小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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携帯投稿の上に上手く表現が出来たかどうか不安で、前半はほぼ回想ですが……温かくお読みいただければ幸いです。 m( _ _;)m


第35話 狂信者

 私には、何も無い。

 家族も、名前も、自分自身でさえも無い。

 

 皇歴2010年8月、ブリタニア帝国によって全てを無くした。

 

 だが、『生きている』。 辛うじて『生命として』だが。

 

 やがて両親の友人と名乗る女性に引き取られ、『日本人』から『ブリタニア人』に国籍を変えて苗字も変えた。

 

 今の私は、『マーヤ・ガーフィールド』と認識されている。

 それが変わった私の名前だ。

 

『新しい私』に変わったのに変わりのない毎日、変わりのない世界、そして変わらないブリタニア帝国。

 

 私以外がまるで、変わらなかったという風に何もかもが振る舞う。

『これがあるべき姿だ』と主張するかのように。

 

 私が『違う』といっても、結局は一人だ。

 

 ()()()()()()

 

 そんな私でも、偽善と分かっていながらも『変えたい』という欲を抑え込む(騙す)ために『日本人』が未だに住んでいる近くのシンジュクゲットーに行っては孤児たちに食料を与えていた。

 

 そして皇歴2017年。

 シンジュクゲットーは当時の総督であった第3皇子、クロヴィス・ラ・ブリタニアの命により大規模な『演習』という名の『一方的蹂躙』が行われた。

 

 幸いにもゲットー中に誰かが避難するように言っていたらしいが皆がすぐに信じる、または動ける状態ではないのもまた事実。

 

 現に私が養っていた孤児の何人かは

 

 

 目の前で

 

 

 落ちた瓦礫に

 

 

 潰さ────

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 殺す。

 

 気付けば近くの半壊した民家だった瓦礫から拝借した包丁を手にして、旧倉庫街を何故かウロウロしていたクロヴィスの親衛隊を見つけて機を伺っていた。

 

 殺す。

 

 一人だけじゃ足りない。

 

 殺す。

 

 三……いや、五人はせめて頸動脈ぐらいは切っておきたい。

 

 殺す。

 

 灰色気味だった世界に、赤だけが目立っていた。

 

 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。

 

 命アル限りコロシテヤル。

 

 そこでチャンスが到来した。

 親衛隊たちは学生服を着た少年を見つけては、何やら彼をなぶっていた。

 

 同じブリタニア人なのに?

 違う。

 アイツらが『ブリタニア軍』だからだ。

 

 だがそのおかげで丁度、彼ら全員が背を潜んでいた私に向けている。

 好都合だ。 

 隊長らしき者の背中に集中し、包丁を握っていた手に力を入れる。

 

 チャンスは一度きり。

 

 殺す。

 

 まずは最初に肝臓を刺す。

 次に隣の者の

 そして

 いざとなったら眼球を抉りだして、視神経を引きちぎってやる

 

 上手くいけば、この体の生命活動が終える前に致命傷を与えて道連れに出来る。

 

 そう思い、まさに出ようとしたところで親衛隊たちが一斉に背後から撃たれた。

 

 ……え? なんで? どうして?

 撃たれた?

 誰に?!

 

 私が殺す(死ぬ)はずだったのに!

 

 冷静になりきろうとした頭に怒りが再び戻る。

 

 無我夢中で復讐を横取りした者を探すと、丁度フルフェイスヘルメットとライダースーツという、怪しさ満点の誰かがギターケースを囮にしてブリタニア軍の偵察部隊らしき男の注意を引かせてから弱点を一気に突いて殺害していた。

 

『凄い』。

 

 純粋にそう思い見ていると着替え始め────お、男の人?!

 

 思わず目を覆ってもくっきりと脳内に浮かぶのは露わになった(男性)のイメージ。

 どうにかしてそれを消すと今度はブリタニアのナイトメア(サザーランド)が出てきた。

 

 ああ。

 もう終わりだ。

 変装していても、すぐに不審がられて撃たれるだろう。

 今度こそあの男はナイトメアに撃たれて死ぬ。

 

 やっぱり、何も変わらないのか……

 

 そう思っていたのに、どういう訳か今度はパイロットが降りてきては男性に瞬殺され、流れるまま男はブリタニアのサザーランドへと乗り込む。

 

 そして本来はIDロックなどがかかっているそれを動かす。

 

 ……『凄い』。

 

 もうそれだけしか思え(言いようが)なかった。

 

 魅入られるまま、私はその人を追って物陰からひっそりと見ているとナイトメアを隠してから仲間と思われる人たちと徒歩で合流した。

 

 あれ? さっきまでの『凄さ』はどこに?

 何か……今は『地味』な感じね。

 

 それでもレジスタンスと思う者たちが急にナイトメアを手に入れて反撃を開始!

 日本人がようやく、同じ土俵どころか巧みな戦略で優勢に出て胸が躍った!

 

 そのまま行け!

 反撃の狼煙になれば!

 

 そう思ったのも束の間、今度は見たこともないブリタニア軍の新兵器らしき機体に一機、二機、三、四……

 

 ああ……やはりダメなのか。

 

 やはり、何も変わらないのか……

 

 そう思いながら灰色の世界に『地味』だった筈の人が、今度はブリタニアの新兵器を相手に見たこともない機動や巧妙なトラップを使って相手を凌いでいた!

 

 凄い! 凄い!

 

 そう思った瞬間、圧倒的性能差を前に華麗に来る攻撃を避けるだけどころか隙あらば仕留めようとするあの人────いえ、()()()が乗ったサザーランドの動きは美しかった。

 

 まるで、空を舞う天人のような……

 

 ああ、『真の戦い方』とはこういう事なのでしょうね。

 

 ただただ『敵を殺す』のではなく、あらゆる『戦略』、『武器』、『機転』を使って相手を誘い込みながらも『反逆』する。

 

 なんて……なんて素晴らしいのかしら!

 

 久しぶりに灰色の世界に色がその日から戻り、静まり返る様子のない高揚感に胸が包まれて誘われるまま、私は夜の租界へと出ては高ぶりを()()()

 

『私も何かしなくては』、という思いから。

 

 ()()を夜な夜な繰り返しているうちに、今度はサイタマゲットーでブリタニアの動きがある聞いた私はそこに出向いた。

 

『あの方』はどうやら来ていないようで、やはりダメだった。

 

 サイタマのレジスタンスはブリタニアに鎮圧された。

 時間の無駄だった。

 

 今度はホテルジャック事件で、『ゼロ』と自ら名乗る者が『黒の騎士団』とやらの設立宣言をした。

 

『もしかして“あの方”かな?』と思い、更に夜の租界に出ては目についたゴミ清掃を続ける。

 

 どうやら『話がある』者たちが居たが、『あの方』ではないことを知れば私に話すことは何もない。

『あの方』でないことがイライラしたから、思わずとして一人の肩を脱臼させ、もう一人の肩にかかと落としを食らわせてしまった。

 

 大丈夫、手ごたえはあった。

 骨にヒビぐらいは入れられた筈だ。

 

 これで当分、邪魔は入らないだろう。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 ああ! 『あの方』に会って感謝をしたい!

 毎日の夜が楽しい!

 一言『ありがとう』と言いたい!

 会える日が待ち遠しいわ!

 

 あれからしばらく豚どもに次々と鳴かせると、どうやら『あの方』が一番いる可能性は『黒の騎士団』みたい。

 

 ならば噂のナリタに、久しぶりの遠足にでも出ようかしら?

 

 あら、こんなところにサザーランドに乗ったゴミが。

 

 ちょうどいいわ。

 

 神の贄となりなさい。

 

 

 


 

 

 

「────と言うのが一連の出来事を簡潔に纏め上げたモノです。」

 

 重い。

 

 こう……色々と重い

 

 いや、(スバル)は別にこのキラキラした目のまま跪きながら祈るように手を絡ませながらニッコリした姿はまるで俺を崇拝しているシスター姿が『重い』ということじゃない。

 

 それもあるけどソウジャナイ。

 

「まずは席に座れ。」

 

「よろしいのですか。」

 

「いいから座れ。」

 

 よろしいかどうかじゃなくて女の子を床に座らせるのは嫌だ。

 

「そこでなぜ俺の事を『神』と呼ぶ? それに乗っていたナイトメアをどこで手に入れた?」

 

「先ほど、日本解放戦線の方を追って先行していた()()譲ってもらいました♪」

 

 ……………………………………笑顔の筈なのに悪い予感が猛烈にするので敢えて深く聞かないでおこう。

 

「それで、『神様』呼びは?」

 

「先ほど共闘した際に、啓示を受けたのです。 『これは運命なのだ』と。 私が居る場所は、やはり御身の傍という事が肌で感じ得たのです。」

 

 うわぁ。 やっぱり、クソ重い案件やんけ。

 

 メンヘラ? リアルメンヘラなのコレ?

 と言うか誰この子?

 モブ? モブなの?

 俺の所為で狂ったモブなの?

 

 流石コードギアス、モブでも性能クソ高いキャラおるやんけ。

 

 でも俺、本当の本当にどうしよう?

 

 ちなみに今、俺たちがいたのは近くで無事だった二階が民家+一階がカフェのような場所だ。

 

 鍵は俺がピッキングしようと思ったら、目の前の少女が近くの石でドアのガラスを壊した。

『神様の手を煩わせるのもどうかと』と言いながら。

 

 いや、お前、本当に何なの?

 

 いやいやいや、『どうせ誰もいませんし』って。

 

「そういえば、まだ名を聞いていないな。」

 

「あ! 私としたことが! 『マーヤ・百目木・ディゼル』、あるいは今使っている『マーヤ・ガーフィールド』とでも。 ですがどうかお好きなようにお呼びください、神さ────。」

「────ならばまずその『神様』というのをやめろ。 俺には『(すばる)』という名……ん?」

 

『マーヤ・()()()・ディゼル』、だと?

 まさか、こいつ……

 

「貴方も、穢れ────『ハーフ』なの?」

 

 やっと回復しつつも顔色が優れないアンジュリーゼが俺の聞きたいことを先に言う。

 

 というか珍しいな、言い直すなんて……他人の前だからか?

 

「………………………………」

 

 マーヤさんや、アンジュリーゼが質問したのですが?

 なぜに無視しとるのですか?

 

「ちょっと、何か言ったらどうなのよ?」

 

 おーい。 マーヤさんやー。

 

「昴様、このうるさい()()を躾いたしましょうか?」

 

 ファブッ?!

 

 「んな?!」

 

 俺は内心、アンジュリーゼは口から素っ頓狂な声を出してしまう。

 

 ちょ、『雌犬』って────

 

「────誰が“雌犬”よ?! 貴方何様のつもり?!」

 

「さっきから昴様に色目を使ったり、わざと髪の毛を手で後ろに流してうなじをアピールしたりなど明け透けな────」

 「────だだだだだだだだまらっしゃいよ貴方ぁぁぁぁぁ

 

 うわぁ……

 アンジュリーゼに対してズケズケとした言い様……

 

 俺はいまだにキーキーと騒ぐアンジュリーゼに平然とするマーヤを見ながらも意識をそらす。

 

 どないしよ?

 

 誰かタシケテ。

 

「……ディゼルさん。 いや、百目木さん────」

 「────ああ! やっと名前を呼んでもらいました!」

 

 それはもうええから。

 というか顔を紅潮させてウットリした目と頬に手を当てるその動作ヤメロ。

 全然違うのは知っているけどなんか動作が……

 

 アンジュリーゼもステイ。

 

 落ち着け俺、まずは現状の整理だ。

 このままだと、黒の騎士団たちと合流すればマズイことになる。

 アンジュリーゼだけでもヤバいのに、マーヤまで加わっていたらもう収束がつかない。

 

 どうする?

 

「大体ね! 貴方、どうやってナリタまで来たのよ?! 私だって毒島が呼んだ六家の車に乗ってブリタニア軍の交通規制を通るのがやっとだったというのに!」

 

 アンジュリーゼもアンジュリーゼだが毒島……お前、何やってるんだよ?

 

「あら、やはりブリタニア人らしく他人任せでしたか。 私は自作のバイクで来たわ。」

 

「バイク?」

 

 ちょっとまて。

『自作』って……作ったのか?

 いや、それは今いい。

 

「ディゼルさん。」

 

「何でございましょう、昴様?」

 

「まずは“様”を無しにしてくれ。 お前のバイクにサイドカーは付けられるか?」

 

「はい? 時間さえあれば作れると思いますけど?」

 

 作れるんかい。

 

 だが好都合だ。

 

「ならばサイドカーを作って、アンジュリーゼと共に先にシンジュク租界へと戻ってくれ。」

 

「え。」

 

 アンジュリーゼが嫌な顔をする。

 

「了解しました。 昴の頼みとくればたとえm────」

「────あと他人のことは名で呼べ。」

 

 そしてまたも雌犬(ビッチ)呼びする前に釘を刺す。

 

「………………………………………………わかりました。」

 

 今の間が長かったのは気のせいか?

 

「ではサイドカーを作ってまいります……よろしいのですか?」

 

「何がだ?」

 

「いえ。」

 

 マーヤが出る前に一瞬だけアンジュリーゼのほうを見てからその場から出る。

 

「待ってスヴェン。 貴方、黒の騎士団員なのよね?」

 

 ギクッ。

 

「ああ、そうだな。 (あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!)」

 

「フゥ~ン……冴子は知っているの? (ニッコリ。)」

 

「いや、知らない……(はずだ。)」

 

「私は気にしていないからね? 別にね────? (ニコニコニコニコ)」

 

 あっるえええええええええ?

 

「────貴方が『情報屋』もやって、反ブリタニア帝国の運動どころかどっぷりと反乱に手を貸していたことを黙っていたことも全ッ然気にしていないからね。 一つだけ聞いていいかしら?(ニコニコニコニコ)」

 

 なんかニコニコしている割に負の煙みたいなのが浮き出ているのですけれど?

 

「もしかすると噂になっている、よく学園を欠席する貴方の主人である『カレン・シュタットフェルト』も、さっきの子も黒の騎士団なのかしら?」

 

 お前、あの子(マーヤ)の話を聞いていなかったのかよ。

 

()()()()()()()()、さっきの子は今日初めて会った。」

 

 「そしてシュタットフェルトさんの方は呼び捨てで否定しないのね?」

 

 あ゛。

 

 アンジュリーゼのくせに誘導質問とは姑息な!

 

 こ、これは……『ゴゴゴゴゴゴゴ』案件か?!

 

「そ。 なら私も入団しても、よくてよ?」

 

 …………………………はい?

 

 

 


 

 

 プアアァァァァァ!

 

 ナリタから出る道に、スヴェンたちが襲われる直前にすれ違ったトレーラーがクラクションを鳴らす。

 

「チッ、また軍人どもか!」

 

「それだけ隊列が乱れているという事だろ。 我々としては助かるが……ん?」

 

 トレーラーの中にいた一人の男性が前にいる軍人たちが何かブツブツとつぶやいていたことに気付く。

 

「おれん……おれんじじゃない……わたしは……わたしはぜ……じぇろを……」

「……お……おれは……い……イレヴンなんかに……まけて……まけ……」

「「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ────?!?!?!」」

 

 変わり果てた姿のジェレミア、そして()()()()()の二人は地面へと崩れ落ちては変な声を出す。

 

「「────ぽぺ。」」




ストックもこれでゼロォォォォォ。
アイデアはあるのですが書く時間があるかどうかが問題です。 (汗

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