小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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では本編に行きましょう。


第42話 マオ2

「あの、これ……論文の続きです。」

 

「ありがとうございます、ニーナさん。 時間がある時にお目通ししておきますね?」

 

「う、うん……でも面白いね? 『ウランを使った新しい可能性』なんて、私には考えられなかった。」

 

「(う~、そこまで感動されると罪悪感が~。 “これも所詮は前世から引っ張り出した『原子力発電所』をネタにしたんです”とは言えない!)」

 

「青春ねぇ~♡」

「です~♪ 面白いね、ナナリー?」

「ええ。」

「スザク~! お前は! お前だけは俺を裏切らないでくれ~!」

「リヴァル? それってどう言う意味なのかな?」

「そこでボケるな! 勿論、ルルーシュとシャーリーの事だよ! この間なんか仲良く相合傘を差して夜の租界を二人で────」

 「────ふぇぇぇぇぇぇぇ?! ななななな何でリヴァルがそのことを?!」

 

「(思春期の子たちのやり取り、ええのぉ~。)」

 

 スヴェンはアッシュフォード学園のクラブハウスで『癒し成分』を補充していた。

 

 あの後、ヴィレッタがいない場所で彼は特殊メイクの事や『これから起きるかも知れない事態』をアンジュリーゼ、毒島、マーヤの三人に話していった。

 

 大まかには以下のようなモノだ:

『注目を浴びすぎた黒の騎士団に、ブリタニアが本腰を入れる可能性。』

 こっちは『ブラックリベリオン』を指している。 原作の描写とかを見ている限りどうもブリタニア本国はエリア11の反抗勢力を一網打尽にしたいような動きを見せていた。

『ブリタニアの魔女』と知られているコーネリアが居たからこそ、彼女の手腕を試していたような話が二期ではチラホラとあった。

 

 ブリタニア帝国第2皇子(シュナイゼル)とかブリタニア帝国宰相(シュナイゼル)とか腹黒虚無感男(シュナイゼル)とか。

 

 それと上記の流れで『黒の騎士団は横ではなく縦の組織でゼロに何かあれば組織も影響を受ける』とも。

 以前にも言ったが、黒の騎士団の要は良くも悪くも『ゼロ一人』だ。 彼がいなければ組織が回らないように意図的に作られ、これで反逆や反乱や離反の可能性を潰していた。 

 逆に言うと、彼一人がいなくなれば組織として機能できないまま攻撃を受けると全滅しかねない。

 

 最後に『人体実験などで超能力を得た敵の可能性』だ。

 これは勿論ギアスの事だがこいつらに『CC』の事や『コード保持者』に『契約』うんぬんを説明するよりは理解しやすいし脅威も伝わる。

 下手したら『ギアス』と言う単語を知っているだけでもそれなりのリスクを伴うし間違った奴の前で思わず単語を出すだけで即アウトの可能性もある。

 取り敢えず例として『敵にそれを使える者がいてエリア11に来ている情報もあるから早急に対処する』とも言った。

 

 つまりはマオの事だ。

 

 俺自身にルルーシュのギアスは効いていなかった様子だが、それが単に『ギアスが効かなかった』のかあるいは『命令系の能力が効かなかった』のか分からない。

 

 検証はしたいが……怖くてできないし、ルルーシュ以外のギアス使う奴に今から『やぁ! おいらギアス効かないみたいなんでかけてくんね?』と言えるわけがない。

 

 どちらにせよ、マオの能力は厄介な類だ。

『自分から一定距離(500メートル)内にいる人間の思考を心の声として知覚する』というもので、知的キャラや後ろめたい情報を持った相手(つまりルルーシュや俺)には最悪の相性を持つ。

 

 ヴィレッタには不自由のない生活を送ることのできる環境と、いくつかの注意事項を言い渡して携帯(GPS機能入り)も貸した。

 

 そして今は毒島たちにステージ(ナリタ)下準備(セッティング)をしてもらっている。

 

 本当は俺自身も加わりたいが、『優等生』と『病弱で休みがちのカレンの代わり』の設定からそれほど頻繁に欠席出来ない為学園にいる。

 

 マーヤも『出席数がヤバい』ということで同じだが、代わりにアンジュリーゼと毒島には動いてもらっているしマーヤには学園でもできる作業を頼んでおいた。

 

 ジリリリ! ジリリリ!

 

 一昔前のデザインをしている電話が突然鳴り、スザクが出る。

 

「はい、アッシュフォード学園生徒会です。」

 

 もうすっかり生徒会に馴染んでいるな、スザク。

 

「……ルルーシュ? 変わったこと? あるよ? 君がいないことだ。」

 

 この天然め。

 

 片方の会話だけだが、おそらく誰もが電話の話し相手がルルーシュと気付いただろう。

 

「最近授業も休みがちだし、ちゃんと学生やりなよ? ……それって『今日は』じゃなくて『今日も』だろ?」

 

 スザクがそう言いながらチラッと見たのはナナリー。

 

「……今日もなのですね、お兄様。」

 

「じゃあ今日はお泊り会です!」

 

「お! なら今宵は夜通し語り明かそうじゃない!」

 

「おお~! 『こいばな』と言う奴ですかミレイ先輩?!」

 

「そうそう♪ ね、シャーリー?」

 

「な、なんでまた私に振るんですか?!」

 

「だってシャーリーお前、この間ルルーシュと雨の中を二人っきりで傘をさしてキスする隙を────」

 「────そこも見たのリヴァル?!」

 

「うん。 あ、ちなみにこれが写真ね?」

 

 「きゃああああああ?!」

 

「おおお~~~!!! 『おとな』です~!」

 

「あともうちょっとかな? あとは寝室で『OK』の書かれた枕と────」

 「────わ、わ、わあああああああああああああ!!!」

 

「し、寝室……」

「枕???」

 

 そのままスザクが電話を切ると上記のようにナナリーをライブラやほかの生徒会メンバーが励まし、リヴァルとミレイに話題が振られたシャーリーはアタフタと慌てて茹蛸状態になる。

 

 ニーナ、なぜそこで赤くなる?

 ライブラも深追いはするなよ?

 

 そう言えばこの頃アリスを見ていないな。

 

 ……どうでも良いけど。

 

 見るときは元気がないし顔色も悪いしピザもこの頃あまり食べないしなんか気まずいし。

 

 ……本当にどうでも良いけどね。

 

 …………………………………………チョコフォンデュ、作っておくか。

 

 別にアイツだけの為じゃなくて、女子たちに受けがいいからな?

 

 本当だぞ?

 

 ピリリ! ピリリ!

 

 携帯が鳴ってみると、マーヤからメッセージが届いていた。

 

『あとは本番。』

 

 彼女への返事を書いている内に、今度はアンジュリーゼと毒島から『OK』が送られくる。

 

 これで()()()の準備は整った。

 

『開始』。

 

 そう三人に送信すると席を立つ。

 

「あれ? スヴェン先輩、どこか行くのですか?」

 

「ええ。 今さっきお嬢様の件に関しての連絡が来たので、これで失礼致します。」

 

 良し、あとは『奴』が釣れることを祈るだけだ。

 

 

 

 


 

 

 

 数日後、ナリタ連山の麓にあるナリタ市にルルーシュは単身で来ていた。

 

 見るからにイライラしていた彼は別にシャーリーの部屋を(下着のタンスを除いて)漁った末に日記を見たわけでも、ナリタ行きのリニアカー予定表を見つけたわけでもない。

 

「(クソ! まさかここまで堂々と歩き回るとはどんな神経をしている?! 『軍の一部に追われている』と言っているが、追われている自覚はアイツにあるのか?!)」

 

 ルルーシュの脳に浮かぶのはここに来る前のクラブハウスのテレビで見た映像。

 ナリタ事変(土砂崩れ)で亡くなった者たちの為に建てられた慰霊碑の報道だった。

 その映像の片端に一瞬だけ背景でフラフラする()()()()()がチラッと映ったことを見たルルーシュはかつてないほど素っ頓狂な声を上げ、ナナリーが声の主を兄と特定できなかったほどに裏返っていた。

 

 そのまま彼は慌ててナリタに来ていた。

 

「(クソ! 忌々しいピザ女め~!)」

 

「へぇ~? 君、C()C()の事を知っているんだ?」

 

「ッ?!」

 

 ルルーシュはビックリしながらも横の男の方を見る。

 

 そこにいたのは長身で白髪を垂らしてゴーグル付きのヘッドフォンをした男がいた。

 

「誰だ? お前? (CCを知っている口ぶり……そして俺への接触方は自分に絶対的な自信を持つ特有の雰囲気……出方を見るか。)」

 

「さぁ、誰でしょうねぇ? 知りたかったらさ、()()()()()()()()()()()()()()。 えーっと、『象棋(シャンチー)』……じゃなかった、『チェス』って言うんだっけ?」

 

「チェスだと? ……いいだろう。 (こいつ……俺の事も知っている? 何が目的で近づいたかは知らんが安い挑発に乗ってとっとと勝って聞き出してやる。)」

 

 そしてこの二人は知る余地もないが、その場をフヨフヨとうろついていた小型無人機(ドローン)が彼らを見つけると、とある者たちの携帯に座標を送った。

 

「(……来た。)」

 

 少し距離の離れた廃ビルから一番近かった者はライフルを取り出し、つけられたスコープを座標の辺りへと向ける。

 

「(いた……)」

 

 スヴェンはそう思いながら、地面から500メートル以上の廃ビル内でホッとした。

 

 先ほどの小型無人機は『ファクトスフィア』というものが出来てから途中で開発中止、そして予算削減された設計図をアンジュリーゼに頼んで保管庫から手に入れてもらい、毒島にその設計図を基に『キョウト(桐原)』で作り、復活したマーヤに頼んで『とある特徴に合う者を発見すればその座標をスヴェンたちに送られる』という調査プログラムを作ってもらっていた。

 

 そしてナリタ市では待ち伏せるようにライフルを持って彼はマーヤたちと一緒に()()をしに来ていた。

 

 相手はイノシシやウサギなどではなく()()で、待機場所は『地面から500メートル以上離れている狙撃ポイント』だが。

 

「(一番近かったのが俺でよかった……毒島は銃が好きじゃないし、アンジュリーゼはまだガク引きをするからな。)」

 

 原作では『シャーリーに正体が知られた』と言う疑いからルルーシュは彼女の部屋をあさり(CCは下着やタンスをあさる係)で、ナリタ行きのリニアカーの予定表を見つけてはナリタに来ていた。

 

 だがスヴェンの活躍でその線は無くなったが……ここでCCのストーカーであり、ルルーシュと同じくギアスを使える『マオ』という男をどうやっておびき出そうか迷った。

 

 スヴェンは(ちょっと困った顔をした)毒島に頼んで、未だに報道されて視聴率の低いナリタのニュースにチラッと『緑髪の少女』が一瞬だけ映るように頼んでいた。

 

 勿論、本人ではなく合成映像なのだがマオを釣るには十分だったことにスヴェンは安心していた。

 

「(ってマオ(白髪男)はともかく、なんでルルーシュがここに? シャーリーフラグ、折ったはずなのに?)」

 

 幸か不幸か、スヴェンの張った罠にルルーシュも釣られていたことを彼は知らず、ハテナマークを出しながらスコープの調整をして照準をマオの頭にゼロインする。

 

『マオ』。 

 人口が大きく、裕福とそうではない者たちの格差が激しい中華連邦ではよくある話だが彼は幼いころ、『口減らし』の為両親に捨てられた経歴があり、ちょうど行き倒れていたところを明らかにアジア系ではないとある旅人に拾われた。

 

 そのとある旅人とはCCで、彼女は彼の面倒を見る代わりに契約を持ちかけた。

 

 CCとの契約によって得たギアスは『人の心が聞こえる』という、残酷なモノ。

 既に『捨て子』ということで人を嫌っていた彼は人間の生々しい感情を耳にし続けてしまい、唯一『心』が聞こえないCCに更に依存し、精神年齢が子供のまま育った。

 

 マオにとってCCは『母親』で、『安らぎ』で、文字通り『(彼の知る)世界の全て』だった。

 精神年齢が幼いため『社会のモラル』や『ルール』などを平気で無視し、他人を殺すことなど平然と行い、目的の為ならば体が不自由な者を平気で縛りあげて保険の為に爆弾を近くに設置する。

 

 その反面、マオはCCに捨てられたことを認められず一途な想い一つで中華連邦から極東の日本(エリア11)まで来た。

 四六時中、聞こえてくる他人の声を以前に録音したCCの声を聞きながら我慢してまで。

 

 スヴェンは深呼吸をし始め、精神を統一させながら心を落ち着かせる。

 

「(同情はする。 良くも悪くも『純粋無垢』だが、CCを知っているルルーシュと会ってしまった今では『体の不自由(ナナリー)を縛って爆弾を設置する』フラグが立ってしまった。 それ以前に、お前の能力は危険過ぎる。 だから、俺の安寧の為に死んでくれ────)────マオ。」

 

「ッ!?」

 

 スヴェンが思わず口にしたその言葉に、彼の背後から息を素早く吸う音がする。

 彼は反射的に拳銃を抜き、振り返ざまにそれを構えた。

 

「動くな。 両手をゆっくりとあげろ。」

 

 スヴェンが見たのはどこか軍服を思わせる服装にミニスカートを着た、真っ白でショートカットの少女だった。

 

 そして服装には『黒の騎士団』の紋章と似たものが付いていた。

 

「あーあ。 ボクとしたことが失敗し────」

「────手をゆっくりと後頭部につけろ。 (黒の騎士団紋章と似ている……まさかルルーシュの護衛か何かか?)」

 

「ハイハイ。」

 

 スヴェンがよく見ると少女は以前に負傷したのか左目に眼帯をしていただけでなく、服装の下から露出していた手足にも包帯が至る所で巻かれていた。

 

 明らかに自分が優勢だというのに、スヴェンの本能はさっきから警報を鳴らし続けていた。

 

『彼女を知っている』。

『彼女は危険』、と。

 

「(だが『どこ』だ? 『どこ』で知っている? 『危険』とはどういうことだ?)」

 

 スヴェンは自分に対してその問いをするが答える者がいる筈もなかった。

 

「貴様は?」

 

 そう考えた彼は目の前の少女に質問を投げて、彼女の出方を見た。

 

「ん? ボクの名前を知っていると思ったけれど、()()()()()()のことだったかぁ~。 いや~失敗失敗、大失敗。」

 

「(『あっちのマオ』? ということはこいつの名は『マオ』? ということは────待てよ?)」

 

 彼が考えているうちに様々な点と点が繋がり始め、少女は後頭部で結ばれていた眼帯の結びをスヴェンに勘付かれないようゆっくりと解いていた。

 

「(『少女マオ』。 『黒の騎士団に似た紋章』。 『スファルツア家』。 『エカトリーナ』。 『ナナリーのイジメ』。 『親友のアリス』。 『手足に包帯』。 ナリタと港で遭遇した新型を見た『引っ掛かり(デジャヴ)』……………………まさか?!)」

 

 一つ一つのパズルのピースが単体では大きな図面は分からないが、ある程度それらがやっとかみ合って全体図が自然と想像できるような感覚でスヴェンは『とある結果』へと至った。

 

 スヴェンは氷の刃が胸を刺すような、冷たい感じに気を取られて目の前の状況に気が付くと眼帯が外れて()()()()()()()()()()()を放つ少女の左目と自分の目が合っていた。

 

「────ボクは『ザ・リフレイン』の()()────」

「(────思い出した! こいつ、『ナイトメア・オブ・ナナリー』のマオか! 『 “時間”に意味は(Time Has No)』────!)」

 

 少女の『ザ・リフレイン』を聞くとほぼ同時に、スヴェンは自分の確信で焦りながらも『時間の意味』を無くそうとした。

 

 さて、皆様は『人間の神経細胞が情報を伝達する』速さをご存じだろうか?

 一番速度が速い反射神経の信号で『毎秒約120メートル』と言われているそれは十分に速い。

 特に『意識するだけ』ならばさらに速いだろう。

 

 だが光の速さに至っては『毎秒約30万キロメートル』。

 

 比べることがそもそもおかしいほどの差で、マオは既にギアス(光による伝達能力)を発動していた。

 

 スヴェンの『 “時間”に意味は無い(Time Has No Meaning)』は確かに強力だが、明確に意識する必要がある。

 

 だが彼は動揺から更に出遅れていた。

 

 つまりどういうことかと言うと、マオのギアスが先にスヴェンを襲って彼は目の前が真っ白になった。




やっとここまで来れました。 (:.;゚;Д;゚;.:)ハァハァ

ちなみに記憶喪失ヴィレッタの名前は『千草』ではありません。

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