小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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またも長くてカオスな話です。


第314話 ボーナスのボーナス (挿絵)

「……」

 

『なんだかスヴェン先生、変じゃない?』

『調子がちょっと悪そうだよね。』

 

 おっと。

 気が付いたらチョークを持ったまま黒板に書く直前だった。

 

『寝不足とか?』

『補習に受かる子が多くなったし……』

『やっぱりS〇S団が自重してくれれば────』

 

 ────『S〇S団』ってどういうことやねん。

 

初耳だぞ。

 

「はっはっは、これは困りました。 やはり新人には少々ハードなスケジュールでして。」

「「「「え。」」」」

「ミレイさんたちにスケジュール調整を頼んでおきます。」

 

 って、俺は本当に新人なんだぞ?

 そこまで気落ちすることないじゃないか君たち。

 睡眠時間がようやく3時間から4時間に上がったはいいが、精神的な負担は以前より増したからどちらというとほぼ同じだ。

 

 違いがあるとしたら時々ボーっとするぐらいか?

 でもそうか、やっぱり傍からすれば俺は疲れているように見えるのか。

 

 でも無理もないと思わないか?

 

 先日、C.C.によるC2爆────じゃなくて、N2〇雷並みの破壊力があった『責任を取れ』言動の後は大変だったが、あの場でC.C.が『死なない体質』になっていることを説得するのは、意外と簡単だったのは正直助かった。

 

 その前にアリスから問答無用のドロップキックを顔面に食らったが。

 

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 キック後、『C.C.には異常的な回復力が備わっている』ことと『彼女も被害者だ』と伝えたら、レイラとマーヤを始めに他の皆が『C.C.も人体実験の被害者』という結論に至った。

 

 多分だが、これもエデンバイタル(胸糞悪い)教団やギアス嚮団、アリスたちなどを見てきたからだろうな。

 

 本当はコードを無理やり押し付けられて『望まない不死』を手に入れたから、C.C.も俺の言ったことに対して強く否定できなかったのも大きい。

 

 ま、コードギアスの冒頭ではクロヴィスとバトレーの『コードR』によってC.C.は検証と実験の対象にされていた描写があったし『中らずと雖も遠からず』と言ったところだ。

 

 でも彼女の言葉って、どう言うことだろう?

 単にふざけて俺を困らせるにしては……

 

 いや、『あの』C.C.ならあり得るか。

 

『スヴェンが補習の先生じゃ無くなるなら赤点はもういいか。』

『そうだよね。』

『他の先生って話が長いし見た目が……』

『『『だよねぇ……』』』

 

 子供は辛辣だな。

 でも確かにナイスミドルな教師ってこの世界(コードギアス)でも中々見ないな。

 あ、元エリア24のスペインにあるペンドルトン学園のオイアグロは例外だぞ?

 オイアグロは『理事長』の肩書きを持っているがそれもほとんどスポンサーとしてで、表の世界で『KMF開発企業の投資家』と同じで裏稼業の『ウィザード』の隠れ蓑として肩書を利用しているからな。

 

 ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ。

 

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 というか先日の騒動の元凶であるの君が何でシレっとここに紛れ込んでいるんだよ。

 そして相変わらずだが、どこからその制服を調達した?

 

 前回────というかアニメの一期で見た制服とスクール水着はシャーリーのルームメイトだったソフィの物を無断で借りたのは愚痴っていたルルーシュから聞いたが、去年のブラックリベリオンで帰国したから別の誰かだろうな。

 

 今頃、制服が無くなっていることに気付いて泥棒か変質者が学園に侵入したとか妄想してテンパっているだろうな。

 

 それか(ほぼ)絶対に犯人が見つからない被害届が出される前に、服が戻されて更に困惑するとか。

 

 御気の毒に……

 

 あ。

 

 そう言えば『壁子』の事をルルーシュに伝えて、ギアスキャンセラーをかけさせないと!

 

 確か設定資料かどこかで『何が何でもアッシュフォード学園の壁に傷をつける』が強制帰国されてから『精神的病を患って精神病棟に軟禁されている』とか読んだ気がする。

 

 ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ。

 

 この際、C.C.は無視だ無視。

 というか俺の後を付いてくるなよ。 誤解を与えちゃうでしょうが。

 

『というかあの子、誰?』

『最近スヴェンの周りに居るよね?』

『誰だろう……留学生とかかな?』

『そんな発表、他のクラスであったっけ?』

 

 ほら見たことか!

 

 ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ。

 

「な、何でしょうか?」

 

「いや、この後の個別授gy────」

 「────それは無いので悪い冗談は()しタマモ。」

 

『スヴェン────』

『────が────』

『────噛んだ……』

 

 クソ!

 今なら(不本意ながら)原作でC.C.におちょくられるルルーシュの気持ちが痛いほどわかってしまう!

 

 ガラッ。

 

「スヴェン、時間だ。」

 

 いよっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

「こんにちはヴィレッタ先生。 もう交代の時間ですか?」

 

「ああ。」

 

「そうですか、では私はこれにて────」

「────じゃあまた明日ね先生!」

「「「────お疲れ様でーす!」」」

 

 ヴィレッタと入れ替わるかのように。教室で補習を受けていた女生徒たちが俺に声をかけながら元気に退室していく。

 

 そしてそんな女生徒たちの代わりにヴィレッタの後に入ってくるのは男子生徒たちだった。

 

「「「「「「「……」」」」」」」

 

 ちなみに通り様に俺を睨んだり知らんふりをするところを見ると、こいつらは明らかにヴィレッタ狙いだな。

 

 しかしわからないでもない。

 

「あの……何か────?」

「────いえ、何でもありませんよ。 ああ、採点を待っている書類なら引き受けますよ?」

 

「そ、そうか? ……ええ、頼む────ごほん! 頼んだ。」

 

 一瞬ヴィレッタが『ベルマ』として返事するがすぐに口調をいつもの気丈なモノへと変え、俺は内心でガッツポーズをとる。

 

 採点している間は堂々と職員室に籠れるからな。

 普通の生徒ならば『興味本位』だけで様々な教師が陣取っている職員室に来たり、長時間その場に居座りにくいだろう。

 

 更に!

 

 職員室から機密情報局のアジトに繋がる秘密通路があるので実際に職員室に生徒が来ても俺はいない!

 

 フッ。

 中華テリオン風に言うと『地の利は我にあり!』というヤツだ。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「あ。 お帰りスヴェン君、ところでこの間の論文なんだけれど────」

 

 ────と思ったところで思わぬ伏兵がアジトで待っていたことにクラリとする(スヴェン)だった。

 

 伏兵とは勿論、アッシュフォード学園に身を隠して(置いて?)いるニーナの事だ。

 

 卒業式は俺と同じく学園では行われていないが、彼女の発明と学会に提出したサクラダイトを使わない電力がエリア11が『合衆国日本』に戻ることで、『サクラダイトに頼らない電力』が再度注目を世界中から集めていた。

 

 彼女の事を軽く見たり見下していた国や産業はあらゆる機器の生命線であるサクラダイトの供給が止まらないとしても、以前の旧日本がやっていたようにサクラダイトを笠に着て政治や経済による圧力などをかけるかも知れない情勢が皮肉にも、ニーナの評価見直しのきっかけとなっていた。

 

『原子力の導入云々を除いて』、だが。

 

 何せゼロレクイエムが無い現在では『フレイヤ=核兵器』という繋がりはまだ手広く知られていない上に設計図はブリタニアにもあるが、ニーナの持っている技術を独占して超合集国連合内の地位向上を図ることが一番手っ取り早い。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 だがそれはニーナ自身を無視した一方的(自分勝手)な搾取で、()()()()()()()()

 

「そうですね……込み入った話は後ででも良いでしょうかニーナさん?」

 

「ぁ……そう、そうだね。 今は教師だもんね。」

 

「時間は()()()()()()()必ず作って話を聞きますので安心してくれ。」

 

「あ……うん!」

 

 

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 俺が『優男』の仮面ではなく、いつものポーカーフェイスで返すとニーナが自信なさげな顔が清々しい表情に変わる。

 

 ……うん。

 原作アニメでは『マジヤベェ同性愛で病んでて性癖含めて色々拗らせた女』の側面が強めに出ていたけれど、やっぱり根は普通の女の子だな。

 

 最初は『触らぬ神に祟りなし』程度で彼女のフレイヤ開発フラグを折る為にわざわざ接触したが、この世界で初めてアニメや外伝などで公開されていなかった過去と境遇を知ってからはその気も変わった。

 

 日本の返還によってブリタニアだけでなく、超合集国連合からもニーナが狙われることは予想は出来たのでまたミレイとヴィレッタ、そしてレイラを頼った。

 

 結論としては今の『アマルガムとアッシュフォード家(主にミレイとミレイお祖父ちゃん(ルーベン))で保護する』方針になり、本人の強い希望で学園内では俺と似たような『非常勤講師』に就いている。

 

『これでバレないのかよ?!』と思うかもしれないが幸い、元々『ゼロの記憶を失ったルルーシュの監視』の為に改装された学園は通常、侵入も潜入に対して強い。

 

 今までも実際、ヴィレッタが『何かある』と感じてトウキョウ支部を任された地位にいながらも『意図的に泳がす』という体で見逃していた……と、この間マオ(女)から聞いた。

 

 機密情報局にとっても『ギアス』の事は秘密にされていたから、『ギアスの存在を知っているヴィレッタの監視』も兼ねて全部知っているロロが傍に置かれたけれどな。

 

しかしまぁ……眼鏡を外して髪型にちょっと手を加えるだけで誰も目の前のこの子があのニーナだとわからないぐらい、凄い変化ぶりだな……

 

「えっと……ジッとと見て何かな、スヴェン君?」

 

「いや、何も。」

 

『本当に介入してよかった』とは言えない……

 

 行政特区日本では死にかけたけど、()()()()()

 

「ふ~ん。」

 

 そんな俺たちの様子を()()()()()ユキヤが椅子に座ったまま、首を回してニヤニヤしながら意味ありげな息を出す。

 

「なんだユキヤ?」

 

「いや、『シュバールさんも大変だな』って。」

 

 ユキヤお前……もしかして先日の事を知っている?

 ただいつものように他人を茶化して面白がっていると勝手に思おう。

 

 ああ。

『アッシュフォード学園』で『機密情報局』と言えば、日本が返還されたので今では学園内にあったアジトは表向きには『撤退後に閉鎖』となっているが実際のところユキヤなどが嬉々として居座っている。

 

 俺がマリアンヌに追われていた際、加勢して反撃に遭ったユキヤやアシュレイたちだが騎乗していたKMFが大破し、全員が重症の身となっていた。

 

 医学に明るい者たちなどが近場に居たから助かったが、その中でも特にひどかったのはアシュレイとユキヤで二人はパイロットスーツが覆っていない上半身にモニターのガラス破片やマリアンヌのアルビオンが刺したMVSの余波を受けた。

 

 アシュレイは顔と首で、ユキヤは右目と右腕を持っていかれた。

 

 ちなみにアシュレイはわざと首と顔に負った大きな傷跡を『名誉の証』と言って残した影響からか、ユキヤも義手は付けているが義眼を入れていない。

 

 その時に知ったことだが義手や義足などの類はともかく、義眼などの脳神経が集中する類のものは時間が経つにつれて和らぐものの、多少の頭痛や眩暈に吐き気などが絶えないらしい。

 

 シンはそれを知った上で、『己の能力をフル活用できるように』と義眼を入れたこともその時偶然にも知った。

 

 そんな俺の知らない事実があると内心狼狽(うろた)えている俺は原作知識でユキヤの過去を知っているから、愛想笑いを浮かべながら『傷は慣れているし眼帯なんてカッコいいじゃん』と言われた時はちょっと……いや、余計に複雑な気持ちになったな。

 

 それにしても『義手のリハビリ』で先日立派な胸でダメになったアヤノの特注の制服を直すってどれだけ器用なんだこの爆弾魔は?!

 

 いや、逆に爆弾魔だからこそ器用なのかユキヤの場合は?

 

 ガチャ。

 

「あら?」

 

 そんな時、アジトの中へと入ってきたのはオズ一期のSIDE:オルドリンでも見た(気がする)学生服を着たマリーベル。

 

「あ、皇女殿下さん来たんだー。」

 

 ユキヤは本当に『怖いもの知らず』というか、飄々としているというか、原作通りの『家族と認めた者以外はどうでもいいサイコパス野郎』というか……

 

「はい、来ました♪」

 

「んじゃ、エル()()()に繋げるねぇ~。」

 

 あのエルを『ちゃん付け』ってどれだけだよ。

 

 あれ? マリーベルとエルって接点あったっけ?

 

「ふわぁ……学園の下に、こんなところがあるなんて……」

「まるで秘密基地みたいですね!」

 

 え。

 

 マリーベルの後を追うかのように物珍しそうにキョロキョロと車椅子を押しながら部屋に入ってくるオルドリンはまだいい。

 ううん、それはまだいいんだ。

 

 でもその車椅子に乗ったナナリーの姿に思わず一瞬呆然としてしまってもいいガネ?

 ね?

 ね?

 ね?!

 

 ネタがごちゃ混ぜになっているのは認めるがそれぐらい動揺していると理解してくれるとありがたい!

 

「あ、やっと繋がった。 エルちゃん頑張ったなぁ~。」

 

 ピッ♪

 

 ニコニコとしていたナナリーに俺は呆然としていたが、横から来たユキヤの声と電子音に目が行く。

 

『ちょっとユキヤ! ハッキングはやめてって言って────マリーベル皇女殿下!』

 

 ユキヤの座っていた画面には不機嫌そうに睨む黒髪のおかっぱ少女が出て、マリーベルに気付くとすぐにきりっと背筋を伸ばしては敬礼する。

 

「ごきげんようエリスさん────♪」

『────こ、これはお見苦しいところをお見せ────!』

「────いつも通りでいいのですよ? ユキヤからエリスに関する話は()()と聞いていますから♪」

 

『……オホホホホホホホ。 いったいどんな話か気になります。』

 

 エリスと呼ばれた少女は画面越しでも分かるように、愛想笑いを挙げつつもニヤニヤするユキヤに対して負の感情がこもった視線を送り、今のやり取りでこの『エリス』と呼ばれた少女がグリンダ騎士団の関係者と共に、ユキヤが『エルちゃん』と呼称している者だと結び付ける。

 

 ……う~ん、『オズ』で名前が出ていない子なのかな?

 

 可愛いのにもったいない。

 

『皇女殿下、今シュタイナー卿(レオンハルト)はマr────ソレイシィ卿(マリーカ)と出払っています。 ですが通信を繋げることは可能です────』

「────いえ、それには及びません。 元ナイトオブテン(ルキアーノ)とヴァルキリエ隊の捜索結果だけで十分です。」

 

『元ナイトオブテン』と『ヴァルキリエ(ムフフの御色気)隊』、か。

 

 原作ではカレンの紅蓮聖天八極式に瞬殺されたけれど、今は色々と状況が代わって『逃亡中』なんだよな。

 

 世紀末の環境でヒャッハーしているチンピラの印象だけ持っているが、遠隔での指揮とはいえあのマリーベルとグリンダ騎士団相手にこうも逃げ続けるとは……

 

 よっぽど優秀か、あるいはどこかの国か組織による根回しか協力を得ているのか?

 

 何せ原作や数あるコードギアスの外伝が凝縮されたこの世の中だ。

 色々と語られなかった設定や裏設定が蔓延っていてもおかしくはない。

 

「「……」」

 

 それはそうとマリーベルとエリスのやり取りよりチラチラと俺を見るオルドリンとナナリーが気になる。

 

「スヴェンさん、卒業おめでとうございます♪」

 

「聞いたのか?」

 

「ええ。 ()()()、びっくりしていましたから。」

 

「そうか。」

 

 その『皆』って誰だろう……

 候補が居すぎて検討が付かなくてちょっと怖い。

 

 そう言えば俺、ナナリーの前で初めて『優男』の仮面をつけずに振る舞っているけれど大丈夫かな?

 

 ……初めてだよな?

 

「ねぇスヴェンさん?」

 

「なんだ?」

 

「今晩、暇ですか?」

 

 今日の夜か……

 この間蓬莱島には行ったし、レイラから緊急な事は無かった。

 あるとすれば……何かあったっけ?

 

「いや、特には……」

 

「えっと……実はですね、先日日本の返還作業と引き継ぎを正式に終えた記念に、元政庁で夜会が開かれる予定なんです。」

 

 へぇー。

 例の人形が無いから心の中でピコピコと押しておこう。

 

「それでですね? 日本人の方たちだけでなく、ここに残るブリタニアの方たちも参加する予定でして……ただその、ゼロや神楽耶様などはまだ蓬莱島からの首都機能移転で参加できなくて……」

 

 ん?

 急にナナリーが気まずい感じなモジモジをし始めたぞ?

 

「ここから私が説明しましょう、ナナリー皇女殿下。」

 

 っと、ここでオルドリンにバッターチェンジか。

 

「実はその夜会なのですが、ナナリー皇女殿下だけではなくマリーも招待されているの。 多分、マリーも元総督になるから。」

 

 フムフムフム。

 

 ……フム?

 

「それでその、本来なら私が筆頭騎士としてマリーに付き添いながら護衛を受け持つのだけれど……」

 

 そしてここまで来てオルドリンもモジモジすると。

 

 話の流れからして、『夜会に行きたくないけれど体裁を整える為に参加する』ということで『総督』が絡んでいると。

 

 そして『オルドリンも気乗りしていない』となると……ああ、なるほど。

 そういうことか。

 

「エスコート兼護衛ができる()()()か。」

 

 マリーベルとナナリーは皇女殿下で、その上に『元』が付くとはいえ総督。

 オルドリンも筆頭騎士だけに身体能力は勿論だが家もオイアグロのことがあってもマリーベルとナナリー同様に背景歴史にちょっと難アリだが家柄良し、器量良し、人柄もいいし能力は折り紙付き。

 

 そして三人とも妙齢の美少女たち。

 

 そんな女性たちに、貴族や重鎮ポストに就いている者たちに企業の富豪共が自分たちの親族や息子たちを『婿候補』としてアピールしないわけがない。

 

 なら俺の返事は決まっている。

 

「その話、受けよう。」

 

「え。」

 

「うん?」

 

「そ、そんなすぐに即答して良いの?」

 

「良いも何も、頼める人が限られているから話を持ち掛けたのだろう? だったら俺に断る理由など無い。」

 

 その線で行くと『ならばルルーシュに』、という疑問が浮かび上がるが彼とナナリーは『第二次太平洋戦争時に行方不明』となっている。

 

『ナナリーは旧日本政府に監禁されていた』と公にはブリタニアが去年宣言したが『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア』については何もなく、皇女となったナナリーにも悪印象を与えないために誰も触れていない。

 

 ゼロ云々以前にそんな(ファーストネームだけだが)同姓同名と容姿が行方不明のルルーシュが表舞台に出られるわけがない。

 

 ゼロとして夜会に来ればナナリーに対して過度な行動を起こしかねない。

 そもそもゼロが夜会に来るとなっていれば俺にこの話は来ていないだろうしな。

 

『ルルーシュ』だし。

 

「そ、そんな風に即答していいの?」

 

「何がだ?」

 

「いや……だって……」

 

 何だろう……複雑な表情を浮かべて眉間にしわを寄せながら眉毛をハの字にして言葉の続きに困るオルドリンが普通に可愛い。

 

「さすがですスヴェンさん!」

 

 ナナリーのキラキラ笑顔は癒されるわぁ~。

 

 ナデナデナデ。

 

 「えへへ♪」

 

 ハッ!?

 い、いつの間に俺はナナリーの頭を撫でていたんだ?!

 

 ま、まるで時間が飛ばされたような……

 

 何か恐ろしい何かの片鱗を味わった気分だぜ。

 

 「……やっぱり……」

 

 おっと、手を離さなければ。

 

 勝手に触れてオルドリンにより告発での『不敬罪』なんてのはゴメンだぞ。

 

「ぁ────」

「────何か言ったかジヴォン卿────?」

 「────ううん何でもないわ────!」

「────顔色が優れないようだが────?」

 「────気のせいでは?!」

 

 何でそこまで叫び返さなあかんねん。

 鼓膜がキーンとして痛い。

 

 ナナリーもどこか頬を膨らせているし、オルドリンに逆ギレされているのはなぜに?

 

「しかし夜会か……」

 

「えっと、スヴェンさんが乗り気でなければ無理強いはしません────」

「────あ────」

「「────???」」

 

 そうだ、良いことを思いついたぞ!

 

 この際だから『スバル』や『スヴェン』としてではなく────

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 

 ギギギィィィ。

 

 重苦しい音と共に夜会の場へと続く扉が開かれ、既に来ていた者たちがざわめく。

 

 ザワザワ。

 

 真っ先に来場者たちの注目はやはり想像通りにマリーベル、ナナリー、そしてオルドリンに向けられる。

 

『あれは……』

『おお……』

『英雄皇女に英雄の騎士、ジヴォン卿か。』

『でか……いや、美しい。』

 

 ヒソヒソ話での小声、あるいは視線が各々の抱いている感想を如実に伝えてくる。

 

『まて、彼女たちの側にいるあ奴は……』

『いや、まさかな。』

『影武者ではないのか?』

 

 良し。

 時は満ちた。

 ()()()()()()()()()()()()

 

 俺は仮面の下で一気に息を吸い込み、腹の奥底から声をひねり出しながら()()()をなびかせる。

 

 「ほぉ?! これが夜会というものか! はっはっはっはっはっはー!」

 

『『『やはりネモか。』』』

 

 うおおおおおおおおおおおおおおおお

 恥ずかしいぃぃぃぃぃぃぃ!!!

 

 様々な視線が突き刺さる!

 何だこの羞恥プレイは?!

 

 俺はMよりどちらかと言うと────いや今それは良いか。

 

 すでに察しているかもしれないが、今の俺は『ネモ』として夜会に参加することにした。

 

『木を隠すには森』と昔から言うが、マリーベルたちの場合は『木』が目立ちすぎて『森』の意味が成さない。

 

 ならば逆の発想で『より目立つ木』を傍に置けばいいというのが俺の策だ。

 

『アレがネモか。』

『う~む……天子様とオデュッセウス皇子殿下の生中継を見た時も思ったが、奇怪な人物だ。』

『然り然り。』

『だがそれは人体実験の後遺症と聞き及んでいる。』

『それでも、屈強の傭兵団の長を務めていただけに例の島の自治領主をあのゼロから任されたと聞いている。』

『曲者や道化どころか、荒削りの鉱石ということか。』

『このような夜会に参加するとは……』

『このような場は好かぬという噂だったが……』

『いや、考えようによって我々にとっての好機かも知れぬ。』

(けい)はどう思う?』

 

 予想通りの言葉が聞こえてきて、俺は汗をダラダラ掻きながらも仮面の下でほくそ笑む。

 

「お初にお目にかかる! 俺はネモ! 以後なにとぞお見知りおきを願う! ははははははははははは!

 

 ぐぉぉぉぉぉぉぉ。

 SAN値がゴリゴリと削られるぅぅぅぅぅぅ。

 洒落にならない羞恥プレイやこれぇぇぇぇぇ。

 なんでこんなキャラにしたんや過去の俺ぇぇぇぇぇぇ。

 

 しかしこの周りからの値踏みするような視線に対して、不安を悟られるわけにはいかない。

 

 むぎゅ。

 

 そんな時、まるでタイミングを見計らっていたかのようにマリーベルがしなだれかかるように身を寄せ、僅かにだがその豊満な美乳を押し付けてくる。

 

 いつもなら『ファ?!』とか『ムホホホホ♡』とか思い浮かべるのだが、『一周まわって冷静になる』という奴だ。

 

『あの仕草……』

『もしやマリーベル皇女が先に?』

『そう言えば噂で聞いたことがある……例の傭兵団を動かす報酬を自分にしたと。』

 

 そう言えばそんな話在ったな。

 

『ダモクレス』とか『シャルル』とか『フレイヤ』とか『悪夢の閃光』とか色々あって、今の今まで忘れていた。

 

 ん?

 視線が全部マリーベルに行ったような気がする。

 

 まさかわざとか?

 

 俺がそう思ってバイザー越しにマリーベルを見ると彼女はまるで俺の疑問に無言で答えるかのように僅かにだが笑みが深くなる。

 

 君、本当に18歳?

 社交界は俺も久しぶりだが君の振る舞いはとても18歳に思えない。

 

 年齢詐欺とかじゃないよね?

 

 

 

 


 

 

 

『ネモ』の登場によって一波乱は起きたものの、夜会はつつがなくそのまま続行した。

 

 そしてスヴェンの予想通りと言えば予想通りに事は進み、ナナリーたちに声をかけようとする者たちは後を絶たなかった。

 

「ふむ……しかし自治領主をして気が重いのでは?」

「ははははは! そんなことはない! 面白くて笑いが出てしまうほどだ!」

 

 しかし予想通りではなかったのは『ネモ』という謎多き人物の登場で関心がナナリー達から逸れたことであった。

 

 というのも天子の結婚に乱入した不届き者と思えば急に姿を消し、次に表舞台へと出て来たのは前皇帝シャルルがダモクレスと共に率いた軍団をグリンダ騎士団とほぼ同等の戦力を持った傭兵団の頭領として、傭兵団は結果的に壊滅したもののその時の功績をゼロに認められて蓬莱島の自治領主へと就かされたのが神出鬼没の『ネモ』。

 

 興味を引くことは必然だった。

 

「して……ネモ殿とナナリー皇女はどのような関係を?」

 

「(直接聞いてきたな、この人は。)」

 

 そして次々来る質問に対してのらりくらりと返事を『ネモ』としてし続けていたスヴェンに、して来るべきとも言える疑問がとうとう問われてくる。

 

「(確かにあの時、『報酬は私』とマリーベルは言ってきたが俺はずっとフレイヤの所為で心的外傷後ストレス障害(PTSD)直前で塞ぎ込んでいたオルドリンを戦場に戻す荒療治だと思っていたから全然思いつかない……どう返せば、マリーベルの立場が────)」

「────過分にも、私からネモさんにゲストとしてこの夜会に来てもらいました。」

 

「「「ほぉ……」」」

 

 う~ん……流石に総督としての成長ゆえか社交界に慣れたせいか、当り障りのない返しができるようになって嬉しい。

 

 ルルーシュが見ているなら人前でも号泣直前なまでに顔を崩していただろうな。

 

 「気をつけてください。」

 

 ん?

 笑顔のまま、近くに寄ってきたマリーベルが小声で話しかけて来たぞ?

 

 「上流階級者たちの野心を甘く見ては駄目ですわ。 恐らく、今ので()()()()きます。」

 

 「どういうことだ?」

 

 「『有望な者の覚えに』、『自身の派閥に』、あるいは『一族を嫁がせて恩恵に(あず)かる』などと言った目的の方たちが出てくると思います。」

 

「ネモ殿、私はワグナーと申しまして────」

「このたび子爵号を承ったコールビーと申します────」

「爵位はございませんが日本政府のイズマです、今後ともよい関係を────」

「騎士爵のハインツ────」

 

 マリーベルの忠告通り、まるでダムが崩壊したかのように次々とあらゆる者たちがナナリーやマリーベル、オルドリンだけでなくネモにも話しかけてくるようになり、スヴェンは『ネモ』というキャラを崩さずに失礼に振る舞わず、かつ卑屈にも見られないように徹した。

 

「(貴族とか社交界、面倒くせぇぇぇぇぇぇ……)」

 

「ネモ殿、本日は何かの縁と思いまして……こちら、我が娘で────」

「この娘は血縁の家の者ですが、不義に生まれた所為で家中では居場所もなくネモ殿がよろしければ側仕えなどとして────」

「娘は幼いですが行儀見習いとしてネモ殿のお傍にと……男女のことをお教えいただくのも受け入れるよう躾てございます────」

 

「(本当に面倒くせぇぇぇぇぇぇ……しかも俺が『男』の前提で老若構わずの女や娘とかを押し付けようとするなよ。 情に訴えてくるなよ。 それにフルフェイスの仮面をつけているのに全くものともしないなんて……そして最後の奴はその場で押し倒して泣くまでタコ殴りしたかった衝動を抑えた自分を誰か褒めてくれ。)」

 

 ゴリゴリと精神的な負担を抱えつつもスヴェンはネモとして誘惑()を受け流したり、社交辞令を言い合ってナナリーたちからヘイト注目を自分に集めてその場を狙っていた()()()()まで凌ぎきった。

 

 ♪~。

 

 夜会のホール中に響いていた音楽が()()()()()

 それが意味することは『ダンスする時間』の合図である。

 

『夜会』と言っても舞踏会程で無いにしろ一曲はダンスをする場面はあり、それは一対一での『交流』または『密談』する時間があることを示している。

 

 チラッ。

 

 先ほどとは違うテンポの曲が再び流れると同時にマリーベルは横目でネモを見ると、視線に気が付いたネモは何かを察したかのようにオルドリンに声をかける。

 

「ジヴォン卿、どうする?」

 

「え? ……あ。」

 

 そこでようやくオルドリンはマリーベルとナナリーを見る。

 

 本来ならばマリーベルが躍る相手は同じ女性であるオルドリンでも『筆頭騎士』の称号を持つので可能なのだが、今回の夜会でマリーベルとナナリー二人が正式に招待されている。

 故に『虫除け』としてスヴェンに声がかけられたのだと、オルドリンはその時初めて気が付いたのだった。

 

「(でもこれって……)」

 

「ジヴォン卿?」

 

 そのオルドリンはマリーベルを見ると、彼女はニコニコとした愛想笑いをしながらも目で語っていた。

 

『譲ってほしい』、と。

 

「えっと……私はナナリー皇女殿下の護衛に徹してます。」

 

「そうですか……ではマリーベル皇女殿下、一曲お願いできませんでしょうか?」

 

「ええ、お願いします。」

 

 ネモが手を差し伸べるとマリーベルはそれを手に取り、二人はフロアに出てダンスをし始める。

 

 その一連の動作はあまりにも自然であり、まるで相手が不足している部分を補うかの様な流れだった。

 

「(手袋越しでもマリーベルの体温が伝わってくる……)」

 

「(ああ、やっぱり……オルドリンではない、男性である貴方が触れても嫌悪感などが出ない。)」

 

 ダンスが進むにつれてスヴェンはマリーベルの個人差()を思慮した動きに対応していき、マリーベルはそれに甘えてより身体を委ねていく。

 

『なんだあの二人の動きは?』

『もしやダモクレス事件より以前に交流があったのか?』

『まるで長年、連れ添った者同士だな。』

『しかしそうであるならばなぜ大々的に宣伝しない?』

『もしや訳アリの関係か?』

 

「(ふわぁ……セントラルハレースタジアムの時と、彼がレヴナントと分かっているから理解できるけれどやっぱり初見の人からすれば意味不明よね。)」

 

「……お二人ってお似合いですよね、ジヴォン卿。」

 

「ぁ……そう、ですよね。 (あれ? もしやナナリー皇女殿下……)」

 

 オルドリンは考え込んだほぼ直後に目を見開かせた。

 

「(あ、あり得る!)」

 

「ジヴォン卿?」

 

「(ていうか非常に気まずい! マリーの騎士としてどうすればいいのぉぉぉぉぉ?!) お、お、お、オルドリンでイイデスヨ?」

 

「え?」

 

「オルドリンでイイデスヨ?」

 

「は、はぁ……(オルドリンさんは疲れているのかしら?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして皇女とはいえ身体が弱く、幼いナナリーがそろそろ夜会から少し席を外し、ダンスを終えたスヴェンたちは人目のない、メインフロアとは隔離された外れにある室内バルコニーへと移動しようやく緊張の糸が切れたようにぐったりしていた。

 

「ま、参った……」

「そうだな。」

「これならKMFに騎乗して敵を蹴散らしたり、元ナイトオブテンの捜索に出たほうが気楽だわ。」

「そうだな。」

 

「ジヴォン卿も、ネモさんもお疲れ様です。」

 

 すっかりSAN値(あるいは気力(SP))が尽きる寸前である様子でバルコニーの手すりに寄りかかるオルドリンとネモに苦笑するナナリーが気遣いの言葉をかける。

 

「ナナリー皇女殿下もお疲れ様です……」

「(癒されるぅぅぅぅぅ……)」

 

「うふふ、やはり慣れませんか? でも、これが新たな戦場になる可能性があるので今からでも心得を持った方が、後が楽でしてよ?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「「(そう言いながらも『悪いことをしちゃった、えへ♪』と微妙に自覚したような仕草は流石マリーね/マリーベルだな……)」」

 

 オルドリンと(仮面の下で)スヴェンは全く同じであるジト目でマリーベルを見た。

 

「フフフ♪」

 

 そんな二人を見てかナナリーは苦笑ではない、微笑ましいものを見たかのような純粋な笑顔と声を出す。

 

「ナナリー皇女殿下?」

「??? 何か?」

 

「いえ、お二人とも同じ顔をしてマリーお姉様を見ていたものですからそれが面白くて……」

 

「(ネモが私と同じ顔を? どうやって分かるんだろう? そう言えば以前、彼の為にナナリー皇女殿下が嬉し涙を流したってエニアグラム卿(ノネット)が言っていたような気が────)」

「────オルドリンさん、もう少しで挨拶回りが終わるので付き合ってもらえないでしょうか?」

 

「え、ええ。 いいですよ、ナナリー皇女殿下。」

 

 ぎこちないながらもナナリーに付き添うオルドリンが屋内へと戻るのを見届けたネモはマリーベルに開き直る。

 

「マリーベル皇女。 ジヴォン卿に社交が貴族の戦場だという再確認をさせることに俺を使うのは構わないが、できればナナリーにも前もって────」

「────ちなみにこれが今まで私たちに声をかけて来た者たちのリストです♪」

 

 マリーベルはネモの言葉を遮り、胸の谷間から折りたたまれたメモ用紙を出して彼に渡す。

 

「(手袋になりたい!) そうか……名前に爵位と役職に、本人と連れてきていた者たちの特徴まで書かれているのか。 流石だな。」

 

「恐縮です。」

 

「しかしこの……『3』のマークは何だ?」

 

「ああ、これは私やナナリーの胸を見ていた者たちです────」

 「────よし、徹底的に冷遇してやろう。」

 

「ふふふ♪ それにしても呼び捨てだけでなく、そこまでお怒りになるということは、()()()彼女も大切なんですね?」

 

「なに?」

 

「ナナリーのことですよ。」

 

「(そう言えば……マリーベルたちの前で、呼び捨てにしたのは初めてだった様な気がする。)」

 

「もしやとは思っていましたけれど……ちょっと妬けちゃいます。」

 

「え?」

 

「だって……ナナリーは()()ですから。」

 

 そう言いながら、マリーベルは夜空を見上げる。

 

「彼女は目や足の事だけでなく、急に皇女の身分に復帰されても必死に対応して立派に成長していました。 それに引き換え、私は一度皇族から除籍された身で、オズに頼りっきり……いいえ、八つ当たりをしていました。」

 

「……」

 

「今日、貴方を誘って確信しました。 多分、ナナリーがあそこまで頑張れたのは貴方の様な方が居たからだと。」

 

「……そうだとしても、俺はきっかけでしかなかった筈だ。」

 

「それでも、癇癪やヒステリーを起したりせずにひたむきに誰かを信じられることは容易ではありません……ダンスをしても、彼女は不安がることなくただ私たち見ていました。」

 

「(なんだと?)」

 

「こうやって知り合ってから時間はあまり経っていませんが、貴方の人となりはこの目と耳で見聞きしてその様な信頼に値する方がいて、肩身が狭いと感じました。 だって……ナナリー()()には『時間』などといった、確かな繋がりが……()がある。 でも、私には無いと気づいてしまった。」

 

 そう言いながら再びネモを見たマリーベルは笑顔でありながらも震えながら静かに涙を流していた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「あの時『報酬は私』と粋がっていたのも、他の方たちとは違う繋がりができると思った幼稚な考え故ですよ? ……よ、要するに……()()なのです。」

 

 その時、ネモはハッとして手渡されたメモ用紙をチラッと見る。

 

 マリーベルはまごう事なき『天才』である。

 

 戦略や策略はルルーシュ並み。

 かつ武術はスザク並み。

 

 普段の装いや言動は大人びていて実際の年齢より上である、『大人の余裕』に感じられるが彼女はまだ18歳。

 

 それも幼少期は『嘘の記憶』などを埋め込まれた反動で、少し前までは精神的な不安などが心因性の病気のようにマリーベルを物理的に苦しめていたこともある。

 

『もう18歳』と言えるが、逆に『まだ18歳』とも言える年齢。

 

 それに『天才』とは言うが『努力によって開花した天才』であり、ネモに渡したメモも『恩返しをしたい』という願いも含めて懸命に書いたものであった。

 

「(なんということだ……)」

 

 ネモの仮面の下で固まっていたスヴェンは、今まで起きた数々の『それらしいこと』を思い浮かべる。

 

「(アンジュの時……いや、それ以前から予兆はあった。 アピールらしく行動や、言葉も……そして大胆な一歩をあのアンジュに出すまでに追い込んだのはほかでもない俺だ。 そして、今度は()()マリーベルをもここまで張り詰めさせるなんて────)」

「────ッ……ご、ごめんなさい。 新参者が、おこがましいことを……一方的な我儘は忘れてくださ────」

 

 ────ガシッ。

 

 涙を袖で拭いながら俺の横を通ってその場から去ろうとしたマリーベルの手をネモは取り、彼女を振り向かせていた。

 

「いいや、それ()忘れない。」

 

「……え?」

 

「ありがとう、君の言葉でようやく決心がついた。 だから……待ってくれないか?」

 

「そ、それは……本当に?」

 

「ああ。 俺なりの考えだがな。 だから……もう少し待ってくれ。」

 

「ッ……ぐっ……ふぅ……」

 

 ネモが手を掴む力を緩めるとマリーベルは顔を彼から背けて両手で顔を覆い、うめき声に似たい気を吐き出す。

 

「(肩を震わせて泣くまでか……余程追い詰めていたのか……) 外で待っている。 ナナリーたちが来たらもう一度声をかける。」

 

 スヴェンは仮面や手袋をチェックし直し、退室したことを背景音で察したマリーベルは両手を顔から頬へと移す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 「(計画通り(All according to plan)。)」

 

【挿絵表示】

 




『条件はクリアした』の顔じゃないですよね。 (汗

……今作でもマリーベルはやはり『女版ルルーシュ』だった。 (汗汗汗

余談で木村さん風デザインの実験を続けています。
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