少々長めです。
*注*試しに挿絵を全て木村さん風のデザインになるべく統一してみました。
ハンガリー南部の騒動から数日後、
その代わりに奇妙な冒け────じゃなくて、奇妙な光景を見るようになったけどな。
「オルフェウスお兄ちゃ~ん────もが?!」
「抜け駆けは無しよ、クララ! という訳でオズ、ピースマークからの依頼について二人で話を────!」
「────ぶは! デートしよう────!♪」
「────あ────?!」
「────いいぞ────」
「────って、お兄ちゃんもいつも逃げてばかりじゃ────」
「────ほら、オズも断って────」
「「────え。」」
「デートと、ピースマークの依頼の相談だったな? いいぞ。」
「「…………………………………………」」
「お前たち、何をしている?」
「「お兄ちゃん/オズの体温を測っている。」」
「なぜだ。」
「「素直なお兄ちゃん/オズなんて初めてだったから。」」
「そうか。」
「「……」」
いやね、こちらとしてほっこりするというか安堵したのだがオルフェウスたちが俺を見るのは正直辞めて欲しい。
文字通りに俺は何もしていないから。
強いてやったことと言えば話を合わせたことか?
それでもレイラには微妙な顔を向けられて焦ったけど。
はぁぁぁぁ……
『一期も亡国のアキトもオズもR2も終わったから~』と思って、『静かになったから周ろう』なんて半端な考えで首を突っ込んだ俺がバカだった。
まさかオルフェウスがあれほど『人間不信』をこじらせていた────いや、俺に対してだけあれほど『警戒』というか『嫌悪』というかよくわからない『負』の感情を向けていたなんて気付かなかった。
今までの人たちとの接触も一歩間違えていたら、あんな風になっていたかもしれないと思うと背筋がゾッとするぜ。
……………………………………………………もしオルフェウスじゃなくてルルーシュやマリーベルだったら『バッでエンド』どころか『デッドエンド』だったかもな。
「ま~ぜ、ま~ぜ、グルグルグ~ル♪」
それはそうとしてまたもライラの即興による歌声に意識が引き戻される。
俺は周りを見て、現状を一言で済ませるとこんなテロップが出るだろうな。
『アッシュフォード学園の食堂で納豆の匂いで周りの者たちから一定の距離を置かれた俺の向かい側にライラがいた』。
懐かしくてちゃっかり納豆定食を注文した俺も俺だけど……
まぁそれはともかく……そうなんだよ。
『納豆』があるんだよ。
『アッシュフォード学園』の『食堂』に『納豆』があるようになったんだよ。
トンカツとか天ぷらとかの揚げ物は前世でも外国人に受けが良かったからまだ分かるが、いまだにブリタニア人がメインのアッシュフォード学園にゴリゴリの和食定番の納豆があるようになった。
これでもかと『オハイオ州産!』って宣伝していたから日本国産じゃないけれどな。
はて……
『オハイオ』って割と最近どこかで聞いたことがあるような、ないような……
……………………ま、いっか。
「グルグルグルしてグルタミン酸をグルグル混ぜ混ぜする~で~す~♪」
「……」
それとライラの横には同じくポーカーフェイスで同じように納豆を混ぜているライカもいる。
アーニャは……眉間にしわを寄せて困った顔をしながらも俺の横で納豆を混ぜている。
『納豆ってそこまで臭いか?』と前世で(多分)思っていたが、かなりご無沙汰な今世になってからは慣れていないからか普通に臭い。
そもそも納豆って『発酵食品』だから、確かチーズやヨーグルトやサワークラウトと同じ部類なんだけどな~。
「よし、もういいだろう。」
ホカホカの白米に納豆を乗せて一口。
パクッ。
うん。
この食感と苦さは正しく『ザ・納豆』だな。
「モグモグモグモグ♪」
「モグ……………………………………………」
あ。
アーニャが固まった。
「……………………………
「モグモグ……何がです~?」
「
「う~ん……初めての触感で面白いです!」
スッ。
「ん? どうして
「あげる。」
「ほぇ? でもまだいっぱい────」
「────あげる。」
そこまで嫌だったか、アーニャ。
ライカは……うん、普通に
「あ! アーニャちゃん
……ん?
「まだ分からない。」
今のライラ、『も』って言ったよね?
「でもでも~、『ばにー衣装』ってなんだか面白くないです?」
「…………………………………………ソウネ。」
んんんんんん?
話がちょっとおかしい。
中等部も含めたイベントは舞踏会の筈だ。
衣装は……違うよな?
「そう言う
「今日、他の皆と一緒に着てみる予定です!」
よくクロヴィスがオーケーを出したな?!
それともライラの独断?
それかライラに言いくるめられた?
いや、『他の皆』と言っているからマリーベル辺りが絡んでいるかもしれん。
しかし中等部も対象になるのか、あの『バトラー&バニーイベント』。
俺としては、てっきり舞踏会だけが学年に関係なく参加できると思った。
「……」
しかし中等部も『バニー』を着るのか。
『バニー』なんてバベルタワー以来だ。
つまりあの時のアヤノがもう一度見られるかもしれない?
……ここは『
「────スヴェン先輩も見に
────『
っと、アホなダジャレをしている場合じゃない。
でも俺が見に行くって世間体的にどうなの?
一応『教師』だし。
「
「はいです、ライカ先輩?」
「あの人が言った続きも言わないとダメな気がする。」
「あ、そうでした! 実は『例のイベント用の衣装に関してスヴェン先輩の採寸もしたい』ってミレイ先生が言っていたです!」
あ、なるほど俺の採寸────ってちょっと待て。
俺の採寸データは学園に送っている筈だ、なんで今更採寸を────
「────だめ、です?」
クッ!
裏がありそうだからな!
その不安そうな上目遣いと声に屈しないからな?!
手を引っ張っても無駄だ!
…………
………
……
…
ガヤガヤガヤ。
「うわ、メイド服────」
「────生地はあまり────」
「────でも『衣装』だから────」
「────何このナース服────?!」
周りは見知った者たちが、部屋の中にある数々の衣装を見てあーでもーこでもないという類の事を口走っていた。
俺自身は部屋の隅で大人しく、できるだけ『空気』に徹していた。
という訳でハイ。 屈しました。
ちょっとだけ想像してみてくれ。
いつもは我儘どころか察してか理解してかこっちの負担にならないように普段から慎ましく振舞うライラが、今にも不安で泣きそうな表情をして頼みごとをしてくるのを。
『そんな彼女のお願いを断る』? そんな選択ができるか。
え? 『内心で言っていたことと行動が違うw』? 『メンタルの根性弱すぎw』?
……自覚はあるからほっとけ。
「はぁぁぁ……」
俺のセリフを横取りしないでくれ、カレン。
「あらカレン、着替えるの早かったわね?」
「いやぁ、コツさえつかめば割と簡単ですよ?」
「え? じゃあ今のはなんの溜息だったの?」
「『またこれを着る日が来るとは思わなかったなぁ』、って。」
おいいいいいいいいい?!
「……『また』────?」
「────まままままま前に実家でちょっと興味本位で着てみただけですよ! あは、あはははははは!」
カレン、お前なぁ……
聞いているこっちが冷や冷やするぜ、まったく。
「う~ん……でも意外と難しいわね。 あ、そうだ! ねぇスヴェン、ちょっと着替えを手伝ってくれない~?♪」
「他の方に聞いてくださいミレイさん。」
「ちぇ。」
『ちぇ』ってなんだよ、『ちぇ』って。
舌打ちしたいのはこっちだよ。
「……」
「何よ?」
「いや……どうしてお前がここに居ると思っていただけだ。」
「私がここに居て悪い?」
俺の視線に気が付いたのか、腕を組んだままさっきからジーっと俺を見ているアリスがいつもの不機嫌そうな表情で切り返してくる。
大方『俺の監視だ~』とか、『ライラがいるから~』とかの言い訳をするんだろ?
だったら俺がやることは一つ。
「……別に。」
「今の間は何?」
「……」
「ちょっと、答えなさいよ。」
無視。
「おおおおおおお! 初めてこういうピッチピチな服を着たです~!」
Oh。
キラキラした目のままバニー衣装のライラが物珍しく自分の姿を見てその場でクルクルとターンしたりしている。
……うん。
これはアカンやつ認定だ。
破壊力というか弾幕というか装甲が厚い。
アレだアレ。
駆逐艦だと思っていたらただの軽巡洋艦級どころか軽巡洋艦改二だった。
……いや、一旦落ち着け俺。
なんだか語彙力とかその他諸々が色々と残念なことになっている気がする。
「「「「「……………………………………………………」」」」」
ア、ウン。
そうなるよね。
「??? 皆、どうしたです?」
アーニャたち貧n────ゴホンゲフンゲフン! アーニャたちの様な胸部装甲にあまり恵まれていない者たちが黙り込み、無言になった皆の視線に対してライラはハテナマークを浮かばせる。
「そっちはどぉ~、アヤノちゃん?」
ミレイちゃんや、何故そう簡単にアヤノちゃんを受け入れているの?
『あともうちょっとです……』
「ん? どうしたのスヴェン? あ! もしかして私のバニー姿を見たいとかぁ~?」
「見たい気持ちはありますが……その……」
「あ、もしかしてアヤノちゃんとかアキト君の事かしら? 『時期的に見てスヴェンの知り合いたちかな』って思っていたらレイラちゃんと毒島さんから聞いたの。 ま、マリーベル皇女殿下みたいな感じで
「もう終わったか、アヤノ?」
『う、うん……』
ガチャ。
おおおお。
「おおおお。」
アキトの奴、俺の気持ちを音読しやがった?!
でも分かる。
アヤノは『亡国のアキト』からスタイル抜群のままに髪を伸ばし始めて、初めて会った頃よりちょっと大人っぽく見え初めたのにこれでまだ18歳になっていないもんな。
「いや、やっぱりこれを学校で着るのって絶対に変だよアキト……」
「どこがだ?」
「ど、どこがだって……全部だけど?!」
「アヤノはいつも可愛いぞ?」
余も同意するでごじゃるよ、アキト氏。
またもやバニーアヤノを拝める日が来るとは思わなかったッッッ!!!!
ムフフフフフフフフフフフフのフフ♡
「そうじゃなくて────!」
「「「「「────理不尽。」」」」」
「ふぇ???????」
「ほらぁぁぁぁぁ?!」
「ふ、俺以外にアヤノの魅力がわかってたまるか。」
「もうヤダ、しんどい……」
「肩、揉むか?」
「……後でいい?」
ケッ、リア充め!
「アハハハハハハ……やっぱりこうなっちゃうか~。」
「あー、ミレイさん?」
「なーにー、スヴェン?」
「バニー&バトラーイベントに行き着いたアイデアを提案した一人としては複雑だが……衣装を『バニー』や『バトラー』に限定するのはいささか問題があるのではないでしょうか?」
「じゃあスヴェンは何か他にアイデアある?」
「……」
ミレイに言われて衣装がかけられているラックを見る。
『チャイナ』……はバニーのように身体(主に上半身)のラインがくっきりと出るからアウト。
ミニスカナース服もダメ。
海賊……はテーマ的にどうなんだろ?
そもそも参加する高等部と中等部の全員分は用意できないだろ。
う~ん……
あ。
「メイド服やドレスはどうですミレイさん?」
「男性側がバトラーだから?」
「ええ。 同じ『給仕』、もしくは『主従』という感じで。」
「ナイスねスヴェン! でもそれだと男子側の衣装にもバリエーションが欲しいわね……」
「ではいっそのこと、彼に衣装を着せてみるのはどうだ?」
FOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!
冥〇たん風ぶっちゃんのバニー衣装! 最・高!
立派なうなじだけでなく、今日はいつも服に隠れがちな立派な腰のくびれも丸見えで……
「ナイスよ毒島さん! 確保ぉぉぉぉぉぉ!!!」
ガシッ。
あ゛。
「では行きましょうか(神様)♪」
クッ! 解けん! マーヤの手が解けんぞ?!
ズルズルズルズルズルズルズルズル。
……ドナ~♪ ドナ~♪ ドナドナ~♪
………
……
…
バニーマーヤによってガッチリホールドされた俺はそのまま着替えを余儀なくされ、そのまま皆の前に出る。
「「「「「……何それ?」」」」」
「
「「「「「『ジンベエ』????」」」」」
ふ。 無難な衣装があってよかった。
「リラックスするには良さそうだな。」
「あ! おじいちゃんが着ていたやつだ! 懐かしい!」
「『おじいちゃん』?」
「じゃあ日本の服?」
俺の言葉にブリタニア組が頭を傾げ、
「ふむ……」
「どうしたんですかマーヤさん、難しい顔をして?」
「いえ……『表の顔はフランクなお兄さんだが裏の顔は正義の味方というのもいいかもしれない』とだけ。」
いやそれ完全に俺が呪われて衰弱死する、ダメなやつじゃん。
というか何で君は毎回ギリギリな他作品ネタを切り出すの?
せめてもの救いはリヴァルがここに居ないことと、目が死んでいないことか。
「それで、この衣装を男性用にするのはどうでしょうか皆さん?」
「「「「「微妙。」」」」」
即答かよ。
「普段着っぽい。」
「あとは寝間着とか?」
「これなら着ぐるみを着せた方が……」
「では私が衣装を考えますね!」
あああ……こうして『男』は単なる『着せ替え人形』になるのか……by
「どうですか?」
「「「「「……イイ。」」」」」
俺を見たままマーヤの言葉に何人かが頷く。
「ふぉぉぉぉ! スヴェン先輩、カッコいいです!」
「……仲間。」
「え?」
マーヤが俺に着せた衣装はちょっとアウトローっぽい服装のチェーン付きのレザーパンツに黒いTシャツ、その上にレザージャケット。
あと髪の毛のセットもマーヤ仕込み。
『これってどこのサングラ無しのシュワルツェネッガーやねん』と思わず突っ込みたくなったがマーヤの私服姿を考えればこれは前世で言うところのパンク……アーニャのコメントを考えれば『ゴシック風パンクファッション』という奴に類するかも。
まぁ、これは悪くない。
前世ならともかく、この世界基準だと俺も『そこそこのイケメン』に部類するからな。
「でも、執事の服も着せたいわねやっぱり。 イベントが『バトラー』なんだし♪」
「「「「「分かる。」」」」」
そこまでミレイに同意しなくてもいいじゃないか、見慣れて……いや、見慣れているのはカレンだけぐらいか。
「じゃーん! バトラー風スヴェン!」
「「「「「……………………………………………………………………」」」」」
いやぁ、フォーマルなスーツって意外と久しぶりだったから窮屈に感じると思ったが全然だな。
「でも私の手伝いなんていらないなんて言ったからちょっと不安だったけれど、ちゃんと一人で着替えが出来たわね?」
「服装のコーディネートだけしてもらえばあとは自分で出来ますよ。」
「「「「「……………………………………………………………………」」」」」
「う~ん……ちょっと残念かな?」
「どういうことです?」
「いや、ほら。 あれがあるじゃない。 『ネクタイ曲がっているわよ』ってやつ。」
なるほど、ドラマとかである新婚夫婦のやり取りか。
「今の私はネクタイじゃなくて、ボータイですけれど?」
「例えよ! た・と・え!」
「「「「「……………………………………………………………………」」」」」
そろそろ誰か何か言ってくれ。
「ちょっと皆~? 感動して目に焼き付きたい気持ちは分かるけれどぉ? 何か言った方が良いんじゃない~?」
グッジョブミレイ!
「……似合う。」
「うん……」
「てっきり『
「素敵……」
「これでお姫様だっこされたら……
「「「「「「………………………………キャ♡」」」」」」
「「「「「「………………………………(ポッ)♡♡♡♡」」」」」」
これはこれで非常に気まずい。
…………………………よし、とっとととどめを刺そう。
ちょっと前のめりになって~。
手を差し出しながら~。
なるべく中華テリオンをイメージしたイケボでぇ~。
「コホン……麗しいお嬢様、この私にエスコートの権利をくださいませんか?」
そしてぇぇぇぇぇ!
ここでダメ押しのウィンクよぉぉぉぉぉぉ!!!!!
パチン☆
「「「「「「「はうあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!?!?!?!」」」」」」」
「「「「「
ああああああああああああああああああああああああア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」」」」」
「「「「「
きゃあああああああああああああ!♡♡♡♡♡」」」」」
ほぼ全員が目を瞑ったり、真っ赤になった顔を両手で覆ったり、黄色い声を出しながら身体をくねくねさせる。
『十人十色』とはよく言ったものだ。
「あ、閃いたです! 今度は私が先輩をおめかしするですー!」
反応を示したほぼ全員が深呼吸などで息を整えようとしている中、ライラが上記を口にした。
そしてライラが『あの』クロヴィスの妹だということをここでオレは察するべきだったと、今にして思った。
『えーと……どこにあったです……あ、これです!』
『ではちょっと向こう側を向いてください。』
『はいでーす♪』
ガサガサガサ。
着替え室へと通じるドアの向こう側からスヴェンが頑なに自らコーディネートすると言ったライラに従いながら着替える物音が聞こえる。
『う……このジーンズ、サイズが小さめですけれど?』
『それが良いのです! あ、ボタンはしないでください。』
『ジーンズが落ちますよ?』
『ではこのベルトで止めるです! あ、ベルトはゆるゆるでお願いしますです。』
ガサガサガサ。
『あー、ライラさん?』
『はいです?』
『このシャツも小さめに感じるのですが?』
『あ、ボタンは全部しないでください。 途中までの、お腹のところまででいいです……いえ、先輩の場合は全部開いたままが良いです。』
『え゛。』
スヴェンの素っ頓狂な声に、今か今かと待っていた者たちの息が更に荒くなる。
『ではショータイムです!』
『え。 あの、このまま────って押さないでください?!』
ガチャ。
少々照れながらも着替え室の中から無理やり押されて出てきたスヴェンの姿に女性陣は息を素早く飲んで固まった。
彼の着ていたジーンズはチャックこそ上げていたものの、ボタンはしておらず代わりに今にも落ちそうなベルトが申し訳程度に緩~く止められ、上半身はボタンが全くされていないカッターシャツのみで、ボタンがされていないそのカッターシャツ『シャツ』として機能をせずにスヴェンの腹筋と胸を晒していた。
「(いやこれって完全にどこぞのファッション雑誌のフロントぺージだよ?!)」
「せんぱ~い! こっち向いてくださ~い♪」
「ん?」
「えい!♪」
バシャ!
「うおぁっぷ!? (な、何かかけられた?! 水?! え?! 水をかけられた?!)」
ライラは自分の声に振り返ったスヴェンにコップに入っていた水をかけられ、彼は内心で焦りだす。
「 (ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ! 今日は防水じゃない! どうにかして、皆の目をそらさないと!)」
そして焦ったスヴェンは『とある』行動を取った。
片手で濡れた髪の毛を後ろへと流しながらもう片手を腰に添えつつ、『魔性の男』をイメージしたのかニヒルな笑みと意味深い視線を浮かべた。
「フ……いくら
スヴェンの言動にその場はまるで時が止まったかのように静まり返り、数秒間後には動き出す。
「「「「ア゛?!」」」」
何人かは顔だけでなく耳まで真っ赤になりながら鼻を押さえて天井を仰いだ。
「「「「きゅ~。」」」」
バタッ。
何人かは先のよりも深刻な『茹でダコ状態』になりながらその場で倒れた。
「!!!!!!!!??????!!!!?!?!?!?!?!」
マーヤは目を大きく見開かせながらも静かに立ち悶え体を震わせていた。
「「「「「最ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ高よライブラちゃん!」」」」」
更に約一名を除いて他の者たちはライラの手をがっしりと手に取って、荒い息をしつつも低下した語彙力を振り絞って感動の言葉を口にした。
ピロン♪
そしてアーニャは無表情のまま、そんなスヴェンの写真を撮った。
余談だがこの一件の後、イベントでの衣装はバニーやバトラーだけでなく『一般的な舞踏会にて場違いではないものならば何でもオッケー』と指定が変わった。
……
…
カリカリカリ。
「……」
同時刻、蓬莱島ではペンを走らせながら黙々と書類の確認と記入直しをしていたレイラが居た。
ニコニコニコニコニコ♪
そんなレイラの側にはニコニコするマオ(女)、ダルク、ルクレティア、そして複雑な表情をしたサンチアもいた。
「・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・」
そして彼女たちとは別に、床には長い間正座を強いられたせいか顔色の悪いマリーベルと────
「何で私まで?!」
「それ私のセリフ……」
────オルドリン、そして泣きそうなソキアが居た。
というのもハンガリーから蓬莱島に帰国した数日後、レイラはかつてないほどの圧力を含んだ表情でオルドリンを壁ドンで脅してにマリーベルを呼ぶように
無論、このまま素直に呼ばれるマリーベルではなかったので
結果、マリーベルにしては珍しい読みミスなまでにレイラはお構いなしだった。
レイラは何の説明もなしにオルドリンたちに正座を(物理的に)強要したのちに、蓬莱島の事務作業に取り掛かった。
「……あの────」
「────ごめんなさいソキアさん。 まだ私の用事が終わっていないので少々待っていただけますか?」
「ア、ハイ。」
「クッ……」
目が笑っていないレイラのニッコリとした顔にソキアは思わず委縮し、その様子を見てマリーベルがとうとう声を出す。
「ソキアさんを連れてくるのは予想外でしたけれど……彼女を巻き込んだ気分はどうですか、マリーベルさん?」
「そ、それは────」
「────んにゃ?! これってやっぱり私は無関係ってことだよね────?!」
「────残念ながらマリーベルさんが貴方を連れてきた時点で例外ではなくなりました。 恨むのなら彼女を恨んでください────♪」
「────な?! にゃんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ────?!」
「────連帯責任です。」
「そ、それは言い過ぎなのではレイラさん? そもそも私、何もして────」
「────ここにレオンハルトやマリーカさんたちなどを呼ばないだけでも感謝してほしいですね、マリーベルさん?」
「か、彼らにはちゃんとするべきことが多々あるのですよ────?!」
「────それを引き出すのなら、私やシュバールさんと何が違うと言うのでしょう?」
「「「(レイラさん、もしかしなくてもガチギレしている?!)」」」
サンチアたちは只々淡々と、相手の言葉を遮るレイラにびっくりした。
「(レイラ姉ちゃん、エグイ♪ 何の説明もなしに拷問とか、
そんなオルドリンたちを見てマオ(女)は場違いなことを考えていたと、ここで補足する。
「幸い、誰も大怪我をしなかったから良かった……というには早計過ぎ────いえ、只の結果論です。」
「だけど実際、誰も怪我を────」
「────私ならともかく、そう言うマリーベルさんは万が一彼に何かあったとすればどうするつもりでしたか? 彼の代わりを務めるとでも? 傲慢ですね。」
「「「「「(うわぁ……)」」」」」
オルドリンたちは辛辣なレイラに内心で更に引いた。
「ご、傲慢?!」
が、マリーベルは逆に対抗心に火が付いた。
「貴方に、私の何が分かると────?!」
「────ええ。 私は『マリーベル・メル・ブリタニアという
「ッ。」
「『以前と比べて今はかなりマシになった。』 そう評価する人たちも居ますが、私から見れば逆にシュナイゼルの様な者を危惧している方たちに目を付けられないように振舞っているだけに感じます。」
ここでレイラは今まで動かしていたペンを止め、マリーベルの目を見る。
「他人を『自律性のある駒』と見るのは一向にかまいません。 戦術家とは如何にどうやって『人間』という道具を使って自軍を勝利に導くものですからね。 ですがそれは戦時下で、それも『同意の元』で行うもの。 平時の今では、相手を騙すようなことは控えてください。」
「……彼なら、やれると────」
ダァン!
「────彼も人間です!」
マリーベルに自分の言いたいことがいまだ通じていないことにイラついたのか、とうとうレイラは声を上げた。
「『絶対にやれる』、『信じている』などという、自分勝手な期待を彼に押し付けないでください!」
レイラは周りが驚愕の目で自分を見ていることに気恥ずかしさを感じ、彼女は深呼吸をしてから再び口を開ける。
「コホン……私が言いたいのは、『せめて相手に一言でも言ってください』。 ただそれだけです。 機密事項ならばともかく、先のような『個人的な事情』ならばオルドリンさんと話してからシュバールさんやオイアグロさんなどに相談することもできた筈です。」
レイラは頭痛がするのか、目を覆う。
「……オルフェウスさんに勘付かれることを危惧しての行動も理解はしていますが、やりようによってはむしろ彼に前もって勘付かれてそれとなく話も通せる可能性もあったでしょうに……」
「「…………………………」」
レイラは正座のままプルプルと震えるソキアとオルドリンを見て今まで感じていたイラつきが抜けていくのを感じ、もう一度ため息を出す。
「とはいえ、結果的に良い結末になったのも事実。 次からは気をつけてください。」
「……もう行っていいのかしら?」
「ええ。 引き留めて申し訳ありません、オルドリンさんにシェルパ卿。」
「……」
「シェルパ卿?」
「誰か私をおぶって……足が……足がびりびりする……………………」
「ツンツン♪」
「アギェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ?!?!?!?!」
「ダルク、お前なぁ……」
「サンチアだってウズウズしていたじゃないか?!」
「まぁ、それはそうだが……」
「じゃあ、三人で手分けして運びましょうか♪」
「ぎゃああああああああ?!」
「もっと優しく運んでぇぇぇぇぇぇぇぇ?!?!?!?!」
「で、電気! 電気の様なビリビリ感!!!!」
オルドリンたちの遠ざかる絶叫を背景音に、レイラは別の考え事をしていた。
「……(先日のシュバールさん、果たして本当にエウリアさんのことが見えていたのでしょうか? それとも、見た目や言動の違いは、認識の違いだったのでしょうか? あの感じは前にも以前、ヴァイスボルフ城の時と……いったいなんでしょう? それに垣間見た、あの光景は……もしや幼い頃のシュバールさん? だとすれば、彼は一体どれだけの苦難を────)」
────ピロン♪
「…………………………………………」
メッセージ音が鳴るとレイラは携帯電話を出してそれを確認しては無言のまま固まった。
ボッ!
そして首から上の頭部全てを湯気が出るような勢いで真っ赤にさせた彼女はすぐさまその写真を『㊙』というタイトル名のフォルダーへと保存したそうな。
「……♡♡♡」
後書きのオマケ:
アリス:……いや、やっぱ無理があるよね。
スヴェン:ん? まだここに居てどうしたアリ────?
【挿絵表示】
アリス:────ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛?! ア、ア、ア、アンタとは全然無関係なんだからね?!
スヴェン:……『沈黙は金、雄弁は銀』。
アリス:どう言う意味よぉぉぉぉぉぉぉぉ?!