小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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今話はルルーシュとリヴァルが中心です。

2/23/2026:
挿絵をストラップ無しのものに変えました。


第336話 夜会2 (挿絵)

「「「「…………………………………………」」」」

 

『リヴァル』と名乗った青年はどこからどう見ても普段のへらへらとした、チャラいリヴァルからは程遠い様子で、クスクスと静かに声を殺して笑うルルーシュ以外の誰もがあんぐりと口を開け、その場はシンと静まり返っていた。

 

「……どうした?」

 

「えっと……本当にリヴァル先輩、なのかな?」

 

 当人のリヴァルはそんな周りの者たちの視線が気まずいのか、頬を掻こうとして手を上げるが最後の最後で固まっていたミーヤにその手を差し伸べるがミーヤは固まったままもう一度確認する質問を投げかけた。

 

「だからさっきも言っただろうに……でもどうやら、一曲目に間に合ったようだな────?」

「────ま、ま、ま、ま、ま、ま、ま、ま、ま、間に合いましたけどぉぉぉぉぉ?!」

 

「フフ。 こういうパーティは初めてか?」

 

「そ、そうだけど……」

 

「では初めてパーティへ(のぞ)む淑女をエスコートする名誉を、私に与えてくださいますか?」

 

「……はい?」

 

 ニッコリ。

 

「お手をどうぞ、レディ。」

 

「あ、ハイ。」

 

 リヴァルの苦笑にようやく再起動したミーヤは裏返った声で答えつつもギクシャクとロボットのように腕を上げて差し出されたリヴァルの手に自分の手を重ね、リヴァルは優しい笑顔を彼女に向ける。

 

 今、俺は猛烈に叫びたい。

 

 『ホンマに誰やねんお前?!』と。

 

 いや、キザなセリフを平然と口にするのはこの際ノーカンとしてだな?

 

 いや本当に誰?

 

 本当にリヴァル?

 

 「クククククククククククククククククク。」

 

 何だろう?

 急にルルーシュ特有の悪~い『ククク』が俺に向けられているような気がしてきたぞ?

 

「うわぁ……なんだか久しぶりに()()()()()()リヴァルを見たような気がする。」

 

 え。

 ちょい待ちシャーリー。

 その話をKU・WA・SHI・KU(詳・し・く)プリーズ。

 

「ちょ、ちょっとシャーリー? それってどう言う意味?」

 

 ナイスだカレン!

 よくぞ俺の聞きたいことをドストレート(直球)に聞いてくれた!

 

「あー、私も中等部辺りから知らないけれど実はね? リヴァルも昔はちゃんとした貴族嫡男として凄かったの。」

 

 シャーリー……何もそんなあけすけに言わなくても……

 

「『ちゃんとした』って……」

 

 ほら見ろ。 カレンでさえ顔を引き攣っているぞ?

 

 いやでも、『ちゃんとした』ってどう言う意味だ?

 ええい、ままよ!

 

「シャーリー。」

 

「なーに、スヴェン?」

 

「その……『ちゃんとした』というのはどう言う意味だ?」

 

「……ふ~ん? スヴェンでも知らないこと、あるんだぁ~?」

 

 二ヨ二ヨ二ヨ二ヨ二ヨ二ヨ。

 

 う、う~ん……一ファンとしては半目で二チャリとした小悪魔的なシャーリーの一面を見られて嬉しい反面、『ここでルルーシュ似になるのはどうかと思っちゃうゾ』と言いそうな自分がいる。

 

 でもシャーリーが黒髪だったら完全に中身(ル〇ア)と一致するな。

 

「そこまでにしておけシャーリー、知らないことは知らないからな。」

 

「は~い♪ ケホン……それで話を戻すけれどね? 噂ではリヴァルって中等部まで時々女生徒の話題に上がっていたんだけれど、高等部になってからはぱったりと出なくなったの。」

 

「そうですか……それで?」

 

「え? それだけだけど?」

 

 シャーリー……結局お前もわからんのかい。

 

 あ、そう言えばルルーシュが『吹っ切れた』とかなんとか言っていたな。

 

「ルルーシュは、リヴァルの()()を知っているのか?」

 

「ああ、なんとなく察しはつくが、俺の口から語れないな。」

 

 アニメだとゾクゾクワクワクするが、いざリアルで見るとこのニヒルで勿体ぶったような表情はイラっとくるな。

 

 「そもそもスヴェンも気付いていたのだろう? でなければ最近彼の後押しをしていなかった筈だ。」

 

 いやでもなぁ……

 

 あのリヴァルがここまで化けるとは流石に俺も思わなかった。

 

『え、ちょっと待って?!』

『本当にリヴァル?』

『マジでかー。』

『そう言えばアイツ、貴族家の嫡男だったな。』

 

 周りの生徒たちが騒いでいる間にミーヤはどこ吹く風のまま手を取ったリヴァルによって会場の中へと進み、様変わりしたリヴァルにほんのりと頬を赤くしてぽかーんとしていた女生徒たちがペアの男子たちに肘で小突かれたり、声をかけられる。

 

「それで一曲目はルルーシュだっけ?」

 

「ああ。 よろしくな、ミーヤ君。」

 

 ニッコリ。

 

「……あ?! ひゃい!」

 

「じゃあルル、私はここで待っているね────」

「────あ?! ご、ご、ごめんなさい先輩! 少し考えれば分かるのに、何で私────」

「────いいのよミーヤちゃん! その気持ち、分かるもん!」

 

「じゃあ、いってくる。」

 

「いってらっしゃ~い♪」

 

 「こ、これが正妻の余裕……」

 

 ミーヤちゃん、ドンマイ。

 

 ♪~。

 

「それじゃあ、()たちも行こうか。」

 

「う、うん。」

 

 楽団がゆっくりと音楽を奏で始めるとそれぞれのペアが会場の中央へと集まり、俺は久しぶりに『従者係』の仮面をつけてカレンをエスコートする。

 

「……大丈夫かな?」

「カレンなら俺のリードと、周りの真似で何とか凌げるはずだ。 頑張れ。」

 

 そうして俺たちがダンスし始めると、シャーリーとダンスするリヴァルの光景が目に入った。

 

 リヴァル、お前なにやっとんねん。

 

 

 

 


 

 

 

「んじゃ、俺らもいくかシャーリー。」

 

「へ?」

 

 ルルーシュたちがダンスし始めると、まるであたかも当然のようなリヴァルの言葉にシャーリーは目を点にした。

 

「いや、だってなシャーリー? 俺がいるからまだ声がかけられていないだけで、お前も『学園で付き合いたい女子』の上位ランカーなんだぞ?」

 

「そうなの?!」

 

「『気付いていないかもしれない』と思ったが、ここまでかよ……だからと言ってはなんだが、俺も虫除けに徹してルルーシュに恩を売っときたいってのが本音だけどな。」

 

「……なるほど?」

 

 そうしてシャーリーはリヴァルの手を取り、前回のダンスを反省してか必死にこの日の為に予習したダンスレッスンを思い出した……のだが────

 

「────リヴァル、滅茶苦茶上手いね。」

 

「へ。 オレだって貴族の端くれだからな。」

 

「……」

 

 いつものおちゃらけた様子とは違う、余裕たっぷりなリヴァルを想像したシャーリーは内心でため息をついた。

 

「(いつもこんな感じだったらモテたのに……あ、でもミレイ先生一筋だったからそうでもないのかな? う~ん……どっちなのかな?) ねぇリヴァル?」

 

「なんだ?」

 

「もしかして生徒生活が大変になるから、ワザといつもあんな感じだったの?」

 

「……本当にシャーリーって時々普段は聞きにくい事をしれっと口にするよな?」

 

「ちょっと、リヴァル?」

 

「怒んなって。 『シャーリーのいいところだ』って言いたいだけだ。 これはまぁ、その……色々とあったんだよ。」

 

「色々って?」

 

『さっき言ったばっかなのに』と思いつつも、リヴァルは出そうになったため息を飲み込んでそれを言葉に変えた。

 

「ま、強いて言うならば『劣等感』だな。」

 

「え。」

 

 苦笑するリヴァルに、シャーリーはびっくりした。

 

 何せいつものリヴァルはへらへらとする楽天家で、嫌なことがあって一時は気落ちをしてもすぐに調子が戻るお調子者での印象が強く、『劣等感』とは程遠かった。

 

「れ、劣等感って────」

「────『そんなガラじゃない』か? 言っただろう、()()()()()って。」

 

 そこでリヴァルはチラリとターンの隙間に、横目でルルーシュをちらりと視線を移す。

 

「??? ルルがどうしたの?」

 

「……………………はぁ~……」

 

 リヴァルはとうとうため息を出してしまった。

 

 というのもそれは別に察しの悪いシャーリーへと向けたものでは無く、考えれば割と単純な理由とありきたりな話である。

 

 

 

 実はリヴァルはカリフォルニア州でもきらびやかなロサンゼルスの出身であり、割と名の知れた家の者たちが集う初等部では群を抜いて学問だけでなく乗馬なども含めて『文武両道』として知れ渡っていた。

 

 それこそリヴァルの家との繋がりを持とうと縁談などが申し込まれるほどで、リヴァルと彼に期待する父親の仲は良好だった。

 

 それらが一変したのは、当時話題になっていたアッシュフォード学園にリヴァルの父親がより高みを目指すため、より広いコネを作るために、彼を送ったところから始まった。

 

 中等部に転入した最初こそロサンゼルスにいたようにリヴァルは同年代で格上だった家の者たちより優秀だったが、突如として彼以上の少年が現れた。

 

 試験の結果が出され、その都度にリヴァルは()()()少年に打ち負かされて期待を寄せていた父親から文句を言われ、今まで仲が良かった友人たちやちやほやと言い寄って来ていた者たちも徐々に離れ、実家にも届く手紙やお茶会への誘いも比例して減りそれが更にリヴァルの肩にのしかかる重荷を加速させた。

 

 そしてある日、リヴァルは平民の少年────()()()()()を呼び出したのだった。

 

 始めは実家を陥れようと、ワザと平民を装った高位な者に雇われた者なのかと問いただすと────

 

『そっちこそワザと手を抜いているんだろ?』

 

 ────という答えを返された。

 

 それから馬鹿にしたような(呆れた)ルルーシュの様子に不満を持ちながらもリヴァルは必死になったがどれだけ頑張っても二位から脱することは一度もなく、徐々にリヴァルはやる気を無くしていった。

 

 そんなリヴァルの様子に実家が満足する訳がなく、『結果が出るまで』と仕送りは打ち切られ、リヴァルはどうすれば良いのか分からなくなった。

 

 そこでリヴァルは()()()()を聞き『これだ』と思い、飛びつくこととなる。

 

 エリア11の租界ならではの、ガス抜きとみなされて役人からも黙認されている非合法な『賭け』である。

 

 元々リヴァルは『学費の為』と自分に言い訳をし、実家や学園には『給仕のバイト』と装って、その裏で荒稼ぎも兼ねつつ相手を負かして得る高揚感は久しぶりに味わう甘い蜜だったこともあり、彼は一気にのめり込んだ。

 

 だが彼は多くの者の不興を買った所為でとうとう()()()()()()たちに目を付けられて嵌められた。

 

 そんな彼を窮地から救ったのはルルーシュだった。

 

 というのもルルーシュがしたことと言えば相手を煽ってリヴァルの身柄を賭けの対象にした挙句、勝ったタイミングで前もってその裏カジノの存在を教えた保安局の突入で逃げやすくすること。

 

 

 

「(いやぁ……思い返せばオレって本当にバカだったなぁ。)」

 

「どうしたのリヴァル?」

 

「いや、昔を思い出していただけ。」

 

 リヴァルはもう一度横目でルルーシュが居る場所を確認すると、ルルーシュは彼らのことを気にした様子もなく、悠然とした愛想のよい笑みでミーヤと踊っていた。

 

「なぁ、シャーリー?」

 

「何、リヴァル?」

 

「オレってやっぱこの方が良いと思うか?」

 

「え?」

 

「う~ん、言い直すか。 オレ、カッコいいか?」

 

「あ、うん。 カッコいいけれど?」

 

「そっかそっか♪ それは良かった♪」

 

 笑みを浮かべたリヴァルはシャーリーの耳元に口を寄せる。

 

 「オレとルルーシュ、身長が同じぐらいだもんな。」

 

「────。」

 

 上記の言葉をシャーリーが頭で理解する前に、彼女の顔は耳まで真っ赤になり、口は陸に上げられた魚のようにパクパクと開く。

 

 

 

「……」

 

「どうした、ミーヤ君?」

 

 リヴァルとシャーリーがダンスし始めた直後の、まだ二人の事を知らないルルーシュにミーヤは複雑な顔を向けていた。

 

「あ、ううん……その、リヴァル先輩にまだびっくりしていて……」

 

「ああ。 俺も久しぶりにあのリヴァルは見た。」

 

「??? ルルーシュ君は昔のリヴァルを知っているの?」

 

「中等部ぐらいに、ちょうど新大陸から転入した辺りからかな?」

 

「へぇ~。」

 

「(あの時は大変で、衝撃的だった。)」

 

 ルルーシュは人当たりの良い笑みをしながらも、心の中では昔を思い出してゲッソリしていた。

 

 それは丁度『ランペルージ』の性とアッシュフォード学園での住まいに慣れてきた頃で、ミレイがいつもより興奮した様子で新しい転入生の事をルルーシュとナナリーに話していた時。

 

 そして転入生の事をミレイから聞いたルルーシュは久しぶりに張り合いのある相手が来るからか、(静かに)ワクワクしながら(体育以外)()()()学業に取り組んだ。

 

 結果は『暖簾に腕押し』のようなものでルルーシュは最初、『ワザとこういう振る舞いをしているのでは?』と怪訝に思い、自分らしくもなく転入生────リヴァルに最大の恩が売れる局面で彼を助けた。

 

 そこから彼の人となりを理解する為、以前から転入生として来ていたリヴァルの面倒をそれとなく見ていたミレイと話した。

 

『会長から見たリヴァルはどんな感じですか?』

『う~ん……素直な頑張り屋さん?』

『しかし()()二日(休日)をかけても教科書を覚えていませんでしたよ?! あんな()()は見たことが無い!』

『えっと……いい加減周りを自分と比較するのはやめた方が良いわよルルーシュ?』

『……』

 

 これ以上は()()なやり取りと感じたルルーシュは次の日、リヴァルに自作した『課題』を与えていった。

 

『これを解け。』

『え?』

 『解け。』

 

 有無を言わせない威圧を放ったプチシャルルーシュルルーシュを前にリヴァルは言われた通りにしていき、ルルーシュは次々と『課題』を渡しながら時間を計っていった。

 

 そしてそれらをリヴァルが解いていくその度にルルーシュの顔色は悪くなっていき、最後は無言でフラフラとした足つきでルルーシュはその場を後にし、あまりの様子にナナリーが声をかける程に生気が無くなっていた。

 

『あの、お兄様? どうかされたのですか?』

 

『……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……少し、眩暈が……』

 

『???』

 

『今日、例の転入生と会ってきた。』

 

『まぁ……喧嘩でもなさいました?』

 

 (アリ)のような奴とか? 冗談はよしてくれ。

 

『え。』

 

『一時間あれば簡単に解ける課題を、アイツは三時間かけて解いたが不正解だった。』

 

『は、はぁ……』

 

『高等部の最終試験レベルでようやく時間内にギリギリ終わり、ギリギリ合格点だった。』

 

『……そうですか。』

 

 ナナリーは思わず聞いたことも無い兄の口調にビックリしつつ、珍しく落ち込んでいる彼に相槌を打った。

 

『あんなのが“天才”と今のブリタニアでもてはやされていると思うと、頭が……ノイローゼになりそうだ。』

 

『お兄様は昔から自分を基準にするその癖をどうにかすればいいのでは?』

 

『………………………………………………そうだな、ナナリーの言うとおりだ。』

 

 

 

 

 

 そしてルルーシュはこの日を境に『さじ加減』を身につけたのだった。

 

「(あの時から周りに合わせて()()()()()良い成績を保つことに楽しみを見出せたな。 それからリヴァルも『二番手』に自ら甘んじたのも良い具合に噛み合った。)」

 

「ルルーシュ君?」

 

「(おっと、今は目の前の課題だ。) ああ、すまない。 とてもプレタポルテ(高級既製服)のドレスとは思えない君の姿に感心していたところなんだ。」

 

「ヒュ。」

 

 ダンスのリードを固まったミーヤに合わせながらターンするルルーシュの視界に入ったのはリヴァルとシャーリーがダンスする光景で、更にリヴァルは何かを呟いたのかシャーリーの頭部は真っ赤になっていた。

 

 「(何故シャーリーとリヴァルが?! そもそもリヴァルは何を言った?! 何故赤くなっている、シャーリー?!)」

 

 そこで丁度一曲目が終わるところでシャーリーがステップを間違えたのかリヴァルが彼女の身体を引き寄せ、まるで抱き合うかの様な二人の様子にルルーシュは気が付けばミーヤから離れてシャーリーの手を引っ張っていた。

 

「え? え?! え?!」

 

 シャーリーは目を白黒させながら、ヒラヒラと手を振る『いつものリヴァル』と何も言わずにバランスを崩しそうな大股で歩くルルーシュを見る。

 

「あ、あの! ルル?!」

 

「……」

 

「ルルってば!」

 

「……なんだ。」

 

 会場から連れ出されて名前を呼んでようやくルルーシュは返事をする。

 

「その、手が痛い……」

 

「ッ。 す、すまない!」

 

 ルルーシュは慌ててシャーリーの手首を離した。

 

「(オフショルダーの長袖で見えないが、もしかしたら痕でもついているのだろうか?)」

 

 ルルーシュがここで思い浮かべたのはデーモン化したシャーリーパパ(ジョセフ)が玉砕覚悟で特攻を仕掛ける妄想だったが、彼は手をパタパタと振ってそれを払った。

 

「ねぇ、ガゼボに行かない?」

 

 学園の敷地内とはいえ冬なので外はまだ肌寒く、シャーリーが差したガゼボにはハロゲンヒーターが付いていた。

 

「そ、そうだな。」

 

 庭を歩き、二人は温かいガゼボの中に腰かけると二人は黙り込んだ。

 

 ルルーシュは落ち込んだようにただ視線を下し、シャーリーはそんな彼に声をかけるかどうか迷うかのようにソワソワした。

 

「さ、さっきはどうしちゃったのルル?」

 

「………………………………だ。」

 

 ようやくシャーリーが沈黙を破り、ルルーシュは数秒後に聞き取れない答えを出した。

 

「えっと……ごめん、何?」

 

「…………………………シャーリーが、他の奴と踊るのを見たくなかったからだ。」

 

うぃえ?!」

 

「なんだ、その顔は?」

 

 全く想定外だったルルーシュの言葉にシャーリーの顔は嬉しいのか照れているのかびっくりしているのか分からない、思わず『彼女の表情筋はどうなっているんだ?』とルルーシュが思うほどに歪んだ。

 

「う、う、う、う、う、う、う、う、う、ううん! 何も!」

 

「???? シャーリー、そのドレス……色が変わっていないか?」

 

「あ! これね、流行っているの! なんだか月と人工的な光で色が変わる素材で作られた特注品でね? 一見すると青色なんだけど、むら────あ。」

 

「???」

 

 突然生き生きとしたシャーリーが口を閉じ、ルルーシュはハテナマークを頭上に浮かべる。

 

「(せ、セーフぅぅぅぅぅぅぅ! 思わず『紫色に変わる』っていいそうだったよぉぉぉぉあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!)」

 

 シャーリーは両手を頬に当てたまま、素早くガゼボの周りを見て人気が無いことにホッと胸を撫でおろし、ルルーシュの視線が掴まれた手首に向けられていることに気が付く。

 

「……気になる?」

 

「別に────って何を急に袖を脱ごうとしているんだ。

 

「いや、『直接見た方が安心するかな~』、って。」

 

「なッ?!」

 

 目を見開いたルルーシュを無視したシャーリーは器用に袖の留め具を外すと、袖がするりと脱げる。

 

「なんだかバランスが悪いからもう片方も外すね────」

「────ちょっと待────~~~~~~~!」

 

 ルルーシュは何とも言えない表情で袖を脱いだシャーリーを前に頭を抱える。

 

「う~ん、ヒーターあってよかった!」

 

「むしろ暑すぎるぐらいだ。」

 

「ほら見てルル! 痕も何もないよ!」

 

「そ、そうか。」

 

「んっふっふっふー♪ (ひゃああああああああああ! ルルが照れてるぅぅぅぅ! きゃああああああわいいいいいい!♡)」

 

 シャーリーは必死にニヤける顔を我慢するがそれでも気付かれたのか、ルルーシュは負けじとそっとシャーリーの手を取って手首を見る。

 

「ぴゃ。」

 

「……そうだな、痕はないな。」

 

「…………………………ル、ルルの手大きいね。」

 

「↑ホ?!」

 

 シャーリーも負けじと思ったのか、彼女は自分の手をルルーシュの手の上に置くと彼は裏返った声を出し、思わず振り払う衝動を我慢した。

 

「(思っていたより小さいな。 なのに裁縫以外は破滅的なのが不思議だ。)」

 

「(うわぁぁぁぁぁん! 手汗かいてる最悪ぅぅぅぅぅ! 泣ぎだい゛!)」

 

「も、戻るか?!」

 

「う、うんそうだね────イタ?!」

 

 我慢できなくなったのか、挙動不審の二人が立ち上がって歩き出すとシャーリーは顔をしかめる。

 

「どうした?」

 

「あ、足が────」

「────見せてみろ────」

 「────↑↑↑↑↑へぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」

 

 すかさず真剣な顔のままシャーリーを座らせたルルーシュはそのまま彼女の足首を診て舌打ちをする。

 

「さっき俺が引っ張られた時にくじいたか。 少し待て、今包帯を巻く。」

 

「なんで包帯なんか持っているのルル?!」

 

「スヴェンの『ソナエアレバウレイナシ(備えあれば憂いなし)』というヤツだ。」

 

「あー、なんか『準備しておいて損はない』ってやつかー。 確か()()()ちゃんもコトワザってやつが好きだよねぇー。」

 

「そう、なのか?」

 

「そうだよ。 あとは────」

「────いやちょっと待ってくれ。 今、彼女の名前を言わなかったか?」

 

「………………………………………………………………………………いやいやいやいやいやいや。 流石に来ないでしょ────!」

 

 ────ガサッ。

 

 突然の物音にルルーシュとシャーリーはビクンと震えて固まり、背筋を伸ばし、今の自分たちが傍からすればどのように見えてしまうのかが二人の脳裏をよぎった。

 

「ルル────!」

「────ぬわ────?!」

「────ぎゃ?!」

 

 シャーリーは生け垣の隙間にルルーシュを押し倒すかのように押すが、勢い余ったのか彼女自身も倒れ込み、ルルーシュはシャーリーを受け止める。

 

 シャーリーは完全にルルーシュに覆いかぶさるような、身体の体重を預けるようにぴったりと重なった上、二人の顔と顔が近くなった。

 

「ルル、ご────」

「────シ!」

 

 小声で誤りそうなシャーリーの口をルルーシュが手で閉ざしてから数秒後、近くをドレス姿の神楽耶がウロウロする。

 

「???? 変ですわねぇ……声が聞こえて来たのに……」

 

「「…………………………」」

 

 数分後、ようやく神楽耶は諦めたのかその場を後にして気配が無くなってからシャーリーは起き上がろうとしてピンッと何かが引っ掛かったような衝撃に動きを止める。

 

「あ、あれ? ねぇルル────」

「────・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・」

 

 シャーリーは感じた違和感の正体を聞こうとして、ルルーシュの顔が薄暗い茂みの中でも真っ赤になっていっていることにギョッとする。

 

「ルル────?!」

 

 ────スル────

 

「────へ?」

 

 ルルーシュが目を瞑って顔を背け、シャーリーはスルリと感じた違和感に目線を下げるとヒュッと息を飲み込んだ。

 

 どう言う訳か、シャーリーのオフショルダードレスが脱げかけていたのだった。

 

 

【挿絵表示】

 




これでもかなりリヴァルの過去は簡略化しました。 (汗

尚どうでもいい余談:
『メイリン』と思えばシャーリーの声がイメージしやすいかと思います。

色は分かりにくいですが『黒』です。

カモフラージュに+5%の補正。 壁|ω・)チラッ
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