発する様な物言いにビックリしたぞ、マリー。」
会議が終わり、通路の中を歩いていたコーネリアがため息交じりに上記を横にいたマリーベルに語る。
「だってあのご老人、今日だけでもう何回も書類に目を通して確認をとっているのですよ?」
「まぁ……汚名を着てでも夢にまで見た『日本』がきたのだからな。 彼が慎重になるのは無理もない話だろう?」
「……『流石はコーネリアお姉様が総督への着任時に一番警戒していた方』と言いたいですが、限度というものがあります!」
「(マリーがここまで感情的になるのは珍しいな。)」
「二、三回だけならばともかく…これは明らかに私たちを
「(う~む……マリーにもこういった、年相応の側面があることが分かったのはいいな。
「まぁ! マリーお姉様はコルセットをしていたのですか?!」
「う……さ、最近の菓子が気に入りまして……」
「その気持ちはわからないでもないが……食べ過ぎには注意した方がいい。」
マリーベルの返事と照れるような顔を見てコーネリアは一年前、ストレス解消のために
「そうですわね……まん丸になってしまえば、相手を減滅させてしまうかも……」
「誰だそれは?」
「それよりも、ナナリーはこのまま日本に残るって聞いたのだけれど本当かしら?」
「(話題を逸らしたな。)」
「え? ええ、もうしばらくは滞在すると思います。 私にはまだ、ここでやりたいことがありますので。」
「……さっきの『
「それもあります。」
「そもそも、アレはどう言う意味だ?」
「『そのままにらみ合いや探り合いや牽制をし続ければ、休める居場所が無くなる』と言う意味も含んだ言葉です。」
「ふむ? ……ならこの際だ、騎士を決めたらどうだナナリー?」
「え?! えっと……」
コーネリアの言葉に、ギルフォードたちが戸惑うナナリーを見る。
「確かに……総督でなくなったとはいえ、皇女ですからな。」
「必要でしたら、選抜は任せてください!」
「そうだな、手始めに────」
「────あの!」
どんどんと進んでいく話を珍しく声を上げてまでナナリーが遮り、注目が彼女へと再び戻る。
「……お手を煩わせるまでもありませんが……騎士はもういますので、大丈夫ですよ?」
「「「「え。」」」」
ニコニコニコ。
「フフフフ♪」
コーネリアたちがナナリーを見る中、マリーベルはただ愛想のよい笑みを浮かべていた。
……
…
「「……」」
同時刻、アッシュフォード学園ではとある男女が死んだ目で立っていた。
「ねぇ~、お兄~ちゃ~ん♡ せっかくだからカフェでお茶しようよ~♡」
「引っ付くなクララ、暑苦しい。」
「えええええ?! 秋口だよ?! 人肌が恋しくなる時期だよ?!」
「上着を羽織れば済む。」
「貴方、オズから離れなさい!」
「いやだよ! あ、個室もあるみたいだよ!」
「オレは個室に一対一ではいかないからな。」
「え……もしかしてお兄ちゃんって3P好き?!」
「違う。」
「そうよ! オズは私のよ!」
「オレは誰のものでもない。」
「だってさ! フラれたんだから離れなさいよ、この血色悪女!」
「血色悪女は言い過ぎだ、彼女にも事情はある。 というかミス・エックスはどこからその学生服を調達した?」
「フフフフ♪」
「笑って誤魔化そうとするところは姉とそっくりだな。」
「だとさ、このぶりっ子が!」
「初めて的確なことを言ったな、クララ。」
「私がぶりっ子ならあなたはどうなのよ、このかまとと帽子女?!」
「にゃにゃにゃにゃにゃにをぉぉぉぉぉぉ?! この帽子はお兄ちゃんからのプレゼントなんだよ?!」
「キィィィィィィィィィィ!!! 自慢?! 自慢話かしら?!」
「お前ら落ち着いてオレの話を聞け。」
アッシュフォード学園の制服を着ても全く(学生としての)違和感がないオルフェウスがこれまた制服を身に包んだクララとミス・エックスによる左右からの引っ張り合いに対して慣れた口調で淡々とやり取りをしている場面に言わせていた男女────アキトとアヤノがようやく口を開ける。
「ねぇ、アキト?」
「なんだアヤノ?」
「あの三人、自力で潜入しているんだよね?」
「『潜入』というよりは『学生体験』だな。」
「私たちと同じじゃん。」
「シュバールさん曰く、俺たちの場合は『青春時代のやり直し』だぞ?」
「んでさ、アンタがあの二人ぐらいグイグイ来なくて心底良かったと思っているところなんだけど……」
「俺が普段からどれだけ我慢しているかこれで想像できるか?」
「うん、そうd────え?!」
「うん?」
「すまない、アキトにアヤノ。 イチゃついているところ悪いが、オレが学園にいるのはオルドリンが来ていると聞いたからだ。」
「「ちなみに情報源は私!」」
「……やるの?」
「この際だから言うけれどその帽子、全然似合わないわね?」
「アンタが普段着ているスーツもまるで背伸びしたがっている子供みたいだよ?」
「……あ?」
「ん~?」
「コホン! まぁ、(ついでに)『オレがこの二人と時間を過ごしたかった』という願望もあることは認める────」
「「────きゃ♪」」
「(さっきまで火花を散らしていたのに今度は赤くなるって……感情表現が忙しい人たちだな。)」
「(クララとミス・エックスって、意外と似た者同士なのかな?)」
君たちも大概だヨ?
そこのスンとした表情筋を上手く動かせない仏頂面のアキト君と顎に指を付けながら首をかしげるアヤノちゃん、なに他人事みたいにしているのですか?
「しかしなぜオルドリンが学園に来るのだろう? オレはてっきり、『吸血鬼』たちを追うと思ったが……」
「ああ、それは
「────それとダモクレスで頑張った上にオイアグロと時間を過ごせとも言っていたよ!」
「……ここまで張り合うのなら相手するしかなさそうね、このおかっぱ。」
「グチャグチャにしてあげるよ、メカクレちゃん♪」
「頼みを聞くからやめてくれ二人とも……」
「「いいの!?」」
「食い気味すぎるだろうお前たち────」
「────じゃあ、私はオズと二人きりで仕事外のデートがしたいわ! 二泊三日の!」
「具体的だなミス・エックス。」
「実はもうチケットは手配しているのよ♪」
「相変わらず仕事が早いな。 だができれば一日で済む他のことをしてくれ。」
「ええぇぇぇぇぇぇ。」
「『ええ』じゃない。」
「あ! じゃあクララはお兄ちゃんの子供が欲しいな!♡」
「「「「……」」」」
「一日もかからないし、日付もちゃんと調べているからあとは
アキト達は視線をゆっくりと清々しい表情を浮かべていたクララから、不愛想なアキト以上に感情が死んだ仏頂面で目からハイライトが消えていたオルフェウスへと向ける。
「…………………………これに関して何かを言った者からの喉笛を噛み砕いていく。」
「(否定とかはしないの、オズ?! ……なら状況次第で私にもチャンスがあると見ていいわよね?)」
「………………………………」
「(え?! え?! え?! 何で私をジッと見ているのアキト?! もももももももしかしてててててててて?!)」
「(恥じらうアヤノは可愛いな。)」
……
…
「な~にやってんだか。」
「まぁ、あの者たちは『青春』から程遠い人生を送ってきたと聞くから良いではないか。」
上記のオルフェウスたちのやり取りを少し離れたテラスから見ていたアンジュがぶっきらぼうにそう言い放つと、お茶の置かれたテーブルを挟んで椅子に座っていた毒島が宥めるような言葉を送る。
「いや、それはそうなんだけれどね……あいつらって、アールストレイム卿とか
「ああ、それなら大丈夫だ。 ヴィレッタとミレイが根回しをしてくれたと聞いている。 それよりもスバルが卒業したと聞いて落ち込むことはないぞ?」
ガチャン!
「おっと。」
毒島はまるで自分の言ったことへ抗議をするかのように急に立ち上がったアンジュを見ながらも、中身がこぼれる前に湯飲みをテーブルの上から持ちあげる。
「お、お、お、お、落ち込んでなんかいないわよ?!」
「しかし、今日は猫背になりがちだぞ?」
「こ、これは単純に肩が凝っているからよ!
「フム……そうだな、分からなくもない。」
アンジュの視線が一瞬だけ胸部へと向けられたことに気づいても、毒島は慌てることなくただ淡々と同意する。
「だがタイミングが重なるではないか。」
「な、何に?」
「先日スヴェンが卒業したと聞いてから猫背になったり、心ここにあらずといった行動が出始めたではないか。」
「ぐ、ぐ、偶然よ! というかサエコはどうなのよ?!」
「時期には驚きはしたが、相談されていたからそこまでではないな。」
「(え。 そ、相談って? 私だけじゃなかったんだ……) はぁぁぁ~。」
「はははは!
「どわ?! 急に撫でないで、セットした髪が────!」
「────その阿呆毛?はどうにかならんものかな────?」
「────『アホウゲ』って何よ?! ただのどうにもできない寝癖よ!」
「ま、教室に戻ろう。
「な、何が? って、待ってよ!」
「♪~」
アンジュは無数のハテナマークをアホ毛と共に頭上に浮かべ、鼻歌まじりに早足で歩くご機嫌な毒島の後を追った。
………
……
…
「……………………」
とある教室の中でカレンはただ座ったままボーっと頬杖をつきながら窓の外を見ていた。
『見て、カレンが去年みたいな顔をしているぞ。』
『ショックだったんじゃない?』
『じゃあ、スヴェンが卒業したって噂は本当だったのか?』
「ハァ~……(普通、『卒業する』って言った同じ週に何の音沙汰もなしで学校からいなくなる? 家に帰っても全然会えないし……多分、蓬莱共和政府に行っているんだろうけど連絡ぐらい……)」
『儚げなあの表情をまた見れるとは……』
『やっぱいいな……』
『『『ね。』』』
「(やっぱり言ったほうが良かったのかな? ……『
『ねぇ聞いた?』
『というか見た?!』
『あ! ナナリー皇女殿下が来ているってやつ?!』
『違う違う! じゃなくて、違わないけれど────』
『────反則だよあんなの……』
『くそぅ……こんなの対抗出来っこねぇよ……』
「(なんのお話だろう?)」
「♪」
「……」
「(それにシャーリー、ここ最近はずっと上機嫌にニコニコしていてそれを見たらルルーシュはソワソワするし、エルは悪い時を考えているルルーシュの笑い方をするし。)」
「は~い♪、 皆~、着席~♪」
ざわめくクラスメイト達の言葉を遮るかのように上機嫌なミレイが入ってくる。
「(あれ? ヴィレッタ先生じゃない?)」
「きょ・う・は! 重大な発表がありま~す~♪」
「(発表?)」
「へい、カモ~ン♪」
ミレイの掛け声に教室のドアが開かれ、静まり返ったクラス内で再びざわめきが走る。
何せ
「え″。」
約一名は潰れたカエルのような声を出しながら、片手で支えられていた頭がずり落ちそうになる。
「ムフフフ♪ 驚いたかしら~? じゃ、自己紹介してくれるかしら?」
「ライカだ。」
「「「「「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………」」」」」
「え? それだけ?」
「そうだが? 他に何か必要なのか?」
「そこはほら……好きなこととか、嫌いなモノとか、趣味とか。」
「好きなことは特にない。 嫌いなモノも特にない。 趣味も特にない。」
「えぇぇぇぇぇ……」
「「「「(あの
スヴェン似の女性────ライカは自分の名前を告げる以外、何も話す気配がなかったので奇瑞撃沈の流れをミレイは変えようとしたがあえなく空振りしてしまう。
「クッ……こうなったらサプライズ第二番よ! へい! カムヒ
ガラガラガラッ。
「誰が日輪の────」
「────『ニチリン』────?」
「────ゴホン! 誰がナンバーツーですか、ミレイさん。」
「「「「「ゑ。」」」」」
「やぁ皆さん。」
ミレイの掛け声でまたも教室内に愛想笑いをしながら入ってきた人物にクラスはざわめくどころか逆に静寂な空気に包まれる。
「初めまして……ではないですね。 久しぶり……と言えるほど離れていないですし。 うーん……どう言ったらいいと思います、ミレイ先生?」
「そこは『ヘイ、ベイベーたち! ヨロシクね!☆』とかで良いんじゃない
「(いや、それどこの似非英語教師だよってなるオチなんだが?) いやはや、冗談キツイですよ。 そもそも
「おおお? 言い張ったわね? この、この────♪」
「「「「「────えええええええええええええええええええええええええええ?!」」」」」
今まで連続の出来事で押さえつけられたショックが一気に放出されるような驚愕の声にミレイたちは耳鳴りに表情を崩した。
「ぬああああああ! やっぱりぃぃぃぃぃ!」
「卒業して学園に戻るってバカな話がある訳がッ!」
「スヴェンがいなくなってワンチャンあると思った先にこれかよぉぉぉぉぉ!」
「チクショウォォォォォォ!!!」
「ガッデム! ガッデム! ガッデム!」*1
「ちょっと待って! 妹だって?!」
「なんだそりゃ?!」
「そうだそうだ! 聞いていないぞ?!」
「はっはっは、私は言っていませんでしたからね。」
「「「なんじゃそりゃ?!」」」
「まぁ……強いて言うならば、
「その『事情』って、ライカちゃんの彼氏とかが関係していますかー?」
「彼氏? なんだそれは?」
「(う~ん……TSしたライだとこんな感じになるのか。) 『彼氏』とは……まぁ、恋仲である人物のことだな。」
「そうか……いや、今のところ
「「「「『僕ッ子』。」」」」
「「「「(いない……つまり『フリー』ということか!)」」」」
「(あー、クラスの奴らが何を考えているのかまるわかりだ。)」
「あ、それじゃあスヴェンは? 彼女いるの?」
「見習いとはいえ、これでも一応『教師』なので敬称はなるべく付けてくださいね? それと
スヴェンは答えながら一瞬だけチラリと呆然としたまま固まったカレンを見る。
『彼女って、やっぱりヴィレッタ先生の事かな?』
『ってバカね、ライブラちゃんよ!』
『誰それ?』
『中等部の子よ! 知らないの?』
『ほら、アールストレイム卿がKMFで乗り込んだときのドタバタ中に帽子を取った子。』
『あ、キューピッドの日の?』
『胸、デカかったよね~。』
『『『…………グスン。』』』
『よし、今の動画をアップしたわ。』
『え? どこに?』
『
『ナニソレ。』
『親衛隊。』
『『『『『『ちょっとその話、詳しく。』』』』』』
……
…
ヴー。
「ん?」
マナーモードにしていた携帯電話が静かにアラートを出し、アンジュはこっそりとそれをポケット内から出す。
「(動画? 音声をオフにして、自動字幕を付けてっと……はぁぁぁぁぁぁぁ?! あの子が学生に? その上スヴェンまで先生に?! あ。 だから
────ズキッ。
「?????」
頬杖を付きながら授業に集中しているふりをしていたアンジュはスヴェンが他の女性を頼りにしているような場を連想し、胸奥に湧き上がった痛みに困惑する。
「(あれ? 今……なんでアイツが他の人に頼っている所を考えて……え。 いやいやいや。 無い。 無いでしょ? アイツに構ってもらえばそれだけで……それだけでよくない?)」
ズキッ、ズキッ、ズキッ。
「(いや黙れよマイハート。 そんなんじゃないから! 違うよね?! ね?! ……………………だ、だよね?)」
いつの間にか頬杖を止めて姿勢を正していたアンジュは『必死に平然を取り繕うとした』と記入する。
『全く平然装った様子はなかったが』と追記するが、強いて言うならばアホ毛寝癖()が大人しかったことだろう。
ナナリーの挿絵は上手い具合に木村さんリスペクト風にできたのでデザインがいつものと少々異なります。
『そんな余裕あるのか』だって?
Ha, ha, ha。 ソンナワケナイジャナイカ。
試行錯誤による現実逃避の結果ネ。
『スヴェンのビジネスカジュアル姿が誰かに似ている』?
Ha, ha, ha。 キノセイデスヨ。