色々あって、投稿が遅れてしまい申し訳ありません。
活動報告へのコメント、誠にありがとうございます。 m(_ _)m
「(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ! 寝坊した! 何で私ってば二度寝なんかしちゃったの?!)」
アンジュは焦りながら窓から外に出ては中庭を走り、人気のない学園内の廊下を濡れた靴のままスライドして自分のクラスに駆け込んだ。
ガヤガヤガヤガヤ────ピタ。
「???」
教壇にスヴェンが立っていないことを確認して安堵した直後、アンジュは教室内の視線が全て自分に向けられていることにたじろいだ。
「な、なにこれ?」
「いや何、スヴェンがまだ来ていないのが珍しくてな。」
「え? あいつ、まだ来ていないのサエコ────?」
ベシ!
「────ぐぇ。」
「こぉら! 一応先生なんだから『あいつ』は無しよアンジュリーゼさん!」
背後からアンジュに脳天チョップ(軽)を食らわせたミレイが冗談半ばに上記の注意をする。
「み、ミレイ?! 先生?!」
「はい♪ 皆大好きなミレイ・アッシュフォードでぇ~す!♪ スヴェンは休暇を取っているから私が担当することに────」
「「「「「────えええええええええええ。」」」」」
「え。 ちょっと待って皆。 何その温度差。」
「「「「「……」」」」」
「だからなんで黙り込むの?!」
「「「「「(ちゃんとしているときはそれでいいけれど急に『自習!』とか『今日は出かけるわよ!』とか急に言い出すから『不安』なんて言えないじゃん。)」」」」」
「ちょっとちょっとちょっと。 サエコは知っていた?」
「ああ。 といっても今朝レイラが言ってきたから知ったばかりだがな。」
「……まさかだけどレイラも彼と一緒?」
「フフフフフフフフ♪」
「うわ、出た! サエコの『フフフのフ』────!」
「────ええっと? そろそろ授業を始めちゃっていいかしら?」
「(“レイラが『我儘』をいうのが珍しかったから”、なんて言うのも一興だがこれ以上だとアンジュが騒ぎ出すかもしれないから止めておくか。)」
キィィィン……ビュウ!
空港内から出ると空へ、あるいは空から降り立つ旅客機のエンジン音が響くと同時に冷たい風が俺を襲う。
「さぶ。」
日本で雪が降っていたので予想内だったが、寒いものは寒いので俺はジャケットを着こみながら襟を上げる。
ヨーロッパの南部に位置しているのならなおさら寒いと思う。
「ヨーロッパの南部ですし、冬ですからね。」
隣のもこもこジャケットと帽子を着たレイラがまるで俺の考えを読んだかのように言葉を出す。
「そうだな……ヴァイスヴォルフ城を思い出す。」
「あれから一年経とうとしているのですね────」
「────よぉ、そこの二人! デートかい?」
おっと。
物珍しく
ここでも『優男』でいいか。
「で、で、で、デートだなんて────!」
「────ええ、まぁ────」
「────シュバールさん?!」
「タクシーはどうだい? ソルノクのどこに向かうんだい?」
「実はセゲドに行こうと思っていまして────」
「────セゲド?! あんなド田舎にかい?! ……いや、逆に
「はっはっは。 ここに来た理由は『観光』というよりは、『視察』が目的でして。」
「ふ~ん? どっかの企業の者なのかい?」
「あ、えっと────」
「────ええ、一応。」
タクシードライバーが俺たちの服装とバッグを見て恐らく真面目に返事をレイラがする前に俺が曖昧な返事をする。
「なるほどなぁ……いいねぇ、綺麗な秘書を持つのって。」
「ええ、彼女には
「い、『色々』……」
モジモジ。
「やはり、自分たちみたいなのが多いのですか?」
「そりゃな! ダモクレス事件があってからは特に。 最近は、アンタみたいな若いヤツらが支店とか会社の立ち上げとかに土地を見に来たりしている奴が多くなった。」
「それで、セゲドまで頼めますか?」
「あー、距離と時間がな……悪いが他を当たってくれ。」
「なら、レンタカー会社などを紹介してもらえますか?」
「しゅ、シュバールさん?」
「うん? ……それを
「レンタカーを取れるところまで乗せている間、
「……アンタ、以前に来たことがあるのかい? ブリタニア人……ユーロ・ブリタニア出身か?」
「どうしてそれを?」
「
やっぱりか。
「……
「んじゃ、乗ってくれ! 古い友人が経営している個人的なレンタカー会社に連れてってやる。」
不安なレイラが俺を見て、俺は頷いて安心させる。
大体こういう国は空港付近のタクシー会社とレンタカーサービスは手を組んでいる場合が多い。
表面上は『ライバル』だが実際は『利害を上手く調整している』に近く、多くの場合はタクシードライバーへの対処で誰がカモかどうかを連絡を取り合っている。
外国から来た奴らはタクシーにぼったくられるかレンタカーでぼったくられるかの違いだけだが……こういった、『外は敵だが身内には敬意を』という風習が根強く残っている国では逆にタクシードライバーであっても邪険にせず、世間話などに付き合ったりすれば悪い扱いはされない。
イタリアやフランス周辺は更にカモにされるだけだが、ハンガリーやポーランドにフィンランドとかでは寧ろ『良き隣人』という認識が広がってサービスが良くなる。
それでも一定の警戒は必要だけどな。
まさか『亡国のアキト』に介入する為E.U.とユーロ・ブリタニアの中を動いていた頃の経験がR2が終わったここでまた活かせられるとは思わなかったが、まぁ蓬莱共和政府も似たような物か。
バッグと共にタクシーに俺たちは乗り込み、俺はドライバーの話に付き合いながら街並みを見ているとそこかしこで『
『フレイヤ』の存在を世界に広めた『ダモクレス事件』から数か月が経ち、エリア11が日本に戻った『先例』を元に各エリアがかつてのように名を取り戻し、政権の安定を優先していた。
『国を取り戻す』という悲願が成就し、そして治安の向上にと取り締まりが以前よりきつくなることを予想したおかげか、表と裏社会双方は全力で復興作業と『その後の世界』に向けて取り組んでいた。
これに伴い、『正規のブリタニア人と同等の生活水準を享受することができる』とされつつも出身地によっては明らかな差別の対象にされていた多くの名誉ブリタニア人は祖国への帰還を求める者たちがブリタニアの本国及び新大陸で後を絶たなかった。
元々『名誉ブリタニア人制度』とは植民地政策によって急速に領地の拡大化に対して労働者の数が追いつかなかったことで、『生活の保障をする見返りに労働を強要する』といった政策の一つである。
体のいい『低賃金労働力の確保』とも言い換えられる。
そんな環境から自由になれるチャンスを伺い、コツコツとなけなしの給料を貯金していた者たちにとって今の世界は待ち望んでいたチャンス。
売り手からすれば銀行口座での売却よりも税を誤魔化せる現金での即売も好ましいからどんなボロい家でも飛ぶように売れる。
あとは買い手のDIY精神の見せどころか、残った金による修繕……ってところか。
「なぁにいちゃん……あまり詮索はしない主義なんだがな?」
「うん?」
「アンタ、
物思いに耽っていた俺にタクシードライバーがそう声をかけながらハンドルから離した片手で、拳銃のような形を作る。
「えっと……何ですか、それは?」
「いやね、嬢ちゃんの目が後を付けてくるやつを探すようなモノだったからな。 ああ、別にビックリしなくてもいい。 そういう奴らも増えたから、縄張りを迂回するために聞いただけだ。 車体に弾痕を増やされるのは嫌だからな。」
う~ん。
俺たちが
その通りなんだけど。
「誰か付いてきているのか?」
「だから
「……少し前に。」
「そうか。」
嘘は言っていないゾ。
それに今の振る舞いは前世で(多分)見たスパイ映画にちょっとアレンジを加えただけだ。
「おぉぉ……」
だからそんなキラキラしたまなざしを向けないでレイラちゃん。
…………
………
……
…
ハンガリーのソルノクからセゲド、そしてセゲドから西へと俺はレンタカーを走らせ、さらには途中で街道から外れてとある山脈を目指した。
キィィィィ。
途中で雑草などが生えた、広大な深い森の中を辛うじて山脈へと続く道へと乗ってようやく山脈を超えたあたりで先へと続く道をふさぐかのような看板の前でブレーキをかけると乾いた金属音が響く。
「車が使えるのはここまでの様ですね。」
「そうだな。」
車を適当な場所に停めた俺はそのまま徒歩で道を歩き、森を出ると目の前には小さな村が広がっていた。
……よし。
ここまで来ればそろそろ頃合いだろう。
「それで、ここまで付いて来て何だ?」
「え? 私は、その……シュバールさんが出ると聞いて、────」
「────いや。 君じゃない。」
「え?」
「もう一度聞くぞ。 ここまで俺たちに付いて来て何だ?」
俺はそう言いながら、空港付近でタクシーに乗った辺りからずっと後を付けていたと思われる者たちへと声をかける。
『……』
返事はない。
だが押し殺した呼吸っぽい音は聞こえる。
多分。
というかレイラ、君が息を止める必要はないぞ?
そう思いながら俺は近くの小石をいくつか拾い上げて、尾行者がいると思う茂みにそれらを思いっきり投げつける。
バラバラバラバラバラ!
バキ!
『あが?!』
ほぼ勘だけどヒットしたみたいだ。
『叔父様?!』
声からして二人。
一人はちょっと歳のいった男性で、もう一人は女性で俺ぐらいの高校生────ってこの場所で該当というか思い当たる組み合わせが
「……二人なら交代で尾行をすればよかったぞ? 一定の距離を保ちながらずっと後を付ければ素人でも気付くぞ、オイアグロにオルドリン・ジヴォン。」
ガサッ。
「いや驚かせてすまないが誤解があるようだね! 我々はただの旅芸人の親子だ!」
いや……頭にたんこぶを乗せたまま高らかにそう言われても純度100%の不審者感丸出しで説得力がゼロなんだが。
「そ、そうよ! ほら、三本の剣もジャグリングしちゃうわ!」
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!
おおスゲェ────じゃなくて。
テロップ風にすれば『茂みの中から仮装パーティ風の衣装を着た女性ウィザードっぽい誰かが現れた!』、とかだな。
何なのこの二人……
オルドリンはともかく、オイアグロのオッサンはピースマークの神出鬼没で有名な『ウィザード』だろ?
もっとマシな行動はとれなかったのか?
いや……今考えたら原作でも電子戦用装備で外部カメラやレーダーから姿を消していたから、逆にアナログな
仮装パーティ風の衣装をしているし。
「…………………………」
「ジャグリングだけでは駄目みたいだな。」
「じゃあ丸太をスライスする?」
俺がどう切り出そうか考えている間に何を言い出すんだこの二人は。
「自称『旅芸人の親子』に、一つ聞いてもいいでしょうか?」
「「何?/何だね?」」
「数年は封鎖されているここまでは一本道。 村には誰もいない様子。 そんなところに『旅芸人』の需要はあるのでしょうか?」
さっきまで頭を抱えたレイラが正論で旅芸人()たちの方便を無慈悲に論破する。
「…………………………………………だから無理があるって言ったじゃない叔父さん────!」
「────いや、私はここに来るつもりはなかったのにオズがそのまま先走ろうと────」
「────私の所為って言いたいの?!」
「……」
「なんで黙り込むの?!」
オイアグロが
そもそも後先考えずに俺の後を付いてきた君を心配したオイアグロが付いてきたのにね。
「オルドリンは、なぜ付いてきた?」
「いや、マリーが『何だか様子を見てきて~』って言ってきて。 で、周りに聞いたら貴方が珍しく休暇を取った上に、ナナリー皇女殿下のリハビリも休んでいて、どこに行くのか気になったマリーが『様子を見てくれる?☆』って。」
またマリーベルか。
……なんだろう。
掌の上で転がされている様な気がする。
「え? マズかった?」
う~ん、『無意識』って怖いネ♪
「はぁ……マリーベルさんに利用された自覚は無いのですね。」
「え?」
だよな。
オイアグロも苦笑せずに何か言ったらどうなんだ?
「シュバールさんと二人っきりにさせない上に、オルドリンさんを接近させて何も知らない彼女を我々が追い返せないことも考えの内でしょうね……」
「てかこの先にある街……村?は何? 地図にも載っていないんだけど?」
仮装パーティ少女()のオルドリンが、仮装パーティおじさん()に聞くと彼は更に気まずそうな表情を引きつらせた。
ま、
「言いにくいのなら、俺が言おうかオイアグロ?」
「いや……私から言わせてくれ……このひっそりとした山中の奥にある村には、人が住んでいた。 『5年前までは』、だが。」
仮面を取ったオイアグロの顔は、憂鬱な表情を浮かべていた。
「叔父さん?」
「この村は、
「『とある部隊』って?」
「……ッ?!」
レイラの顔が変わり、彼女はオイアグロと廃墟を見る。
この感じだと、多分だがもう察したのだろうな。
「……オルドリンに、実際に見てもらうのはどうだろうかオイアグロ?」
「ッ。」
俺の言葉にオイアグロは更に気まずい、複雑な顔をする。
「そもそもこの村を立ち入り禁止にしたり、当時からの状態を維持するために手を回しているのはオイアグロだろう?」
「……本当に君の情報網には感服するよ。」
だから
はぁ……元々この村を探すために来ただけなのになぁ。
………
……
…
ヒュオォォォォ……
ランドスピナーの跡が目立つ道の上を歩き、雑草が風によって揺れ、廃墟の中を進んでボロボロの民家まで来るとオルドリンは壁などに空いていた拳サイズの穴を手で触る。
「これは……KMFのコイルガンによる弾痕? ……付着物と壁の抉り方からして、支給されている通常のタングステン弾じゃなくて高性能なイリジウム弾?」
え。
オルドリンちゃん、君ってば『脳筋』なのにそこは頭が回るの?
アンジュ……いや、カレンタイプだったのか。
「5年前にイリジウム弾を使っていたのならば、ラウンズの近衛……あるいは、それに近い部隊……ブリタニアにやられたの? ……まさか?!」
オルドリンの中であらゆる『線』が繋がったのか、彼女はハッとしてオイアグロを見る。
「とある組織から逃げ延びた少年と少女の二人を、この村は受け入れていた。 若者たちが出稼ぎに町や都市へ出払っているからか、深くは詮索せずにそのまま受け入れてね。 だが幸運なことに少年は農作業や牧畜をし、少女は料理や裁縫、刺繍や伝統工芸の機織りなどで村に貢献した。」
「その、二人って……」
「一人は君の兄、オルフェウス。 もう一人は────」
「────エウリアだ。」
建物の影から、表情の消えたオルフェウスがそう言いながら姿を現す。
「お兄ちゃん?!」
「君も、来ていたのか……」
「気づいていなかったのか?」
「思っていたよりも、気が滅入っていたからだろうね。」
「少なくとも、そっちのお前は気付いていたはずだ。」
全然気づいていませんでした。
パーフェクトに気配を消していました。
「それにしても演技が上手すぎる……それともオレを泳がせていたのか?」
過大評価です。
てかなぜここにオルフェウスが?
「お兄ちゃんは、なぜここに?」
うん、オルドリンはカレンタイプだな。
「……お前が急に動いて、オイアグロも付いて行ったからな。 後を付けただけだ。」
つまり?
芋づる式に俺の後を付いたオルドリンにオイアグロが続き、オルフェウスがとっとこと付いてきた??
過保護なシスコンかよ。
てかそういうキャラが多いな、コードギアス?!
今では調べることはできないけれど、製作側にそういうフェチ持ちがいたのかな?
「まさか彼も計算の内……なのでしょうね。」
うん。 『マリーベル』だからやりかねない。
「ここは、オレとエウリアが住んでいた。」
「ここが、お兄ちゃんの……」
「ああ……この村に流れ着いて、村人の大多数も良い人たちで、底なしのお人好しで、どこから来たのか分からない子供二人を怪しむどころか歓迎して仕事を紹介した。
いや、だから俺の場合は『次いで』なんだって。
些細なすれ違いであんな兄妹と親族と親友での殺し合いなんて、『起こる』と分かっているのなら、『止めたい』と思うだろうが?
口が裂けても『知っていたから止めた』なんて言えないけどな。
優秀な人を仲間に引き入れて表舞台からトンズラしたかったのにどうしてこうなった……
「お兄ちゃん……えっと、私たちがここに来たのは────」
「────ああ、最初から見ていたから知っている。 そいつの後を追ったんだろ?」
ここでまた俺か。
「でも、ここに来て大丈夫なの?」
「……いつかは通る道だ。 道すがら、この村の姿を目に焼き付けるといいさ。」
それを最後に、オルフェウスはただ無言で歩き出した。
オルドリンとオイアグロも、俺と同じく何を言ったらいいのか分からず、ただ静かにオルフェウスの跡を歩いた。
ハンガリー南部の村では朽ち始めた建物や辛うじて立っていた壁には弾痕の跡がそこら中に見え、風化してボロボロになった服を纏った白骨体がお互いを庇うかのように横たわっていた。
オルフェウスを先頭にした四人は、とある跡地の前で足を止めた。
「まさかと思うけど……ここが────?」
「────ああ。 オレの……
オルドリンの声を遮るかのようにオルフェウスが頷きながらいつも付けていた髪紐を手に取り、ただ胸を強く抑えてジッと目を閉じたままその場で立ちすくんだ。。
「「「「……」」」」
スヴェンたちはオルフェウスを見守るかのようにただ静かに待った。
数分、あるいは何秒間だけだったかもしれないが、体感的には数時間にも感じられる時間が過ぎた頃にオルフェウスが目と口を開けた。
「よし……オイアグロ・ジヴォン、アンタも来てくれ。」
「……いいのか?」
「ああ。」
「では。」
オルフェウスが歩き出し、四人は跡地の中へと進むと中央には墓標らしきものがあった。
「お墓? ……『
「オレの、最愛の人だ……」
オルフェウスは平然とした、感情を押し殺した声のまま喋り続ける。
「あの時、プルートーンによる襲撃でこの村は住民全員が虐殺された。 エウリアも……その中でも、4人が彼女の死に加担している。 『サーベラス』、『ティフォン』、『シャロン』……」
そこでオルフェウスは一度言葉を区切り、再び口を開けた。
「サーベラスは一年前、追い詰めて死に至る重傷を負わせてから自慢の目と手足を奪った。
ティフォンは新大陸での公開演習に潜入して襲撃し、オレ自らトドメを刺した。
最後のシャロンは傭兵だったせいで時間はかかったが、平和になったこの世界に嫌気が差したのかオレを釣るために偽情報を流して罠をはめようとしたが……返り討ちにした。」
チャキ。
「つまりお前で最後だ、プルートーン実行部隊隊長のオイアグロ・ジヴォン。」
振り向いたオルフェウスは懐から拳銃を振り向きざまに取り出し、銃口をオイアグロに向けた。
……
…
「(予測通りだと、今頃は例の場所でオズたちがオイアグロと彼たちが相対しているでしょうね……あまりあの状態を長引かせても、いい結果から遠のく可能性が高くなるだけ────)」
「────姫様? どうかなされましたか?」
同時刻、グリンダ騎士団の旗艦グランベリーの中でテーブルを挟んで座っていたシュバルツァー将軍に声をかけられたマリーベルはハッとしてはにっこりとした愛想笑いを続けて視線を彼に戻した。
「(いけない。 今は将軍の事ね。) いえ、少々考え事を。 ……はい、書類を受理しました。 しかし宜しいのですか将軍?」
「何がですかな? 騎士団からの辞退ですかな?」
「それ以外に何かあるとでも? 元々はシュナイゼルお兄様が、私の補佐兼監視役でグリンダ騎士団に籍を置いていたことは理解していましてよ?」
「お気づきになられていましたか。」
「それでも有能ですし、新しい騎士団の発足には欠かせない人材でしたから。 それに、シュナイゼルお兄様の事ですからそれも計算に入れて貴方をこの騎士団に入れたのでしょうし。」
「失礼を承知の上での発言、よろしいですかな?」
「どうぞ。」
「……かつての姫様は、どこか危うい空気を纏っていました。 まるで剣の上を歩く、あるいは底なし穴の上で綱渡りをしていたような感じでした。 そしてジヴォン卿はそれを承知の上で常にあなたの周りに居ました。 しかし中華連邦での一件以来、まるで腫物が落ちたかのような……いえ、曇りかけていた宝石が更に磨かれたのごとく、更なる才覚を示すようになりました。」
「……それと貴方の辞退に関係があるのでしょうか?」
「ワシも最早『古い時代』の人間。 時代が変わりつつあるのに、ワシの様な老人がいては迷惑なだけでしょう。 それに若者たちについてい行ける自信がございません。」
「(建前だけね……本心は語らないのでしょうね。)」
「コホン! ……時に耳にしたのですが、姫様は男性との約束をなされたとか?」
「ウフフフフ♪」
「はぁ……最後に一言良いですかな?」
「どうぞ。」
「姫様のその……
「時には必要ですわよ?」
「ええ。
「……ありがとうございます、シュバルツァー将軍。」
「感謝を言うのはワシですぞ。 姫様との出会いからは予期せぬ日々ばかりで、刺激的な毎日でした。」
「……それは『いい意味で』、でしょうか?」
「ええ。 ワシの軍人としての人生に、ピリオドを打つには最高でした。」
「(腫物が落ちた様なのは私だけではなくてよ、シュバルツァー将軍?)」
『危険は去った』≠『不発弾』=『きっかけさえあれば爆発する静かな脅威』。