色々書きたいことがあるのに書けず、書ける時は休みたいの連続でなかなか進まず申し訳ないです。
ダモクレス事件後、『世界規模での戦』は終局を迎えた。
否が応でも『国』という組織に強いられた境界線によって明確に『敵』と『味方』に二分していた世界は多くの犠牲の上に不死と恐怖による統一国家を目論んだ『
「う~ん……」
「兄上、次はこちらの資料にお目通しを。」
「えええええええええ。」
「仮にも皇帝代理なのですから『えええ』、ではありません。 ああ、それとも『代理』を無くしますか────?」
「────代理のままでいいです。」
今日も『本領発揮』と言わんばかりに働いているブリタニア帝国の皇帝代理、オデュッセウスはおかん補佐官のように処理待ちの仕事を追加する第1皇女ギネヴィアとのコントやり取りは最早、日課となっていた。
「「「「「……」」」」」
そしてその日課を目にして、室内の文官や従者たちはなるべく顔に出さずに内心ではほっこりと微笑ましく感じていた。
『約一名を除いて』、だが。
「(何で私がここにぃぃぃぃぃぃ?! いや確かに『オデュ様に癒され隊』で『一日だけ現場交代券』の宝くじに応募して当たりはしましたけれどもなんで?!)」
その『約一名』────トト・トンプソンは内心穏やかどころか、感じる『場違い感』に委縮しながらもなるべく気配と息を殺していた。
「(なんで連日こうも呼び出されるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ?! いくらグリンダ騎士団との連絡係といっても限度があるのでは?! 誰か説明してぇぇぇぇ?!)」
しかし外見からはとても想像できないほどにトトは(内心で)困惑していた。
「そうですか……何度も言いますが、『代理』のままでは兄上が望んでいる様な社会システムの運用効率の上昇は難航しますよ? 特に軍への予算見直しは未だにどうかと思いますが?」
「ギネヴィアが以前言ったじゃないか。 『各エリアの生産能力が頭打ちな現状では~』って。 帝国の予算が殆んど軍部に回されていたんだよ? こんな平和な世の中に臨戦態勢の軍なんて必要かね?」
「超合集国や、非加盟国に付け入るチャンスを与えない為にも『抑止力』は必要です。 それこそ本当に引き締めたいのならば、領地を持ちながらも献上しない家などの取り締まりをするべきでは?」
「だから例の政策を出したんじゃないか。 それにEUの二の舞いにならないよう、まだまだ内政の安定に力を入れる筈さ。 私の見立てだと、超合衆国連合が脅威になるまでは後……5、6年はかかる。 戦いを行う前の準備だけでも国への負担が高い。 ま、それは帝国にも当てはまるのだけれどね。 でも、ただ税を上げればいいということでもない。 急激な増税は民衆の不満と不安を煽るだけだからね。」
「ですが取り締まりなどを本業になさる保安局の士気まで下げては本末転倒です。」
「え?」
「『次は自分たちでは?』と噂が軍部中心に出ております。 理解のある者たちは自ら退役などし、領地の事業に力を入れていますが代々騎士たちを
「(う~ん……『民の暮らしが自ら自身の手の中に収まる時代の到来への布石』
「そもそもエリアを手放すことと名誉ブリタニア人の帰還を認めるなど……国力の低下に繋がるのは火を見るより明らかですが兄上は何か考えがあっての事ですよね? 香港の件でもカリーヌも頭を抱えていましたよ?」
「あ、それに対しては対策を練りつつあるから大丈夫だよ。」
「簡単に言いますけれど……財政的にインフラへの投資は儲からない上に効果がすぐに目に見えない、そして先行投資の対象としてもリスクが完成するまで付きまとうのですよ?」
「けれど先送りにしていいという訳でもないのはギネヴィアも理解しているだろう?
「短期的な何のメリットを提示できないまま、変化に対して不満を持つ者たちに『50年先を見ろ』と言い続けるにはいささか無理があります。」
「あ、今すぐじゃないけれどそれにも対策は考えてあるから。」
「それはもしや私に内緒で通そうとしている支援機関の立ち上げと関係しているのでしょうか?」
「………………………………」
ギネヴィアの言葉にオデュッセウスはサイン中に固まるだけでなく、顔も一気に青ざめていた。
「………………………………いったい何のことかな?」
「シュナイゼルお兄────コホン! 前宰相ほどではなくても、これでもある程度の手腕はあるつもりです。」
「………………………………………………………………」
冷ややかな目と表情のギネヴィアとは対照的に、オデュッセウスは張り付けたような笑顔をしつつも大粒の汗が顔に滲み出ていた。
「……まぁいいでしょう。」
「(ホッ。)」
「帝国の利になる見込みがあるのならば試してみても構いません。 以前に差し押さえた、用途不明の皇族用予算もあるので。」
「(やった!)」
「流石にアイドルコンサートに紛れ込んでKMFでのダンスは駄目ですが。」
「ええええええええ。」
「『えええええ』、ではありません。 以前とは立場が違うことを理解してください。 それで話を『代理』から正式に『皇帝』に────」
「────それは追々でいいかな。」
「………………………………」
「ウッ。 いや、考えていないわけではないんだよ? ただ皇帝になったら、否が応でも皇后を迎えることになるから色々と手回し中なんだよ。」
「それが天子様との交流ですか、『ヒゲのおじさま』?」
意訳:暇なのか?
「アッハッハッハ。 私としては『お兄様』と呼んでもらいたいのだけれどねぇ~。」
「冗談じゃありませんわ。 間接的にとはいえ、兄上に恥をかかせた相手を?! 兄上が許しても私が許しません!」
「とまぁ、天子様と繋がりを持てば超合集国の中でも1,2を争う合衆国中華とのパイプにもなる。 それに……ああ、トト君。」
「(え?! ここで私?!) は、
「紅茶と、グリンダ騎士団の報告書を頼む。」
コクコクコクコク。
声をかけられてプルプルと子犬のように震えることを我慢しながらも冷めていた紅茶の代わりを淹れ、別のデスクに置いてあった書類をオデュッセウスの隣にいたギネヴィアに手渡す。
キッ!
「(ヒィ?!)」
「ギネヴィア、そうトト君を睨まないでくれるかな? せっかくの紅茶まで氷みたいに冷たく感じちゃうよ……う~ん。」
書類を見たオデュッセウスの表情が曇り、彼は紅茶を持ち上げていた手を止めた。
「これほど隠れることに長けているとは、ちょっと意外だったなぁ……」
「件の『吸血鬼』ですか。」
「そうなんだよねぇ……」
『吸血鬼』とは勿論、空中要塞ダモクレスが世間の目に付くきっかけを作った元ラウンズのルキアーノの事である。
彼と彼の親衛隊は平和な世の中では消息を絶ったままでは危険とみなされ、グリンダ騎士団が彼らの行方を探って発見次第、身柄を確保して戦争犯罪人として超合衆国日本に渡す為に動いている。
表向きは。
『人殺しの天才』と呼ばれたルキアーノは好戦的かつ攻撃的な性格で普通の人からは誤解されがちだが実際のところ、彼の真価は『如何に相手を追い詰めつつ息の根を止める直前まで悟られない』────言わば『忍耐強い狩人』の様な狡猾さ。
しかも普段の奇行な行いと制服からはとても想像は出来ないが、彼の率いていたヴァルキリエ隊の全員が大なり小なり同じような才能を持ち合わせている者たちばかり。
『騎士道』を重んじるブリタニアでは『異端』ではあるが、『騎士道』では通じない事柄の対処などにルキアーノとヴァルキリエ隊は携わっていた。
そんな『汚れ仕事』を請け負っていたルキアーノたちが行方不明となれば、ブリタニア帝国としては『面白くない』どころか『きっかけを待つ不発弾』。
故に見つけ次第、グリンダ騎士団が超合衆国に引き渡す前に
これにはブリタニア内でも少数しか知らずグリンダ騎士団のマリーベル、高齢で脱退したシュバルツァー将軍と入れ替わる様に新たな顧問となったオイアグロ、連絡係のトト、そして『個人の親衛隊を持たない代わりに』と言わんばかりにともに行動を続けるノネットしか知らない。
人間の社会である限りどれだけ平和主義、あるいは温厚な人でも『為政者』となったからには綺麗ごとだけでは『善政』は行えない。
寧ろ善政が続いている『光』の様な時代こそ、世界の裏では決して明るみに出来ないような『闇』が存在する。
皇帝代理になってからのオデュッセウスは、何故
「……(シュナイゼルや父上も最初はこんな気分だったのかな?)」
「兄上?」
「いや、ちょっとね。 肩が重いなぁ~って。」
そう言いながらオデュッセウスは腕を回すと、ポキポキとした音が肩から鳴った。
…………
………
……
…
オデュッセウスたちが執務に励んでいる一方で、彼の行っている政策はエリアだけでなく新大陸を含めたブリタニア帝国全土に影響を与えていた。
『
その最大の理由は『気候』である。
『なんだそれ?』と思うかもしれないが、よく考えて欲しい。
『新大陸』とはつまり北米大陸のことで、言わずとも広大な土地だけでなく資源も豊富、世界を北と南に分ける赤道をまたぐので殆どの野菜や果物は年がら年中育てることができる。
『ナチュラルチート』と言っても、全く申し分ない大地である。
さて。
先ほどの『気候』とはこの
ギネヴィアが口にしていた『国力』とは居なくなる名誉ブリタニア人たちによる『人員削減』であり、半自動化されている工業以外の産業は影響を受けていた。
「あの方はいつまで『代理』を名乗るのだ?」
「全くだ。 エリアを元の国に戻すなど……」
「それだけではない。 復興作業をする為、仕事を辞める名誉ブリタニア人どもが相次いでおる。 このままでは手が足りず、作付けが間に合わん。」
「いくら『税を下げる』と言われてもな……」
「しかし、成功している者たちが居ると聞く。」
「そうだ!
「……散々あの家を『田舎者』と呼んだ私が出向いてみろ。 足元を見られるのがオチだ。」
「しかし長男長女共に未だ婚約の話は出ていないと聞く。 それをどうにかすれば……」
「だが例の噂を聞いた後では……」
「『例の噂』?」
「左様。 何を思ったのか、ダモクレス事件より以前からイレヴン共を含めた名誉ブリタニア人どもに衣食住だけでなく、給金やあまつさえ携帯の保持まで州内で認めているとか────」
「────バカな?! 名誉ブリタニア人制度は前皇帝が立案して以来、今日まで例外は認められていなかった筈?! その様な越権行為を、何故……」
「『特例』、とだけ。」
「ヘクセン家め、商人の真似事だけでは飽き足らず……どうやって────」
「────以前からギネヴィア皇女殿下と交流があったのはこの為か。」
「しかしヘクセン家の跡取りの二人に婚約が居ないのは行幸────」
「────政略結婚の道具が無い我々はどうすれば……」
そして軍部の次に影響が及ぼされたのはほぼ人手によって収穫や種蒔きなどが行われる『農業』だった。
働き手が一気に減り、以前のような収穫とそれにより利益の目途が立つビジョンが見えない貴族や豪商人たちは今日も集まり、愚痴を並べていた。
以前のシャルルやシュナイゼル時代ならばこのように大っぴらに集まったり、不満を言葉にするのは危惧していたが、集会には保安局や軍の者たちも参加していた。
『赤信号みんなで渡れば怖くない』とはよく言ったものである。
「ワグナー侯爵、何か我々に出来ぬだろうか?」
そんな中で、一人の貴族が法律に詳しいシューリッツ・ワグナー侯爵に上記を問いかけた。
「……『皇帝』と名乗ればいくらでも
「「「「……」」」」
ワグナーの返事に、その場は一時静かになる。
何せ今まで人手として『ブリタニア人を雇う』ことはあっても、それ等は『監督役』などであって『作業員』としてではない。
今更好待遇で募集をかけても、通常のブリタニア人であれば手作業になど見向きもしないだろう。
尚、『アッシュフォード学園』や『ペンドルトン学園』などにいるブリタニア人を基準にしては駄目であると追記しよう。
「……コホン! ワグナー侯爵、合衆国日本はどうでしたか?」
「む? まぁ……タイゾウ・キリハラは噂通りの御仁だったな。 予想外だったのは
「あの『ネモ』と会ったと耳にしましたが……」*1
「『アレ』か……」
「「「「(『アレ』呼ばわりとは一体……)」」」」
「「「「(ワグナー殿が遠い目をしている?!)」」」」
「『アレ』は……そうだな、
「そ、そうですか……」
「しかし、マリーベル皇女殿下のゲストとして参加されたのでしょう?」
「やはり二人は親密な間柄なのだろうか?」
「うむ。 仮面の下は窺えなかったが、皇女殿下を介して話しをすることが多かったので恐らく『ネモ』は噂のように貴族の出ではない。」
「『クロヴィス殿下がネモ』、というのはやはりあくまで噂だったのか。」
「残念というか……………………なんというか。」
「婦人たちが聞いても、果たして何人が信じるか……」
「いや、まだ決まったわけではない。」
「そうだぞ。 ついこの間の『ヴィス仮面』の8巻に────」
────ここから先は『ランスロット仮面』をインスピレーションに作られた二次創作、『謎のヴィス仮面』の話で各々が盛り上がるので割愛しよう。
「……」
今までの一部始終を見聞きしながら静かに部屋の端で舐めるようにワインを飲んでいた褐色の青年が給仕係にワイングラスを預け、そのまま屋敷を出た。
「(全く、貴族というのは全く変わらないな────ああいや、違うか。
屋敷を出た青年はそのまま一人で車に乗り、夜道の中を慣れた様子で移動した。
「ふわぁ。」
夜空に大洋が登り切った頃に褐色青年はようやく目的地に着いたのか、大きな屋敷の前に車を止めてから出るなり盛大な欠伸を出した。
「(しまった。 ここ最近、徹夜をすることが無くなってから身体がなまってしまったな。 それとも飲んだ酒か? 微量だったんだがな────)」
「────あれ? レド? 今帰ってきたのかい?」
スーツの褐色青年────レドの姿に気が付いた、汗ばんだ上半身をタオルで拭いていた黒髪の青年が声をかけた。
「ああ、クル────じゃなくて『ユウジ』さんも朝からお疲れ様です。 今日も畑仕事ですか?」
「今日はランニングかな。」
「(普通で)意外ですね。」
「そうかな? いつもの6㎞に慣れて来たから今日は10㎞に挑戦してみたんだ。」
「……………………………………………………………………そうですか。」
レドは色々と思考した末に諦めた様子を表面に出さず、愛想笑いを浮かべながら生返事だけをした。
「というかそもそも何ですか、その名前?」
「え? ああ、『ユウジ』なら少し前にそう呼ばれたことがあったからね。 それをそのまま使うことにしたんだ。」*2
「はぁ……(安直すぎる。)」
「ああ、レド。」
「何ですか?」
「おかえり。」
「……ただいま。」
『ス────じゃなくてユージ~! 朝食出来ているわよ~!』
屋敷の近くにあった来客用の離れから、何の変哲もないワンピースの上にエプロンを着た茶髪の女性が手を振りながら『ユウジ』を呼ぶ。
「おっと。 ユーちゃんが呼んでいるから、機嫌を損ねる前に僕は行くよ。 またあとでね、レド。」
『ユーちゃん』に呼ばれた『ユウジ』はそのままレドに微笑みながらその場を後にし、その姿をレドはポーカーフェイスのまま、ただじっと見ていた。
「どうした、レド?」
「シュネー? 早起きだな。」
「ああ、珍しく窓の外を見たらお前たち二人が居たから来たんだ。」
「……」
レドは自分、あるいは『ユウジ』の姿を見て出てきたと言うシュネーの顔を、レドはジッと見た。
「オレをジッと見てなんだ?」
「いや、何でもない。」
「(『何でもないと口にしている割にはいつもの表情を崩しているぞ』って言ったら、絶対何か嫌味を言い返すだろうな。)」
シュネーは微笑を浮かべるレドを見て、思わず口に出そうな言葉を飲み込んだ。
「ところでシュネー、今日も妹君の姿が見えないがまだショックを受けて寝込んでいるのか?」
「……そうだが?」
「あそこまで精神的に参るって、どれだけユウジさんに惚れていたんだ。」
「レドも恋愛を経験すれば分かるんじゃないか? 軍学校からモテモテだったろ?」
「……そうだな。 考えてみるよ。」
……
…
「ありがとうございます、アンジュさん。」
「いやいや、いいってことよ!」
同時刻、世界の反対側に位置する合衆国日本のアッシュフォード学園のとある教室ではスヴェンがダンスの講師となり、そして予想以上の生徒の参加によってナナリーのリハビリに時間がどうしても割けなくなったその日、意外にもアンジュが代わりをすると立候補してきた。
始めはナナリーや付き添いのアリスも不安だったがいざリハビリが始まると、これまた意外にもアンジュはスヴェンに次ぐかあるいは同等のリハビリノウハウ技術を披露した。
「(あのアンジュさんがスヴェンさん並みにリハビリの理解を持っていたとは……だからスヴェンさんも了承したのかしら?)」
「……それにしても意外。」
「んあ? 何が意外なのアリス?」
「アンジュがまさかここまで気遣いが出来るなんて。」
「(アリスちゃん?! 呼び捨て?! 直球過ぎぃぃぃぃぃ!)」
「……『らしくない』って言いたいわけ?」
「ありていに言えばね。 慣れていた様子だけれど、以前にリハビリをスヴェンか誰かから習っていたの、アンジュ?」
「う~ん……」
「????????」
ナナリーは無数のハテナマークを頭上から発した。
何故なら彼女の中ではてっきりアンジュがゴリラ野蛮人バイオレンス化
「………………………………ごめん。 自分でもよくわかんないや。」
「ええええええぇぇぇぇ……スヴェンといい、ルルーシュといい、レイラやマーヤ……何でこうも平然となんでもこなせちゃう人たちがゴロゴロいるのよ……」
「あ、あははははは……」
どんよりとするアリスに、ナナリーは乾いた笑いしか送れなかった。
「……」
その反面、アンジュは考え込んでいた。
「(………………………………あの子の足が不自由なんてことはなかったはずなのに、なんで
後書きEXTRA:
ナナリー:ところで風の噂で聞いたのですが、『ダンスが一番上達した人が相手を指名できる』って本当ですか?
アンジュ:え。
アリス:いやまぁ……そう、だけど?
ナナリー:………………………………………………………………(◜ω◝ )
アンジュ+アリス:(゚Д゚;)
ナナリー:………………………………………………………………ふーん♪ (◜ω◝)
アンジュ+アリス:((((゚Д゚;))))ガクガクブルブル