誤字報告、ありがとうございます! お手数かけております。 (汗
楽しんでいただければ幸いです!
「フゥー。」
「どうしたの、スバル?」
租界にある黒の騎士団の拠点で、重~いため息を思わず出したことで紅蓮弐式の整備の手伝いをしていた隣のカレンから心配する声がかけられる。
「何でもない。」
「……そう? 聞いたよ、ナリタでは凄く苦労したんでしょ?」
あの後、『闇鍋ランスロットモドキ』を偽装しなおしてゼロとCCを迎えに来たカレンと合流し、無事に日本解放戦線とブリタニアの小競り合いが続くナリタを後にした。
アンジュリーゼも連絡先を交換したマーヤ経由でちゃんと学園に忍び込んだらしいし、アンジュリーゼの入団(とそれにつられて入団希望)を止めたから結果オーライだ。
そして案の定、次の日の俺はまた筋肉痛と頭痛で寝込んでいるとまたも『カレン湿布バチン』を受けた。
マジ痛かった。
ただ前回ほど酷くはなかったことから、右腕の損傷が酷かった紅蓮弐式の整備に急遽取り掛かっていた。
話を聞くと、原作とほぼ同じ流れでランスロットとの戦いで受けたダメージらしい。
輻射波動、やっぱり強力だけどピーキーだな。
腕自体がギミックありすぎて脆すぎる。
「まぁ……苦労をしたのは否定しない。 だが『こいつ』のおかげで、俺は何とか生き残ることが出来た。」
俺が見上げるのは偽装した『闇鍋ランスロットモドキ』だった。
「それにしても……キョウトから無頼と紅蓮弐式を送られた時も驚いたけど、まさか
う゛。
カレンの横ジト目攻撃!
何気に効果抜群!
「ちょっと、そこんとこどうなの
「……結果的にそうなっただけだ。」
いや、それ以外にどう言えと?
俺だってパーツは頼んだけれど、頼んでもいない
更にカレンのジト目が鋭くなり、ため息をするまで数秒間ほど続いた。
「ハァ~……またソレなのね? いいよ、深くは聞かない。」
流石カレン。
幼馴染は伊達じゃない。
というか“またソレ”とはどういうことやねん?
「あ、それはそうと。 明日は予定が何もないから、俺はアジトには来ないぞ────」
「「「────えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」」」
おい、女性陣。
何で聞き耳立てているの?
「「「仕事が……」」」
知らんがな!
…………
………
……
…
ニュースでは『日本解放戦線の壊滅に成功するも多大な被害がブリタニア軍に出た』が流れていた。
原作では、日本解放戦線は抵抗らしい抵抗ができていなかったが……どうやら俺の横槍でどうにかなったな。
これでブリタニアと日本解放戦線の双方が削り合っていれば、後の原作を動きやすくなる筈だろう。
「あ。 おはようスヴェン。」
アッシュフォード学園の中庭に、アンジュリーゼが立っていた。
「おはようございます、ミスルギ嬢。
「ええ、無事に着いたわ……
アンジュリーゼの顔が明らかに青くなる。
うーん、やはりラクロスやっていただけ体力と運動神経あるけどエアバイク無しだったから高速移動は苦手か。
「ねぇ……本当にするの?」
「それがベストだろう……多分。」
上記のこの会話は、黒の騎士団への入団希望だったアンジュリーゼ(とマーヤ)を説得した時のことを示していた。
と言っても、アンジュリーゼたちが黒の騎士団に入団すると100%俺への危険度が増すからだ。
『俺の知り合い』というだけでルルーシュにギアス掛けられて何をされるか分かったものじゃない。
最悪、俺の監視をされるか
『DEAD END』じゃないけど『BAD END』に近い暗~い展開まっしぐらだ。
というわけで俺が二人に提案したのは────
「────ん?」
アッシュフォード学園の中庭を歩いた少し先では人だかりが珍しくできていた。
いつもなら朝練などで、この時間帯の校内はガランとしているのに?
そしてその中心では────
「あ、スヴェン! おはようございます!」
────
その笑顔は他人からすれば屈託のないモノだったが、俺からすれば自ら足を生やして近づいてくる地雷以外の何ものでもなかった。
というかおまん、アッシュフォード学園の学生やったんかい。
「幻が三人そろった……だと?!」
え? 三人?
「『紳士』に『黄色のバラ』に『黒チューリップ』だ! 誰か取材用カメラを取ってこい! 携帯じゃだめだ!」
『黄色のバラ』って……アンジュリーゼの事か?
こいつは『バラ』じゃなくて火と火が合わさった『炎』だぞ?
現に
頼むから俺が近くにいるときは発動するなよ?
「しかも『紳士』と『黒チューリップ』が何か知り合いっぽい?!」
「え? じゃあまさか……『紳士』の本命の相手って……」
うるさいよ外野。
見た目だけなら俺も『本命』って呼びたいよ?
「……スヴェン?」
そして静かに横からくる
「あとで相談したいことがあるのだけれどお時間よろしいかしら?」
ガイヤー!
六神合〇!
ゴッッッッッドマァァァァァァァァァァー〇!
掌から衝撃波を出したブースト付きのBボタン長押しダーッシュ!
ガシッ!
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い?!
アンジュリーゼ! 痛いっ
手首がもげるっ
「い・い・か・し・ら?」
「…………………………………………ハイ。」
マーヤもニコニコしていないでタシケテェェェェェェェェ!!!
「手を繋ぐなんて、お二人は仲が良いのですね?」
「ぃ?!」
お?
マーヤの言葉にアンジュリーゼがハッとして俺の手首を離す。
マーヤ、ナイスだ!
そう思っていると『どういたしまして♪』と答えるようなマーヤの声を錯覚する。
…………
………
……
…
今、アッシュフォード学園の(高等部の)間ではマーヤが登校したことで持ち切りだった。
しかもそこで『さすが黄色のバラを改心させたことはある!』って……
そこまでの事だったのか?
「でかしたわスヴェン! どうやってあの不登校気味の
ムニュン。
アッ♡
ミレイさん、立派な乙パイが拙者の腕に当たっているでゴザルヨ?♡
「これで彼女は留年せずに済むかもしれないわ!」
そこまでだったんかい。
と言うか何気にミレイが貴重な涙目なんだが?
『出席数が足りてなくて留年』はマジなのか?
リヴァルも血涙目でハンカチ噛みながら『キィィ!』するなよ。
中途半端な男がするとキショイだけだ。
当の本人であるマーヤは、他の学生たちに取り囲まれて所謂『転校生状態』の質問攻めだ。
横から聞いていると、義母が会社経営者なのか。
『社長令嬢』なんだな~。
夜は『軍人殺し』なんてしているけど。
お前はどこぞの並行世界の
「あ、スヴェン……とアンジュリーゼさん? お昼を共にしませんか?」
そうこうしている間に昼休み、まるで当然のごとく俺(と教室のドア付近にいたアンジュリーゼ)を誘うマーヤ。
「私たちでよければ。 (ニコッ)」
「ええ、よくってよ。 (ふさぁ)」
うーん、ちょっっっっっと丸くなったけど未だに『高飛車お嬢様』なアンジュリーゼ。
そんなんだから未だに(生徒会メンバーと毒島以外)、ほぼボッチなんだよ。
そしてどこかピリピリしている彼女に俺は『ドナドナ~♪』される横で携帯にメールを打って送信する。
『ドナドナなんて久しぶりだな』と思いながら。
バタン!
カチッ。
マーヤの後を追って屋上に出ると、アンジュリーゼがすぐさまドアを閉めて鍵をする。
「貴方、スヴェンと馴れ馴れしいけど彼の何?」
「貴方こそ昴の何ですか?」
ああ、もう。
『優男』の仮面外しちゃえ!
「落ち着けお前ら。 あと、俺はここでは『スヴェン・ハンセン』と名乗っている。 黒の騎士団活動中は『スバル』だ。」
「なるほど……わかりました。 (表と裏の顔を使い分けているのですね? 流石です!)」
「理解が早くて助かる。」
「やっぱりこっちが素なのね……」
「そうだな。 俺は基本的にある程度信頼している奴にしかこの側面を出していない。」
「え?」
いやいやいやいや。
何でまるで俺が変なことを言ったような反応するんだよ?
「それで、昨日の続きですが────」
「────その前に、お前に聞きたいことがある。」
いや、冷静に考えよう。
そもそもこいつは信用できるのか?
「なぜ俺の提案に即答した?」
「御身のそばにいることが助けになるかと……」
「俺のそばにいてお前は何を望む?」
「腐った国の滅亡ですが?」
ド直球。
だがそもそも俺は生き残ることを第一に優先しているからな?
いや、そういう意味ではマーヤは優秀な人材とも言えなくはないか?
(特典なしで?)俺並みのナイトメア操縦技術。
バイクやサイドカーの自作。
毒島たちの証言によるとブリタニア軍人でも躊躇なくかつ証拠隠滅しながら殺す手腕。
「えーっと、ディゼルさん? それとも────?」
「────貴方にはややこしいかもしれませんので『マーヤ』と呼んでもいいよ? 私も『アンジュリーゼ』って呼ぶから。 (ニッコリ)」
うーん、しかもサラッとディスる要領。
これで『
「では俺も『マーヤ』と呼ぼう。」
「いいのですか?!」
「あ、ああ。」
あっるえぇぇぇぇぇ?
プルプル震えて怒っていらっしゃる?
いや、喜んでいるのか?
どっちだよ?
そう言えばこいつ……転生者じゃないよな?
「マーヤさん。」
「はい?」
「『令和』、『平成』、『マック』、『マクド』、『サーティワン』、『ミスド』。 これらに聞き覚えは?」
俺は今すぐ思い浮かべられる前世の単語を次々と口する。
が、マーヤはハテナマークを出しながらただ困ったような顔をする。
「その……勉強不足で申し訳ございません。」
転生者じゃないのか?
それとも警戒心が強いだけか?
「マーヤは俺のことをどう思っているんだ?」
「『神』、と。 ですので、
“何なりとお申し付けください”……だと?
女の子がそんなこと言っちゃダメでしょうが?!
妄想がガがガガがガガ。
「フゥ~ン? じゃあ何?
「────救われる前はもとより死ぬ覚悟でした。 無論、喜んで死にます。」
Oh……
「へ?! じゃ、じゃあ『俺を慰めろ』とか────?!」
「────喜んで差し上げるわ。」
差し上げる?
何を?
ナにヲ?
「そ、そうか。 ならば学園では普通に接しろ。」
物理的に引き始めるアンジュリーゼの後を追いたい気持ちを抑える。
「はい! では早速、恋仲として────!」
「────『普通の同級生』だ。 『友人』だ。」
「………………………………わかったわ。」
今、何気に犬耳としっぽがシュンとしたような錯覚が見えたっぽいんだが?
「それと、表向きの俺は────」
「────はい! 『スヴェン』として優男風の学生を装いながらもシュタットフェルトさんの従者見習いで『情報屋』で、『スバル』は『素顔を隠しながら黒の騎士団員の目立たない役割』をしているのですね?」
ちょっと待て。
今までのやり取りでそこまで理解したというのかこの子は?
ボク コノコ コワイ。
「と、取りあえず……ここに来るはずの────」
ガチャガチャ。
コンコン。
『────おい、スヴェン。 そこにいるのか? 来てやったぞ?』
鍵がかけられた屋上のドアから、俺がメールを打った毒島の声がした。
「あれ、この声って……冴子?」
何も言わずに俺がドアを開けると、やはり屋内から出てきたのは毒島だった。
「ふむ?」
彼女は屋上へ出てくるなり俺とアンジュリーゼ、そしてマーヤを見てはいつものニマニマとする顔を浮かべながらマーヤを見る。
「私は毒島冴子だ、よろしくなマーヤ・ガーフィールドとやら?」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします毒島さん。」
「これでも同い年だ、気軽に毒島と呼んでくれたまえ。」
「ええ、そうする。 こっちも『マーヤ』でいいわ。」
え?
なんで会っていきなり意気投合してるのおたくら?
本当に会うの、初めて?
「冴子……この子と前に会ったことがあるの?」
「いや? 初対面だが?」
「話すのも初めてです。 私、今日までほとんど学園に登校していなかったから。」
ええ~? ほんとにござるかぁ~?
「それはそうとアンジュ、昨日はどうだった?」
「え? 昨日? 散々だったわよ冴子! スヴェンが黒の騎士団だということも初めて知ったし、ナイトメアの無茶苦茶な操縦が出来ることもこの子もまとめて最悪! 冴子は知っていたの?!」
おいいいいいいいいいいいい?!
なに毒島に黒の騎士団を暴露しとるんじゃいいいいいいいい?!
「いや、知らなかったが容易に想像は出来るぞ? それはそうと、スヴェンから私に頼みとはなんだ?」
色々とスルーですか毒島。
さいですか。
「毒島は確か、六家の遠縁だよな?」
「ああ、それが?」
「お前は彼らと……いや、正確には
「まぁ……スヴェンの頼みとあらば、申し込むが、相手によってできるかどうかは変わってくるな。 誰だ?」
「『
「「え?」」
急にNACの大物が出たことにアンジュリーゼ、そしてマーヤが声を出す。
「う……よりにもよって……できなくも……ないと思うが?」
逆に毒島の顔は珍しく引きつっていた。
どうしたのだろう?
ま、いいか。
というか面会できるのか。
ハッキリ言って望み薄だったけどスゲェな毒島。
……やっぱり何も聞かずに俺の頼みを聞いてくれる彼女にも、アンジュリーゼたちにした提案をするか。
「日付は後で連絡する。」
「いや……その……スヴェンの頼みだからな。」
毒島がそっぽを向いた?
何か気まずいような空気が……
いや、毒島に限ってそれはないだろう。
それに彼女のことだ、上手くやってくれるだろう。
「さて。 俺からの提案なんだが毒島、お前は
一昨日、全てを出し尽くして苦しみながらも生きてきた。
昨日、取りあえず現実から目を背けるために体に鞭を打って『普通』を装った。
今日、セッティングに夢中でほかのことに気が付かなかった。
明日、出来心の良心で青春を魔神が知らずに味わう裏で、小心者が柄にもなく前に出る。
エリア11は早く終わりすぎた戦争が残した『混沌』と『思惑』と『野心』が未だ渦巻く『魔女の鍋』状態。
深く問わなければ『何でもアリ』。
次回予告:
『雨、時々鉄』
明後日? そこまでのことは分からない……かも。 ←作者の本心