小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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第45話 CCとマオと……

 時間はマオ(男)の手が撃たれた後、ナリタ連山の山頂からルルーシュがCCの借り(強奪し)たバイクで麓まで降りてそこから租界へと戻るモノレールに二人は乗っていた。

 

「(マオ……まさか『あれ』から生きていただなんて……)」

 

 CCが思いに耽りながら、自分を『母親/愛人/世界』と無邪気に称えていたマオを思い出す。

 

 最初は彼を引き取って契約をしたのも気まぐれ……と最初は思っていたが、後になって考えると()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったことにCCは気付いてしまった。

 

 それを思うと遠い過去に彼女の中で捨てた筈の『罪悪感』と『後ろめたさ』は日々膨らみ、CCはついに少年になったばかりのマオからひっそりと姿を消した。

 

『私はお前の事が嫌いだ。 それにお前を利用しただけ。 だからお別れだ』と書いた手紙と、少々のお金まで置いて彼のもとを去った。

 

 その時のマオは既にギアスの使い過ぎで能力を遮断できずに苦しんでいたことから、CCはマオが『自ら死を選ぶ(自殺する)か、人里から離れて隠居するだろう』と思い込んでいた。

 

 だが実際には、マオは諦めることなくCCをがむしゃらながらに忌み嫌っていた筈のギアスをフルに使い、追い求め続けていた。

 

 11年間、ずっと。

 

「(マオは()()()()()。 私の置手紙の意味すら理解できていなかったというのか? ならば、私の────)」

 

「────オイ、貴様。」

 

 仏頂面のルルーシュが黙り込んで()()()()()CCに声をかけると彼女の意識は『今』へと戻った。

 

「『マオという男は他人の考えを読み取るギアスを持っている』、それで合っていると考えて良いんだな?」

 

「ああ。」

 

「お前との契約で得たのか? いつだ? 規模は? 発動条件は? 弱点は?」

 

「11年前、奴がまだ6歳の時に……あれから変わっていなければ、最大500メートル範囲内の思考を読む事ができて集中すれば深層意識まで読み取れる。 お前のように頭で考えるタイプの天敵だ。

 発動条件と弱点……と言えば良いのか分からないが、あいつのギアスは常時オン……四六時中、他人の声を聞いてしまうタイプだ。」

 

「は! 俺の大先輩と言う訳か! (俺の思考を読んだという事は、俺がゼロだという事も、ナナリーの事も全てバレていると見ていい。)」

 

 本来のCCならば機関銃のように質問を次々と飛ばすルルーシュを無視してもおかしくはなかったが、彼女もルルーシュも久しく感じていない『動揺』に失念していた。

 

「そうだな。 お前の先輩だよ。」

 

 そこから二人の間に会話は特になく、二人はアッシュフォードのクラブハウスへと戻った。

 

 ルルーシュはナナリーを護るため更にクラブハウスにカメラや盗聴器などを設置して独自に要塞化し、CCは悶々と一人で(手作り親子チーズ君を抱きながら)考え込むようになっていた。

 

 久しぶりに自分に構ってくれるルルーシュに戸惑いながらも嬉しく思うナナリーだが、彼の声とは裏腹に兄が何か緊張感を秘めているのを感じ取ったのを知ってか、ワザと場を和ませるような言動を取っていた。

 

(仮初とは言え)兄妹二人が久しぶりにゆっくりとした時間を過ごせるように、ミレイは生徒会の皆の世話を見ていた反面、CCは凍結していた筈の心がざわついていた。

 

「(ここはギアスが私に効かないことを逆手に取って、私一人で対応するか……坊や(ルルーシュ)にとって、相手と分が悪すぎる。)」

 

 そう思ったCCはクラブハウスを抜け出して租界でマオのいそうな場所を片っ端から朝昼夜、時間帯を問わずに散策していたが手掛かりなしの状態だった。

 

 ピザ~! ピザ~! ピーザーならば~……ハッ! ハッ!! ハッ!!!

 

 そんな時、CCの携帯から変な()()()()な着メロが流れる。

 

「(このタイミングで『アンノーンナンバー(不明番号)』……恐らくマオか。) もしもし?」

 

『CC! ああ、やっぱり電話越しでも新鮮な君の言葉と声は────!』

 「────何の用だ、マオ?」

 

 表面上、いつもと違う様子のCCだったがマオのきゃぴきゃぴとした態度が癇に障り一気に燻っていた彼女をイラつかせていていた。

 

『話が早くていいね! 僕も早く会いたいから思わず遊園地を一つ丸ごと()()()()にしちゃったよ!』

 

「なんだと? ……マオ、お前まさか────?!」

『────大丈夫! 大丈夫だってば! CCと約束した通り、ちゃ~んと()()()()()()だから! 不倫の事を口にしたら潔く“遊園地アトラクションのメンテナンス”という事にしてくれたよぉ~! あ、別にルルーシュを連れてきても良いよ? 僕の敵じゃないしね! じゃあねぇ~!』

 

「(マオ……)」

 

 CCの気持ちは更に暗くなった。

 以前のマオはここまで過激ではなかったこともだが、未だに自分がマオに約束させたことを彼が律義にも続けていたことに対してだった。

 

 以前、CCはマオと一緒に中華連邦を旅していた時にその時まで身に着けていた経験を使って極力『荒事と関わらなかった』というスタンスでいたが、アクシデントは起こった。

 

 ある日彼女とマオは通り雨を凌ぐために近くの小屋で身を潜んでいたところ、その小屋に男が数人隠し通路から二人と出くわした。

 

 その小屋が実は麻薬の密売場所と知らなかった二人を男たちは殺そうと動いたところ、マオは獣のように自分を襲う男の指を噛み千切って男が放したナイフを無理やり奪って刺して、CCと取っ組み合いをしていた男たちもめった刺しにした。

 

 その後、CCの後悔は一気に上昇した。

 

 それは相手を殺したからではなく、『大丈夫だよ! これで静かになった!』と返り血を顔と体中に付けながら無邪気に自分に笑顔を向けるマオを見たからだ。

 

 その日を機に、CCはマオに色々と約束をさせた。

 そして自分が彼の元を去ったからにはてっきり彼はそれらを無視すると思っていたのだ。

 

 だが明らかに彼はそれら(CCとの約束)守りながらも自分(CC)を追うためだけに大陸と海を渡ってまでエリア11(日本)に来ていた。

 

「(……どうする? いや、『会う事を拒む』選択はない。 そんなことをすればマオがルルーシュたちに何かを仕掛けそうだ……それに、マオが未だに私との約束を守っているのなら、話せば分かるかもしれない。)」

 

 ここで長年生きてきたCCの『勘』が頭の隅で警報を鳴らしていた。

 

「(だが、もし奴が私の言葉に耳を傾けなかった場合……『そうなる』と決まった訳ではないが、私に奴を止める術(撃つ覚悟)はあるのか?)」

 

 CCはずっしりと重みを懐に感じさせる拳銃に思わず手を添えると、未だに包帯を巻いた手で『とある男』を思い出す。

 

「(……そう言えば、丁度()()()がいたな。)」

 

 CCはそう思った矢先に()()()番号に電話を掛けると不愛想な声が出る。

 

『もしもし?』

 

「私だ。」

 

 

 

 


 

 

 

「遅かったな。」

 

 俺が指定されたクロヴィスランドの近くにある横道に着くと、CCの開口一番がそれだった。

 

 原作で見た、キャップに黒ストッキングとスカート私服姿のCCが。

 

「一応、すぐに電話を切って来たつもりだ。 俺は付いていけば良いだけなのか?」

 

「……ああ。 ()()()()()()()()()()。 拳銃は持っているか? 持っていなかったら私の持っている奴を使うといい。」

 

 CCは懐から拳銃を出す。

 

「……必要なのか?」

 

()()の為に、必要になるかも知れないだけだ。 要らないのならいい。」

 

『自衛』って、お前(CC)はマオを撃つ気だろ?

 明確な『拒絶』を示して、彼を突き飛ばす為に。

 

「いや、持っている。 ()()()()()()()()()()からな。」

 

「そうか……ならそのままついてこい。」

 

 そう短く言うCCは回れ右をしてそのままズカズカと『アトラクションメンテナンスの為一時休止』のサインを出しているクロヴィスランドの中へと歩く。

 

「「……………………」」

 

 俺と彼女の間に会話が無いまま数分、彼女が急に立ち止まる。

 

「やっぱり、お前はここまででいい。 今から会う奴と私は話をするつもりだ。 だがもし、異変を感じたら()()()()()()()()()()。」

 

「分かった。」

 

 そう答えると、CCは先へと暗い遊園地の奥へと進んでいく。

 

 やはり、最後までマオとの対話を試みるのかCC?

 やっぱり冷たいようで、根は()()()ままだな……

 

 もっとも、俺はマオを()()つもりだがな。

 このままいくと原作で見た『ルルーシュの呼んだ警察が来て、マオを撃つ』イベントになるが……

 

 そうなる前に、俺は奴を撃つ。

 

 CCの背中姿を見送り、マオが遊園地を指定したことに皮肉を感じた。

 まるっきり前世で、『大人になりたいことを拒絶して奪われた子供時代を取り戻そうとするどこぞの有名人に似ている』と。

 

 ♪~。

 

 急に遊園地の電源が入り、人気が無い遊園地が虚しい活気に満たされていく。

 

 さて、今頃マオは安らぎを感じる為に目の前のCCにギアスを全集中している頃だな。

 

 ……俺も動くか。

 

 そう思い、マーヤがマオに付けた発信機の元へと俺は足を動かしながら銃の軽い点検をする。

 

 そして嗅ぎ慣れた()()()()()が風に乗って、俺の鼻をくすぐる。

 

 

 

 


 

 

 

 周りの動き出すアトラクションやスピーカーから音楽が流れる様を、CCは平然としながら見渡すとメリーゴーラウンドに乗ったマオを見る。

 

「CC~! やっぱり君は最高だよ~! これだけ集中しても、君の心だけは静かだよ~! アハハ! それにしても技術の進歩ってすごいねぇ~! 先日手を撃たれたけれど、この通りだよ! アハハハハ!」

 

 マオの言動は、久しぶりに親と再会してははしゃぐ子供そのモノだった。

 

 CCは逆に気が重くなっていたが。

 

「マオ……」

 

「あ~~~!! 本当に素晴らしい! やっぱり君の言われた通りにすれば、全部うまくいくよ! やっぱり君だけは特別なんだよ~!」

 

「マオ、前にも書いたが敢えて口にしてやろう。 私は────!」

「────分かっている! 分かっているよCC~! 何か用事があったから離れたんだよねぇ~?! でもどれだけ待っても連絡が無かったからこうして僕が会いに来たよ~!」

 

 マオは褒められるのを期待するような、純粋な目でCCを見た。

『よくやったな、マオ』と言う褒め言葉といつか自分に向けた微笑みを期待して。

 

 だが────

 

 カチャ。

 

「ッ?! C、CC?」

 

 ────CCは懐から拳銃を抜き取って歯をギリッと噛み締めながら、銃口をマオに向けていた。

 

「最初から……こうしておくべきだったんだ!」

 

 彼女はスヴェンの思っていたように、致命傷にならない傷をマオに負わせて彼を追い払うつもりで引き金にかけた指に力を入れる。

 

 だが入れた瞬間、泣きじゃくるマオをあやした記憶が蘇って指が無意識的に動きを止めてしまう。

 

 バシュ!

 

 乾いた銃声と共に、一瞬躊躇したCCの肩が躊躇を知らないマオが出した拳銃によって撃たれ、その拍子にCCは尻餅をついてしまう。

 

「うぁ?!」

 

「やっぱりCCに僕は撃てないんだよ! 僕の事が好きだからね! アハハハハ!」

 

「ち、違う! 私はお前────!」

 

 バシュ!

 

「────ああぁぁぁぁぁ?!」

 

 CCの言葉を遮るようにマオがCCの足を撃つ。

 

「く、くぅぅぅ……(アイツが……アイツがこの騒動に気付いてくれれば────!)」

「ダメだよCC~。 前に僕と約束したじゃないか、『嘘はつかない』って────」

 

 ドン!

 

「────な、なんだ今の?!」

 

 マオが初めて笑顔ではない表情を浮かべて今まで()()()()()()()()音に身体を跳ねさせてその場で固まって自分へ見たことの無い銃を構えるスヴェンを見た。

 

「(()()()が動いてくれたのか……だが、今のはなんだ? まるで、一昔前のマスケット銃のような……)」

 

 スヴェンは物陰から地面に向けて撃った銃を、今度は予想通りに自分の方を見るマオへと向ける。

 

 なぜ彼がマオをすぐに撃たなかったと言えば、この先にもしマオ(女)やマオ(男)のような能力を持った正式なギアスや人造ギアスユーザーが現れても彼の持つ『原作知識』や『前世の情報』を読み取られないかどうかも含めての『検証』の為である。

 

「(それだけじゃないが……もしこれでマオ(男)も異常が出たら少なくとも『精神系のギアス』は俺に通用しないことが分かるだけでも大きなアドバンテージになる。 

 さぁ、マオ(女)と同じように俺の頭の中を覗け。 覗いてリアクションを見(確認をし)てからお前の脳天に────)」

 

 ガシャン!

 

 スヴェンの予想通り、マオの手から銃が地面へと滑り落ちる。

 

 だがここで彼がマオ(女)のように苦しみだしたり気を失ったりなどせず、予想外にこれまで以上の()()を浮かべていた。

 

「(え? なんで笑っているだけなの?! もしかして俺の頭の中を覗いているのかそれとももしかして俺の見当違いなのねぇどういうことなのそこでぼ~っと立っていないでなんか別のリアクション起こしてよおい聞いているのかマオ早くしないと俺引き金引いちゃうゾ?)」

 

 スヴェンは何分とも思えるような内心『気まずい』を通り越して胃がキリキリと痛むほどの『緊張』を数秒間耐えているとマオ(男)がやっとリアクションを取る。

 

 完全に彼やCCにとっても、予想外なものだが。

 

 「パパ!」

 

「「「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」」」

 

 長~く感じる沈黙をCC、キラキラした目でスヴェンを見るマオ、そしてスヴェン本人の間で表面的にも内側にも流れる。

 

 否、一人だけ盛大に心の中で声を上げていた。

 

 「(なんでやねん?)」

 

 スヴェンであった。

 

 

 

「ンフフフフフ♡ 思っていた通り♪」

 

 クロヴィスランドから少し離れたビルの屋上で眼帯をしたマオ(女)が狙撃銃用のスコープ越しにスヴェンたちの様子を見ていた。

 

「どういうことだ、マオ?」

 

 そして彼女の近くにいたのはアンジュリーゼと毒島の二人がいた。

 

「やっぱり『あっちのマオは派手過ぎた』と思っただけ。 今()()()()()()()を見たからさ♪」

 

「「?!」」

 

「ね、電話を貸してくれるかな?」

 

 マオ(女)が先ほどチラッと見えたのは、全身黒ずくめの服を着た小柄な人物が拳銃を持って一時休止されている筈なのに電気が点いたクロヴィスランドに駆け込む姿だった。

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