楽しんでいただければ幸いです。 m(_ _)m
『ゼロ?! 応答してくれ! 日本解放戦線のタンカーは無事に脱出した! そっちはどうなった?! 俺たちはどうすればいい?!』
扇は少し前に一台のタンカーが無事に港から脱出したタイミングで泥沼化し始める戦場を見てゼロに指示を仰ごうとしていたが、ゼロからの返信がないままが続いて焦っていた。
『こちらCCだ。』
『CC?!』
扇はゼロ専用の回線に、彼の愛人と噂されるCC の声が返ってきたことにびっくりしていた。
CCは急遽日にちが変更されたキョウトとの謁見で、『ゼロの影武者役』をしたことで彼女の存在は黒の騎士団(の幹部たち)に知れ渡った。
ちなみに『ゼロの愛人』の命名は(どうでもいいが)玉城である。
『ゼロは大丈夫だが傷を負って、今は動けない状態だ。 扇、撤退命令を出せ。 目的は果たせた、これ以上の消耗は無意味だ。』
『わ、分かった!』
場はCCと外されたゼロの仮面を手に取ったルルーシュたちへと移る。
「これでいいのか?」
「……ああ。 しかし、これは少々マズイことになった。」
「お前が“マズイこと”というのは」
「俺の素顔を見られたかもしれん。」
「なに?」
「気が付いた時には、仮面は俺の頭から外されていた。 そして周りを見れば、少なくとも二人……いや、ナイトメアに乗った奴も含めて三人ほどの者たちに見られたかもしれん。」
「三人……手痛い失態だな。」
「そうだな。 唯一の救いは、
ルルーシュが見たのは地面に付着した血痕と、ナイトメアで無理やり突き破られたコンテナの惨状。
「一人目は俺の拳銃を抜き取って素顔を見て、二人目が一人目にその拳銃を捨てさせ、そこにさらに乱入したナイトメアに二人は撃たれたようだ。」
「……ブリタニア軍、黒の騎士団、日本解放戦線か?」
「かも知れん……あるいは────おい、なんだその手は?」
ルルーシュが見たのは、包帯が巻かれたCCの手だった。
「これか? 猫に引っ掛かれただけだ……なめてみるか童貞坊や?」
「そんなことより今は撤退だ、手伝えピザ女。」
ルルーシュはその場の血を採取してからCCとともにその場を念入りかつ手っ取り早い証拠隠滅に取り掛かる。
別の場所では、毒島機とマーヤ機を乗せたトレーラーが静かに港と租界の境界線辺りで息をひそめていた。
毒島は警戒の為かトレーラーの上に胡坐をかき、時々横で青を通り越して土色かつ目からハイライトが消えたマーヤに視線を送る。
「(ブリタニア、それも軍人に対しては過激なまでの憎悪を感じていると感じていたが……まさか、周りが全く見えなくなるほどとはさすがに予想していなかった。 それに、さっき言ったことが本当であれば……)」
毒島が思い浮かべるのは動きがやっと止まったマーヤ機に追いつき、マーヤから聞こえてきた独り言のような通信だった。
『なぜ神様はブリタニア軍人を? その所為で神様も撃ってしまった。』
「(察するに、そのブリタニア軍人とやらを撃ったマーヤを止めようとして昴が割り込んだのか? 何かの作戦? それともその軍人と接触したかった? どちらにせよ、あのままあの場に居座れば黒の騎士団に目撃されてしまう。 外装を外せばサザーランドに見えるアンジュの機体ならばある程度誤魔化しが付くし、彼女は『逃げ』に徹していればかなりの腕だ。 ブリタニアと日本解放戦線の残党騒動が収まる前に、昴を見つけていれば良いが……)」
俺、スヴェン・ハンセン。
(身体的に)17歳。
前世(多分)ありのアッシュフォード学園高等部の二年生。
「ガボゴボガババババ?!」
ただいま海へと落ちた瀕死の褐色美女の後を飛び込んでオーバーワークされた肺が爆発しそうな感じを必死に息を吐きだして誤魔化しています。
どうしてこうなったし。
いや、言うまでもなく『原作ストーリーの維持』が結果的にこうなった。
俺が生き残りやすい立ち回りの為……と言いたい。
この褐色美人────名を『ヴィレッタ・ヌゥ』というキャラはコードギアス原作の二期でかなり重要な立ち位置が待っているのだ。
それこそ、ルルーシュと直接関りを持つだけでなくアッシュフォード学園にまで『
実際は『ルルーシュ=ゼロ』の真実を使って男爵の爵位を授かって彼の監視をする『ブリタニア機密情報局部隊長』としてだが。良くも悪くもヴィレッタは真っ直ぐな信念と願望を持った奴で、それは『貴族出世』すること。
故に扱いやすく、もし彼女がここで死んでしまって二期の監視員が予想できない奴などが出てきたりしたらルルーシュがゲームオーバー……引いては俺の第二の人生の終わりに繋がっても不思議ではない。
あとあまり関係ない余談だが、確か設定資料で彼女は六人兄弟の長女で実質な女手一つで家族を養っていたはずで、それが理由で『出世』に固執している。
ともかく、俺の最大の強みである『原作知識』を活かすためにヴィレッタ・ヌゥの生存は必要不可欠なワケで、ここで死なれたら困るのだ。
防波堤のコンクリートブロックに頭を打ったらしいヴィレッタはそのまま海へと転げ落ちていったので俺は飛び込んで、今は溺れかけと。
だがこうやって(物理的に)頭を冷やしてみれば俺が強襲した新型もイレギュラーだし、ブリタニア人であるヴィレッタを俺が助けたことも……
いや、俺は『脇役』でいい。
だからもし俺の所為で
あれ?
体は苦しいはずなのにポカポカし始め、なぜか気持ちが良くなってきたぞ?
あ。
これ。
酸素欠乏症って……
奴……
か?
って諦めている場合じゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!!
うおぉぉぉぉぉぉ!!!
こなクソォォォォォォ!!!
(寒さで)ふるえるぞ俺のハート!
(真っ白に)燃えつきるほど俺はヒート!!
(世界に)刻むぞ俺のビートォォォォォォォ!!!
俺は未だに背負っていた対KMFライフルと被っていたヘルメットを破棄して身軽になり、必死に気を失ったヴィレッタと自分を引きずって海上を目指しながらじわじわと痛む脇腹に集中して意識を保つ。
こんなことならスザク並みにどチートな身体を(自称)神様特典にすれば良かったが返却はただいま不可能でございまするぅぅぅぅ!
息が苦しい!
視界も真っ暗になってきた!
空気を欲する衝動を
「ブハァァァ!」
俺は今!
海上を突破したオルカだ!
『フリー・ウィ〇ー』だze!!!
ムホホホホホホホホホホホ!!!♡
シャバの空気がうんまいのぉぉぉぉ~!
「スぅ~────がばばばば?!」
しょっぱ?!
俺がもう一度息を吸い始めている間に、体がまたも海の中へとリバウンドして沈んでいき、口の中に海水が空気の代わりに入ってくる。
そういや、今はヴィレッタを抱えている状態だった!
『こんなところで死んでたまるか!』と思いながら、疲れた体を気力で動かして何とか海岸へとたどり着いてやっと一息を入れられるようになった。
身体が……お、重い……
『疲れた』という事も口にできないまま、深呼吸をただ続ける。
携帯は……多分海水に浸かったからダメだろうな。
近くの建物に入って電話を……いやそれよりも止血をしないと。
チーズ君で使った裁縫セット、持ったままで良か────ってイタタタタタタタタ?!
当たり前だけど麻酔なんてないから傷口に塩!
負けるものかぁぁぁぁ!
『何に?』とはキカナイデ。
……ふぅ。
ん? 何で『
………………………………………………………………次はヴィレッタだな。
無視していないヨ?
まさかマーヤが俺ごとヴィレッタを撃つとは思わないじゃん?
別に普段使っていない上に直接自分の身の危険じゃなかったからド忘れしちゃったわけじゃないヨ?
それはさておき、流石正規の軍人だけあって見事な体つきだなぁ~。
俺のように麻酔無しで傷口塞いでも痛がる素振りもしないし。
そもそも息もしていないし。
……んんんん?!
「…………………………………………」
よく見たらヴィレッタ、息してへんやん!
おいいい゛い゛い゛い゛い゛?!
冗談はよせ!
ここで死んだら何のために俺が身体を張ってまで海にダイビングしたと?!
只の馬鹿じゃん?!
外野うるさいよ?!
こちとら中身は平凡な奴ぞえ!
「すぅー!」
スバルは息を深く吸ってとっさに人工呼吸を一心不乱に始める。
「……ブハァ?! ゲホゲホ、ケホ?!」
何回目か分からない人工呼吸の過程で空気を送っているとヴィレッタがむせた咳をし始めてようやく彼は真の意味でホッとしながら彼女の身体を回復体位に動かす。
「(マジ疲れた。 寝たい。 寝る。)」
彼は近くの倉庫の陰まで自分とヴィレッタを引きずってまたも回復体位に戻した彼女の隣で瞼を────
『────やっと見つけた! 貴方、大丈夫?! それにずぶ濡れじゃない!』
「(ヒィ~ン。 もうオイラを寝かしてくれよ~。)」
そこにアンジュリーゼの声が聞こえてきたことでスバルは重たくなっていた瞼を開ける。
だが心身ともに疲れた彼はそうも言っていられないし、彼女がここに来たのはどっちかと言うと好都合だった。
彼女にもっと近く来るようにスバルがジェスチャーし、自分とヴィレッタをコックピットブロックにヴィレッタと共に乗り込む。
「ぎゃあああ?! 冷た?! 身体拭きなさいよ! ってその人は誰よ?!」
「(ああ、ウッザ。)黙れ。」
「んな?! あ、貴方ねぇ────?!」
「────いいから黙って隠れ家に戻れ。 (今は『高飛車お嬢様』に付き合うほどの余裕はねぇんだよ。)」
アンジュリーゼと合流してからの記憶は朧気で断片的だった。
覚えているのは隠れ家に入ると凄く落ち込んでいたマーヤが俺の状態を見るなり慌てて自害しようとしたところを無理やり止めて『次はちゃんと見ろ』を言ったことぐらいか?
ああ、あと『
…………
………
……
…
「俺はスバル。 倒れていた君を一応手当てしたのだが……『ゼロ』、とは何のことか知っているか?」
「『ゼロ』? 何でしょう?」
目の前には案の定、原作のように記憶喪失っぽいヴィレッタ。
そして今よく考えたら扇がゼロに対して不信感を得るタンカー自爆疑惑が無くなっていたやんけ。
俺は……何を……
あのままこいつを放って置いていたら────いや、もしそれで彼女が死んだとしたらそれはそれで罪悪感が出る。
ブリタニア軍人だけれどそれは家族の為であって、ナンバーズを見下すのも『純血派』といった一つのコミュニティの方針に従っていたっぽいし……
モラトリアム。
「────あの?」
おっと、考えに夢中になっていた。 やったことはしょうがないし、胃がキリキリ痛むが……『扇役』をするか。
「君の名は? 所属は?」
「さぁ……ボロボロだったけれど服装と、自分の姿を鏡で見たときに自分が『ブリタニア人』ってことぐらいしか……」
「そうか。」
「そのヘルメット……苦しくないですか?」
今の俺は予備のフルフェイスヘルメットをワザとかぶって記憶喪失のヴィレッタと話をしていた。
「これをかぶっているのは、
「その……私は別に構いませんかと────」
「────俺の素顔は女に見せるようなものではない。 (さて、これで『じゃあ取らなくて良いですって言ったらでいいけれど……』)」
「恩人の顔でそこまで邪険にすることはないです。」
「……そうか。 ならお言葉に甘えよう。」
「ッ」
俺がヘルメットを取ると、露わになった素顔にヴィレッタは目を見開いて口を覆う。
頭はネジやノコギリなどにえぐられた穴や傷、皮膚の色が変質した火傷に顔は至る所が深く刻まれた跡が無数にあり、片方の目玉は濁っていた。
無論、これらは
本来は
「(ちなみにモデルは『NARUT〇』の『森乃兄貴』だ……どうでも良いかもしれんが。)」
数秒間、静かな場だけが続きヘルメットをかぶりなおす。
「私は……どうしたら……」
「記憶が戻るまでここを使ってくれてもかまわない。 一通りの物はそろっている、その……服もだ。 誓っていうが、腹の傷を治療しただけで何もしていない。」
「……」
ただただ困惑するヴィレッタの部屋を後にして、よくわからないもやもやした心のままアパートの居間にあるソファにドカっと乱暴に座っては大きなため息を出す。
「ハァァァァ。」
「お疲れ様。 勝手に淹れたけれど、良いでしょ?」
アンジュリーゼが俺の前に紅茶の入ったコップを置く。
「そうだな。 一応言っておくが、今は特殊な変装をしている。」
俺がヘルメットを取ると明らかにアンジュリーゼの顔色が一瞬だけ悪くなる。
「……へぇ~、よく出来ているわね?」
「ああ。」
お? 紅茶美味いな……元々貴族令嬢だからか?
俺がやっと一息ついている所にアンジュリーゼが口を開ける。
「ねぇ、スヴェン? 私が言うのもなんだけど……一人で気負う事はないのよ?」
「???」
「スヴェン……“スバル”の能力は素晴らしいわ。 羨望していないと言えばうそになるくらい。」
なんだ?
アンジュリーゼがしおらしいぞ?
「何なの、その顔? これは……まぁ、素直な気持ちです。 貴方は自分の力を使って道を開いていて、羨ましい限りですわ。 ですが、私は知りました。 人間、どれだけ優れていても限界があるのです。 『一人で出来る』と言って『全部一人でやる』ことはないの。 スバルは、もう少し他人に頼った方が良いと思う。」
……ダレコノ子?
「その……一度だけでも良いから、周りを見てみて? 頼れる人や、協力してくれる人がきっといるから。」
「…………………………………………………………」
なんか……『アンジュリーゼ』や『アンジュ』らしくない。
「考えておこう。 アンジュリーゼ……あの部屋にいる奴が何かいるようだったら頼めるか?」
「あの褐色女? ところであいつ、どうするの? ブリタニアの軍人でしょ?」
「……上手くいけば仲間に出来るかも知れないと思っただけだ。 それに、どちらにせよ恩を売るのは悪くないと思わないか?」
「ハァ……貴方、さっきの私が言ったことを脳の片隅にでも置きなさいよ?」
「…………」
アパートのバルコニーに出ていた俺は、夜が明け始める景色を見ながらアンジュリーゼの言ったことを思い返していた。
『スバルは、もう少し他人に頼った方が良いと思う。』
アイツには珍しい正論だったな。
俺は所詮、身体のスペックが少し高くて(自称)神様特典を持っているだけの奴だ。
ルルーシュやスザクみたいな『何でもできてしまう』奴じゃない。
それに、上手く立ち回れているのもある程度画策が出来ているのも『原作知識』があるからだ。
これまで『誰にも頼らなかったのか?』と聞かれれば
『頼った』ことはあっても、『全ての信頼』を置いた訳ではなかったからだ。
『原作知識がバレる』以前に、
だから俺は俺なりの『原作をキープしつつより良い経過』に時々介入していた。
だが……これから来る
俺一人でやれることに限界があると薄々感じていたからこの『黒の騎士団お助けサークル』を作ったわけだが……もうそこで原作とは違うか。
「一人黄昏れるなんてらしくないぞ? どうした、スバル?」
後ろから毒島の声がかけられ、後ろを見ると彼女はどこか疲れた様子だった。
「毒島……」
「後でマーヤに声をかけてくれ。 彼女は君を誤って撃ったことを相当気に病んでいる……それを聞いた私もびっくりしたが、それほどあの褐色軍人に価値があるのか?」
「ある……と言う可能性を持っているだけだ。」
「君が賭け事をするなんて珍しいな。 そういう類は嫌いと思っていたが……」
「ああ。 賭け事はあまり好きじゃない。 好きじゃないが……」
そこでとある考えが脳内に浮かぶ。
『一人で限界があるのならば、やはりより積極的で他人を巻き込んだ介入も解決策の一つかもしれない』、と。
だがそうすれば、俺は『原作知識』と言う強みを失う。
……ならばもう、こうするしかないか?
「毒島。 あとで学園で皆と、もう一度あの屋上で話そう。
やるか。
『原作の流れを見てアドリブで対応する』。
それをするには、毒島達にはある程度『これから起きる事態』とかを話す。
まずは『マオ』だ。
マオ本人は次話に出す予定です。