小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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第321話 れべる が あがった(テッテレー) (挿絵)

 何かがおかしい。

 

 いや、突然すぎてすまない。

 だが心の中で叫ぶしかないぐらい、異常なんだ。

 

 なにせ今までガツガツと『ガンガンいけ』な感じで絡んでくる人たちが、急にスッと止まったからだ。

『もしや俺の“いのいちだいじにさくせん変更!”が声として出ていた?』と思うぐらい、不自然に皆が適切な(普通の)距離になった。

 

 俺の胃壁────ゲフンゲフン。 悩み的には正直助かるが、不気味だ。

 

 ちなみに『不気味』と言えばスザクだ。

 

 何故か昨日の今日だというのに足を痛めたのか松葉杖の所為で歩き方が変だし、首と腕は包帯ぐるぐる巻きだし、眼帯もしているし、あと頬にはビンタされたような立派な紅葉マークも付いているし……

 

 一応本人に大丈夫かどうか聞いても、『ちょっと内輪揉めをね』の一点張りだし。

 

 けど、見たところ原作と同様にお互い相思相愛なスザクとユーフェミアが喧嘩をするなんて、到底考えられないからなぁ……

 

『自分のアイス/プリンを食べたぁ!』とかは別だが。

 

「あ、アハハハハハハ……」

 

 それにスザクの隣のユーフェミアも苦笑交じりに、乾いた笑いも出しているから……

 

 うん! どう考えてもコーネリアちゃん様だな!

 

「あ! ほ、本物?!」

 

 で、学生服を着ながら茶色ウィッグをツーサイドアップにした某さつきと、降ろした黒髪ウィッグな某雄二に変装中で恐らく学生ライフを送っているこの二人に、キラキラした目で相も変わらず窮屈そうな中等部の制服を着たアヤノが言い寄っていた。

 

「……」

 

 ちなみに面白くなさそうなアキト(制服)もここにいる。

 

「あ、ありがとうございます────?」

 

 ガシッ!

 

「────ファ、ファンなんです!」

 

「「「え。」」」

 

 アヤノがキラキラした目でずんずんと近づいた相手がユーフェミアではなくスザクだったことに、俺含めて全員が気の抜けた声を出す。

 

 だってさ?

 結果的な善し悪しはこの際別として、俺はてっきり行政特区の発案者であるユーフェミアのことかと思った。

 

「そ、そうなのかい?」

 

「はい! だって武術は師匠も認めているし、由緒正しい枢木家の嫡男だというのに、ブリタニアで一人で頑張っていてもう完全に『サムライ』じゃん!」

 

「「……」」

 

 ユーフェミアとスザクは何とも言えない、複雑な苦笑いを浮かべる。

 

 うん、『何も知らない側』であるアヤノの気持ちは分かる。

 

 分かるが同時に原作知識を俺からしても、スザクが『身内殺し』と『旧日本の被害拡大』の罪悪感からスザクなりに頑張っていたことも分かるんだよなぁ~。

 

 でも当時、ブリタニアと同じ大国で『三強国』であった中華連邦にEUと比べてガッチガチに安定した社会の中で成り上がるのは至難の業だ。

 

 公式公認の『超人』であるスザクでさえ、ルルーシュの擁護をしてブリタニアに撃たれた『偶然』と、戒めとして持っていた枢木ゲンブの時計が弾丸を止めた『奇跡』が重なった結果、特派に保護されてランスロットとの相性が抜群だった。だから名誉ブリタニア人の歩兵部隊から引き抜かれたわけだし。

 

 ……そう考えると、スザクってルルーシュと出会ったからラウンズになったんだな。

 

 「・ ・ ・」

 

 な、なんだかデンジャーな殺気がアキトから発されているような気がする。

 

 視線先には未だにブンブンと両手でスザクと握手するアヤノ……と思いきやスザクだった。

 

「枢木卿。」

 

「ん? どうしたんだい?」

 

「アヤノと仲良くなり過ぎるなよ。 アヤノは俺のだからな。

 

 え。

 

 「「え。」」

 

 アキトの言葉に俺は呆気に取られるような声を内心で上げ、スザクにユーフェミアは声を実際に出す。

 

「?!」

 

 そしてアヤノは、声にならない息を呑んで変な表情のまま固まる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「もう一度言うぞ枢木卿。 アヤノは俺のだからな。

 

 アキトの奴ぞっこんじゃねぇか。

 

 いやまぁ……

 

 普段は俺と同等レベルのポーカーフェイス(無表情)というか、表情筋を普段から殺しているアキトから強い意志の籠った『アヤノは俺の~』という断言がでてくるのは全くの予想外だった。

 

 というか、なるほど。

 レイラの代わりに、アヤノがアキトとくっついていたのか。

 

 う~ん……まさか『亡国のアキト』で、失恋したアヤノの初恋が成就するとは感慨深いなぁ~。

 

「な! ななななななな何言ってんのよアキト?!」

 

「アヤノはこういうの、嫌なのか?」

 

 ここで両腕をぶんぶんと振り回して頭を真っ赤にしたプンスコ状態のアヤノに対し、アキトの見えそうで見えない、イマジナリー犬耳と尻尾がシュンとする。

 

「嫌じゃないけど……」

 

「そうか。」

 

 ケッ、イチャイチャしやがったこのリア充が!!

 

「あ、それは心配ないよ日向君。 僕はユーちゃん一筋だから。」

「キャッ♡」

 

 このガッデムリア充がどもがぁぁぁぁぁ!!

 

 え?

『お前こそ一度に複数の相手にプロポーズしたやろ』だって?

 

 うん、それはその通りなんだがな?

 

 この際だから言うが、ちょっと想像してみてくれ。

 俺がその場の設定やタイミングを一人ずつに合わせて、婚約指輪を贈るところを。

 周りの皆がその行為を『序列化』として受け取ってしまいかねないのが想像がつくだろ?

 

 周りに貴族と関係のある連中に聞きまわって、さらに考えて、先日ファランクス女公爵からの後押しもあって、ようやくない知恵を振り絞って出した俺の答えが、『自由意志を尊重する』こと、そして『序列を付けない』という意思表明だ。

 

 特に重要なのは後者、つまり『序列』だ。

 

 重要なのは、一夫多妻制のおかげで貴族にありがちな『第一位の女性』への執着や意識をそらすことだ。

 

 名門貴族やそれなりの立場にいる家に嫁いできた人への好感次第で、『いびり』や『いじめ』などが発生しかねない。

 

 たとえ本人たちにその意思がなくても、『自分が唯一ではない』というのはそれだけで『ストレスの元』だからな。

 

 それならいっそ、()()()()()()()()()()

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ただし! 真夜中の道を歩いているときに後ろから玉砕覚悟の包丁でグサリは勘弁だぞ?!

 

 って、ドラマやバラエティーでもないから早々起きないだろうな。

 

 ま、俺が皆に贈ったのはエンゲージリング(婚約指輪)であって、結婚を前提にしたマリッジリング(結婚指輪)ではないからな!

 

 そこまで深く悩む案件にならないだろう!

 

 

 

 それに

 

 

 おれ                なんかが

 

 

 

 

 

 あ            い

 

 

 

 

 

 

 「シュバールさん?」

 

「っあ……」

 

 いつの間にか顔を覗き込んでいたアキトが声をかけてきたことで俺はハッとしていつの間にか止めていた息を吐きだす。

 

「大丈夫か?」

 

「ああ。 すこし考え事を、な。」

 

「そうか。」

 

 何を考えていたのか覚えていないけど、()()()()()()()()()()()()()()()だろう。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 ふ。

 

 俺は今朝、『深く悩む案件にならないだろう』と言っていたな?

 ありゃウソだ。

 

 今日、シュタットフェルトの屋敷に帰ってきたらスミカちゃん(カレン妹)のムチムチほっぺたをムニムニと堪能できる前に、急に執事が俺をジョナサン様の元へとドナドナ案内した。

 

 猛烈なデジャヴ感に襲われる俺は、ジョナサン様の神妙な表情から『何かあった』ということを察し、ただ黙って言葉を待った。

 

「……こうして顔を合わせるのは久しぶりだね、スヴェン君。」

 

「いえ。」

 

「忙しいところすまないな。」

 

「ジョナサン様こそ多忙の身です。 私など────」

「────謙虚だねぇ……」

 

「「……」」

 

 社交辞令を言い終えたジョナサン様が急に黙り込み、俺をじっと見る。

 

 もしかしてカレンに指輪を贈ったのに問題が……いや、あるな。

 

『貴族家の結婚』は()()()()()などを爵位が上がれば上がるほど、主に権力の拡大と家同士の繋がりを重視する傾向にある。

 

「……実は、君に手紙が届いている。」

 

「私に、ですか?」

 

『手紙』なんて、相手は誰だろう?

 この世界では主な連絡手段は電子メールやリアルタイム通信とかだし、俺宛の手紙なんてこの間ハンセン家宛に俺が書いた文への返事ぐらいしかなかったぞ?

 

「ああ。 ここに二通ある。 そのうち一通は私宛だったので読ませてもらった。」

 

「?」

 

 ジョナサン様がそう言いながら封蝋された手紙を俺に渡す。

 

「そちらは見ての通り読んではいないが……差出人は君の実家、ハンセン家に連なる家だ。」

 

『ハンセン家に連なる家』と聞き、俺は思わずドキッとしながら動きを止める。

 自分が固まったことを自覚した俺は、『優男』の仮面が外れないよう意識しながら手紙を開ける。

 

「……」

 

 一瞬某ポケット怪物の主人公のように目の前が真っ白になって、頭がクラッとふらつく。

 

「大丈夫かね?」

 

「は、はい……大丈夫です、ジョナサン様……」

 

「その……内容が同じならば、君の気持ちは分からないでもない。 何せ内容が内容だけに、な……」

 

 ……貴族特有の長ったらしくて回りくどい質辞(しつじ)が延々と書かれている手紙の要約を抜き出すとこうだ。

 

『ハンセン家の当主および後妻が子と共に事故死した。よって法に則り、ハンセン家で存命の第一子スヴェン・ハンセンが家督を継ぐように。』

 

『行方不明だったカレン・シュタットフェルトを探す旅の途中、成人前に成した数々の功績をブリタニア帝国への献上と認め成人となった今、男爵のままでは釣り合わないので叙爵(じょしゃく)を受け入れるかどうか問う。』

 

『その高い行動力と能力を一か所に留め(眠らせ)ておくには勿体ないという声を受けて、特例として領地の返上も承諾すれば準辺境伯の位も認める。』

 

『先のダモクレス事件による事後処理で連絡が遅れて申し訳ない。』

 

 いや、クッソ遅いわこのボケェェェェェェェ!!!

 

「……その様子だと、やはり叙爵(じょしゃく)に関することだろうか?」

 

「はい。」

 

「ふむ。 私の方に届いた手紙の内容は、君がここにいるようなら手紙を届け、返事が難しいようであれば君の相談に乗ってくれというものだ。 恐らくは、去年のブラックリベリオン後の……()()()()が関係しているだろうな。」

 

 あー。

 そう言えばカレン曰く、俺がEUに行ったり、ミルビル博士夫妻の保護を頼んだり、オズへの介入とか色々している間、俺のフォローをジョナサン様がしてくれていたんだよな。

 

 でもそれだとこの手紙を出した人は、それを知っている上でわざわざこの屋敷に手紙を届けてきたということだ。

 

 いったい差出人は誰なんだ────あ。

 

 脳内に、約一名────呆れ顔のジト目で眼鏡をかけ直しながら『察しが悪いですね』と言う、浅〇悠さん似の声のベアトリスさんが浮かぶ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 完全に仕込まれた。

 

 それにしても『事故死』と『叙爵(じょしゃく)』って……

 

 いや、ポイントはそこじゃない。

 

 俺やジョナサン様に対してほぼ良いことずくめだよね?

 

 俺はハンセン家の『子弟』から『当主』にランクアップ。

 ハンセン家も『男爵』からランクアップ。

 ジョナサン様はそんな俺を保護していた功績を認められて『認識度アップ』。

 

 かつ『偽装のことを知っている』と、俺本人とそれを手伝ってくれたジョナサン様に仄めかしてきている。

 

「どうする、スヴェン君?」

 

 いや、『どうする』もへったくれもないんじゃないかな?

 

 こんなごり押しで来てさ?

 実質的な選択の余地がないよね、これ?

 

「……謹んで、お受けしようと思います。」

 

 でも、『受ける』ということは────

 

「────そうか……長い間、カレンやルーミー(留美)だけでなくこの家も支えてくれて感謝する────」

「────いえ。 実の子でない私をこれまで面倒を見てくれました。 感謝をするのは私です────」

 

 ────俺はシュタットフェルト家に居続けることができなくなる。

 

 仮にも『当主』が一貴族の『従者』や『見習い』のままでは、『何か訳あり』として噂が拡散しかねない。

 

『伯爵』と『準辺境伯』ならば、なおさらだ。

 

 何せ『準』でも『辺境伯』だからな。

 

 少しだけ説明するが、いいかな?

 

 ……うむ。 どのように返事をしたとしても説明させてくれ。

 

 現実逃避(説明)させてくれ。

 

 

 

 皆は『辺境伯』と聞いて、何を思い浮かべるだろうか?

 恐らくだが、以下のような想像をするだろう:

 • 『辺境』と呼ばれている領地を受け持つ

 • 伯爵と同等の位

 • 外敵の侵入を防ぐために一介の領主以上の軍事力の保有を許される

 • 国境地帯における平和条約や休戦協定の第一交渉人

 • 辺境地への移民や開拓者を募り、入植地の設立を支援する

 

 等々。

 

 この世界でも概ねこのような認識だが、ブリタニア帝国の皇帝がシャルルになってから『辺境伯』は意味合いも役割も違うようになった。

 

 一番大きな違いを挙げるとブリタニアの辺境伯は『領地を持たない』。

 それと『ブリタニア本国への内政干渉は認められていない』。

 

 これはシャルルがブリタニアを立て直すために大幅な『粛清』を行ったあと、年々拡大する領土管理への対策として、それまでほぼ廃止されていた『辺境伯』制度を見直したためだ。

 

 この二つの制約の代わりに辺境伯には『辺境伯軍』としての親衛隊保有が認められている。

 そして辺境伯本人が必要性を感じ、かつ皇族が不在または皇族の承認がある場合にのみ、()()()()()()()()()()()()()()()()の特権の使用が認められている。

 

 いわばそれまでのほぼ皇族扱いだったラウンズの多くを排除し、あとのラウンズとなる者たちの権力を引き下げつつ、扱いやすい『準ラウンズ』を増やすための政策。

 

 無論、辺境伯の特権はあくまで『治安維持』が目的だが、強力なのは間違いなく、実質的には『準皇族』扱いだからか、シャルル皇帝が絶対の信頼を置ける者にのみこの爵位は与えられている。

 

 だからか数も少なく、『特権』の使用はかなりの注目を浴びるし、扱い方を間違えれば『反逆罪』としてみなされるから実際に使われることはほとんどない。

 

 ああ、ちなみにジェレミアとギルフォードも『辺境伯』だ。

 

 だからジェレミアは純血派という、ほぼ私兵の集まりを保有していることも黙認されていたし、二年前にクロヴィスが撃たれて重症になったときはバトレーを逮捕してエリア11の総督並みの権力を掌握し、スザクの公開処刑や名誉ブリタニア人制度の廃止などで動けた。

 

 原作アニメでは『出世!貴族!出世!』に執着していたヴィレッタも『クロヴィス殿下亡き今、私たち純血派が~』と辺境伯であるジェレミアを煽っている。

 

 そして原作のR2ではギルフォードも、バベルタワー転倒時にカラレスがいなくなって混乱していたブリタニア軍を『辺境伯の特権』で指揮し、ゼロと籠城している黒の騎士団を誘い出すための『黒の騎士団の公開処刑の実施』も立てられた。

 

 まあ、『オレンジ事件』のようなギリギリグレーで越権ぎみの行為があったため、ギルフォードは『これは権力の掌握ではなく、あくまで一時的な措置だ』と言いつつ、『姫様(コーネリア)の名に誓う!』とも念を押していた。

 

 

 

『準』付きの『辺境伯』だが階級的にはシュタットフェルト家とは命名が違うだけで同じ伯爵だ。

 

 そんな俺がシュタットフェルト家の『従者』のままであれば、自ずと『シュタットフェルト家は辺境伯の権力を利用する気では?』などといった類の邪推が世間に広がるのは時間の問題だ。

 

 俺だけならともかく、ジョナサン様やカレンや留美さんたちに迷惑がかかるのは断固として避けたい。

 

「荷造りなどの手伝いは必要かね?」

 

「いえ、大丈夫だと思います。」

 

 ジョナサン様の顔がようやく神妙な表情から変わり、意外そうに俺を見る。

「そうかね?」

 

「ええ。」

 

 何せ、()()()()出られるように持ち物は最小限に収めているからな。

 

「それと別にだな……」

 

 うん?

 ジョナサン様の目が泳ぎ出した?

 あと気のせいか、ソワソワし出した?

 何だろう……

 

「実はカレンが最近変な様子だと他の者たちから聞いているのだが、スヴェン君は何かしらないかね?」

 

 『あります』なんて言えねぇ!

 

「『変』、ですか? 私が見たところはいつも変わりない様子ですが、最近は教師として活動しているのであまり顔を合わせなくなりましたからね……」

 

 ガシッ!

 

「例えば最近、カレンに何かを送った。 あるいはアプローチした者。 などと言った輩はいないだろうか?」

 

 『ゴゴゴゴゴゴゴの擬音』を背景にしたドアップにまで迫った貴方に『両方ともめっちゃ心当たりがありますと言うか自分が当てはまります』なんて言えないんだが?!

 

 「スヴェン君は、何かしらないかね?」

 

 平常心、平常心、平常心ンンンンンン!!!

 全力のポーカーフェイスゥゥゥゥゥ!!!

 

「「……」」

 

 空気が……重い……

 

「「……」」

 

 沈黙が怖い!

 

 『ただいまー。』

 

「お。噂をすればカレンではないか。 ふむ……都合が良い、この際直接話し合うとするよ。 弾き留めてすまないね、スヴェン君。」

 

 セェェェェェェェェェェェェェフ!!!!

 

 さっさと(ブツ)を確保してトンズラこくか!

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

「おかえりなさいませ。」

 

「……」

 

 というわけで蓬莱島に逃げて来たのだが、到着一番で俺を迎えたのはどういう訳かメイド服を着たマーヤである。

 

『意味が分からん?』

 

 ふ、奇遇だな。

 

 俺もだよ!

 

「あ、もしかしてお気に召しませんでしたか?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 うん。

 

 そうやってはにかみながらひらりとスカートを持ち上げるなんて反則だよ!

 

 特にここが島だけに風が更にスカートをフワリと持ち上げるからめっさ気に入りまっせ!

 

 絶対領域度がイイネ!

 

 ピュウ!

 

「きゃ?!」

 

 おっほ♡

 

 一段と強い風が吹いたおかげでスカートがめくれ────ん?

 

「今日は風が強いですね……気をつけないと……」

 

 んんんんんんんんんんん?

 

 今、見間違いじゃなければスカートの裏に暗器や小型拳銃のホルスターっぽい何かが縫い込んであるように見えたんだが……

 

 どこぞのくノ一の影響?*1

 

 まぁ、毒島の対〇人スーツっぽいアレよりは幾分かマシだけれども。

 

「車を用意してあります。」

 

 何だろう。

 

 再び俺を襲う猛烈なデジャヴ感を無視しながら車に乗ると、よりにもよってマーヤが運転席に座りこむ。

 

「マーヤ。」

 

「??? 何でしょうか?」

 

 いや、何とも『何か?』と言いたげなキョトンとした表情は。

 

 君、俺と同い年で免許ないでしょ?

 

「いや、何でもない。」

 

 でも突けば『やぶ蛇』どころか何かもっと良くない物が出てきそうなので深く聞くのは止めた。

 

 そうやって蓬莱島をドライブして数分。

 

 以前、俺が知っている東京みたいな賑わいのある街並みが見えてくる。

 

「随分と増えたな。」

 

「一応、これでもマオとサンチアたちが頑張って厳選しています。 とくに超合集国連合の設立宣言以来ですが、この島の発展具合や蓬莱産の甘味などを知った者たちは観光、あるいは移民のために来る者たちが後を絶ちません。 以前、ゼロが()れてきた者たちが日本へと帰っても人口が再び近い数になってきたのでクラウスさんたちがぼやいていました、『また忙しすぎる』って。」

 

「そうか。」

 

 原作アニメでほとんどが鉄の大地だった蓬莱島もほぼ無尽蔵な電力に物を言わせたゴリ押しもあったが、ここまで来ればもはや『魔改造』だな。

 

 随分と前に見た町全体の計画図(けいかくず)は当時『理想的だな』と思っていたが、それに近づいてきているような気がする。

 

「ん?」

 

「どうかなさいましたか?」

 

 この道、俺がいつも寝泊まりしているアパートや政庁じゃないんだが……

 

「いや……道が少し違うなと思っただけだ。」

 

「ああ、それは領主館が完成したので今そちらへと向かっています。」

 

 『領主館』……だと?

 

 それを聞いた俺は『自治領主になったから当たり前』と一瞬納得すると同時に、背中に冷たい汗が噴き出る。

 

「あ、着きました。」

 

 そしてマーヤが車を止めてドアを開け、車を出た俺は悪い予感が的中したことで唖然とした。

 

 車が停まった領主館は『屋敷』という規模ではなかった。

 

 城である。

 

「「「「「「「「おかえりなさいませ。」」」」」」」」

 

 しかも門から城までの道のりの左右にずらりと使用人&メイド服の者たちが一礼して出迎えているがな。

 

「何分納得がいくような設計が決まらず、町より先に城を立てれば苦情が出ると思って後になってしまいました。」

 

 いやそこじゃない。

 

 そこじゃないんだよ、先頭を歩くマーヤ君。

 

「ああ。 それとここに居る皆さんのチェックは済ませています。」

 

 それも違う。

 

 というより、どこかで見たような顔ぶれなんだが……

 

 屋敷────じゃなくて城────でもなくて、『領主館』の中へとマーヤに案内される。

 

 ホールは吹き抜けとなっていて、天井には一面に絵が描かれている。

 もうこれ、『領主館』じゃなくて某美術館でも通るんじゃね?

 

 あと部屋がいっぱいあるのは何でだ?

 

「マーヤ。」

 

「あ、先程の方たちはバベルタワーであなたに助けられた者たちで結成していますけど……もしや他の配置先を考えていましたか?」

 

 ああ、なるほど。 だから見覚えが────ゑ。

 

『配置先』ってなんぞや。

 

 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ま、いいや。

 

 

 

 


 

 なお、余談だが考えることをあきらめたスヴェンはまだ知らない。

 

 正史でも昔から既にあった『エンゲージリング(婚約指輪)』の代わりに『マリッジリング(結婚指輪)』が『結婚の証』として見られるようになったのは、随分と後のことだったという話を。

 

 そしてこの世界で『婚約指輪=結婚を前提にした求婚』だということを。

 

 スヴェンがこの価値観のずれに気が付くのは、もう少し後の話である。

 

*1
自称SPさん:正確には、篠〇流の37代目────




どうでもいいかもしれない余談:

アニメの三話でジェレミアが辺境伯とヴィレッタに呼ばれています。

なおギルフォードに関しては明確な貴族階級が示されていないので今作での独自設定です。

『彼こそコーネリア(皇族)の部下やんけ!』という考えがあるかもしれませんが、実は『他でもないクレア女帝の子孫だし~』と『シュナイゼル殿下が次期皇帝になるっぽいからもしかするとコーネリアは臣籍降下するかも~』ということで黙認されていた……ということにしています。
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