小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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第46話 女で騎士と言えば?

 俺の目の前には無垢な子供のように目をキラキラさせながら俺を見るマオ(男)。

 

 そして多分(ヘルメットの下からでも)俺同様にポカンとしているCC。

 

 何で『パパ』やねんワレ。

 

「俺はお前のような子を持った覚えはない。」

 

「あれぇ? でもさ、CCが『ママ』ならそうならない?」

 

 何でそうなる?

 

「だそうだぞ、()よ?」

 

 何でやねん?

 マオの悪ふざけに便乗するなCC。

 

「夫と呼ぶな。」

 

「なんだと?! CCのどこが悪いんだ?!」

 

(見た目はともかく)捻くれた性格だよ。

 

「それに娶った覚えもない。」

 

「当たり前だ! CCは僕のだ!」

 

 どないせぇ言うてんねんお前。 CCもクスクスと面白がって笑うなよ。

 

「知っていたかスバル? 『親』って奴は子供が出来たらなるモノじゃないんだ。 自分を親として慕う者と共になっていくものさ。」*1

 

 CC。 お前、なんか『それっぽい』言葉で場を完結させようとしているけれど要するにこいつ(マオ)を俺に押し付けようとしているな?

 

「とりあえず父親呼ばわりはよしてくれ。 俺はそんな歳でもない。」

 

「じゃあ、兄さんで!」

 

 お前もかッッ?! マオはやっぱりマオという事か?!

 

 ヴヴヴヴ。 ヴヴヴヴ。

 

 一気に毒気が抜けたマオ(男)の言っていることに、どう抗議しようかと思っている所に携帯が震える。

 

「ん……俺だ。」

 

 前回アンジュリーゼが租界に出ていった時の教訓から、ヘルメットをちょっと改造して携帯のスピーカーとマイクを内蔵させた。

 

 前世で言う、『ブルートゥース』の応用だ。

 

『君だったんだね?』

 

 こいつ、俺の真似をさっそくしてきやがった。

 

『ボクだよボク、マオだよお兄さん♪』

 

「御託はいい、用を言え。」

 

『ちょっと忙しいところ申し訳ないんだけれど、そっちに名誉外人部隊(イレギュラーズ)っぽい奴が入るのを見たから一言いれようと思って♪』

 

なんやておまん(Da f〇ck you sai)?」

 

 どうゆうことやねん。

 

『あは♪ 今の何、コックニー方言って奴? でも多分知っている奴だから手っ取り早く相手の情報を伝えるよ。 さっき見た感じでは“速さ”が取り柄の奴でさぁ────』

 

 ────なにっぬ?

 

 

 

 


 

 

 

『それ』はブリタニア軍特殊部隊専用の体のラインをできるだけ圧迫して滑らかにする黒ずくめのスーツに足、腰、肩に銃やナイフのホルスターを身にまといながら、クロヴィスランドを明らかに人の速度を超えたスピードで駆け抜けていた。

 

 負傷したわけでもないが、肩と太股からジクジクと来る鈍痛を出来るだけ無視しながら『それ』は焦っていた。

 

 視界を確保させるために唯一あらわになったその赤い目はジワリと流れ出る汗が目に入りそうになり、反射的に瞬きをする。

 

「(クッ……早く終わらせないと!)」

 

 その人物こそ、この頃アッシュフォード学園を休みがちにしている準生徒会員のアリスで、今は名誉外人部隊(イレギュラーズ)の一員として動いていた。

 

 事の発端は元々、マオ(女)が脱走した数年前から始まった。

 マッド大佐は貴重な『読心術系統』のサンプル(実験体)を回収するべく、度々ギアスが使われたような痕跡を元にマオ(女)を追跡していたが、彼女が放浪していた中華連邦の管理がずぼらで広さ自体が尋常でないことから難しかった。

 

 マッド大佐以外の者たちは『どうせ抑制剤が切れたら死ぬだろう』と思っていたからか、彼女の確保に本腰を入れていなかったことも関係していただろう。

 

 そこで突然『エリア11に彼女らしき人物が目撃された』との情報が入り、名誉外人部隊(イレギュラーズ)の実行部隊が丁度エリア11に移動していたことからマッド大佐にもその情報は伝わった。

 

 マオ(女)を探ろうとしたサンチアとルクレティアにそれらしい気配は感じ取られたものの、近くに『空白の気配』と『場所がぼやけて特定できない』という事から『マオ(女)が以前に港で交戦した敵のチームと接触を図っている』と思ったマッド大佐から、一番現場に近いアリスに声がかかった。

 

 命令は至極単純で、『脱走兵のマオと奴と接触していると思われるアンノウンを処理しろ』。

 

 成功報酬は一日に送られる一回の抑制剤が、二回に増やされること。

 

 以前マオが脱走した際に保管庫から大量の抑制剤を強奪した時から隊員に『生命活動が可能なギリギリ最低ライン』の抑制剤が直接配給されるようになった今ではアリスだけでなく、名誉外人部隊(イレギュラーズ)の隊員ならば誰もが死んでも成功させたいほど破格の報酬だった。

 

 アリスは起きていても寝ていてもいついかなる時でも自分を襲う痛みを無視してでも、全力と自分が持ちうるベストの装備で任務に就いた。

 

 まさにぶら下がったニンジンを追う餓死寸前の馬そのものだったが、同時に彼女は違和感を持っていた。

 

「(なぜだ。 なぜさらに監視が厳しいブリタニア占領区に来た?)」

 

 突入要員であるアリスと、暗殺・尋問要員のマオは軍の職業柄、それほど接点はない筈だった。

 

 ()()()()()()()()

 

 名誉外人部隊(イレギュラーズ)はその結成員たちの事情ゆえに基本、少数精鋭。

 接点が無いはずの者同士でも、自ずと互いのことを多少は知ることとなる。

 

 そしてアリスが知っているマオは、『自由』を誰よりも望んでいた。

 

 絶望的で狂うほどまでに、そして誰もその時まで考えなかった『GX01ではない量産型のナイトメアを使ってまで強硬手段を取らせる』までに。

 

「(そんな貴方が、このエリア11にリスクを冒してまで『自由になれる』と思うものがあるというの?)」

 

『そこから先は私の“ジ・オド”とルクレティアの“ジ・ランド”でも何も見えん、用心しろアリス。 我々も移動中だが時間がかかる。』

 

「うん。」

 

 アリスは耳にかけた携帯から、場所が離れているサンチアたちからの交信に短く答える。

 

 そのままギアスを上乗せして走る。クロヴィスランドの広場らしき場所に出ると、遊園地には場違いなほどのフルフェイスヘルメットにライダースーツを着た人物らしきものが立っているのが見えた。

 

「(こいつが、敵ギアスチームの一味!)」

 

 アリスは素早く拳銃とナイフを取り出して、さらにギアスの出力を────

 

「グァ?!」

 

「動くな。」

 

 ────上げようとしたところで、アリスはいつの間にかライダースーツの(声から察して)男に片腕を掴まれて前のめりに地面へと倒れそうになっていたところで持っていたナイフの握り方を変える。

 

「(こいつ、やはりナリタでの奴か?! ギアスは私のような超高速移動型? いや、あるいは別の……)」

 

「俺はお前が────」

「(────どっちでもいい! こいつは『脅威』!)」

 

 カシュ!

 

「ぬ?!」

 

 アリスは握っていたナイフの向きを変えてボタンを押すと、強力なバネによって刀身が射出されてそれがライダースーツの男────スバルの顔へと飛び出る。

 

「(これは、『スペツナズ・ナイフ』?!)」

 

『スペツナズ・ナイフ』とはソビエト連邦の特殊任務部隊『スペツナズ』が使用していたことが名前の由来で、上記のように軍用ナイフでありながら刀身の射出が可能となっている。

 

 スヴェンは思わずもう片方で持っていた拳銃にそれが当たって手を放してしまい、体を仰け反らせる。

 

「(まさか、コードギアスでもあっただなんて!)」

 

「(本能が叫んでいる! 『こいつは危険』と! なら、ここで()る!)」

 

 アリスは重心がわずかに変わった隙を使い、スヴェンの拘束から身を脱して柄しか残らなかったナイフだったものを捨てて、新たに予備の拳銃とナイフを出してスヴェンに襲い掛かる。

 

 小柄な体格とギアスとさらに体術まで使って彼女はヒット&アウェイを繰り返し、スヴェンは『 “時間”に意味は無い(Time Has No Meaning)』を小刻みに行使して拳銃でナイフの軌跡を受け流しながらこの状況に関して考える。

 

「(こいつ! 『高速移動』じゃない! この反応の仕方、『未来予測』の類か?!)」

 

「(この蹴りの癖! やはりマオの言っていた通り『アリス』か!)」

 

 二人の間に会話はなくただただ鉄と鉄、そして体術が空を切る音だけがクロヴィスランドの愉快な音楽に混じる。

 

「(どうする? アリスを『殺す』のは嫌だ。 だが相手は俺を殺そうとしているのがまるわかりだ。 どうする?!)」

 

「(こいつの体術、軍のものじゃない。 護身術の類? ……どちらにせよこれ以上、時間をかけたらCC細胞の浸食がいつ支障になるかわからない!)」

 

「「(どちらにせよ、接近戦では()有利(不利)!)」」

 

 アリスは距離とって拳銃を乱射し、スヴェンも同じく撃ってアリスの弾丸の軌道を自分の弾丸でそらす。

 

「(こいつ、やはり『予知』か!)」

 

「(あっぶねぇ! まさか俺が『トレイ〇芸当』をしなくちゃならない日が来るとは! あれ? 今考えたら避ければ?────)」

「(────だが相手は私と違ってマオと話しに来ただけ! ならば予備のマガジン(弾倉)も持ち合わせていないはず────!)」

「────う?! (こいつ、俺の弾切れを狙っているのか?!)」

 

 アリスはそのまま撃ち続けながらナイフをホルスターに戻して予備の拳銃を抜いたそれを使い、スヴェンも応戦しながら感心する。

 

「(さすがは訓練されている兵士、今までのゴロツキとか二軍とは一味違う……やっぱり『アレ』、やるか!)」

 

 スヴェンは銃の残弾がゼロに近くなっていき、ついに覚悟を決める。

 

 アリスが固まっていた身体をリラックスさせるような、相手(スヴェン)の体が少しだらりとするような動作を警戒し、今まで以上に神経を集中する。

 

 それこそ先ほどから肩や太ももの鈍痛が身を潜めていたことをずっと疑問に思わないほどに。

 

「(おかしい、奴の空気が変わった? 何かを仕掛ける気か! だがこの距離ならば、私の『ザ・スピード』で十分対応できる!)」

 

 アリスの自信には『0.2秒の理』が関係していた。

 これは戦い、特に銃撃戦でかなり大事な意味を持つ。

 

 0.2秒とは『最速で脳から信号が送られて筋肉が反応して動作を始める』という、『物理的な壁』を意味する。

 

 どんな達人でも、()()()()()()()()()()どれだけ頑張ってもこの数値以上の速度は出せる筈がない。

 

 しかし、アリスの『ザ・スピード』ならそれを短縮することは可能だった。

 そしてアリスとスヴェンの間には10メートルほどの距離があった。

 

 つまり、いかに『予知能力』があるとはいえこの距離ではアリスが圧倒的に有利なはず。

 

 通常ならば。

 

 ドッ!

 

「がっ?! (ば、バカな?!)」

 

 アリスは目を見開いて、背中と後頭部を強打したことからと思われる痛みで視界に星が散る。

 

 彼女が見た景色は不可解なもので、およそ目の錯覚としか思えなかった。

 

 ()()

 たった瞬きの()()でライダースーツ男は自分(アリス)との距離、10メートルを詰んでマウントを取っていた。

 

 両腕はライダースーツの肘に抑えられ、喉の上には左腕。

 

 そして体中が軽くなった違和感で彼女は身に着けていた武装が外されたのだと直感で感じ取る。

 

「(そんな! ここで、終わるの?! やっと……やっと()()()を守れると思ったのに?!)」

 

 どこからどう見ても不利な状況にアリスは困惑しながら脳裏で様々なことを考える。

 

 思い浮かべていたのは足と目が不自由になったナナリー……ではなく、彼女の面影が似ていた同じような状態になった妹のことだった。

 

「もうやめろ、()()()!」

 

「ッ。」

 

 アリスはハッとして、自分の頭を覆っていたスーツの覆面部分が剥ぎ取られていたことに気付く。

 

 そして目の前には同じようにフルフェイスヘルメットを脱ぎ捨てて、顔中が拷問跡のある男の素顔。

 

 これを見たアリスは一瞬だけ、目の前の男が名誉外人部隊(イレギュラーズ)のような部隊に所属していたことを悟って口を開ける。

 

「クッ、殺せ!」

 

「……え?」

 

「は?」

 

 

 

 


 

 

 

 まさかリアルで『クッ殺!』を言われるとは思わなかった。

 

 え? なんで? 

 なんでそうなるの?

 なんで悔しそうな顔をしながら『クッ殺!』を言われるの?

 

 お前はどこぞの女騎士か?

 

 あ、『NoN(ナイトメア・オブ・ナナリー)』では騎士になっていたような気がするけどノーカンね?

 

 ええ~っと、思い返してみよう。

 まずは俺の銃の弾丸が尽きそうだっただろ?

 んで『“時間”に意味は無い』の『充電(リチャージ)』した分を全部使うような覚悟で時間を止めてから、アリスの近くまで移動して着けていた武装を解除しただろ?

 それから覆面とって『あ、やっぱりアリスやんけ』と思いながらソ~っとできるだけ優しく地面に倒して拘束(マウント)

 そして俺の素顔も見えるようにヘルメットを取ったと。

 

 ……うん。 どこにも『クッ殺!』を言われる流れはないな。

 

 あ、CCとマオ(男)にはマオ(女)から電話を受け取ってほかのだれかがクロヴィスランドに侵入したと聞いた時点ですぐに隠れるように言っといたゾ。

 

「どうせ貴様も、私たちと同じなんだろ?!」

 

 ええええぇぇぇぇぇぇ?

 ちょっと心外でござる。

 自慢になるかもしれないけれどこの世界での俺、結構イケメンサイドだと思うのだけれど?

 

「お前の背後組織に情報を読み取られるぐらいなら、舌を噛み千切って────」

 

 あ、やべ。

 

「────やガボボ?!」

 

 大きく口を開けてこれ見よがしに自分の舌を本気で噛もうとしたアリスの口に俺は思わず手を突っ込む────

 

 ガブッ!

 

 ────あいでででででででで?!

 

 ここここここいつ、噛んだぞ?!

 ち、チワワに噛まれたぁぁぁぁぁぁ?!

 いよぉ~!

 

「うわぁ……痛そう。」

 

 痛いに決まっているだろうがアンジュリーゼ。

 

「……後で包帯を巻いてやろう。」

 

 ありがとう、毒島の姉御。

 

「お兄さんってば凄いね~!♪」

 

 「何を思って言っているのか知らんが『違う』とだけ言うぞマオ。」

 

 マオの顔は完全に悪戯っぽいものになっていたとだけ足そう。

 

()はも(マオ)?! せんはいはひおはんへほほ(先輩たちも何でここ)に?!」

 

 あー、うん。

 ソウナルネ。

 

 って、ちっがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁう!

 

「なんでお前たちがここにいる?」

 

「あ、ボク(マオ(女))がちょっとアリスに用事があってね~? 走ったらお姉さんたちも付いて来ちゃった♪」

 

 “付いて来ちゃった♪”じゃねぇよテメェ。

 

 誰か……誰か俺を助けてくれ。

 

 胃薬が切れて……胃がそろそろ限界でござる。

*1
ありがとうございます規律式足さん!




…………………………(;・_・)

じ、次話を書いてきます! =(;・∀・)ノ

追記:
アリスの通信機/携帯電話はインカムみたいなやつです。 こう、ボタンを押し続けないと声が送信されないタイプです。 (汗

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