小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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遅くなりましたが、次話です。


第327話 過去に残した案件 (挿絵)

 場所はアッシュフォード学園で、時間は午後。

 

「……」

 

 今は使われていない(アンド)人が来ない部屋の中で、(スヴェン)とナナリーがは無言で立っていた。

 

「……」

 

 額に大量の汗を浮かべた彼女は真剣な表情で自分の手を俺の手の上に添えて、身長差で彼女の目は俺の胸だけをジッと見ていた。

 

「す、スヴェンさん……わ、私ってどうやって歩いていたんでしょうか?」

 

「……」

 

 ようやく声を出したと思ったら切羽詰まった表所とは裏腹に割と可愛い質問がきた。

 

「い、今どれだけ思い出そうとしても……離宮を何も考えずに駆け回っていた記憶しかなくて────」

「────無理に歩こうとしなくていい。 まずは立つことだけに集中しろ────」

「────は、はいぃぃぃぃ……」

 

「…………………………いや、今日はここまでにしよう。」

 

「え。」

 

 俺が遮るように言うと、ナナリーはプルプルと足を震わせながら弱々しく返事し数秒後、足がガクガクし始めた彼女を諫めるように俺は彼女の肩に手を置いた。

「あ────」

「────これ以上は逆効果だ。」

 

 気が抜けたかのようにポスンとナナリーはすぐ後ろにあった車椅子に座ると息継ぎのような深呼吸を繰り返し、その間に俺は携帯を確認していく。

 

「……私が歩けるようになるまで、時間がかかりそうですかスヴェンさん?」

 

 携帯を見て気が重くなりかけたところで俺にナナリーの問いが来て、俺は頭を切り替えた。

 

「そうだな……立つのがやっとだった先週と比べてかなり上達している。 しかしそこまで歩きたいのなら────」

「────いいえ。」

 

『松葉杖を使えば?』と提案しそうだった俺を、今度はナナリーが遮った。

 

「私は、自分の足で立ちたいです────」

 「────ナナリーッッッッッッ!!!!!」

 

 さっきからずっと部屋の端で人間信号みたいに無言で赤くなったり青くなったりモールス信号を送るような貧乏ゆすりをしていたルルーシュが感激の声を上げてその場の静寂を一気に破った。

 

「もう、ルルったら────!」

「────これが感動しない訳があるか?! それに今日は我慢できただろ?!」

 

「いやぁ……それって『普通』なんじゃないかな?」

 

 あのシャーリーが苦笑いを浮かべてルルーシュを窘めた。

 

「で、でも兄さんにしては確かに我慢できた方だと思うよ! ずっと座っていたし!」

 

 そしてあのロロも苦笑いを浮かべてシャーリーと対抗しつつルルーシュの弁解……いや、微妙に弁解になっていないか。

 

 とまぁ、少々騒がしくなったがナナリーのリハビリを続けるにあたってシスコン(セコム)ことルルーシュから提示された絶対条件は彼がその場にいること。

 

 そのおかげで芋づる式にシャーリーとロロもセットでここにいる。

 

 ああ、原作では不運なすれ違いで殺したり殺されたりしていた奴らがこうやって過ごしている姿が────

 

「────でもこんなことをしていて良いの、スヴェン? 例の舞踏会の発案者なんでしょ?」

 

「はっはっは。」

 

 和み始めていた心をシャーリーの言葉が一刀両断し、俺は返事の代わりに乾いた笑いを漏らすしかなかった。

 

『例の舞踏会』とは先日ミレイに提案したバニー&バトラーイベントの事で、シャーリーが心配するように俺はほぼ毎日の(表向きの)『自由』な時間が無いようなスケジュールを組み立てている。

 

 というのも、俺があの日帰った後でミレイが()()()()だけ手を加えた所為だ。

 

 別に舞踏会なんて開催される機会が少ないから豪華な装飾で飾られた会場でブリタニアと日本の料理を同時に出すことには賛成だが……

 

『学園の催し物』って言っても階級(貴族)意識が薄まっていないこの世界だと『舞踏会』ってだけで学生とその生家は多少の借金をしてでも舞踏会で新たな繋がりや()()に賭けるしな。

 

 今の学園は誰かを誘うにしろ誘われるにしろ、生徒だけでなく学園にいるすべての人間が浮足立っている。

 

 ()()()()()()()()だが。

 

 つまりアレだ。

 

 なぜ『出席できる者』を『学園に在籍している者たち』にしたミレイ。

 

 一応舞踏会への参加は自由で『男女ペアでの参加が条件』だが、『他学年など学園の者からパートナーを選ぶことも可』なんてしたらカオス待った間違いなしでしょうが。

 

 言っておくが、『う~ん、面白そうだから♪(パチン☆』で済む範囲を超えているからな?

 

 それで何も言えなくなった俺もチョロイというか、なんというか……

 

 だって考えても見てくれ。

 

 他の教師たちも面白がっていたし周りがウキウキしている中で『いや、誰でも良いは駄目だろう』なんて言ったら俺が浮くというか悪者になるじゃん。

 

 ま、代わりと言ってはなんだが『そういう大規模なイベントには、学園側だけでなく学生たちにも準備期間が必要だ』ということで、なんとか開催時期をもう少し後ろにずらせたが。

 

「そう言えば俺、スヴェンに手紙を渡してくれと頼まれた手紙を預かっているんだが────」

「────果たして『束』を『手紙』と称するのはどうかと思うがな、ルルーシュ。」

 

「フッ。」

 

 こ、こいつ……他人事だと思いやがって!

 

「お前の場合、『束』でも問題ないだろう?」

 

「まぁな。」

 

「う~ん……この淡々としたのがスヴェンの素なの、ルル?」

 

「ああ。」

 

「へぇ~……なんだかカッコいいね!!」

 

 たまに素直でいいこと言うじゃないか、シャーリー。

 いや、素直なのは前からだがタイミングがいい。

 

「こいつの場合、『ウェアウルフ(人狼)』の方がしっくりくるだろうがな。」

 

 ルルーシュ?!

 お前はなんてことを言うんだよ?!

 

 「おい────」

「────ふぇ?! ……お、『狼』って……」

 

 ああ……シャーリーの思考が手に取るようにわかる。

 多分、『狼ってびっくりしたけれどそう言われてみれば狼っぽいかな?』だ。

 

 「じゃあ『攻め担当』ということかな?」

 

 ゑ。

 

「攻め? ……まぁそうかもしれないな」

 

 おい?!

 

「え?! じゃ、じゃあルルは?!」

「うん? 条件次第だな────」

「────条件次第────?!」

「────兄さん?!」

 

 ルルーシュ、お前なぁ……

 ちょっとはソッチ系のことだと察しろよ。

 

「・ ・ ・ ・ ・ ・ ・」

 

 見ろ! あのナナリーでも耳まで真っ赤にして俯いて────ん?

 

 何だか嫌な予感がする。

 

 「お兄様と、スヴェンさん……」

 

 忘れていた。

 ナナリーって大人しそうに見えて、『ソッチ系』は兄より敏感だったな。

 

 一期でもC.C.がクラブハウスで目の見えないナナリーと一緒に折り紙を折りながら『(ルルーシュとは)将来を誓い合った仲だ~』って弄ったときも『お兄様(ルルーシュ)って意外と早いのですね』とも言っていたし。

 

 そもそもその『意外』ってどういう……

 

 いや、これ以上考えるのはやめよう。

 

「あ! ルルってさ、できるよね?」

 

「ん? まぁ、たしなむ程度には。」

 

 お前がそれを言うのか?

 

 ぶっちぎりでダンスとかの成績がいい奴が謙遜するなよ。

 遠回し的な嫌味にしか聞こえないぞ。

 

 ……いや、ルルーシュの事だから100%ナルシズムから来ているんだろうな。

 

「じゃあさ、今度時間ある? 例のイベントってダンスする時間があるらしいから────」

「────そうは言っても、前回ちゃんと踊れたじゃないか────」

「────ルルのフォローがあって成立するダンスはちょっと……」

 

 懐かしいな~。

 キューピッドの日って色々あったけれど、楽しかったな~。

 

「前にもダンスする機会があったのですか、シャーリーさん?」

 

「うん。 『キューピッドの日』って言ってね────?」

「────『キューピッドの日』────?」

「────色々あって、学園公認の恋人同士になったその夜にルルとダンスをしたの────!」

「────『がくえんこうにんのこいびとどうし』────」

「────でも私ってあまりダンスとかしないから、足を踏み外しそうになったり、転びそうになったりして大変だったの! あ! そう言えばスヴェンもダンス上手だったよね────むぎゅ。」

 

 は~い、お口にチャックしましょうねシャーリーちゃ~ん?♪

 

「スヴェンさんって、ダンスもできるのですね?」

 

「……たしなむ程度には。」

 

「ブハァ! あれで『たしなむ程度』だったら、他の人が可哀想だよ?!」

 

「教材になっているしな。」

 

 なん……だと?

 

 ルルーシュ、お前は知っていたのか。

 

「ああ、道理で……」

 

 そしてロロ、お前もか。

 

「どういうことだ?」

 

「ミレイ先生が『キューピッドの日に撮ったビデオを編集したものをダンスレッスンの教材として売り込んだら大ヒットした~』って言っていたよ?」

 

 知らなかったのは俺だけか?!

 

「まぁ……都合と時間が合ったらダンスのおさらいぐらいはできるかもな。」

「ありがとう、ルル!」

 

 なんだろう……いい場面を見ている筈なのに嫌な予感がする。

 

「……いいですよね、スヴェンさん?」

 

 クッ!

 笑顔のはずなのに何故か『ゴゴゴの擬音』が彼女の背後から出てくる幻覚が!

 

 ナナリーを直視できない!

 

 というよりもしたくない!

 

 「ま、まぁ……ナナリーが立てるようになったらリハビリの一環としてダンスもいいかもしれないな────」

「────それは楽しみです! 頑張ります!」

 

 あれ?

 俺もしかして墓穴を掘った?

 

 ここに居すぎるとヤバい!

 

「で、では次の用事が立て込んでいるので私はこれで!」

 

「「逃げた。」」

「逃げたね。」

「むぅ……」

 

 これは逃げているんじゃない! ほとぼりが冷めるまでの一時的な戦略撤退だからな?!

 

 っと、忘れる前に連絡を入れておこう。

 

 そそくさとナナリーたちを後にした俺は携帯を出して、とある番号にかける。

 

『……もしもし。』

 

「俺だ────」

『────新聞は間に合っている。』

 

 こいつ……ぜったい俺だと知って茶化しやがったな。

 

「ジヴォン家の魔法使いでエリア24のペンドルトン学園の理事────」

『────待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て。 なぜ君がそれを知っている?!』

 

「……フッ。 知りたいか?」

 

 ハハハハハ。

 お前のナルシストっぽいウィザードの物真似だよ、オイアグロ君。

 

 え? 『今のはルルーシュw』?

 

 ほっとけ。

 

『い、いや……やめておこう。 それで私に何用かね? 君からの連絡など、予想していなかったので少々気が動転していた。』

 

 それで高圧的な態度で返してくるのはどうかと思うよ?

 

「そうか。 では単刀直入に聞くが、今暇か?」

 

『何かあったのか?』

 

()()()()()の地を見たくてな。」

 

『ッ……それは……私が案内できるところではないな────』

「────貴方はあの事件後、一度も()()()には行っていないだろう?」

 

『……行けるはずもない。 私には、その資格がない。 それに、オズが私を────』

「────貴方の数々の機転があったからこそ、二人のオズをはじめ、他の者たちも生きている。 それに、いつかは貴方自身も訪れるべきだ。」

 

『……場所は教える。 だが、私がその場に行くことはない。』

 

「そうか。」

 

 やっぱり無理か。

 

 でも場所を教えるだけマシかな。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 後日、ブリタニアと日本のゴタゴタでどうしても人手不足のクラスの担当を受け持たなければいけない状況に陥った瞬間、俺は詰んでいたのかもしれない。

 

「スヴェン先生~、質問して良いですか~?」

「「「「……」」」」

 

『ちょっといい?』って聞いてくるにはちょっと変な状況だ。

 

 場所は校舎裏でちょっと後ろ暗いことを行うには古典的と言うか定番なところで、壁に背を付けた俺の前には複数の真剣な表情を浮かべた、主に中等部中心の女生徒たち。

 

 完全に包囲網を────じゃなくて、囲まれていた。

 

『ちょっといい?』って聞いてくるにはちょっと変な状況だ。(二回目)

 

「……それで、ちょっと良いですか?」

 

 普通ならこんな身長差のある包囲網、ジャンプした後に壁を蹴って頭を飛び越えてもいいのだが今の俺は『優男』。

 

 そんなことをできるわけがないので────いや、落ち着け俺。

 

 今咲世子さんレベルの考えになっているぞ。

 

 今は『優男』なんだ、にこやかスマイルを維持しながら今取れる唯一の行動に出ろ。

 

「はい、何でしょうか?」

 

「「「「助けてください!」」」」

 

 ん?

『たすけてください』?

 ……『タスケテクダサイ』?

 

 ちょっと予想していなかった言葉に、俺は思わず固まったまま瞬きをしてから『優男』の仮面を維持した。

 

「……『助けてください』とは?」

 

「実はその……」

「舞踏会にはダンスとかマナーが必要って知って……」

「私たち、商家とかの出で……」

 

 あー……

 

 そう言えば、元々エリア11にはブリタニア本国とは違って監視が緩いので、大儲けをしたり、()()あくどいことをしてエリア11を食い物にしようとした貴族や裕福な家が来ていて、そのほとんどの子どもたちはアッシュフォード学園に入学していたんだったな。

 

 だから一応マナーやダンスの基礎というか、軽い『おさらい』レベルの授業だけで十分だった。

 

 だけどブラックリベリオン後……いや、エリア11から日本に戻ってからは、特に開業やライバルの少ない新たな土地での事業の功績による出世を狙って、下級貴族やそれなりに裕福な庶民たちが通うようになった。

 

 つまり、小さい頃から慣習としてダンスやマナー・レッスンを受けている子どもの方が少ない。

 

「勉強に自信はあるけれど、運動は……」

「逆に運動神経が良くても、ダンスなんてフォークダンスぐらいしか……」

「そうは言うけどさ、運動も勉強もそこまで出来ない私はどうすればいいの?!」

「「……」」

「何か言ってよ?!」

 

「それで皆さん、(スヴェン)に特別授業を頼みに来たのですか?」

 

「だって、他の先生に聞いてもはぐらかされたり、授業外の学習のスケジュールが組み込めないって言うし……」

 

 チ、逃げたなそいつら。

 

「それに一番ひどいのは『パートナーと練習しろ』って返してくるやつ。」

 

 う~ん……頭でっかちで選民意識が強いタイプの先生が言いそうだな。

 

 あとで『お話』を付けようかな?

 

「ねぇ?」

「そもそもパートナーがいるいない以前に、ダンスができなきゃパートナーに誘えないじゃん!」

「それに誰でも誘えるわけだから、いい思い出にしたいじゃん!」

「だよねー!」

 

 ええ子たちやないか。

 

 一瞬でも君たちが邪な気持ちで俺を追い込んだことを疑ってすまない……

 

「それにそのぉ……」

 

 モジモジ。

 

「スヴェン先生って、最近まで同じ学生でしたし……」

「あと、ダンスが上手いって評判だし……」

「それに一番助けてくれそうだし……」

 「ちょっとぐらいは夢を見てもいいかな~って……」

 

 う~ん……ここで学生時代の時に色々と部活の手伝いとかしていたのがこういう形で返ってくるとはちょっと予想外だったな。

 

「そうですか。 では、心当たりをいくつか当たってみますね?」

 

「「「やったー!」」」

「「ありがとう先生!」」

 

「君は────」

「「「────うわ?!」」」

 

 女生徒たちの背後から気配を消していたオイアグロが現れ、俺を含めて全員がびっくりした。

 ポーカーフェイスを鍛えていなければ即死だった!

 

「誰?!」

「イケメン……」

「いや、イケオジなんじゃ……」

「オジ?」

 

「ああ、私はオイアグロ・ジヴォン。 元エリア24……いや、スペインにあるペンドルトン学園の者だ。」

 

 ニコッ♪

 

「「「「きゃあああ!♡」」」」

 

 うわぁ。

 うさん臭い────ゴホンゴホン。

 愛想のよい笑いを浮かべたオイアグロに対して女生徒の6割が黄色い声を出す反面、俺は内心引いていた。

 

「オイアグロさんは、なんでアッシュフォード学園に?」

 

「ああ。 ペンドルトン学園もここと似た状況でね、彼に相談したいことがあると呼ばれてきたんだ。」

 

 うわぁ……

 

 息をするかのように次々とそれっぽい嘘をつくオイアグロに、またも内心で引いた。

 

「さて、時間もあまりないので我々はこれで失礼してもいいだろうか?」

 

「「「「は~い!」」」」

 

 生徒たちがきゃぴきゃぴしながらその場を去るのをオイアグロは温かい目で見送り、その姿はまるで面倒見のいい保護者のようだった。

 

 やっぱりオイアグロって、オルフェウスみたいに不器用だけど、不器用なりに原作では頑張ったんだなと改めて思い知らされる。

 

 ジヴォン家の男性側特有の遺伝子的なやつかな?

 

「……うん、いい子たちだ。」

 

 うんうん。

 

 「それにしてもいい脚だな……」

 

 うん?

 

 「それにしても美脚線を強調するためにタイトスカートとは……だがやはりパニエも捨てがたいし……」

 

 んんんんんんんんんんん?

 

 ちょっとオイアグロさん?

 誤解を招くような心の声を口に出していますよー?

 

「おっと、すまないね。 これが君が欲しがっていた場所の情報だ。」

 

「あ、ああ。」

 

「……なんだね?」

 

 うげ。

 もしかして勘づいたのか?

 

「いや、特に。 『あっさりと場所を明かすんだな』とだけ。」

 

「二人のオズがいがみ合うことなく、そしてジヴォン家の闇を払拭した君には恩がある。この場所を知りたいのならば、渡すぐらいの恩は感じている。」

 

 あらやだ、イケメンのおじさんだわ♪

 

 (〇リコン)疑惑は別として。

 

「……………………言っておくが、違うからな?」

 

 俺、別に何も言っていないんだが?

 

「もう一度言うぞ? 違うからな?」

 

 必死すぎて逆に『疑惑』が『確信』に変わりつつあるんだが

 

「そもそもペンドルトン学園の制服はオイアグロのデザインが元になったのだろう?」

 

「ング。」

 

 確か設定資料かコミックの豆知識的な欄で、よく学園をほったらかしにするオイアグロに対して女性の褐色副理事長が愚痴っていたような気がする。

 

 まぁその反面で、『金さえ出してもらえればどうでもいいけど~』って割り切っていたけど。

 

「私は! 若者が成長する過程が好きなだけだ!」

 

「だとすればペンドルトン学園が女子校の理由は無いと思うが?」

 

「……当時の24(ツーフォー)────『スペイン』は、男女比率があまりにも女性に偏っていただけだ。」

 

「それだけか?」

 

「なら君に問うぞ! 感性が普通ならば美しいものは嫌いなわけがないだろう?!」

 

「……そうだな。 確かにどちらかと言えば好きだな。」

 

「では美脚は?!」

 

「太ももだな。」

 

「フ、君も同士だな。」

 

 どうしちゃうわボケェ!

 

「なるほど。 やはりオイアグロ(30)はロr────」

 「────違ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁう!!! そもそも30をわざわざ付け足す理由があるかね?!」

 

 キィィィィィィン……

 

「必死になるなオイアグロ(30)。 (歳の割に)鼓膜が破れるかと思ったぞ。」

 

「誰のせいだと思っているのだ、全く! キャシーに弄られるだけで十分だ……

 

「『キャシー』? ……副理事長の事か?」

 

「………………………………君の情報網は一体どうなっているんだね?!」

 

 原作知識です。

 

 

 

 


 

 

 

「……」

 

 スヴェンと女生徒たち、そしてオイアグロのやり取りなどを見ていた者がこの時一人いたことを誰も知らない。

 

 いつもならスヴェンの周りを交代で見張って警護をする者たちが丁度何らかの理由で彼から目を離した、僅かな時間の間だった。

 

「……」

 

 その『一人』はフラフラとした足取りのままその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 同日の夜、()()()()定期会議が開かれていた。

 

「それでは、始めようか。」

 

『会議』と称したが別に薄暗い部屋の中で重苦しい空気でもなく、集まった者たちもスーツなどの正装ではなく寝間着姿の女性たちが主な参加者なので傍からすればただのパジャマパーティ……なのだが、毒島にレイラやアンジュにマリーベルやオルドリンなどの国の重鎮や賓客レベルの者たちだけで結成されているので果たして『パジャマパーティ』と呼べるかは微妙かも知れないが、発足した理由が『いがみ合わない為の会話の場』だけに『パジャマパーティ』と呼ぶしかないだろう。

 

「さて、私からはこれです。」

 

 マーヤは一枚の写真を取り出す。

 

「神────彼が初めて表情を崩した写真のコピーです。」

 

「「「「ブフ?!」」」」

 

「面白かっただろ?」

 

 何人かはスヴェンの顔芸に吹き出し、残りの者たちはニヤニヤしながら得意げに話すC.C.を見た。

 

「C.C.さんはいったい何をしたの?」

 

「ん? まぁ……アレだ。 『男にとっての悪夢』だ。」

 

「悪夢?」

 

「な、なるほど……」

 

「コホン! それで先日、オルフェウスさんがシュバール(スバル)さんに突っかかっていた件に関してですけれど……あれってマリーベルさんですよね?」

 

「あら、私は何もしていないわよ? そうね……せいぜい指輪が指に合うかどうか確認したところに()()()()ユーリア(ミス・エックス)が尋ねに来ただけよ?」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

「そこから彼女が行動を起こして、周りの者たちが影響されてもすべては彼女によるものよ?」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

「今の言い方、まるで前宰相のシュナイゼルみたいですねマリーベルさん?」

 

「『他人を思い通りに動かすには周りの状況を整えて自由を奪った上で自発的に取れる選択肢を絞り込む』……それが、彼のやり方なのは否定しませんよレイラさん?」

 

「それはもはや、『洗脳』の一種なのでは?」

 

「ウフフフフ♪ 上手くいって成功すると何とも言えない気持ちになりますよ? レイラさんもどうです?」

 

 「「「「「「(怖ッ。)」」」」」」

 

「わ、私は遠慮します……」

 

「あら、それは残念。 レイラさんなら、私以上にこの戦法を活かせられるのに。」

 

「……それで相手を無理やり追い込んで事を進めるのは、あまり納得できません。」

 

「いずれは訪れる状況を、前倒しにしたのに?」

 

「前倒しにしたからこそ、本人や周りの者たちにかかる負担(ストレス)や生じる軋轢などを無視してまでしてよいと言うのですか?」

 

「(またか。)」

 

 毒島はレイラとマリーベルのやり取りでピリピリし出した空気に内心、ため息を出した。

 

 と言うのもこの二人は性格もあってかよく対照的な意見などで対立しやすく、しかも質が悪いことにレイラが真面目な分だけマリーベルの悪戯心をくすぐるので二人を止める第三者が居なければ険悪で近寄りがたい空間が簡単に出来上がってしまう。

 

「(さて、どうしたものか。) まぁまぁ、二人の言いたいことは分かる。 極端な話だが、事が強引に進められてもアフターケアさえちゃんと責任を持ってすれば幾分かマシになるだろうレイラ?」

 

「……そう、ですよね。 マリーベルさんも、元総督だっただけに助かっています。」

 

「それにマリーベルもだ。 まぁ、君の事だから()()()()説明を省いたなんてことは無いだろう。 何せ()()()()()()()()()()()()()()がやることだ。」

 

「……」

 

「無理やり状況を動かすのは時と場合と相手、そしてその後をも考えた上だということをちゃんと言わなければ理解できない者たちもいることを覚えて話をすれば誤解が起きにくいし、無益な対立も避けられる。」

 

サエコ(冴子)さんはまるで『姉』ですね?」

 

「(グッ……堪えろ毒島冴子! はぐらかされるな!) なら姉の言うことはちゃんと聞いてくれ。 君も優秀なだけに、変な癖でそれを台無しにするのは見て気持ち良くはない。」

 

「……………………一応、頭の片隅に入れておくわ。」

 

「(やっぱりなんだかんだで冴子は面倒見がいいわね。)」

 

 余談だがこの時、マーヤの頭上に真面目な子供(レイラ)天邪鬼な子供(マリーベル)の衝突を窘める保育士姿の毒島が浮かんでいたと追記する。

 

「(そう言うところに、神様(スヴェン)は惹かれて頼りにしているのかしら?)」

 

「ね、ねぇ皆?」

 

 ここでずっと黙り込んでいたオルドリンがようやく口を開ける。

 

「急にどうしたのオズ?」

 

「ちょっと聞きたいことがあるというか知っている人がいると良いのだけれど……スヴェンって……少女嗜好なのかしら?」

 

「「「「「…………………………………………」」」」」

 

 オルドリンの言葉にその場にいたほぼ全員が石像のように固まる。

 

「えっと……オズ? 急にどうしたのかしら?」

 

「だ、だってだってだってだって! 彼って今でも以前と変わりない過ごし方をしているじゃない?!」

 

「むしろ役職が増えたことで単純に忙しくなるのに変わらないことは良い事じゃないかしら?」

 

「でもでもでも! よく年下の子の周りにいるし、学園でもよく中等部の担任とか授業も受け持っているし!」

 

「「「「「……………………………………………………………………………………」」」」」

 

「た、単純に仕事が楽だからじゃないかしら?」

 

「でもでもでもでもでも! 明らかに態度だって変えているじゃない! 特にナナリー皇女殿下やライラ皇女殿下やアールストレイム卿とかとかとか!」

 

「「「「「………………………………………………………………………………………………………………………………」」」」」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「それにレオン(18)とマリーカ(14)とかアキト・ヒュウガ(18)とアヤノちゃん(16)とかお兄ちゃん(オルフェウス)とかの先例もあるし、今日だってオイアグロ叔父様と彼って()()()()()()()()って言っていたのを聞いたし!」

 

「「「「「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」」」」」

 

「そう言えばアイツ、私の頼みもことごとくいの一番でよく完遂していたな。」

 

 全員がアタフタするオルドリンから、この集まりの中で一番幼い16歳前後の見た目をしたC.C.を無言で見て不安を抱き始めた。

 

『まさかな』、『いやそんな筈は』、『でもひょっとして』、などと考えながら思い当たるそれらしい記憶が次々と脳内に浮かび、どんどんと不安になっていった。

 

「果たしてそうかしら?」

 

 しかしそんな時、マーヤが口を開けた。

 

「ど、どう言うことだマーヤ?」

 

「だって彼、一瞬だけだけれどよく私やレイラの足を見ているもの。」

 

「「「「「え。」」」」」

 

「特にチラ見する時は私服時ね。 あ、レイラの場合は軍服時もあるわね。」

 

「「「「「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………脚フェチ?」」」」」

 

 「チッ。 早く収拾し過ぎだ。」

 

 マーヤのこの一言でこの場にいた者たちは自己納得し、C.C.は舌打ちをしながらニッコリとした笑みを向けてくるマーヤを睨んだ。

 

 なおこれで一件済んだと思った者もいれば、逆に好奇心謎がさらに深まった者たちが居たとも記入する。

 

 この時の何気ない会話が近いうちに一つの波乱を呼ぶことになるとは、果たしてこの時の誰が予期していただろうかは、文字通り神のみぞ知る。

 

 

 

 

 

「と、ところで……スバルが使った使用済みタオルの真空パックが────」

 「「「────買います!/買うわ!/あるんですか?!」」」




余談:

オルドリンの持っているぬいぐるみはスヴェン製で、『オズの魔法使い』テーマ繋がりから『犬』になりました。

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