少々長くなってしまいました……
お読み頂きありがとうございます、楽しんでいただければ幸いです!
時間は数日間程巻き戻したい。
スヴェンは『ナナリーが熱を出した』、そして『シャーリーがため息を一日中していた』と言う条件が重なったことで原作での『雨のコンサート』に当たりをつけていた。
あとは日付だけだったが、生徒会室でシャーリーのチケットに書かれた日付がやっと見えたことで、原作でルルーシュがキョウトと会う筈の『桐原泰三』にダメ元で毒島に面会を申し込ませた。
本当ならばシャーリーは父親の身元確認で結局彼女自身もコンサートに行けず、ルルーシュもキョウトに接触されてどちらも行けなかったが、シャーリーの父親ジョセフはスヴェンの活躍によって生きている。
なので、あとはゼロとキョウトが会うタイミングをずらせば二人は無事にコンサートに行けるわけだが……
「スヴェンさん?」
ベッドの上で横になっているナナリーの声によって現実に呼び戻される。
「何でしょうか、ナナリー?」
咲世子さんは栄養満点のおかゆを作るためにキッチンにいて、今はルルーシュと
「お兄様って、この頃外出する日が続いているのですが……スヴェンさんは何か知っていますか?」
おぅふ。
どうしよう?
って、やれることは一つだけだ。
「さぁ、そこまでは……」
「そう、ですか。 スヴェンさんも知りませんか……手を、握ってもらっても良いですか?」
「手を?」
「お願い、します。」
よく見ると、ナナリーはいつも以上に心細い空気を発していた。
それもそうか、ゼロとしての活動が続いているから寂しいのか……
「勿論、良いですとも。」
はぁ~。
ナナリーの小さくて柔らかくてプニプニした華奢な手に癒されるぅ~。
オキシトシンがぁ~、分泌されるぅ~。
「スヴェンさん……本当にお兄様が何をしているのか分からないのですね?」
「ええ、残念ながら。」
素直に言えるわけがない。
『お前の兄は、お前の為に自分や他人の命を利用して世界に喧嘩を売っている』なんて。
でも────
「────ですが、『彼の全ての行動はナナリーの為』と断言できます。」
「そうですか?」
「ええ。 彼は言葉足らずですが、彼の全ての行動はナナリーの為です。 遊びに行くのもお金をナナリーの為に貯めて、頻繁に外出するのも結果的には全部ナナリーの代わりに外の世界を見聞きして伝える為です。 ナナリーは正真正銘、彼の生き甲斐です。」
「まぁ……それは……いくらお兄様でも、ちょっと言い過ぎなのでは?」
全然。 どっちかというと、言い足りないぐらいだ。
「スヴェンさん、私……
「……ええ、以前にも確か仰いましたね? 理由はナナリーの話したいときに────」
「────それなんです。 スヴェンさん、私────!」
部屋のドアが開き、ルルーシュが部屋の中に入ってくる。
「────ありがとうスヴェン、もういいよ。」
「では、ナナリー。 ルルーシュが戻ってきたのでこの場を彼に譲ります。」
「ぁ……」
ナナリーが何か言いたそうだったが、ここはもう兄妹の空間だ。
部外者である俺はとっとと出ていくとしよう。
ガシッ。
「ちょっと待てスヴェン。 お前、ナナリーに何か変なことをしていないだろうな?」
「……は?」
「俺が入って来たとき、ナナリーの手を握っていただろう?」
ギギギギギギギギギ!
痛い痛い痛い痛い痛い!
肩が痛い!
「あの、お兄様? 私がスヴェンさんに手を握ってほしいとせがんだだけですので────」
パッ!
「────なんだ! そうだったのかナナリー! ビックリしたよ。」
なんと言う手のひら返し。
ちなみにその夜、シュタットフェルト家の自室の鏡で肩を見ると案の定クッキリと彼の手形のあざが出来ていた。
ピリリ! ピリリ!
携帯の着信音がして確認すると、毒島から『面会OKだ』のメッセージが来ていた。
そっか、上手くいったか。
ん? 『その日の予定は空けておくように』?
なんで?
……………………あ、なるほど。 多分、桐原泰三と会った後に内容とかの話をしたいってわけか。
流石毒島だ。
…………
………
……
…
それがどうしてこうなった。
あ、ありのままの出来事を話すぜ?!
毒島が桐原と会う筈の日突然、マーヤが俺を昼に誘ってきてはアッシュフォード学園の校門前まで来たと思ったら着物姿の毒島が立っていてあまりにも似合っていて魅入られていたらリムジンに乗せられて『日本』の時代から代々続いているっぽい和風の料亭に連れてこられ怖じ気る気配もない毒島に『中で待っていよう』と言われるがまま彼女の顔パスで奥の方へと連れてこられて懐かしい畳などの匂いがする個室にドナドナ~。
もう嵐のような流れだった。
な、何が起きたのか分からない気持ちを落ち着かせるために思わず正座してお茶入れてホッとしてしまいたかった程だった。
「うむ。 ちゃんと正座が出来ているな。 関心関心。」
着物姿と髪を上げて横にいる毒島はいつもより美人で綺麗で更に大人びていて、思わずチラチラ見てしまう。
う~ん、ええのぉ~。
風流やのぉ~。
お茶がうめぇ~のぉ~。
これでSPっぽい奴らがギラギラした空気を向けていなければええのにのぉ~。
「お越しになりました。」
『誰が?』と問う時間もなく、ゆっくりと部屋に入ってきたのは桐原泰三本人だった。
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ナンデ?
俺が思考停止している間に毒島が桐原に謝辞し、彼も社交辞令を交わす。
しかも毒島はあたかも慣れている動作や言動でお嬢様っぽいのだけれど?
お前……『学園黙示録』でそんな設定あったっけ?
いや、もう……何が何だか。
俺が宇宙を漂う猫のままでいると急に桐原が俺を見る。
「────して? ワシとしては久しぶりに連絡を受けてびっくりしたのだが……お主は?」
うぉぉぉぉぉ、怖えぇぇぇぇ。
流石日本の裏政治を牛耳っているだけの事はある。
気迫が半端ねぇぇぇぇぇ。
「……初めまして、
ポーカーフェイス、今マジで感謝。
「ほほぉ? 敢えて
“敢えて日本名を名乗る”って……どゆこと?
毒島もニコニコしないで説明プリーズ。
「昴、彼の事をどう思う?」
こっちが説明してほしいねんけどぉぉぉぉ?!
どうしよどうしよどうしよどうしよどないしよ?
……ええい! ゼロ! 言葉を借りるぞ!
「『桐原泰三』、サクラダイト採掘業務を一手に担う『桐原産業』の創設者に枢木政権の影の立役者。 そして
────口を思わずつぐんでしまう。
ただならぬ空気が、目の前の老人から出ていたからだ。
「お主……それを知りながら、わざわざ毒島の娘に連絡をつけさせたというのか? なるほど……」
あっるええぇぇぇぇぇ?
なんか反応が原作
「ですから言ったでしょう? 『認めている』、と。 それと昔、私の『見よう見まね三段突きを完封した少年』も彼の事です。」
ああー、そういやあったな。
特典を藤堂の前で思わず出して焦った奴。
今としては懐かしいな~。
「何?! こ奴が……むむむぅ……」
あれれ?
なんか桐原じいさんの俺を見る目が変わった?
「これで分かったでしょうか、桐原様?」
ちょっと毒島さん、オイラにも分かるように説明してくだせぇ。
「なるほどの……お主がこ奴を支持する理由は分かった……だが────!」
「────ッ。」
桐原が杖を握っていた手に力を入れたと思ったら次の瞬間、反射的に身体を跳ねさせた俺の髪が数本ハラハラと眼前を舞う。
彼の持った仕込み刀が俺の頭皮寸前まで────っておおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおいいい゛いい゛い゛い゛?!
こいつ本当にジジイかよ?!
さっきまで部屋の向かいに座っていたはずなのに、全く見えなかったぞ……
「……ここまでして、動じぬとは────」
「────ですから言ったでしょう、桐原様?」
お前は何を言ったの、毒島?
「確かに……僅かに頭を動かし、ワシの太刀筋を躱すとは……」
いや、滅茶苦茶ビビッて固まっていただけなのですが?
「これでご理解できたでしょうか?」
だから誰か俺にも説明を。
「……ワシはこのような童ではなく、お主の見る目を信じる。」
「ありがとうございます。」
いやいやいやいやいやいや。
何勝手に完結させようとしてんの毒島と桐原?
「じゃが……もう一つ条件がある。」
条件?
なんの?
「桐原様?」
「ワシを昔みたいに『おじいちゃん』と呼びなさい────」
「────何急に言っているのですかき・り・は・ら・
おおおおう?!
笑顔のまま青筋を浮かべた毒島の背後に『ゴゴゴゴゴゴゴ』が?!
「だって久しぶりに
なん……だと?
この人今……毒島の事を『孫』って呼んだか?
「いい年をした老人が“もーん”なんて語尾付けないでください、気持ち悪いだけです。」
「ええ~? 別に良いではないか? ここには今、ワシとワシの直属の部下にお主らしかおらんのじゃし。」
「??? 神楽耶様なら無理やりにでも来るような気がしたのですが?」
『神楽耶様』って……
毒島、お前……『(自称)ゼロの幼な妻』と知り合いなんか?
と言うか『桐原泰三』……思っていたのと凄く違う。
さっきまで『切れる老人』だったのが今では『孫をからかうジジイ』だ。
「あ奴、興味津々じゃったよ? 『刀にしか興味の無かった冴子にも春が来たのですね♪』、と言っておったぞ?」
ああー、うん。
『学園黙示録』で起きた『奴ら』の襲撃が無かった毒島ってそうなんだよね。
「コホン! ……と言う訳で桐原殿────」
「────『おじいちゃん』。」
「「………………………………………………」」
「と! 言う訳で! 桐原殿────!」
「────『おじいちゃん』!」
「桐原殿────!」
「────『おじいちゃん』!」
「………………………………………………」
「冴ちゃん、ワシ……もう歳なんじゃよ? 何時亡くなるか分からない────」
「────いけしゃあしゃあと妖怪ジジイ────」
「────のだからこのぐらいの我儘は聞いても、バチは当たらんと思うのだが?」
さ、『冴ちゃん』って……
なんか今日、桐原と毒島の色々な面を見たような気がする。
「……………………………………おじい様。」
「いよっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
毒島が照れながら小声で言うと桐原がガッツポーズをとる。
さっきまでのヨボヨボ弱々しいジジイはどこ行った?
「聞いたかえ皆の者?! 冴ちゃんが! 冴ちゃんが十年ぶりにワシの事を『おじいちゃん』と呼びよったぞぉぉぉぉ?!」
「言っていません!」
「なぁに、『おじいちゃん』と『おじい様』なんて些細な違いを脳内で変換すれば────!」
「────しなくて良いです!」
ああ、うん。
訂正するわ。
『孫をからかうジジイ』じゃなくて『孫バカ』だわ。
「して冴ちゃん、
「ブッ?!」
思わず飲みかけのお茶を小さく吹き出してしまった。
毒島。 お前、相手がいるのかよ?!
……多分、日本帝国時代からの許嫁とか何かだろなぁ~。
「おじいちゃんッッッ!!!」
「ムホホホホ────ア、ちょっと待って冴ちゃんそれは勘弁────グゴゴゴゴゴゴ?!」
そして毒島……お前はお前で
あの後桐原のSPたちが妙に手慣れた作業気味に毒島を桐原から引きはがし、俺の組織の支援を(彼個人とはいえ)取り付けることが出来た。
なんか……ドッと疲れた。
「……昴。 普段、桐原のジジイはああでは無いからな? 何故か私の前だけなのだ。」
ああ、うん。
そうだよね。
原作からじゃとてもあんな性格とは思えねぇよ。
もっと堅物かと思ったら、激甘の孫バカとは……
ちょっとコードギアスファンとしては嬉しいというか、複雑と言うか何というか……
「だとしても驚いたぞ。 まさか毒島がキョウトの遠縁どころかまさか桐原泰三の孫だったとは」
「言いふらすようなモノでもないさ。 知らない人から見れば特に、な……」
『売国奴の桐原』。
それが桐原についたあだ名だ。
知らない人からすれば、そう見えるが────
「────だがある意味、これでやっとホッとしたよ。」
ん? さっきまで沈んでいた顔が笑顔になったぞ?
それに“ホッとした”って……
ああ、『自分が桐原の孫』を知っても態度を変えないことか?
「安心しろ。 俺は見る目があると思いたいだけだ。」
「君ならそう言うと思ったよ。」
俺は六家の車へと毒島と一緒に乗り、特に他愛のない話をする。
『売国奴の桐原』。 それが世論でワシについた二つ名。
だが所詮はあだ名、好都合だった。
これならば、多数の民衆は少なくともワシがまさか反ブリタニアの者たちを支援していると思わぬはずだ。
最初は大きな組織を支援し、いずれ来るべき革命の為の『戦力』としていたが……
日本解放戦線の急激な弱体化でその希望は薄くなった。
そしてそれに代わるように勢力をつけ始めた『黒の騎士団』だが、果たして仮面をして、素顔を見せぬものが束ねる組織を信頼できるのだろうか?
そう思っていたところに孫の冴
『スヴェン・ハンセン』、または『
こ奴は以前から広い情報網を使い、名を広げていた。
それとは別に、『スバル』としてナオトのグループの時から活躍しておる。
だがそれ以前の、日本に来る前の事が全く浮かんでこない。
それどころか、まるで突然現れたかのように紅月家に引き取られる前の消息が全く掴めなかった。
初めて冴ちゃんが連れて来た奴を目にしたとき、ワシを見ても動じなかった。
背筋を伸ばしたまま左膝をついて次に右膝と順番についてお尻の辺りに足が来るように座るだけでなく、脚が痺れないように親指を重ねていた。
その立ち振る舞いと態勢がワシに様々なことを伝えてきた。
所詮、口では誰もが何とでも言える。
本性は身体が教えてくれる。
だが……ワシも痛む身体に鞭を打って繰り出した抜刀術に反応するだけでなく、『害する気が無い』と悟ったのか僅かに身を反らせただけだった。
それに、ワシの裏の顔を知っている者ならば冴ちゃんとのやり取りに、誰もが反応を見せるというのに奴の態度に全く気負いを感じられなかった。
『静』そのものだ。
この者ならば……得体のしれぬゼロよりかは幾分かマシかも知れぬ。
いやはや、八年前に『ワシの冴ちゃんを泣かせた藤堂以外の男だとぉぉぉぉぉ?!』と荒ぶる気に身を任せなくて良かったわい。
運命を左右するのは何か?
偶然か、巡りあわせか、はたまた人の選択か、それとも『神』に並ぶ存在か。
または無い脳を振り絞って身勝手に動いた男か。
それは答えのない永遠の謎かけだが、間違いなく彼ら彼女らの運命を変え始めたのはがむしゃらに生きようとしただけの男である。
そのツケが今、彼の元へと帰ってくる。
次回予告:
『紅蓮の新しい兵装』
美女がほほ笑むのは、誰の為に?