小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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第329話 過去に残した案件3 (挿絵)

「ふぅー……」

 

「どうかされたのですか、ゼロ様?」

 

 合衆国日本の東京でいつもは寡黙ながらも事務作業を行うゼロがため息を出し、近くで手伝っていた神楽耶が声をかける。

 

「む。 もしや声に出していたか?」

 

「いえ、ただ人前でため息を出されるのは初めてかと。 何か気にかかることでもあるのでしょうか?」

 

「(神楽耶さ────神楽耶になら言ってもいいだろうか? 他人をからかう癖はあるが、ちゃんと分別できる……聞いてみて、損はないかもしれんな。) 神楽耶は、最近のブリタニアをどう思う?」

 

「『どう』、とは?」

 

「現ブリタニアの皇帝代理を務めているオデュッセウス(あの凡庸)の政策で、各エリアは再び『国』として自立しつつある。」

 

「『日本』という先例がありますからね。」

 

「そして、名誉ブリタニア人の保障も徹底させようとしている。 今までは各領主や総督の自己判断で彼らの扱い方を任せていたからな。」

 

「そのおかげで超合集国への参加国も増えています。 それは大変喜ばしい事なのでは?」

 

「確かに我々としては喜ばしい事なのだが……それに補佐であるギネヴィアと共に彼は公平な税制改革……いや、数々の行動を見れば、彼はより公平な帝国を目指していると思われる。 神楽耶は彼の目指しているモノに対して何か意見はないか?」

 

 ゼロの問いはオデュッセウスの事であると同時に、奇しくも『ルルーシュ』の質問でもあった。

 

 何せ元々『黒の騎士団』の発足理由は父親のシャルルへの復讐と同時に目と足が不自由なナナリーの居場所の確保でもあった。

 

 しかしシャルルは公には討たれ、ナナリーも自立の道を歩み始めた。

 

 そこにやり方は違えど、ある意味かつての自分(ルルーシュ)が実現させようとしていた『平等』を体現するかのようなことをオデュッセウスが改革を行おうとしていた。

 

「……」

 

 神楽耶は考えるようなそぶりを見せながら目を閉じ、再び開けると喋り出す。

 

「身分制度……それも『身分制度の特権』を廃止しようと感じられますね。 いえ、端的に言えば誰もが平等に暮らせる社会の骨組みを作ろうとしているかと。」

 

「(やはり俺と同じ見解に辿り着くか。)」

 

「素敵な夢ですが、現実的ではありませんね。」

 

「神楽耶は何故そう思う?」

 

「それは世の中の不平等を失くし、全ての者が平等な立場となっても必ず『差異(さい)』が生まれますから。 例えばですが経済状況、能力の差、社会への適合、容姿の美醜、()()()()()などといった、敢えて挙げればキリがない例があります。 そして『差異がある』とはつまり『優劣ができる』ということ。」

 

「しかし、『差異』は差異であって『優劣』と違うのでは?」

 

 ゼロの問い返しが意外だったのか神楽耶は僅かに目を見開かせ、視線をゼロから逸らす。

 

「『差異』をただの差異として捉えながら『ハイそうですか』と納得できるほどに、殆どの人はゼロ様のように強くはないですから……」

 

「ふむ……ならば民衆の生活水準だけでなく、学も得られる場を徹底すべきか。」

 

「それが最善かと。」

 

「流石は神楽耶だな。」

 

「いえいえ、私など。」

 

「しかし、問題は先ほど君が口にした『過去の諍い』……いわば『遺恨』だな。」

 

「それは……」

 

「『遺恨』は更なる負のスパイラルの元となる。 手っ取り早い解決は『諦める』……いや、言い方を変えれば『前を向く』ことだが、()()()()()()()にとっては敗北を認めると同じ。 そして君が先ほど言ったように、人間は……弱い。」

 

「……ゼロ様も、そういった過去を?」

 

「どのような人にも過去に一つや二つ、そのような出来事がある。 私の場合は……そうだな、君の想像に任せるとしよう。」

 

「では勝手に想像しますね♪ ゼロ様仮面という特撮を企画してもいいという同意に聞こえなくも……

 

「……」

 

 ゼロは視線を神楽耶から再び窓の外へと向ける。

 

「(それをマリーベルが理解していないわけがないのだが……彼女と俺と決定的な違いは恐らく、そう言ったことへの抵抗感なのだろうな。)」

 

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 

「サーベラスは一年前、追い詰めて死に至る重傷を負わせてから自慢の目と手足を奪った。

 ティフォンは新大陸での公開演習に潜入して襲撃し、オレ自らトドメを刺した。

 最後のシャロンは傭兵だったせいで時間はかかったが、平和になったこの世界に嫌気が差したのかオレを釣るために偽情報を流して罠をはめようとしたが……返り討ちにした。」

 

 チャキ。

 

「つまりお前で最後だ、プルートーン実行部隊隊長のオイアグロ・ジヴォン。」

 

 振り向いたオルフェウスは懐から拳銃を振り向きざまに取り出し、銃口をオイアグロに向けていた。

 

 それもコードギアスで広まっている電力式ではなく、火薬式のグロック(自動拳銃)だった。

 

「ちょ────」

「────動くな。 誰か一人でも動けば、オレはオイアグロを撃つ。」

 

 オルフェウスはレイラの声を遮り、引き金を僅かにだけ引いた。

 

「この銃の性能はシャロンとの傭兵部隊で知り尽くしている。 この距離なら、剣の間合いに入るより先に弾丸が着弾する。」

 

「待ってくださいオルフェウスさん────」

「────部外者は黙ってくれ。 例えオイアグロが罪滅ぼしに動いていたとしても、彼がエウリアを撃ったのは疑いようのない事実だ。 その場には、オレがいたからな。」

 

「(そうか。 原作ではぼかされていたけれど、オイアグロがエウリアを撃ったのか………………………………えええええええええええええええ。 何このバラエティ番組のような泥沼よりドロドロな展開は?)」

 

 そんな中、スヴェンは突然の一触即発な展開に固まりながらのほほんとしたポーカーフェイスのまま現実逃避をしていた。

 

 チラッ。

 

「(ここで俺を見ないでくれレイラ。 俺もどうしたらいいのか分からないから。)」

 

「特にお前だ、スヴェン。 お前は口も開けるな。

 

 「(全く信用されていないどころかMAXでオルフェウスに警戒されているがな。)」

 

「……でも、お兄ちゃん。 今まで叔父さんは────!」

「────それは彼が勝手にしてきたことで、オレには関係ない。 たとえオレやお前がそれで助かってきたとしても、エウリアの件とは別だ。」

 

「それでも、V.V.が────」

「────V.V.も絡んでいたが、実際に手を出したのはオイアグロだ……『5年間(years)。』 言葉にすればたったの二文字だが、俺は復讐の為だけに動いてきた。」 *1

 

 ここで一瞬だけオルフェウスがスヴェンを見る。

 

「(だから何で俺を見るの?!)」

 

「……そうか。 ならば私を撃つといい、オルフェウス・ジヴォン。」

 

「叔父さん?!」

 

「ただし、他の者たちは巻き込まないでくれ。」

 

「もとよりそのつもりだ。」

 

「……一つ、聞いていい?」

 

「なんだ、オルドリン?」

 

「お兄ちゃんは、叔父さんを討ってからはどうするの?」

 

「さぁな。」

 

「さ、『さぁな』って────!」

 「────オレだって知らん! 文字通りに、復讐だけを考えていたからな!」

 

 キッ!

 

「(なんでそこで俺を睨むの?!)」

 

「それにしても何なんだお前は?! 長年、俺たちを悩ませていた問題を横から割り込んで平然と解決しては何もしてこない?!」

 

「(いや、そんなことを言われても()()()()()だし……)」

 

 本来であればR2の冒頭部分でオルドリンとオルフェウスは記憶喪失になっていた。

 

 そして一時期、記憶を失くしたオルフェウスは以前トウキョウ租界で救った彼女を『最愛の人(エウリア)』と無意識ながら重ね、マリーベルと共に日々を歩んで復讐以外での生き方(日常)を見つけ、『テロへの復讐』に文字通り全身全霊を挙げて半ば自暴自棄になっていたマリーベルを目のあたりにしていた。

 

 しかし今作ではスヴェンの情報提供によりプルートーンの追跡を優先し、ピースマークから来ていた『エリア11の調査』も断りただひたすらに復讐に日々を募らせていた。

 

 そしてギアス嚮団の本拠地にたどり着いたはいいが通常のギアスから外れた超現象(『ナイトメア・オブ・ナナリー』のギアス)により身柄は拘束され、その間に諸悪の根源であるV.V.はオイアグロとオルドリンに討たれていた。

 

 更には今までの言動や言葉足らずの所為での誤解が平然としたどこ吹く風のような第三者(スヴェン)によって日の目に晒され、オルドリンとオイアグロはそれぞれ自己消化し、納得した。

 

 そしてオルフェウスは一人、()()()()()()

 

 一見すると『家族のわだかまりを払拭した恩人』……なのだが、オルフェウスからすればまるで()()()()()()()()()()()()()かのようなスヴェンは『土足で他人の事情に深入りして好き放題する不審人物』という見解が強かった。

 

 初めての違和感はピースマークの中でも、自分の相棒(とも呼べる共闘者)のズィーのみが知っている『紅茶好き』。

 

 些細なことではあるが初対面、それもほぼ探りを入れた様子のない者が相手の好きなものを知っているのは『不自然』以外何でもない。

 

 そしてオルフェウスが復讐の旅を続けている間、片手間にスヴェンの活躍をミス・エックス経由で知り、彼の中でスヴェンに対する『違和感』────もとい、『警戒心』は膨らむ一方だった。

 

 無意識な『劣等感』と共に。

 

『誰も信用できない。』 故に他人とのかかわり合いは最小限に。

『誰にも打ち明けることができない。』 故に気の許せる相手はいない。

『一定の距離は近づかせず、周りはビジネス上の付き合いだけ。』 故に人間関係は常にギブアンドテイク。

 

 その様にオルフェウスは生きてきた。

 

 だがスヴェンの事を聞けば聞くほど、オルフェウスはまるで自分のやること成すことがどれだけ『独りよがり(虚しい)』のか思い知らされている様だった。

 

 やがて彼の『違和感』は『焦り』を誘い、無自覚だった『劣等感』と『焦り』が重なってエウリアが殺されてから一日も休みなく活動していたオルフェウスのフラストレーションはピークへと迫り、『きっかけ』さえあれば爆発寸前の状態だったのをオルフェウスが『周りの平和を乱したくない』という思いから彼は無理やり蓋をしていた。

 

 しかしその『きっかけ(火種)』と言わんばかりの行動を、最後の標的であるオイアグロ自らが取った。

 

『なんの準備もなく、ほぼ単独で人気の無い場所への移動』というきっかけを。

 

「……」

 

 しかし銃をオイアグロに向けたままオルフェウスは迷っていた。

 

 それはハンガリー南部の村人たちを巻き込んだ負い目からか、彼は自分の復讐に律儀にも周りを巻き込みたくなかった────否、『巻き込まない』という主義を貫いていた。

 

 その所為かエウリアの仇相手を仕留める時はなるべく人気が無い場所、あるいは周りがピースマークの依頼での()()()()によってブリタニア軍などを巻き込む場合でのみ行ってきた。

 

 ここにはオイアグロ(標的)のほかにオルドリン()がいる。

 レイラ(無関係な人)がいる。

 そしてスヴェン(恩人)がいる。

 

『しかし撃たなければ一方的に殺された村人たちが報われない。』

『これまで費やしてきた5年が無駄になる。』

 そして『何よりも許しがたいのは、死んでいったエウリアに誓った復讐を違えること。』

 

 オルフェウスはこの相対する考えの間で苦しんでいた。

 

 持っていた拳銃は暗殺者(復讐者)としての生き方からブレはしなかったものの、オルフェウスは内心での整理(折り合い)が付かなかったせいで酷く動揺していた。

 

 首から下の全身は冷や汗でびっしょりと濡れ、呼吸も徐々に荒くなってくる。

 

 グロックの引き金もあと数ミリほど引けば、オルフェウスの意思とは関係なく発砲できる状態。

 

 あとは()()()()()()で状況は進むだろう。

 

「(どうにか……どうにかならないのですか?!)」

 

 その中でレイラは死を覚悟したオイアグロ、どうしたらいいのか分からないオルドリン、そしてオルフェウスに警戒されて固まったままのスヴェンを見る。

 

「(いえ……今この場で最も(オルフェウス)の警戒が弱いのは私……)」

 

『スヴェンのお供をしたい』と毒島に我儘を言ったレイラは、責任感から『何かしなければ』という焦りに駆られていた。 

 

「(それも当然のこと。 私はサエコやアンジュやカレンさんと比べて行動的ではない……ならば────!)」

「────ッ?!」

 

 そして意外だった彼女の動きにオルフェウスは驚愕した。

 

 というのも、彼女の動きが『温室育ち(平和ボケ)』で有名なE.U.の人間とはとても思えなかったのだ。

 

 ネタバレをすると、レイラは服の下に例の強化スーツを着込んでいたので技量はともかく、『速度』だけならばオルフェウスやオルドリンレベルに迫る。

 

 オルフェウスの近くまで接近したレイラは合気道で彼の拳銃を持っていた手を払いのける。

 

 だが実戦経験が豊富なオルフェウスはすぐに仕掛けられた接近戦へと頭を切り替えてナイフを出し、これにオルドリンとスヴェンの二人は動いた。

 

 レイラは払いのけた手からナイフに注意を移し、オルフェウスの動きで何かを察したオイアグロがここで動き出したがもう既に時は遅かった。

 

「どけ、女────!」

「────やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 オルフェウスはそのナイフでレイラを斬ろうとする動作に、スヴェンは叫ぶ。

 

「(ああ……どうして『ここぞ』といった状況に限ってこうも上手くいかないのでしょう。)」

 

 レイラは迫りくるナイフを見ながら冷静にそう思っていた。

 

 

 

 そんな時である。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場違いにも、のほほんとした少女の声が響いたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あら。 まだそんな顔をしているの、オルフェウス。』

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『夢だ』。

 俺が『俺』として気が付くと同時に、俺はその結論へと至った。

 

 場所は山奥にある、どこかの村。

 電気技術が進んだ世界の中を取り残されたようなその村は、未だにランタンやろうそくを主に使っていた様子。

 

「あら。 まだそんな顔をしているの、オルフェウス。」

「だって……オレたちはこうして生きているが、トトやクララたちのことを考えると……」

 

 そして目の前には民族衣装を着た、どこか気が沈んでいた少年をたれ目でいかにも優しそうな少女に対して先のやりとりをしていた。

 

「それでも、いつでも泣いてばかりは駄目よ。 オルフェウスはお兄さんなのだから。」

 

「……」

 

「村の皆もいい人たちだし、ちょっと大変だけれど今の幸せを楽しみましょうよ!」

 

「……」

 

「あ! あとね、農作業をし始めてからオルフェウスは顔色も良くなっているの、自覚ないかしら?!」

 

「……」

 

「……力をつけて、機を見てからでも遅くはないんじゃないかしら?」

 

「……」

 

「その時は、私も一緒に行くわ。 『お姉さん』として。」

 

「……」

 

「だからほら! 外を走りましょうよ!」

 

 ガラッ!

 

「外の世界は、こんなにも光で満ちているんだから!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 少女はドアを開け、外からの光が一気に家の中とオルフェウス共々照らす。

 

「……」

 

 それでも座ったままだったオルフェウスを、少女は無理やり立たせて外へと連れ出す。

 

 背景にある木々の色が移ろい、時間の流れを伝えてくる。

 

 やがてオルフェウスの顔はいつもの仏頂面から次第に自然な笑顔が多くなっていき、少女に連れ出されるより自ら外へと出る回数が頻繁になっていった。

 

 そして────

 

「────ねぇオルフェウス? 今度の狩りってもっと森の奥深いところなんでしょ?」

 

 少女は荷造りをしていたオルフェウスにそのような言葉を送った。

 

「ここに来てから時間が経った。 それに若者が減ったこの村の皆に、肉を食べさせたい。 幸い、猟師だった人の道具が一通り残っている。」

 

「そう……」

 

「そう気を落とさないでくれ。 狩りから帰ってきたら、その……君に言いたいことがあるんだ。」

 

「え?」

 

「だから楽しみにしてくれ。」

 

「じゃあ、いってらっしゃいオルフェウス。」

 

「ああ。 行ってきます、エウリア。」

 

 

 ………

 ……

 …

 

 

 ゴォォォ。

 

「なんだ、これは……」

 

 村の方向から聞こえてくる焦げ臭い匂いと轟音から狩ってきたイノシシを放棄して、狩りから帰ってきたオルフェウスは目の前の惨状に言葉を失った。

 

 数日前までともに笑い合っていた村人がそこかしこで撃たれて事切れていた。

 

 その中をオルフェウスは走った。

 

 野菜をおすそ分けした人も。

 新鮮なバターや牛乳をくれていた人も。

 出来たてのパンを『味見』と称して分けてくれていたオバサンも。

『バターばかりだと飽きるだろ?』と数少ない甘味であるジャムを分けたおじさんも。

 

 皆、驚愕と恐怖の表情のまま、まるで散らばったゴミのように死体として道にあった。

 

 ダダダダダダダダダダ!

 

『待てお前たち!』

 

 サザーランドの中にいたオイアグロはKMFを巧みに使い、村の中心部にいた者たちに制止の言葉を送った。

 

『ああ、隊長サマですか。』

 

『誰の命令でこのような村を襲った?!』

 

『隊長サマは、嚮主様からは何も聞いてないんですか?』

 

『(『嚮主様』? V.V.が独断で部隊を動かしたのか?! まさか、私を別件で呼び寄せたのは────)』

『────でも丁度良かったです。 最後はそこの少女だけですので。』

 

『は?』

 

 オイアグロがKMFのメインカメラを動かすと、そこにいたのは地面に(うずまく)ったエウリアだった。

 

『どうです?』

 

『馬鹿なことを言うな! 相手はまだ子供ではないか?!』

 

『嚮主様の命令はこの村にいる者全員を殺すことです────』

 

 ────カァン!

 

『うおっと?! 今のは、ライフル?!』

『まだ生き残りがいたのか?!』

『あの少年……指名手配されている脱走者か?!』

 

「うああああああああああああああああああああ!!! (エウリア、逃げてくれ!)」

 

 パンパンパンパンパン!

 

 オルフェウスは叫びながら、猟銃をただ撃ち続けた。

 

『あの少年こそ、隊長に譲りますよ。』

 

『は?!』

 

『どうなんだ、オイアグロ・ジヴォン? 君に撃てるかな?』

 

『V.V.?!』

 

『状況は遠隔でモニタリングしていることに何をそんなに驚いているんだい? 取り敢えず、今までの事は不問にするからオルフェウスを撃ってごらん?』

 

『(踏み絵のつもりか、V.V.?! ……いや、この角度ならギリギリ致命傷ではない傷を負わせられる。)』

 

 オイアグロは操縦桿を操り、精密射撃の構えを取る。

 

『(それ以上動かないでくれよ、オルフェウス────)』

「────ダメェ────!」

 

 ────パァン! ドシャ。

 

 オイアグロ機が撃ち、エウリアの声が響き、尻餅をついたオルフェウスの顔に血しぶきが付着する。

 

「……エウリア?」

 

 オルフェウスは倒れていたエウリアの身体を起こし、顔が吹き飛ばされた彼女を見る。

 

「ちょっと、待ってくれ。 エウリア。 嘘だろ? ちょっと待て。 え?」

 

「(不味い。 このままオルフェウスが我を失って自暴自棄にでもなったら────!)」

 

 ────ガシュ!

 

 オイアグロは何を思ったのか、KMFのコックピットを開けて乗り出る。

 

「オルフェウス! オルフェウス・ジヴォン!」

 

 そしてそのまま放心していたオルフェウスへと叫んだ。

 

「私はオイアグロ・ジヴォン! 君に果たして私が殺せるか?!」

 

『なんのつもりだい、オイアグロ?』

 

 インカムから来るV.V.の呆れた声にオイアグロは平然と装いながら返事をする。

 

「いえ。 彼は確か暗殺の訓練を受けていたので『暇つぶし』になるかと思いまして。」

 

『暇つぶしかぁ……』

 

「でしょう? それにこうすれば彼の標的は私一人だけですし、嚮団の活動に影響しないかと。」

 

『確かにそれはそれで面白そうだね。 オルフェウスはどうとでも対処できるしね。』

 

「(よし。 これでオルフェウスが生きていてくれれば……そろそろユーリア様(ミス・エックス)の為に作っていた組織にオルフェウスを勧誘できれば────)」

 「────オイアグロ! オイアグロ・ジヴォォォォォォォォン! 貴様は! 貴様だけは絶対に殺す!」

 

「ハハハハハ! ならば私のところまで来い、オルフェウス・ジヴォン!」

 

 うああああああああああああああああああああ!!!」

 

「(そして、その時は君からの死を請け負うとしよう……)』

 

 

 

 ………………

 ………………

 ………………

 ………………

 ………………

 

 

 

 

「「「「「……」」」」」

 

 その場にいた誰もが黙り込んでいた。

 

「ッ。」

 

 そして俺はオルフェウスのナイフを止める為に鷲掴みにしていた手から血が流れているのを見て苦虫を噛み潰したような顔を作った。

 

「今のは……もしかして……」

 

「オイアグロ・ジヴォン……アンタは……どうしてそうも不器用なんだ……」

 

「君にだけは言われたくないかな、オルフェウス。」

 

 何ということだ。

 

 今の口ぶりからすると、多分だが他の皆も俺と同じでさっきの『夢』を見ていたのだろう。

 

 それにしても、まさかここにまで不運なすれ違いが出るとはどれだけの『悲壮な物語』なんだコードギアスは。

 

「……エウリア?」

 

 そんな時、オルフェウスはハッとした顔を近くの墓石に向けた。

 

「あの子が、エウリア?」

 

「まさか……死後でも発現できるギアスの類か。」

 

 オルドリンとオイアグロも釣られて墓石を見て、そのようなことを口にした。

 

 俺もポーカーフェイスのまま墓石を見るが、生憎オレにはただの墓石としか見えないから恐らく、オズO2のSIDE:オルドリンでエウリアの思念をジヴォン家の三人には見えているんだろう。

 

「………………………………う。」

 

 三人が墓石を見つめて数秒後、突然オルフェウスはナイフから手を離して泣き出しながら(うずまく)る。

 

「そんなことできるわけがない……君を、エウリアを忘れるなんて……」

 

「事故とはいえ、君を撃った私が言うのもだが……『それでもオルフェウスの幸せが私の幸せ』という君はやはり優しいな、エウリア。」

 

「お兄ちゃんがあれだけ好きになるのも、納得しちゃうかな。」

 

「オレは……オレは……」

 

 俺は握ったままだったオルフェウスのナイフを近くに投げ捨てて、取り敢えず止血を試みる。

 

 この場では、俺も『部外者』だからな。

 

 というより、何を言ったらいいのか分からないのでポーカーフェイスだ。

*1
英語で『5年間は』は『5 years』




どうでもいい余談:
ちゃんと上手く描写ができているか自信がない二徹の作者です…… (汗
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