小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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申し訳ないです……こうも書きたい日に限って書けなくて、時間ができてもリアルが……
遅くなりましたが、投稿いたします。


第326話 新しい時代、新しい日課 (挿絵)

「…………………………………………………………」

 

 本格的な秋に変わり始めた、とある日の事だ。

 

 シュボォン!

 

 ガラッ!

 

「スヴェェェェェェェェェェェン!!!」

 

 (スヴェン)はいつものように、学園内でひっそりとしたところで焼きそばパン(っぽいがソバの代わりに焼うどんが入った何か)を食べながら休憩していると大気を震わせるような音と共に白い煙が校舎内からモクモクと立ちこめて、開かれた窓の向こう側から俺を呼ぶ生徒の声が耳をつんざくように響く。

 

「……はぁぁぁぁ……」

 

 それを合図に俺はため息を出しながら、焼きそば────もとい、『焼うどんパン』を袋に戻す。

 

「またか。」

 

 煙が立ち込めている教室に入ると、()()()()にライカがポツンと騒動の中央にいた。

 

 周りには、部屋の端に避難したリヴァルやシャーリーたちがいた。

 

 そしてライカの近くにはモクモクと煙が出ている机……机だよな?

 

 俺の見間違いじゃなければ、なんか溶けて殆んど原型留めていないか?

 

 おっと、あまりのことに思わず素が出てしまった。

 

 スマイルスマイル、『優男』の呆れ顔でスマイル♪

 

「それで、今日はどうしましたか?」

「特に。」

「この騒ぎで『特に』は無理があるでしょう?」

「……特に。」

「そうですか。」

 

 言葉と課題が乏しいからキャッチボールとまではいかないけれど、以前よりもライカがこうやって話してくれるのは嬉しいな。

 

「それでリヴァル、この状況はどういうことですか?」

 

「どうもこうもしないよスヴェン! 貴方からも言ってくれる? 『物を燃やすな』って!」

 

 え。

 

 うわぁ……シャーリーが正論を言うってどれだけだよ?

 

「ライカ。」

「なんだ?」

「なぜ燃やした?」

 

「いや、そこじゃねぇだろ?!」

 

 お前はいったん無視だリヴァル。

 

 ライカも彼────じゃなかった────彼女なりの理由があった筈だ。

 

「休憩時間の後、教室に戻るとボクの机が空けられた痕跡があった。」

 

 なるほど。

『異物』の混入を恐れたわけか。

 

「それで? 中を確認したのか?」

「地雷や罠の類のチェックを終え、ボアスコープで確認したところ、ボク宛てだが差出人の書かれていない手紙があった。」

 

 ……うん。 それってもう『果たし状』か『ラブレター』の二択だけだよね。

 

 だがそのうちの『果たし状』の線はない……かな?

 スケバンの類はいないし。*1

 

 多分、ラブレターの類なんじゃないかな?

 

 ライカってビジュがいいからなぁ……

 

 胸はないけれど。

 

「それで、その手紙を見つけて燃やしたと?」

「ああ。 テルミット反応で焼却した────」

 「────それは流石に駄目だろう。」

 

『テルミット反応』って、随分と危ないことをするね君?!

 

 そもそも何でテルミットなんかあるのお前?

 

 せめて普通に『ライターで燃やした』────ってこれもダメじゃん。

 

 落ち着け俺、慌てるのは誰もいないところでしよう。

 

「ライカ。」

「なんだ、兄さん?」

「教室内で焼却の類は駄目だ。」

「しかし他の者たちが怪我をしない範囲内────」

 「────ダメです。」

 

「分かった────」

 

 よしよし、素直でよろしい。

 

「────次は化学反応で溶かす────」

 「────取り敢えず『問答無用』の『破壊』から離れてください。」

「………………………………分かった。」

 

「なぁシャーリー? スヴェンが手こずるところを見たような気がするのは俺だけか?」

「ライカって色々分かるのに、凄く極端だから……」

「『極端』ってレベルを明らかに超えていないか、アレ?」

 

 うるさいよ、外野。

 

「う~ん……『極端』って言うより、『常識知らず』?」

「『ライカちゃんはちょっと事情がある』ってスヴェンが紹介で言っていたけれど……リヴァルは何も聞いていないの?」

「うんにゃ、な~んにも。」

「意外……」

「スヴェンってルルーシュレベル……とまではいかないけれどあまり自分の事は喋らないからなぁ……」

「え? そうなんだ?」

「俺もこの間、クソオヤジからの連絡で『スヴェンとか言う小僧ともっと仲良くしていれば目を瞑る』って言われて、初めて貴族家系図を調べたんだがな……アイツ、いつの間にか当主になってた。」

「え……あ、じゃあ最近カレンと一緒にいない理由って……

「分かんねぇけど、『貴族』ってやっぱり面倒くせぇ!」

 

 もっとひそひそとした小声で話をしてくれないかなお前たち?

 

 と言うか貴族家系図の改竄、早くて徹底過ぎないか?!

 

 そう思いつつも、俺は部屋の端で他の民と同じで咳き込んでいたカレンを見る。

 

 確かにこれだと()()()()()()

 

 ……よし。

 

 ライカもいるし、()()()()()

 

「全員、クラスから出てください! 窓を開けて空気の入れ替えをします!」

 

 テルミット焼却によってクラス内に留まった煙の入れ替えを機に、俺はコッソリカレンとアイコンタクト取る。

 

『カレン、少しいいか?』

『きゅ、急に何?』

『ライカのフォローを、()()()()頼めるか?』

『え?! ……な、なんで?』

『最近のお前は成績も、出席数も足りてきている。』

『それは、頑張ったから……』

『このままいけば単位も取れてゆくゆくは卒業できる。 そうだろう────?』

『────いや、まぁ……でも────』

『────ダメか?』

 

 アイコンタクトで俺が送った言葉()に、カレンはスッと目を逸らして無理やりアイコンタクトを切る。

 

 始めたのことだったので不思議に思いながらよく見ると、カレンの表情は……いや。

 

 表情()初めて見るようなもので、強いて言うなら……『不安』、になるのか?

 

 何故だ?

 

 もしかして、俺か?

 

 おれのせいなのか?

 

 おれ の 

 

『分かった。』

 

 先ほどまでの様子が嘘だったように表情を普段のものに変えていたカレンと目が再び会うと、ただそのような同意する声が視線に乗って届いてくる。

 

 気付けば景色がかすんでいて、瞬きをすると目に痛みが走り、『額からの汗の所為だ』とようやく気付いてから、身体中から滲み出ていた汗によって服がべったりと引っ付いていたことに気づく。

 

 しかし、何でカレンはあれだけ渋々とした感じだったんだろう?

 

 ……話してくれないのなら、話すまで待つとするか。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 「イベントをやるわよ!」

 

 数日後、職員室内でミレイが突然立ち上がったと思ったら上記の言葉が室内で響いていた。

 

『はぁ……』

『そろそろかなと思ってはいたけれど……』

『やっぱり静かすぎるのは似合わないよなぁ。』

 

 いきなりの事で、俺のように驚いている他の者たちもいれば上記の言葉で分かるように『またか』と観念する教師たちもいた。

 

「「「「「……」」」」」

 

 そして全員が何故か俺をそこで見る。

 

 なんで?

 え? 俺が先陣を切るの?

 ポイントマンじゃないよ?

『新入り』だから?

 

 まぁ、慣れているから良いけれどさ。

 

「どんなイベントですか、ミレイさん?」

 

「そりゃあ……スヴェンは何かアイデアとかない?」

 

 まさかの俺に丸投げ?!

 

「いきなりですね。」

 

「そう?」

 

「ええ。 私はてっきり、ミレイさんに考えがあっての発言だと思ったので。」

 

「でもスヴェンの考えた『キューピッドの日』、今までのイベントで未だにダントツで人気があるわよ? 『次はいつ~?』って聞かれるし。」

 

 ええええええ。

 そもそも『キューピッドの日』は原作で貴方自身が企画したイベントをパクっただけなんですけどー?

 

「と言う訳で、スヴェンは何かない?」

 

 一応、問われたからにはそれっぽいことを言うか。

 

 デスクの向かい側からミレイに問われて、俺は座ったまま腕を組んで考える素振りをする。

 

 しかし、『秋』のイベントと言えば……サンマとか、焼き芋?

 と言っても、ブリタニア(イギリス)基準だからうまく伝わらないかもな。

 

 だとするとサンクスギビングは……『ワシントンの反乱(アメリカ独立戦争)』と結ばれかねないからダメか。

 

 あとは────

 

「────ハイキングは……寒いだろうな。」

 

「あー、確かにねぇ……」

 

「私服になれば、引率も大変ですしね。 高等部だけに限定すれば────」

「────いいえ、やるには学園全体の参加は決定事項よ!」

 

「ですよね。 と言うことで、舞踏会などはどうでしょうか?」

 

「「「「「舞踏会。」」」」」

 

「ええ。 ちょうど紅葉の季節ですし、それを室内の背景テーマにして『四季の舞踏会』風にすれば────」

 「────オッケー! 採用────!」

 「────早っ。」

 

 ヤバ。

 ツッコんでしまった。

 

「ふっふーん! こういうのは、思いついたら行き当たりばったりで始めて、最終的に形にすればいいのよ! でもそのままだと捻りも何もないからぁ……」

 

 なんでそこで俺を見るのミレイ?

 

「夜は舞踏会にして、昼はバトラー&バニーデーにしましょう!」

 

 なんでや。

 

「スヴェンの執事姿、一度見たかったのよねぇ♪」

 

「ちょっと待ってくださいミレイさん。 それって、教師もですか?!」

 

「え? そうだけれど?」

 

 職権乱用、ここに極まれり!

 

「それに『バニー服ってどんなものか一度着てみたかったし、丁度いいかな~』って♡」

 

 パチン♪

 

 みれい の おちゃめなうぃんく こうげき!

 

 こうかはばつぐんだ!

 

 ……今日も半日学校~♪

 さらに半日分の残業~♪

 それでもやらにゃならない~♪

 これが仕事だ~か~ら~♪

 

 ………

 ……

 …

 

 ガチャ!

 

 舞踏会に関する書類の見直しと提出をしていると、開かれる職員室のドアに自然と注目がいく。

 

「すみませーん! スヴェンを────じゃなくて、スヴェン先生を借りても良いですかー?」

 

 なに平然とチャラ男キャラになっているの、オルフェウス?

 どこからどう見てもギャップ感と言うか『不自然』すぎるぞ?

 

「あらリヴァル、まだいたの? 意外ね?」

 

 ミレイの言葉で今俺の目に見えている『オルフェウス』が実は『ギアスを使ってリヴァルに成りすましたオルフェウス』だという考えまで結びつくまでは一瞬だった。

 

「会長────じゃなくて先生もですよー?」

 

 なんだろう。

 

 声も見た目も『オルフェウス』なのに『リヴァル』って……

 

 「ぷ。」

 

 やべ。

 あまりのアンバランスさに変な声を出してしまった。

 

「これから来る秋のイベントをまとめている途中でねぇ~? ちょっと立て込んでいたのよ。」

 

「お?! どんなイベントですか?!」

 

「内緒♪」

 

 いや、もう本当に傍から見ればリヴァルとミレイの『何時ものやり取り』だ。

 

 流石はこの世界の〇パン〇世級のエキスパートだ。

 

 ガシ!

 

「というわけで、ちょいとだけこいつを借りていきまーす!」

 

 ギリギリギリギリギリ!

 

 いだだだだだだだだだだだ!

 ニコニコするリヴァルのふりをしながらスリーパーホールド的な絡み技をお見舞いしながら引きずらないでというか何か首辺りが軋んでいるぅぅぅぅぅぅ?!

 

 必死に内心で絶叫を挙げながら痛みによって滲み出る汗を無視つつもポーカーフェイスを維持した俺はそのままズルズルと引きずられていく。

 

 幸いなのは時間が遅かったので学生の姿が殆んど見当たらないことぐらいか。

 

 ……

 …

 

 場所は人気のない教室。

 

 ドン!

 

 そして俺の頭部スレスレをかすめるように、オルフェウスの腕が壁を打ちつけられる。

 

 いわゆる『壁ドン』だ。

 

 もし『()()()系の趣味』を持った女子がこれを見たら、『キャー♡』と黄色い声で騒いでいるだろうな~。

 

「貴様、どうしてくれる?」

 

 そういえば今でこそ『見目麗しい異性による壁ドン=ときめきイベント』だけど、壁ドンの始祖って『ヤ』の人たちや犯罪者による脅しだったなぁ~。

 

 「おい、聞いているのか?」

 

「聞いてはいるが、何のことだ?」

 

 「貴様、指輪を送ったそうだな?」

 

 Oh……

 

 こっちもシスコン(オルドリン)セコム発動かよ。

 

「すまん、話を────」

「────いや、当人たちが納得をしているのならば、俺的には別に良いんだ。」

 

 おりょ?

 意外と話が分かるじゃないかオルフェウス君!

 

 「だがお前の行動で周りの案件まで影響するとは思わなかったのか?」

 

 え。

 

「想像してみてくれ。 毎日毎日ミス・エックスかクララかが執拗に追ってきて、デートやら指輪やら将来の事で語りたいやらで、一つの場所に長く居続けると彼女たちの追跡を撒かなくてはならない毎日をな。」

 

 ……こいつ、要するに苦労しているのな。

 

 天然ジゴロが。*2

 

 あれ? でもアキトやシンたちはどっちかっていうと割といつも通りだけど?

 

 このギャップは……もしかして。

 

「なぁ、オルフェウス?」

 

「なんだ?」

 

「もしかしてだがお前、誰の想いも返していないのか?」

 

「俺は……その……」

 

 急に威勢が弱くなったオルフェウスが、目をチラリと髪紐に向けられる。

 

 その髪紐って確か、亡き恋人のエウリアの形見だったよな?

 

 うわぁ……

 原作でもオルフェウスって確かエウリアに一途だった描写があったからわかっていたつもりだけど、ここまでとは流石に思わなかった。

 

 ……そう言えばオルドリンとマリーベル、そしてオイアグロの事は無理やり話し合いをさせたがオルフェウスの件がまだ残っていたな。

 

「オルフェウス。」

 

「なんだ? 弁明するなら────」

「────敵討ちは、終わったのか?」

 

「ッ……」

 

 原作では、あれよあれよと場に流されるまま記憶を失ったオルフェウスは『他人の為に動く』事でエウリアへの償い(敵討ち)による焦りを誤魔化していたが、最終的にハンガリーの南部に遭った村をオルドリンが訪れたことでエウリアの『思い』をオルフェウスは受け取った。

 

 それまでのオルフェウスは、『他人を愛したり愛されることはない』というような自己ポリシーを貫いていた。

 

 だが俺が色々とやらかしたせいで、物語(ストーリー)は大きく変わった。

 

 今すぐに思い浮かべられる例だけでもオルドリンとオルフェウスは記憶を失くさず、マリーベルは不安定な精神から冷徹かつ破壊願望的にならず、マリルローザたち『マドリードの星』たちは健在でマリーベルとオルドリンは決定的な仲違いをせず、トトは死なず、クララは生きている。

 

 ならば、せめてもの手助けとしてオルフェウスも助けたい。

 

「敵討ちが終わっていないのならば、手伝おう。」

 

「……それも、お前の能力か?」

 

「そう思ってくれて構わない。」

 

 本当は『原作知識』なんだけれどね。

 

「お前は、どれだけ……いや、何でもない。」

 

 え、ちょっと待ってよオルフェウス君。

 

 何その一瞬だけ見せた憐れむような顔は?

 

 

 

 


 

 

 

 せっせと教師たちがスヴェンの言い出した『舞踏会』に向けてミレイが準備している間、マーヤと毒島はカレンとライカという珍しい組み合わせから、『リヴァル』にスヴェンがドナドナ(連行)されている光景を遠くから見ていた。

 

カルデモンド君(リヴァル)は強引だな。」

 

「アレは多分、リヴァルじゃないわ冴子。」

 

「何故そう思う?」

 

「そうね……私の勘が『違う』と言っているだけだけれど、今この時間帯でリヴァルが神様をあんな風に引きずる理由が考え付かなくて……」

 

「……」

 

「冴子?」

 

「ふわ……」

 

「大きな欠伸ね、冴子。 寝不足?」

 

「う……まぁ、な。 そういうマーヤは大丈夫なのか?」

 

「何が?」

 

「お前、スヴェン(スバル)より起床の時間が早いのだろう?」

 

「ああ、メイドになってからの話ね。 ええ、でも彼が以前より寝ている時間が多くなってこっちも助かっているわ。」

 

「それでも彼が学園に向かうものとは違うルートで登校しているのだろう? その上、家事もしているとも聞いたぞ。」

 

「『家事』と言っても、簡単なものだけよ。」

 

「『簡単なもの』? ……洗濯や皿洗いとかか?」

 

「う~ん……食器を皿洗い機に入れるとか、掃除の確認とか、ゴミを処分に出したりとか、物をまとめたりとか?」

 

「(それは『簡単』というより『初歩的』で『力仕事』なのでは?)」

 

 

『というより戦力外通知なのでは?』と一瞬だけ毒島は思ったが、脳内にその考えを思い浮かべるよりも先に彼女は無理やり話題を変える為に口を開けた。

 

 

「それ以外のことは?」

 

「それが、他の皆が何故か止めるのよ。」

 

「なるほど。 (やはり戦力外扱いか。)」

 

「ちょっと冴子、納得するの早すぎない?」

 

ただ相槌を打っただけだが?(意識しすぎだな。)

 

「……ならいいけれど。」

 

「それとだがマーヤ、お前……メイドになってから、何か隠していないか?」

 

「そういう冴子も、最近は朝早くから学園に登校しているわよね?」

 

 歩みを止めて振り返った毒島に合わせるかのように足を止めたマーヤは顔色を変えずに返事をする。

 

「………………………………そうか。」

 

 毒島は何かを察したかのように振る舞い、再び歩きだした。

 

 

 ちなみにこの時、二人の考えていたことは皮肉にも同じであった。

 

 

「「(まさかとは思うけれど……バレていないよな?!/バレていないでしょうね?!)」」

 

 尚、ここでネタバレをするがこの二人がバレることを恐れているのは至極単純なものである。

 

 最近のスヴェンの大まかな一日のうち、約4時間が睡眠に充てられ、その他は移動時間、教師としての職務、蓬莱共和政府を含む報告書のチェック、ライカのフォロー、知人との付き合い、ナナリーのリハビリなどでほとんどが埋まっている。

 

 なお、この中には当然だがレイラやアンナにアンジュ、毒島やマーヤ等も勿論含まれている。

 

 しかし時間は有限なので、全員に時間を割くことはできず、都合が合っても限られている。

 

 ちなみに少し前、毒島がマーヤに『やったな?!』と言い放ったのは無論この様にスヴェンの時間を自分へと割くようにすれば他の者たちが黙っていないからである。*3

 

 故にマーヤは『メイド』として彼の近くにいることになった後、まるで対抗するかのように各々が相談や頼み事などをスヴェンに持ちかけたりしている。

 

 その半分ほどは全くの偶然だったと一応ここで追記するが、その他は確信犯である。

 

 例えばだが────

 

 ……

 …

 

 

 ────病弱()であるカレンの『従者見習い』と『世話係』を兼任していた頃にその大変さを知っているかもしれないが、『使用人』に関して軽くおさらいをしたい。

 

 使用人(メイド)の朝は早く、夜は長い。

 

 それは基本的に『主』より早くに起きて身支度の手伝いやその日の準備に下ごしらえや、主人が居ない間は住居の維持などを行う。

 

 つまり、普通ならば使用人の勤務時間は主人より長くかつ必然的に交代制勤務となり、どれだけの人数を雇いかつ養えるかが『主人(雇い主)の器』を見る目安となっている。

 

 余談かも知れないが、毒島に『簡単な仕事を任されている』と彼女が言ったように、マーヤは『メイド』()兼任し始めてからは殆んど寝る時間を削り、朝から様々な作業を行っている。

 

 朝礼、言わば夜勤者から日勤者への引き継ぎや報告などを行う。

 身支度の手伝い……はスヴェンが断固拒否されているので、このわずかな時間を逆に自分の身支度や()()()()()()()が必要と思われる連絡事項や従者隊の育成具合に()()を任せられる直属の部下たちから来た定期報告書の確認などに時間を割いている。

 

 え? 『途中で何か変なところがなかったか?(汗)』だって?

 Ha、ha、ha。気のせいさ。

 

 ソウ、キノセイサ。

 

 あとは着替えが終わって朝食をスヴェンが取っている間、普通のメイドがするような空気の換気に窓を開けたり、ベッドシーツの交換をしながら部屋の主(スヴェン)が脱いだパジャマを洗濯籠に入れ────

 

「スゥー……」

 

 ────る前に、ふわっと鼻腔(びこう)をくすぐる香りに思わず釣られてシーツごとパジャマを抱きしめては深く息を吸う。

 

「……………………(ああ、まるで包まれているようで……)」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 そんな時、その直後、マーヤの目にシーツを剥ぎ取ったベッドが入った。

 

「…………………………………………(ポッ♡)」

 

 

 これ以上の描写は規制される恐れがあるので以下略とし、今度は毒島の例えに移ろうと思う。

 

 

 ……

 …

 

 

 ヒュッ、ガツン!

 

 空を舞う二振りの木剣が、木でできたものが出すはずのない衝撃音を立てていた。

 

 場所はアッシュフォード学園でも体育の時間以外は人が寄らない体育館の近くにある、剣術部や大会用の修練場。

 

 ガン!

 

 その中では二人の男女が見事な剣さばきで拮抗状態を続ける姿があった。

 

 動きやすい体操服に着替えた二人の攻防は傍から見れば()()に見え、それは明らかに大会や道場で行われる武道の祖先にあたる『武術』であり、二人は一度距離を取り、涼しい表情で無言のまま相対していた。

 

「これで本気なのか。スヴェン?」

「……(どないしよどないしよどないしよどないしよこのままだと負ける。)」

 

 この男女の内の一人である毒島の問いに、スヴェンはただ無言(ポーカーフェイス)のまま内心焦っていた。

 

「久しぶりの立ち合いなのだ、手心を加える必要はないぞ?」

 

「(最初からフルスロットルなんだが?!)」

 

「『腕が鈍った』……は、君からは考えにくいか。」

 

 「(まさかのその通りです。)」

 

「それとも……私を相手に、本気を出さずとも良いと判断しているのか?」

 

「(だから全力なんだってば! でも負けたら負けたで嫌な予感がするしどないしよ。 ……よし。)」

 

 スヴェンは決意したかのように、ただ静かに呼吸を整えながら構えを取る。

 

「(時間もないし、『短期決戦』の()()でいくか。)」

 

 深く腰を落とし、姿勢は低く。

 

 相手に向けた剣の切っ先は、まるでビリヤードキューで狙いを定めるかのように握られた。

 

「(ここで『突き』だと? だがこの構えは先生の三段突きでも、私の見よう見まねの物でもない。 この局面で、新たな閃きを実用に転換するのか?)」

 

 どこからどう見ても()()()()()()()の構えを取ったスヴェンを見た毒島は困惑したが、うなじがチリチリと熱くなるような感覚に緊張感がさらに高まる。

 

『突進』を意識した状態の胸筋、背筋、両腕、両足と、ほぼ首から下全てのあらゆる筋肉が矢を構えられた弓の弦のようなギシギシとした音スヴェンの耳朶に響き、()()が終えたことを訴える。

 

「(『殺気』────?!)」

「────()()()行くぞ、()()────」

「────ッ?!」

 

『嫌な予感』に毒島が本能的に下半身で無理やり身体全体で『とにかく攻撃を避ける』という考えで動いた。

 

 一瞬だった。

 

『スヴェンが消えた』と気が付いた頃には彼が元いた場所の床はひび割れて地面がむき出しになっていて、毒島は既に尻餅をついており、鼓膜を破る衝撃音と吹き荒れる暴風が辺りに吹き乱れ、その中央には汗まみれのスヴェンがいた。

 

「……」

 

 「し、神速……」

 

「……少々やり過ぎたか────」

「────い、今の突きは?」

 

「ただの突きだ。」

 

「『ただの突き』だと?! あれがか?!」

 

「ああ。 ただし、()()()()()()()()使()()()()()だがな。」

 

「全身の────?」

「────これなら常軌を逸した力の有無関係なく()()()使()()()。」

 

「スヴェン、君はまさか────」

「────最近の毒島はどこか、居心地が狭く感じているように思えたからな。 それとこの部屋の修繕費用は学園に回してくれ。」

 

 スヴェンは毒島に手を貸し、二人は『使用禁止』の立て札を修練場のドアにかけてからすぐに人目に付くような顔や首などから滲み出た汗を手早くタオルで拭きながら歩く。

 

「……」

 

「どうした、毒島?」

 

クラス(授業)、か……」

 

「退屈か?」

 

「どちらかというと『今更?』、と言う感じが拭えない。 色々あったからな。」

 

「確かにな。 だが体面的に卒業は必要だ。 今まで通っていたのだからそれをすべて棒に振る必要はない。」

 

「……そうかもな。 平和な世の中では、武力はあまり必要とされないどころか邪険にされるからな。」

 

「……」

 

「どうした、スヴェン?」

 

「『平和』は『武力を含めた国力が拮抗している膠着状態』と言い換えても遜色は無いと思っただけだ。 だからこれからも先、剣は必要性はある────っと、俺はこっちだ。」

 

「タオルは私が洗いに出すよ。」

 

「助かる。」

 

 スヴェンからタオルと木剣を受け取り、彼を見送った毒島はそのまま寮の洗濯室(ランドリールーム)の前で止まって手の中にあるタオルを見る。

 

「……剣の必要性か。 私にまで気遣いをしてくれるとは……」

 

 毒島はタオルを洗濯機にいれる直前で手を止めた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 「………………………………いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや。 流石に『手放すのが惜しい』は駄目だろう。 うん、ダメだ。 どう考えてもダメだな。 うん…………………………………………いやしかしこのまま洗うのは………………………………………………………………真空パックすれば────」

 

 

 

 

 ……

 …

 

 コホン。

 

 とまあ、少々脱線したが要するにスヴェンの周りの者たちが何らかの行動を取っていたと言いたかった。

 

 そんな中、逆に(徐々にだが)()()()()()()()()()()をしていた者がいた。

 

「……」

 

 ライカは歩きながら、背中を向けていたカレンへと視線を戻す。

 

「……」

 

 そして()()()違和感を持っていた。

 

 ライカは自分がアッシュフォード学園に来てからそう時間が経っていない。

 

 だが時間が経っていないからこそ先入観を持たず、他人が無意識のうちに『見聞き慣れている者に対する思い込み(フィルター)』の所為で気が付かない小さな違いなどに敏感で、彼女(カレン)の様子が『よそよそしい』と感じるまでそう時間はかからなかった。

 

 チラッ。

 

「??? こっちを見てどうした、カレン?」

 

「いや……このまま帰るんだけど、私。」

 

「そうか。」

 

 スタ、スタ、スタ、スタ。

 

「だから何で私の後を追うの?」

 

「(兄さんが)迎えに来るまで面倒を見てくれると聞いた。」

 

「……ねぇ、聞いていいかな?」

 

「なんだ?」

 

「ライカはさぁ……()()()()()()()()()()()?」

 

「……」

 

 真剣な表情をしたカレンの前に、ライカは目を逸らしてから口を開けた。

 

「……昔の事を、思い出そうとすると……ガンガンとした、酷い痛みが頭を襲う。 だから、思い出そうとしない。 しなくても生きていける。」

 

「そ、っか……」

 

 それを最後にカレンは踵を返して歩き、角を曲がると留美が車のそばで待っていた。

 

「カレ~ン、迎えに来────ッ?!」

 

 のほほんとした留美がカレンに気が付き、声をかける途中でライカを見ては息を呑んで黙り込みながら目を見開いた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「……か、カレン……その子……もしかして────」

「────『ライカ』だよ、お母さん。」

 

「え? で、でもどう見ても────」

「────だから『ライカ』だよ。」

 

「……………………………………そ、そう。」

 

「カレンの母か? 初めまして、ライカだ。」

 

「あ。 え、ええ()()()()()。」

 

 留美はぎこちなさを隠す笑顔をしながらも自己紹介をした。

 

「(この二人……もしや()()()()()()()()のか?)」

*1
『スケバン』って……

*2
作者:お前が言うな

*3
322話より




長らく放逐された反動が…… (汗

なお毒島のきっかけは中華連邦でスヴェンが特攻をアヴァロンにしかけた時です。


余談ボーナス:
今作のマーヤは『朝に弱い』と言う弱点付き……かも。

【挿絵表示】
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