カチャ。
アッシュフォード学園のとあるオープンテラスにて、
「ふぅー……やはりこのような広い場所が見渡せるオープンテラスで飲む紅茶は良い、一味違う。」
「聞いても良いかな? ううん、聞く。 何でアンタが
そんな彼女────アッシュフォード学園の制服を身に纏ったC.C.は向かい側でジト目になっていたカレンにただ頭をかしげた。
「どういう意味だ、それは?」
「いやいやいや、『何がおかしいのだ?』って感じに聞き返してもツッコミどころが満載でどこからツッコめば────」
「────『突っ込む』なんていやらしい言葉をこの場で言えるのはお前ぐらいだよカレン────」
「────そんな風に私全然言っていないし!」
「フ、照れるな。」
「照れていない! 第一にその制服は誰のよ? 部外者であるアンタ自身のじゃないでしょ?」
ズズズ。
「コーヒーも良いが、やはり慣れた紅茶は美味いな────」
「────無視するな! たまたま私が近くに居たからよかったけれど、見つかったらどう弁明する気なのよ?!」
「先の出来事で警備はゆるゆるだ、問題ない────」
「────そうじゃないってば! もぉ~……どうして毎回私が……」
「そんなにカッカとストレスを溜めるとまた肌が荒れるぞ────」
「────ってそもそもアンタ、自分が思っているより目立ちたがり屋の自覚ある────?!」
「────どこがだ────?」
「────まさかの無自覚?!」
カレンはただ頭を抱え、目の前で足を組みながら優雅に紅茶をすするC.C.から視線を外すと意外な組み合わせを中庭で見かける。
「……あれ? 珍しいな。」
「どうしたカレン? ……なるほど。」
C.C.がカレンの視線を辿った先には、少々不満そうに頬を膨らませたシャーリーが苦笑するミレイと複雑な顔をしたヴィレッタと相対していた。
「面白そうだ、私たちも行こう。」
「え?!」
……
…
「もう~! 何でミレイ先生とヴィレッタ先生もルルの味方をしてくれないの?!」
「い、いや~……だって、ねぇヴィレッタ先生?」
「私に振られても困る……」
「賑やかだな? いったい何の話をしているんだ────?」
「────あ?! ちょ、C. ────じゃなくて、ええと、えっと────!」
「────あ、カレン! いいところに────!」
「────って、C.C.の事は良いの────?!」
「────『しーつー』って、変わった名前ね────?」
「────ミレイ先生もか。」
「ねぇ! カレンはルルーシュがスヴェンかスザクにどんなスポーツで勝てるかの話をしていたの!」
「無理なんじゃね。」
「そいつはべらぼうにハードルが高いな。」
「そう聞いたらさ? ミレイ先生たちが『あり得ない』って即答してきてさぁ~?」
ドンドンと目からハイライトが消えていくカレンはただど直球な返事をし、その反面C.C.は顔を引きつらせながらいつもとはちょっと違う口調になるが、既に自分の世界に片足入りつつあったシャーリーは言葉を続けた。
「いくら何でも『あり得ない』はありえないでしょ?! カレンなら分かるでしょ!」
「いや、分かんない。」
「なんで?!」
「いや、そもそも何で私が味方をすると思ったの?」
「だってカレン、アーサーを見つける時にキスの権利をルルーシュに使おうとしたじゃん!」
「「「え。」」」
ミレイ、ヴィレッタとC.C.の三人は目を点にしてカレンを見る。
「いつの話をしているの?! それに────!」
「────だってだってだって! カレン、答えを濁したじゃん! ハ?! ま、まさか……まさか二人は他人には言えない関係だとか?!」
「「「ブフォ?!」」」
シャーリーの当てずっぽうかつ『中らずと雖も遠からず』な言葉にカレン、C.C.、ヴィレッタの三人が吹き出す。
「やっぱり! だとしたらスヴェンとの関係は
「────するかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
なお赤面してブチキレるカレンとは対照的に、ミレイとヴィレッタは引いていた。
「コホン! えー、話を戻すが……『スポーツ』で『ルルーシュ』が『スヴェンかスザクに勝つ』、という事で良いんだな?」
「うん。」
「そうね。」
「ああ。」
「……」
「フム……」
シャーリー、ミレイ、ヴィレッタは頷き、カレンは無言で顔を両手で覆い、C.C.は頬杖をついて考え込む。
「体力的に難しいが、良いテーマだ。 フェンシングなんてのはどうだ?」
「「フェンシング?」」
「ああ、そう言えばルルーシュって反射神経は良い方だったわねぇ~♪」
「あと逃げ足もな♪」
「そうよねぇ~♪ 確かに勝ち目は出るかも!」
「フ、分かっているじゃないか。」
「それは『褒めている』で良いんだよな?」
「私には『けなしている』に聞こえるんですけれどねねぇ……」
ミレイはポンと手を叩きながらC.C.と共に『理解者』のような言葉を出し合い、ヴィレッタとカレンは顔を引きつらせていた。
「フェンシングならば、先に致命傷を負わせた方が勝ちだしな────」
「「「────なんか急に物騒な話になった?!」」」
「そんなの駄目よ『シーツーちゃん』────!」
「────『シーツーちゃん』……だと────?」
「────負けた方は命がないじゃない────!」
「────そうか? 今の私なら色んな意味で全然問題ないぞ?」
「え? それって、どう言う────」
「「────うぉぉぉぉぉいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ?!」」
ミレイの頭上に浮かんだハテナマークを物理的に消し去るかの勢いでカレンとヴィレッタが素っ頓狂な声を出す。
「あ! じゃあ、水泳ならどうかな?」
「水泳?」
「そう! 場所と時は真夏の海!」
「プールじゃないのか?」
「だってプールに砂浜が無いじゃん!」
「一応、クロヴィスランドに屋内海水プールが出来たけど?」
「え、なにそれ?! ミレイ先生、それ本当?!」
「そもそも何故『砂浜』にこだわる?」
「だって考えても見てよ! 青い空に流れる雲、砕ける波しぶき……夏と塩気が混じった香りを運ぶ風……そこにどこまでも続く真っ白な砂浜……そんなキャンバスに、クッキリと影を残す水着姿のルルたち……」
「「「「……」」」」
シャーリーの言葉に、その場にいた者たちが想像を思い浮かべる。
……
…
『ここまでおいでよ二人とも~!』
『待て、そんなに走るな!』
『そうですよ、二人とも? まずは準備運動からです。』
『ええええ? まるで学校の先生だなぁ、スヴェンは。』
『教師ですので、海の中で足を攣らせたりしたら大問題です。』
『だな。』
『二人とも真面目だなぁ……僕は先に入るから!』
『おい!』
『待て!』
『捕まえられるなら捕まえてみろ~!』
『『『アハハハハ~♪』』』
……
…
「待って三人とも水着姿のままで追いかけっこだなんてそんなの私も混ぜてぇぇぇぇぇぇ────ブパァ?!」
「「「シャーリー?!」」」
シャーリーが鼻血を出しながら気絶したまま仰向けに倒れる姿にミレイたちは青ざめた。
「な、なんで鼻血?」
「大方水泳ではない
「「「ナニか。」」」
「あー、水泳じゃ勝負が付かないってことね。」
赤面する者たちの横で、カレンは淡々とシャーリーの鼻にティッシュペーパーをねじ込んでいた。
「なんだこの騒ぎは?」
「うわ?! シャーリーがぶっ倒れている?! 何で?!」
「あ。
「冴子『さん』……」
年上であるミレイに『さん付け』が余程ショックを与えたのか、その場を通りかかっていた毒島は笑みを引きつらせた。
「それで、これは何?」
「ルルーシュがどんなスポーツでスザクとスヴェンに勝てるかどうかを話していた。」
「……それでシャーリーが倒れるの?」
アンジュの質問に何名かが目を逸らす。
「あ! それじゃあ……テニスなんてどうかしら?!」
「「「テニス?」」」
「ああ、あの卓球に似たブリタニアの競技か。」
「「「『たっきゅう』?」」」
「いや、何でもない。 しかし『てにす』となると……こうなるのでは?」
……
…
『良し、地形のデータは十分に取れた。 相手の力量もリサーチ済み……条件はクリアした。 フ、勝ったな────』
『────食らえルルーシュ! シャイン! スパァァァァァァクッッ────!!!!』
『────ちょっと待てなぜ殴っただけで玉が光りだすというかそもそもルール違反────?!』
ゴリッ! メキメキメキメキメキメキ!
『────ゴハァァァァァァァァ?!』
チーン♪
……
…
「アカン。」
「死ぬやつや。」
「死ぬわね。」
「死ぬな。」
「や……やっぱり?」
「話は聞いた。」
「ですよね♪」
「無理なのでは?」
「「「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!?!?!?!」」」
さらに追加でコーネリアと共に現れたユーフェミアとセシルにカレン、アンジュ、ヴィレッタが叫びをあげる。
「クルルギ卿とスヴェンは手強い────」
クイッ。
「「「(────何でセクシーな眼鏡教師姿────?)」」」
「────しかし状況と条件次第ではいい勝負は出来る。」
「……コーネリア皇女殿下、そこは『勝てる』じゃないんですね?」
「『スポーツ競技』に限定した上で、ルルーシュが勝てるビジョンが思い浮かばない。」
「ですよねぇ……私もルルーシュの事は子供のころから知っているけれど、体力が続かないから……」
「「難問だな。/ですね♪」」
「それに、スザク君のこんなエピソードもあるから余計にね♪」
……
…
『ロイドさん、新しい料理を参考に────♪』
チャリーン♪
『────ああああああああああああ。 ランスロットの作動キーがランスロットの足の下にぃぃぃぃぃぃぃ。 セシル君、サザーランド・エアで足を動かしてー。 (棒読み)』
『あ。 それなら僕が持ち上げます。』
『『ゑ。』』
『ぬおおおおおおおおおお!』
ギギギッギギギギギ!!!
『あ! あったわスザク君! ……よし取れた! あ、スザク君も────?』
『────僕は汗をかいたのでお先にどうぞ!』
『……という訳でロイドさん?』
『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ?!』
……
…
「フ、スザクらしいな────」
「────ちょっと待って! KMFを生身で持ち上げたの?!」
「『持ち上げた』って言っても、一部だけよ?」
「……ランスロットって重量どのぐらいあるんですか?」
「うーんと……全備重量で約6890キロぐらいあったかしら?」
「フ、やはりスザクらしいな────」
「────それ二回目────」
「────じゃなくて納得するところなの
「あ! レスリングなら良いかも知れません!」
「ユフィ……何故レスリングなんだ?」
「あれ……私どうしちゃってたの?」
「あ、シャーリー起きたの? 鼻血を出して倒れたの。」
「鼻血?」
「レスリングだと、一人がレフリーをやっても最低二人がきっと
「「「────
「────体が絡み合うように────!」
「「「────絡み合う────」」」
「────その末に、アグレッシブなホールドのせいで面積が少ないユニフォームもあって二人があられもない姿に────!」
「「────ゴパァ?!」」
「うわぁぁぁぁ?!」
「今度はシャーリーだけじゃなくてユーフェミア様にアンジュまで倒れた?!」
「いったい何を想像したんだろう?」
「カレン……君はまだ知らなくてもいいと思う。」
「え?」
「えっと……」
「何の人だかりですか?」
「団体だ!」
「アリスにナナリーと……誰?」
「僕はマオだよ~、よろしく~♪」
「見慣れない制服ね……」
「どこの学校?」
「うんとねぇ……お兄さんは『
「「「「「……『第3新東京市』?」」」」」
「あー……三人は何故ここに?」
倒れたユーフェミアにちゃっかり膝枕をしていたコーネリアがそう問う。
「アリスちゃんが『スヴェンさんたちの話が聞こえる~』って言って────」
「────わわわわわわわわ私は別にいいんだけれどね?! 『ナナリーが気になるかな~』って思っただけ!」
「んで僕は何となく面白そうだから!」
「うわぁ……団体様のお到着だぁ……」
アンジュの質問にナナリーたちが答え、カレンはますます目からハイライトを消して考えることを止めた。
「実は────」
…………
………
……
…
「────つまり、お兄様がスザクさんやスヴェンさんに勝てるスポーツを探していたんですね? それは……難しいですね。」
「「「「「「デスヨネェ。」」」」」」
「あ! でも
「「「「「「クリーム?」」」」」」
「えっと……なんで?」
「きっとこうなるから!」
……
…
ツルーン。
『うあ?!』
『ヌルヌルする! 踏ん張りが効かない!』
ツルツルーン。
『フハハハハハ! どうだ二人とも! これで俺をホールドできまい!』
『卑怯だぞルルーシュ!』
『ルールに“クリームは禁止”とは書かれていない!』
『そんな屁理屈を!』
『すごく滑る!』
ツルツルツルツルツルーン。
『ヌハハハハハハハハハハハハハハ!!!』
……
…
「「「「「ぷぁ?!」」」」」
「それはもうレスリングの枠から外れているぞ。」
「そもそもそれはプロレスだろう?」
「あ、やっぱり?」
少々(?)卑猥な妄想を思い浮かべた何人かが鼻を手で押さえる横で、コーネリアとヴィレッタの正論にマオは苦笑する。
「フンフフーン♪」
「「「「「「???」」」」」」
その場の雰囲気破りな、愉快な鼻歌に全員がハテナマークを浮かべながら声のする方を見るとまるで軍歌を歌いながら両腕をブンブンと振り回しながら歩くライラ、そして彼女の見よう見まねをするライカとアーニャがいた。
「胸に~刻むはジ〇ニズム~♪ 勝利の掛け声は『〇ークジオン』~♪ 三回素早く言ってみるで~す!♪」
「「……『〇ークジオン』、『じくじおん』、『じくじょ』?」」
「『熟女』~って聞こえるです~♪! ジーク、ジ〇ン!」*1
「「ジーク、〇オン。 (棒読み)」」
「「「「「「……」」」」」」
「ふぇ? 皆さんどうしたです???」
ライラ達の登場(というより歌)に対してどう反応すれば良いのか分からない、挙動不審な集団を見てライラはハテナマークを浮かべる。
「今の歌は何?」
「マーヤ先輩の即興曲です!」
「「「「「「……」」」」」」
「えっと……お兄様がスザクさんや、スヴェンさんにスポーツで勝つ方法を話して────」
「────そんなの無理無理の無理じゃないです?」
「……ルルーシュがあの二人に勝つ方法ならある────」
「────アーニャちゃん────?」
「────クリームを使ったプロレスの────」
「────あ、それはもう僕が出しました。」
「チッ!」
「あ! それじゃあアイススケートなんてどうです?」
「アイススケート……」
「確かにスポーツだよね?」
「はいです! きっとこんな感じになるです!」
……
…
スイー。
『あ、これ楽しいねルルーシュ!』
『クッ! 流石はスザク! 初めてのアイススケートをこうも簡単に会得するとは!』
『ふ、二人とも待ってくれ!』
『どうしたんだいスヴェン、手すりから離れないで?』
『手すりから手を離したら、倒れてしまう!』
『逆にスヴェンが滑れないことが意外だな。』
『なんだよスヴェン、滑れないのか? 手を貸すよ。 ほら、ルルーシュも。』
『しょうがないな。』
『手を放すよ二人とも! 絶対にだぞ?! フリじゃないからな?!』
『『ハイハイハイ。』』
『べべべべべ別に俺はお前たちと手を繋ぎたくて手すりに掴まっていた訳じゃないからな?!』
『『ハイハイハイハイハイハイ。』』
『“はい”は一回だけでいい!』
……
…
「なんだ、そのツンデレスヴェンは────?」
「────えっと……ダメです?」
「「「「「「すっっっっっっっっごく……イイ。」」」」」」
「皆の荒い息と目が怖いですぅぅぅぅぅぅぅ!」
「……」
「ちょっと、大丈夫?」
ドサッ。
「え?!」
血走った目と荒い鼻息でライラを囲む者たちから物理的に引いたアリスは俯きながら身体を震わせていたC.C.に声をかけた途端、彼女が倒れたことにアリスは驚いた。。
「ちょ、ちょっと?!」
「彼女の発想は最高すぎる!」
「え゛。」
「むむむむむ……」
「どうしたアーニャ、トイレか?」
ゲシッ。
「痛。」
「デリカシー。」
アーニャが難しい顔をしながら唸るような声を出すと、近くにいたライカの言葉の仕返しとばかりにアーニャがライカの足を蹴る。
「そうじゃない。 時間切れ。 だから起きろ。」
「「「「「「え?」」」」」」
「さもないと……」
「「「「「「さ、『さもないと』?」」」」」」
その場にいた誰もがギョッとしてはアーニャを見る。
「ここに居る全員を脱がせる。」
…………
………
……
…
「ふぉあ?!」
ガバッ!
俺は素っ頓狂な声と共に起き上がる。
な、何かスゴイ夢を見たような気がする……
大量に汗を掻いていたからか、かぶっていた毛布がべったりと引っ付いていた。
「……げぇ?!」
ガンガンと痛む頭を必死に動かしてベッドスタンドに置いてある時計を見ては潰れたカエルのような声を出してしまう。
何故なら時計が示していた時間は普段、俺が自発的に起きてアッシュフォード学園へと向かう準備が整っている時間だったからだ。
「やべぇ。」
頭痛がする頭から血の気が引いていき、思わず独り言を口にしてしまい、ベッドから飛び降りては大急ぎで用意をする。
長年大体同じ時間に寝起きをしていた所為で自然と目覚まし時計がいらない生活を送っていたので、『あ、こりゃ寝坊しそうだな』と感じた夜は目覚まし時計を使っていたがここ最近は色々動き回って余裕がなくなっていた。
『ハンセン家』と『ベアトリス』だけでなく、それ以外でも色々と手を回していた。
鏡を覗くとやはり予想通りに酷いクマが目の下に出来ていた。
だがこれしきの事、メイクをすれば問題ない。
特に目の外側から下瞼に重ねてファンデーションを乗せればな。
あとは汗で胸と腹、そして背中だが……朝食を抜けばその分の時間は出来るだろ。
おっと、最後に両手だな。
ちょっとメイクののり具合が悪い気がするが……これぐらいならば誤差だな。
例の
引退したベアトリスの住んでいるハワイからスヴェンが帰ってきた翌日、彼はなるべく普段通りにその日を過ごそうと試みていた。
「……(それにしても、ものすごい情報量だったな~。)」
だが『自分の実家と直に連絡を取る』ことから始まった、小さな冒険────否、『迷宮の探検』と呼んでも過言ではない歩みがまさか己の出自と伴う意外な繋がりへ辿るとは夢にも思っていなかった。
「(ベアトリス・ファランクス女公爵……インターネットで検索をしても結果は出なかったが、『情報屋』の伝手と従者用のサイトを見たらちゃんと『元主席秘書がシャルルの退去と共に引退、長年仕えていた者たちも解雇!』などといった書き込みが多々あった。 そんな人が書類上、俺の『遠縁』というか、『好きにしろ』って……しかも
「────そちらの確認は終わったか、スヴェン?」
倉庫内に置いてある物の点検をも兼ねたチェックをスヴェンと共にしていたヴィレッタは背を向けている彼に声をかける。
「…… (もしかして、
「────スヴェン────?」
「(────どわ?! すぐそこに来ていたのか?!)」
スヴェンはモヤモヤしながらも返事をしなかったことで、ヴィレッタがこちらへ歩いてくる音が聞こえ、スヴェンはガサゴソと慌てた様子で脚立を動かして彼女の方へと振り返る。
「なななななななんだ
「いや“なんだ”も何も、返事をしなかったから声をかけただけだが?」
「(見られた? ……み、見られていないよな?) そ、そうか。 それはすまなかった。 少々考え事をしていてな……」
「考え事?」
「そう、だな。 (ヴィレッタに話すか? 人生経験も俺より豊かだし、原作ではほぼ一般人とはいえ誰よりも早くに『ゼロ=ルルーシュ』とたどり着けるほどの頭脳持ちだし、何より口も堅くて信頼も置ける。)」
スヴェンはそこで一度言葉を止めて、ヴィレッタに相談するかどうか一瞬だけ迷った。
「……『これからの事』とかだ。」
「それにしては、顔色が悪い様子ですが?」
「え?」
スヴェンはヴィレッタに指摘され、触感で確認するかのように思わず自分の顔に触れる。
「(今朝は久しぶりに寝不足みたいな感じにボーっとしていたからか、メイクのつけ方が甘かったか? ……いや、目の下のクマは色白の俺では余計に目立つからそこはちゃんと見えないようにファンデーションで覆っている筈だ。 だとしたら────)」
「────もしかして、熱でも────?」
「────だだだだ大丈夫だ! 問題ない!」
「は、はぁ……」
純粋な心配により気遣いから更に接近したヴィレッタを強く否定するスヴェンを前に彼女は上記のような生返事を出すが、明らかに普段以上に青白かったスヴェンの顔色をよく見ては怪訝そうな表情を浮かべた。
キンコーン♪
次の授業が始まることを知らせるチャイムを合図に、まるで会話を断ち切るかのようにスヴェンは立ち上がる。
「俺────私は先に戻って教室にいきますね?」
「ぁ……」
スヴェンは携帯を出して時間を確認しては更に慌てた様子で、ヴィレッタが何かを言う前にその場をそそくさと離れていく。
「(何だろう……少し前までは補習などを受け持って遅く帰っていたのに、ここ最近はキビキビと時間通りに働くようになった……なんでだろう? それにしても……)」
ヴィレッタはポケットの中から箱を出してはため息を出す。
「はぁ~……また渡しそびれた────」
カポッ。
「────何をです────?」
「────ぴゃ?!」
ヴィレッタは隣の箱の中から顔を出したマーヤを、ただ固まったまま汗を流しながら視線を返した。
「??? なんですか?」
「(け、気配を全く感じ取れなかった! 恐ろしい子……)」
…………
………
……
…
「「「……」」」
数時間後、スヴェンは『優男』の仮面を維持しつつも、周りの者たち同様に顔を引きつらせながら、どこから出したのか分からない小型拳銃を使って男子生徒を地面に組み伏せていたライカを前にまたも嫌な汗をかいていた。
「えっと……お転婆な妹さんですね、スヴェンさん?」*2
そしてスヴェンの隣にいたナナリーの言葉に彼はこう思ったそうな。
『どうしてこうなった』と。
氷の霧扇風機でもエアコンでも夏バテ気味やばい。 _: (´ཀ`」 ∠):_ …