少々長めです。
時間は少々遡る。
具体的には貴公子のようなリヴァルが会場に現れ、周りの者たちがスヴェンを含めた殆どの者たちが驚愕に陥り、場が静まり返ってスヴェンの問いにシャーリーが簡単な説明をし終えて一曲目が終わった直後へと。
♪~。
そして気まずい沈黙に近いヒソヒソ話が目立ってきた会場の空気を入れ替えるかのように楽団が曲を奏で始め、ルルーシュの手を取ったミーヤの二人の後を追うかのように一組、二組とパートナーたちがフロアに出る。
「(さて、俺たちも出るか。)」
そう思いながらスヴェンが歩き出そうとするが、隣にいたカレンは動き出す気配がなくて彼は歩みを止める。
「どうした、カレン?」
「……やっぱり、ちょっと自信ない。」
「そうか? さっきも言ったように、カレンなら見よう見まねで凌げると思うぞ?」
「そうかな……」
「(身体能力が
「なんか今変なこと考えなかった?」
「いや? (コッッッッッッワ!)」
スヴェンは見事なポーカーフェイスのまま答えるが、どこか違和感を持ったのかカレンは納得していない顔を何とか我慢するが代わりに彼女の眉間にしわが寄せられる。
「(これは信じていないな……よし。)」
スヴェンはかがむと、カレンにだけ聞こえるような声を出す。
「怖いか?」
「え?」
「カレンが怖いのなら、俺が何とかする────」
「────あ。 う、ううん大丈夫! 小さい頃の時みたいにすればいい?」
「(小さい頃? ……ああ、あの時か。 アンジュの時、万が一の為の付け焼き刃のやつ。) ああ、それで構わない。」
スヴェンが上記を言い終えると手を差し出し、カレンは指先を乗せるとゆっくりとした音楽に沿ってワルツのステップを踏み出す。
「(お、カレンがあの時に叩き込んだドレスの基礎を覚えているなんて意外だ。)」
「ブツブツブツブツブツブツブツ。」
「(じゃなくて必死に思い出している最中か。 集中しすぎて目も俺を見ていないし。 しかしカレンのドレス、絶対にジョナサン様のテコ入れがあったと見る。 カレンの事だからてっきり適当なワンピースで済ませると思いきや、ホルターネックドレスで思わず目を点にするところだった。)」
「す、す、す、スヴェン。」
「(およ?) なんだ?」
「何か喋って。」
「(なるほど。 よく見ると必死だ。) ドレス、似合っているぞ。」
「なっ?!」
フミ。
「グッ────」
「────ご、ごめん────じゃなくてスヴェンが変なこと言うから────!」
「────いや、大丈夫だ。」
「てかスヴェン……今日は降ろしているんだね?」
「ん? 何がだ?」
「髪。」
「まぁな……やっぱり上げていれば良かったか?」
「う~ん……これはこれでいいかな? ちょっとルルーシュに似ていて癪だけど。」
「↓↓ほぉ? ではこういうのはどうだ────?」
「────気持ち悪いぐらいに似ているから無しで!」
スヴェンがルルーシュをイメージした低い声とニヒルな笑みを出すとカレンは明らかに嫌な顔をして、ギリギリ周りに聞こえない声でツッコミを入れた。
「……いやでもやっぱりいいなぁ。」
「何がだ?」
「うん? ああ、ちょっとね。 『平和だなぁ』って。」
「……」
「この2、3年は特に色々あったから時にそう感じちゃうんだよね。」
「(確かにな。)」
ターンの隙間にスヴェンは横目で愛想笑いを浮かべつつシャーリーの方を見るルルーシュと、満更でもなさそうかつ敢えてルルーシュに見せつけるようなダンスステップを踏むリヴァルとそれに気付かないシャーリーを見る。
「♪~」
「……(汗)」
次に見たのはウキウキと笑顔でダンスをするライラと、彼女とは対照的にステップを間違えないように汗ばんだポーカーフェイスのまま無言でステップを踏むアリス(男装)。
そして────
────アリス同様にスーツで男装していた毒島とどう言う訳か事前に採寸のチェックをし終えたドレスではなくバニーの衣装を着つつも照れているのか恥ずかしいのかはたまた別の気持ちに頭部全体を赤らめたアンジュがいた。
声は聞こえずとも、態度から二人の会話は容易に想像できた。
『まぁそう固くなるなアンジュ────』
『────いやいやいやいやいやいや! なんでバニーなワケ?! 私ちゃんとドレスクローゼットの中に入れていたはずなのに何でバニーなの────?!』
『────ほれほれ、ワンツーワンツー────♪』
『────ちょっとはぐらかさないでよサエコ! ハイヒールのままダンスなんてしたことないのよ────?!』
『────うむ。 だがアンジュならできるだろう────?』
『────そんな出来る子みたいな流れに騙されてたまるかっての!』
「(うん、めっちゃ想像しやすいな。)」
「……スヴェンもバニーの方が良い?」
「いや、ちょっとな。 (今頃はこんな団欒どころか、学園からはルルーシュもミレイもカレンも去っていて、シャーリーはこの世にいなかったからな……)」
「でも驚いたね、リヴァルがあんなに変わるの。」
「分かる。 (原作だと終始ヘラヘラしたミレイ一筋のチャラ男だったからな。)」
「てかなんでいつもあんなへらへらした感じなんだろ? シャーリーの話を聞いても、あんまりピンとこないというか……」
「俺なりの考えだが……話の流れと態度から察するに、おおかたルルーシュが絡んでいるんだろう。 (プライドをへし折られたりとか。)」
「その頃から性格が悪かったんかい、あの腹黒。」
「おいカレン、素が出ているぞ。」
「うぃえ?!」
「あとさっきから俺の足をかなり高い頻度で踏んでいる。」
「ご、ごめん! これだから貴族は……ブツブツブツブツブツブツブツ……」
カレンは不貞腐れ気味な声を出しながらも、もう一度意識を足に向ける。
見つめ合い続けるのがどこか苦手なのか、少し視線を合わせてもすぐに顔を逸らして凌ぐ。
なるべく掌越しに感じる相手の温もりから。
手の厚みから。
背に添えられた手の温もりから。
頼もしさから。
わざと強い遠心力でぐるぐると回ってみたくなる衝動から。
それはまるで、昔から彼の腕に抱かれたいという気持ちの表しの様に。
昨日より。
去年より。
何年も前から。
ただクルクルクルクルクルクル、強い遠心力を受け止めながらドレスの輪が開く。
まるでこの時を待っていたかのように。
クルクルクルクルクルクル、まるで時計の歯車が回り、針が動くように。
この人となら、
どこまでも。
クルクルクルクルクルクル。
ああ。
数分、あるいは数秒後にカレンは意を決してか、顔を上げてスヴェンを見る。
「ねぇスヴェン?」
「なんだカレン?」
頼りがいのあるリードにカレンは慣れてきたのか、彼女はすうっと大きく息を吸ってから覚悟を決めたかのような眼差しでスヴェンを見る。
「
スヴェンは周りを見る。
今は一対一で内緒話が出来るダンスの中でも、ワルツはダントツでもってこいである。 何せペアは常にクルクルと移動し続けている上に楽団の奏でる音楽が会場に満ちている。
余程耳が良くて集中しなければ、話の内容など聞き取れないぐらいに聞こえないだろう判断したスヴェンは頷いた。
「ああ、話せるが?」
「そっか………………………………………………ありがとね。」
「???? 何のことだ?」
「いや、詳しくは分かんないけどさ。 色々と裏で動いてたでしょ、ずっと?」
「どうだったかな。」
「毒島さんやアンジュにマーヤとか。」
「さてな。」
「あとはレイラさんとかアンナちゃんとかケイトさんとかフェリッリさんとかクロエちゃんとかヒルダちゃんとかサラさんとかオリビアちゃんとかマリエルさんとかニーナとかミレイとかマリーベルとかノネットさんとかオルドリンさんとかソキアちゃんとか。」
「はて、どうかな。」
「ライラとかアリスちゃんとかナナリーとかサンチアちゃんとかダルクちゃんとかルクレティアちゃんとかマオちゃんとかアーニャとかエリシアちゃんとか────」
「────いやちょっと待て。 最初はともかくなんだ今のラインアップは?」
「だって指輪を送ったじゃん。」
「変な方向に────いやよく思い返せば全体的に変だぞ。」
「……ねぇ。
「そういうカレンはどうなんだ?」
意を決した表情からどこか縋るような顔になったカレンの質問にスヴェンは答えず、
「え?」
「君は……カレンは今、幸せか────?」
「────えっと────」
「────不安はないか────?」
「────私は────」
「────恐怖を感じているのならば言ってくれ。 不快な思いをしているのならば遠慮しないでくれ────」
「────スバル────?」
「────君が二度と辛い思いをしないように、君の不愉快となる原因、君が孤独を感じないように、恐怖を感じないように、ありとあらゆるものを視界に入らないように取り除こう────」
「────え────」
「────だからもう震えないでくれたまえ。 傷だらけで壊れてしまいそうな
「……」
カレンの背筋にゾワリとした、言葉にしがたい感覚が登り、首筋がより一段とひやりと冷えた。
『何か喋らなければ。』
直感でそう感じたカレンだったが、何かを口にするのか迷い、彼女は口を開けては閉じる所作を繰り返した。
「す、す、ス────」
────ザワッ。
カレンがようやく名前を呼ぼうとしたところで楽団の曲が止み、スヴェンたちは自然と横目に入ってきた動きに注意を向ける。
「あれは、ルルーシュとシャーリー?」
スヴェンの問いに対し、タイミングを逃したカレンはただ俯いた。
『あれ? ダンスは完ぺきだったはずなのにどうしたんだ?』
気が付けばカレンが何とも言えない顔で俺を見上げていたので、そう思っていた俺がざわついた会場内の視線先を見たのは、顔を真っ赤にしてどこか戸惑うシャーリーと彼女の手を取ってどこか早歩きで会場を後にするルルーシュだった。
楽団の曲が終わったことにより、周りの話声が耳に入ってくる。
『シャーリー、ステップを間違えたのかな?』
『いやでもあのルルーシュがあそこまで動揺するなんてなぁ……』
『シャーリーがバランスを崩したんじゃないの?』
『見間違いとかじゃなかった?』
『リヴァルがシャーリーを抱き寄せたの?』
『もしかして……キス?』
リヴァルがシャーリーにキス……だと?
内心ギョッとしながら件のリヴァルを見ると、彼はルルーシュたちを見ながらニマニマしていたので耳を澄ませて彼らだけの声に集中する。
『ちょっとリヴァル先輩、何やったんですか?』
『うん? いつもルルーシュだけなのが不公平と思って発破をかけた。』
『発破をかけたって……何をしたんですか?』
『オレとルルーシュ、身長が同じぐらいだって言っただけ。』
『……よくルルーシュ君と同じだって知っていますね?』
『なかなかいないからな、オレと同じ目線のやつって。』
『ふーん……でも何で?』
『アレでルルーシュも結構感情的なところがあるけど、頭でっかちだからな。 ああでもしないと下手したらちゃんと二人が向き合うのが10年後とかになる。』
それには俺も同意だぞリヴァル。
何せ『あの』シャーリーと『奥手』より『臆病』なルルーシュだし……
でもよりにもよってお前がそれを言うのか?
『リヴァル先輩も人の子とは言えないんじゃない? ほら、ミレイ先生の事とかで有名だし。』
『あー……実は『好意』って言うより『恩』みたいなもんだ。 昔、ちょっと荒れててヤバいところを助けられて、ルルーシュがはっきりしない態度にムカついていたというか、“それならオレが~”って対抗意識を持ったというか……』
へー。
そんな裏設定があったのか。
知らなかったなー。
「あ、先輩先輩!」
おっと、踊りが終わってライラが急接近。
取り敢えず『優男』だな。
「何でしょうか、ライブラさん?」
「お手紙を預かっているです! えーと……」
「なるほど。 では行きましょうか?」
「えーと……」
手紙を預かっているというので、てっきりどこかに置いていると思ったらライラは逆に自分の胸の谷間────って、どっから出してんの君?!
「あ、あったです!」
「ライブラさん。」
「です?」
「手紙などの類を持つ時はハンドバッグをお勧めします。」
「え~~~~? もしかして先輩、照れているです~?」
パチン☆
クッ! そんなお茶目なウィンクに俺は流されないからな?!
てかこれ見たことあると思ったら完全にマリーベルムーヴだ。
「ライブラさん。 そういった行いは控えるべきかと思います。」
「??? どうしてです?」
「その……人が
「じゃあ勘違いしてほしい時はやっていいです?」
自覚している……だと?
「いやライブラちゃん……それも違うと思う。」
「どういうことですアリスちゃん???」
いや、純粋に分かっていないのか?
取り敢えず、生暖かいというところは無視して手紙を拝見しよう。
えーと、なになに?
『礼拝堂に来てください、話したいことがあります。』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ なーんか見たことあるような。
はて、どこだっけ?
……あ。
「カレン、少し行ってきていいか?」
「……」
「……カレン?」
俺がもう一度声をかけながら肩に手を置くと彼女の身体がビクッと震え、俺を見上げる。
「え?! あ、なに?!」
「あ、ああ。 少し席を外していいかと聞いたんだ。」
「……うん。」
よし。
「ライブラさん、アリスさん。 少しカレンの事を頼みますね?」
「合点承知の助です!」
古いなオイ?!
「いいけど……何かあった?」
「いや?」
アリスが小声でそう聞くが、俺はただ頭を横に振った。
そもそもダンス中のカレンはずっと無言で、俺は彼女のリードとフォローに集中していた。
…………
………
……
…
ジャリ。
会場の外へ出て、暖房が効いている渡り廊下を歩きながら礼拝堂を目指した俺は自分宛てに渡された手紙をもう一度見る。
差出人は書かれていなかったが手書きだったこととあまり記憶にない筆跡、渡してきた相手がライラだということから手紙の差出人をかなり絞り込むことができる。
さらにたどたどしい、
ギィ。
「あ、スヴェンさん。」
少々重い礼拝堂の扉を開けて入ると、予想通りにその奥にはナナリーが居た。
振り返って俺を見ていた彼女は車椅子を回し、俺は『優男』のまま話しかける。
「手紙を見ましたが、俺を呼び出したのはやはりナナリーですよね?」
「はい。」
ちなみに一人称はいつもの『俺』。
どう言う訳かナナリーにはこっちの方が受けやすいみたいだし。
って、今思ったらいつもの『フ』とか『私』とか『このゼロに不可能は~』とか、思春期真っ最中の中二病あるあるの仰々しい物言いだけど素のルルーシュの一人称もワイルドイケメン風の『俺』だったな~。
「「……」」
そんなバカな考えで現実逃避をしていた俺だが、それでもこの気まずい沈黙が続いていた。
だがソワソワとしていることから、恐らくだがナナリーからの声を待った方が良いだろうと判断した俺は待つことにした。
「……お、お手紙は迷惑でしたか?」
「いえ、迷惑など。」
「「……」」
そしてまたも静寂な空間に戻る。
俺の口下手が憎いでやんす。
「すー……はー……スヴェンさん。」
「はい。」
「好きです。」
……まさかの告白でした。
俺がポーカーフェイスのまま驚いているとナナリーの顔だけでなく耳まで赤くなり、彼女は両頬を手で覆う。
「こ、これはやはりかなりの勇気が必要ですね……何度も頭の中で想像したり、しゃ、写真で練習したりしたのに本番だとこうも……」
徐々にナナリーの声が小さくなっていき、ブツブツとした独り言を続ける。
「ッ。」
と思ったらナナリーが車椅子の肘掛けに手を置いて立ち上がり、一歩一歩こちらと歩きだすと大粒の汗が彼女の額に浮かんでくる。
「わ、私はブラックリベリオン後、日本の総督になって……順調に物事を進めて気分でしたがローマイヤさんに蓬莱島……いえ、スヴェンさんがそれ以前の時から沢山の事をして私やお兄様やカレンさんたち……一人一人の名を上げれば時間が足りない程の人たちの助けになることをやってきたと聞きました。」
Oh。
なんだろうこの『気になる子に悪友から押し付けられたウ=ス異本が見つかった』様な心の冷え方は?
「そしてまだまだ私は半人前だと思い知らされました。 み、見ての通り……私は立つことも、歩くこともようやくできるようになってもまだまだです。
現実もやはり理想から程遠く、ままならないことでいっぱいで、理想を少しでも現実化するにもかなりの労力と働きが必要だとわかっています。
私は他の皆さんと違って武勇に秀でているわけでも、頭脳明晰でも、世に誇れるような業績を積んできたわけでもありません。
ですが……ですが、やっぱり諦めたくありません!」
ああ……やはりナナリーは……
「ナナリー……君は
「はい。 私も私なりに蓬莱島で見た光景を……誰もが居場所があり、明日や明後日……未来の事を悲観的に思わなくていいような世界を目指したいです!」
「その為の『世界人道支援機関』か。」
「はい!」
力強く、これまた勇気が必要だったナナリーの言葉からは強い意志が感じ取れた。
『世界人道支援機関』とは以前にナナリーから相談されたことで、実はナナリーのリハビリもその話の第一歩に過ぎない。
どうもナナリーは蓬莱島に来たとき、そこにいた元EUや難民達の生き方や態度に感動して感銘したらしく、俺に蓬莱島の様な光景を世界規模に出来ないかと相談してきた。*1
『無理』とは言えなかったので、苦肉の策というか……俺は前世での『世界保健機関』────所謂『世界中の人々が一定の生活や健康水準を達成することを目的にした組織』を提案した。
その名も『World Humanitarian Agency』、通称『世界人道支援機関』だ。
え? 『まるパクリやんけwww』? だからほっとけって!
かのエジソンも言っていた! こういうのは早いもん勝ちなんだよ!
コホン、ぶっちゃけ俺なりの考えもある。
『横暴』、『乱暴』、『選民意識の塊』、等々と言った数々の固定観念にも近い『自己中心的な種族』が主だ。
『ダモクレス事件』後とは言え、ブリタニア帝国は未だに巨大で強国で資源はかなりある上、浮遊航空艦もあるからちゃんと物資の補給船を確保できるほどのインフラも整っている。
要するに、軍事力を民間に転用しつつブリタニアのイメージアップだ。
「それで……それでですね、スヴェンさん……世界人道支援機関の活躍が軌道に乗って、私が私自身を一人前と認められるときに、先ほどの……私へのお返事を……貴方の隣で立つことを許して頂けませんか?」
「ナナリー……」
「ご迷惑で……なければ……」
俺はナナリーの前まで歩き、片膝をついた。
「お忘れなく、ナナリー。 以前に約束をしました。 可能な限り、君たち兄妹の助けになると。」*2
「ッあ。」
さっきからずっと立っていたからか脚の震えていたナナリーは緊張の糸が切れたか崩れ落ち、俺は急いで彼女の身体を支えた。
横抱きになったが、構うものか。
ナナリーが転ぶよりマシだ。
「あ、ありがとうございます……」
「いや。 礼を言うのは俺だ。」
「え? そ、それは……」
何せナナリーはアニメを見ていた時から……いや、コードギアスの世界に来たとわかってからもずっと癒しで、彼女の励ましと在り方があったから俺が頑張れた部分もある。
「あの……もう少しだけ……」
おそるおそるとナナリーは俺の背中に手を回しながら上記の言葉を発した。
「勿論、いいとも。」
小さくて、小鳥の様に震えるのを……君が止めるまで。
…………
………
……
…
どれだけ時間が経ったのか。
ナナリーが落ち着くまで一時間……いや、10分も経っていないかもしれない。
「月が綺麗ですね、スヴェンさん。」
「ナナリーの方が綺麗だがな。」
「え。」
落ち着いたナナリーと共に礼拝堂から出た俺たちの間で、ナナリーの言葉にそう返した後で気が付いた。
あぶねぇ……これが日本語だったら例の『アレ』だったぞ。
いや……この場合だと元ネタの通りになるのか?
でもこの世界だと────
────ドタドタドタドタドタドタ!
「もし、そこの貴方! 近くで黒髪と紫の瞳を持った少年を見ませんでしたか?!」
俺の考えを過ぎる様に、曲がり角からドレスなのかバニーなのかちょいエロ重視な花魁の着物なのかちょっと中途半端でトンチキな衣装を着た神楽耶が現れた。
……ここって草むらじゃないよね?
うん、『渡り廊下エリア』だ。
なんで野生の神楽耶が出現するの?! スイ〇ンでもこんな出現しないぞ?! 四天王を倒した後のレッ〇じゃあるまいし、ルール違反やんけ!
「あ、神楽耶さん。」
「ぬ? ナナリー皇女殿下? なぜここに?」
おおおおっと現実逃避するところじゃない! さっさと牽制しなければ!
『優男』のグレート〇ィーチャースヴェン、装・着!
「おや、誰かと思えば神楽耶様ではありませんか。 ついこの間ぶりですね。」
ニッコリ。
「げぇ?! お、お、お主は?!」
『げぇ』って……
ってか『お主』って……
神楽耶ちゃ~ん? 上品ぶった口調は~? 素が出ていますヨー?
お帰りはあちらですわ! なんちって。
「コホン! お久しぶりですわね! ええええっと……」
「スヴェンです。」
「そうそう!
俺、どこの中華連邦の小僧アルね?
「ここらで少年を見ませんでしたか? 黒髪と紫の瞳の少年を。」
神楽耶様……流石にナナリーを無視するのはあかんぜよ?
とは言えないのでガンガン行くぜ!
「いいえ、見ませんでした。 ナナリー皇女は?」
「……」
あれ? ムスッとしている?
「いいえ。 私も見ませんでした。」
「ふむ、そうですか……それよりもそこの貴方、何か一言があるのではなくて?」
そう言いながら神楽耶は一歩中庭に出てはくるりとターンしながら腰を折ってお茶目()でぶりっ子なウィンクをしてくる。
いや、そんな『キュルン♪ですわ☆』なウィンクをしつつエロを意識したポーズを取られてもコメントに困るんだが。
色々な意味で。
まぁ……ここは『正論』でいくか。
「会場への入場ですか? パートナーが必要ですよ?」
「ング……じゃから探しおるというのに。」
「そもそもここで時間を割いてよろしいのですか?」
「ぐ、ぐぬぬぬぬ!」
フハハハハハ! やっぱ以前と会ってから思った通りにこいつ、煽り耐性ゼロだ!
てか根は心に素直なやつなんじゃね?
マジック番組とか種も仕掛けもあると分かっていても感激しながら拍手するタイプと見た!
ゼロだけに。
「ふ、フン! 一教師が私の苦労が────!」
「────神楽耶さんは、いつアッシュフォード学園の生徒を兼任されたのですか?」
あっるぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?
なんだかルルーシュの笑みをしたナナリーの背景に『ゴゴゴの擬音』ががががががががが。
「ふぉ?! そ、そうですわ! 私、急用を思い出しましたわ! おほほほほほほほほほほほほほほ!」
そして神楽耶は脱兎のごとくその場から逃げたのであった。
チャンチャン♪
「ふぅー……さっそくお母様の真似をしてしまいました……」
あ、『圧』が半端なくていつものナナリーからはかけ離れていたからやっぱりそうなのね。
「……………………………………スヴェンさんはこんな私、お嫌いですか?」
「嫌いになる訳がない。」
「……………………………………………………そ、そうですか……」
いや、本心なんだからそこまで照れないでよ。
こっちまで恥ずかしくなるじゃ────
『────ご、ごめんね?! ────苦しいんだよね?! 取ってあげる────!』
『────バ?! ────ステイ────本当にやめろ────!』
『────んぁん?!』
そんな時、僅かにだけ近くから声が聞こえてくる。
てか俺の聞き間違いじゃなければ『アッハーン♡』で『ウッフーん♡』な感じなんだが……
思春期とはいえここで盛るなよ?!
うん、聞き間違いか何かだろ。
きっとそうに違いない。
「えっと……スヴェンさんも聞こえましたか?」
「そう……ですね。」
「……見に行きますか?」
なに言ってんのこの子は?!
『ナニだけに?w』だと? うるさいざます。
俺が現実逃避する間もなく、ナナリーの車椅子が中庭にあるガゼボへと向かう────って早い?! 早い早い早い、ターボ付きかよ?!
「待て触るな────!」
「────あ、あれ? なにこれ? 弾力がある────」
「────はう────?!」
「────硬いゴムを巻いた警棒────?」
「────バババババカ、止めろ────!」
俺が慌ててナナリーの後を追うとそんな会話が聞こえてくる。
そしてこの声……もしかしてだがルルシャリ展開のやつ?
「ちょっとよく見えないですね……スヴェンさん、ちょっと抱き上げてもらえますか?」
「え?」
「その、もしかして助けが必要かも知れないので。」
たすけがひつようかもしれないので。
……俺は考えることを止めて、お願いされた通りにナナリーが見えやすい様に抱きかかえながら一緒に茂みの中を見る。
「あ、あのぅ────?」
「────え?! 誰────いた?!」
「「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」」
無言でナナリーと俺はお互いを見て、もう一度茂みの中を見る。
…………………………………………うん、見間違いじゃない。
どこからどう見てもルルーシュが半脱ぎ状態のシャーリーに
「えーと……お二人は、何をしているんですか?」
ナニだけに。(二回目)
「スヴェン君にナナちゃん?! ……あ! こ、こ、こ、こ、これは違うの! 事故だから!」
事後。(違う)
「そ、そう! 事故! 事故なの! 別に私がドレスを脱ぎながらルルに襲い掛かった訳じゃないから!」
つまりルルーシュが誘ったとな? (違う)
「最悪だ……」
こんな滅入っているルルーシュ、二度目なんだが。
「すまんが二人とも……教師になる前の学生としても、『そうとしか見えない状況』なんだが?」
「違うの! 髪の毛が絡まっているみたいなの!」
なるほど、確かにシャーリーの立派なロングヘアが枝とか絡まっている。
「よし、シャーリーはドレスを持ったままにしてくれ。 俺が支えるからその間にルルーシュが這い出ればいい────」
「────あ! ちょっと待って! 下手に動くと警棒が食い込んじゃうかも!」
「「けいぼう。」」
シャーリーの言葉に思わずオレとナナリーの言葉がハモり、ルルーシュの目が死んだ魚のようになっていく。
「先に取って────」
「────少し待ってくれシャーリー。 それは彼の為にも取り除かない方が良いと思う。」
「????」
シャーリー、君って本当に…………お?
これは『アレ』を言うチャンスかな?
フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ♪
「ルルーシュ。」
「……なんだスヴェン。」
食らえ! 最大の意趣返し!
「お前、意外と早いんだな。」
「ぐぁ?!」
フハーハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!
どうよ、このコードギアス一期でC.C.からルルーシュとの仲を『将来を約束した関係』と聞かされたナナリー直伝の文句言葉はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!*3
(プライドが)ぶっ潰れろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
いつかあった(かもしれない)エピソード:
スタッフ:あ、おはようございまーす。 『はやみ』さん来ていますよー。
スの人:(え? 早見(はやみ)ちゃんが?! びっくりさせちゃお♪) はやみんおっはー♪!
藍染収録に来ていた速水(はやみ)さん:( ・_・)
拳西収録に来ていた杉田さん:( ;゚д゚)
後輩に『はやみん♪』と呼ばれた速水さん:( ・_・)
先輩に『はやみん♪』と呼んだ杉田さん:(((( ;゚д゚))))アワワワワ
(当時でも)ベテラン声優の速水さん:……人違いじゃないかい? (藍染風)
(当時では比較的)若手声優の杉田さん:(((((((((;_。д゜)))))))))ガクガクブルブルガタガタブルブル
どうでもいい余談:
スヴェンがルルーシュの声真似をしていた時は『桜小路優』をイメージしていました。 (苦笑