小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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第47話 言い方

 夜の租界には珍しい、大型トレーラーを引っ張っていた軍用装甲車が道を走っていた。

 

 その中でマッド大佐はイライラからか、貧乏ゆすりをしていた。

 

 というのも、マオ(女)のような『記憶を嘘偽りなく読み取る』タイプのギアスの発現は稀なのだ。

 

 ほかの者たちは『ギアス』と一括りとしているが実際には何種類かの系統にギアスは別れる。

『身体能力系』、『感知系』、『外部干渉系』をマッドは見飽きるほど見てきたが、『精神干渉系』は稀な上にまだまだ根が深く、能力の便利さから手元に残るサンプルも少なかった。

 

「「…………………………」」

 

 対する運転手であるサンチアと助手席に座っていたルクレティアは黙ってダッシュボードに取り付けていた携帯からアリスの定時報告を待っていた。

 

『こちらアリス。 聞こえますか?』

 

「そのままでいい、どうした?」

 

『勘付かれたようで対象たちは逃亡した。 ギアスを使い、追って交戦したがやはり推測通りに読心術の類と思われる。 有効範囲はおよそ半径200から300メートルほどの予測。』

 

「(やはりか……でなければこうも上手く立ち回れるなど無理だ。 『未来予測』ならば可能性はあるが、アリスの『ザ・スピード』で圧倒される……) 分かった、証拠隠滅を徹底しろ。 成功しなかったとは言え、今回はもう一回分の抑制剤を送ってやる。」

 

『つかぬ事をお聞きしますが、()()()()()()()()()()()()?』

 

「ぬ?」

 

「……ああ、()()()()()()ぞ。」

 

 アリスからの意味不明な通信にマッドは眉間にシワを寄せるが、サンチアが代わりに出る。

 

『そう。 これから()()()()()()()から。』

 

()()()()。 大佐、どうされますか? アリスを回収しにこのまま向かいますか?」

 

「(さっきのは何かの隠語か? ふん、どちらにせよマオがエリア11にいることは分かった。) ああ、このまま回収に迎え。 私はGX01を先に基地に戻す。」

 

 サンチアとアリスの通信を聞いたマッドの推測は当たっていた。

 

 だが彼が数の少ない(しかも『本部』の外では唯一の)抑制剤の製造方法を知る者である限り、その身は否が応でも特殊名誉外人部隊(イレギュラーズ)に保証されているのも同然なのだ。

 

 故に、彼は特殊名誉外人部隊(イレギュラーズ)の反乱など特に恐れていない。 

 実行部隊が保有する抑制剤の数は限られている。

 

 それに運良く反乱が成功して、基地で保有されている抑制剤が強奪されれば今度こそ『本部』はすぐさま対応として、彼らの持つ『本部用実行部隊』を動員してサンプルの回収(実行部隊の抹殺)の為に動くかもしれない。

 

 皮肉にも、上記の対策はマオが以前脱走したせいの『教訓の一部』なワケだが。

 

「(だがエリア11が島国ということが幸いした。 この間の敵チームも『本部』に知られなければチャンスはいくらでもある……焦りは禁物だが、()()()()()より先に回収せねばならん! 奴らの手にかかれば灰も残されないかもしれん!)」

 

 

 

「……これでいい?」

 

 電気が次々と落とされるクロヴィスランドの中でムスッとしたアリスが携帯電話を切りながら、思わずスヴェンの手を噛んだ時ににじみ出た血を飲み込んでから口を開ける。

 

「うん、バッチリ♪ でもまさかボクが冗談交じりに決めた隠語をアリスだけじゃなくてサンチアも覚えていてくれてボクは嬉しいなぁ~♪」

 

 先ほどの通信にはマオ(女)の言った通り、特殊名誉外人部隊(イレギュラーズ)にまだ所属していた彼女が冗談半分で決めた隠語が含まれていた。

 

 単純化させると、アリスは『自由になれる兆しを見つけた、それを追って忙しくなる』。

 そしてサンチアはその旨を『承諾』した。

 

「……って何その顔? ウケる~♪」

 

 アリスは何とも言えない顔で、ルンルン気分のマオを見ていた。

 

「いや、貴方なんか……覚えているのと全然違うから。 (それもやっぱり『CC細胞の中和』とやらが関係しているの? ならば、こっちが『素のマオ』というわけ?)」

 

「まぁねぇ~♪ ()()にはなったかな~♪」

 

 アリスが見たのは手をヒラヒラとさせて露出したマオの腕。

 

 そこには目を凝らすとうっすらとだけ、『大昔に肌の色が変質していた』としか思えない痕跡があった。

 

「(やっぱり、見間違いじゃない……どっちでもいい。 本当に『CC細胞の中和』なんて方法を見つけたのなら、このチャンスをふいにすることは出来ない。)」

 

 スバルに拘束されたあの後、困惑するアリス(と内心痛みで叫ぶスヴェン)に駆け寄ったマオ(女)が『CC細胞の中和方法を見つけた』と伝えながら以前までいびつに変質していた自分の手足が元に戻りつつあることを見せ、毒島たちは『それがスヴェンのおかげ』と言ったところで彼は自分がまだ『森乃モード』*1であることに気付いてやっと特殊メイクの仮面を脱ぐとアリスは固まってただただポカンとする。

 

 余談だがこの時のアンジュリーゼのわざとらしい咳で、スヴェンはやっと(絵面的にやばいことに気付いて)アリスの上から身を動かしてから彼女に痛まない方の手を貸していた。

 

 そしてそこでボ~ッとするアリスに、何故かスヴェンの胃がキリキリするような内容がマオ(女)たちからアリスに告げられた。

 

『見ての通り君の病も治すことができるが、せめて私たちの話を聞いてもらえないだろうか?』、と。

 

 そしてスヴェンは『別用がある』とその場を立ち去って胃薬を液体胃薬で飲みほしながら『(いやいやいやいやいやどうしてこうなった?)』と疑問に思いながらもアリスに噛まれた手の手袋を外して消毒し、思考を回転させるが答えは出なかった。

 

 彼にとって唯一の救いは、この隙にCCに連絡を取って彼女とマオ(男)の二人にクロヴィスランドから離れるように言えたことぐらいだった。

 

 後何故かマオ(男)が背景でCCの傷のことに騒いでいたな。

 コード保持者だから、あいつの自然治癒スピードが速くなかったっけ?

 ルルーシュが原作のナリタ洞窟でそう言っていた気がする、『この女、人間じゃない』とかで。

 

 そして帰ってくると何故かアリスがどこか(マッドたち)と通信を終えたところに戻って、冒頭から今へと繋がっていく。

 

「事情はおおむね理解できたわ、信じがたいけれど……返事をする前に聞くわ。 肝心の『CC細胞の中和』方法は何?」

 

 アリスがいまだに半信半疑のジト目で素顔になったスヴェンを見る。

 

「(いや、俺に聞いても検証がまだ終わってへんがな。 強いて言うのなら『マオが俺に精神干渉系のギアスを使って共に気を失った』けど、アリスは『ナイトメア・オブ・ナナリー』通りに身体能力強化型だから────)」

「────それが単純なんだよねぇ~。」

 

「え?」

「(え?)」

 

 スヴェンが(内心で)アリス同様にキョトンとする。

 

「ちょっと僕の方でも試したのだけど、どうやらお兄さんとの距離が大きな要因みたいなんだよね~?」

 

「は?」

「(は?)」

 

「ほらほら、アリスもその包帯取ってみなよ? 痛いのも引いているはずさ。」

 

 実は彼女は彼女なりに色々と独自に検証していたのだ。

 

 そこで判明したのはスヴェンとの物理的距離によってCC細胞の活性化、停滞、退化が異なること。

 現に彼女とベルマ(ヴィレッタ)のいるアパートから離れていくとマオ(女)は嬉しくもない見覚えのある痛みを感じ始め、距離が近ければ近いほどその痛みが引いていたことで自分の憶測に自信を持った。

 

 アリスがハッとしたような表情を浮かべ、ピッチリした黒ずくめの潜入スーツのジッパーを開けて彼女の白い肌が露わにn────

 

「「────(スヴェン)、見ちゃダメ(だ)!」」

 

 ブスッ!

 ガバッ!

 ムニュン♪

 

 毒島がスヴェンに目つぶしを食らわせ、アンジュリーゼがとびかかって目を覆うと自然と彼女の胸がスヴェンの首に押し付けられる。

 

「(アンギェェェェェェェェェ?! 目が?! 首の感覚がぁぁぁぁぁ?! これぞまさしく『ヘル・アンド・ヘブン』ッッッ?! ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ~、吾輩の目が痛いよぉ~。)」

 

「………………………………」

 

 アリスが見たのは今まで必死に隠そうとした肌の荒れ……と呼ぶには生温いような変質した腕ではなく、以前と変わらない様子の『普通の腕』だった。

 

「………………………………」

 

 珍しくアリスは上半身をはだけさせたままただジッと自分の元通りになっている腕を見て固まっている間、マオ(女)も内心では驚愕していた。

 

「(おかしい……こいつ(アリス)とお兄さんが距離を縮めていたのは以前のボクなんかよりはるかに短い。 だというのに包帯を巻くほど酷かった筈の症状が見る影も無いだと? 一体彼女とボクとのケースで、何が違う?)」

 

「あー、アンジュリーゼ? アリスはまだ上半身を出したままか? そうでないのならそろそろ右手の手当てをしたいのだが?」

 

 スヴェンの言葉にマオ(女)に閃きのようなアイデアが浮かぶ。

 

「(そうか……もしかして────)────お兄さん!」

 

「なんだマオ?」

 

 「噛んでもいいかな?!」

 

 「ダメに決まっているだろうが。」

 

 「ちょっとだけでいいんだ!」

 

 「ダメだ。」

 

 「(腕を)出してよ?! ねぇ、早く出して!」

 

 「(言い方ぁぁぁぁぁぁ!)」

 

ぐす……ひっく……

 

 そしてアリスが声を殺してすすり泣きをしだしたことで、場は更なるカオスへと陥った。

 

 アンジュリーゼはどうしたものかと思い、毒島を見る。

 

「コホン! と、取り敢えずここから移動しよう。 いくら何でも休業中の遊園地にいてはマズイ。」

 

 彼女も経験からか、それらしく振る舞って時間を稼ぐ。

 

 

 

「ねぇCC~? どこまで歩くの~? それに血が止まっていないみたいだよ~?」

 

「もう少しだ、マオ。 それに私が死なないのはお前が知っているだろう?」

 

 クロヴィスランドから横道や裏道を使って移動していたマオが駄々っ子半分、心配半分の言葉をCCにかけるが彼女はズンズンと『とあるアパート』を目指しながら歩いていた。

 

「(だが確かに妙だ。 先日と今回といい、ケガの治り具合が遅くなっているのは気のせい……ではないようだ。)」

 

 それと同時に、いまだに撃たれて痛む肩と足に気を向けながら。

 

 

 

 


 

 

 

 あれからアリスをなだめながら(スヴェン)特殊メイク(森乃モード)を取った素顔を隠すためにヘルメットを再び着用し、自分の手の手当てをしながらできるだけ人が少ない道の租界を先行している毒島の後を歩いていた。

 

「気は済んだか?」

 

「……」

 

 そして隣では目も鼻も真っ赤に晴れ上がったアリス(毒島のスペア上着を着用)が黙ったままただただ歩く。

 

 う~ん……これでも俺なりに優しく接したが如何せん、泣いている奴のあやし方は苦手だ。

 

 昔、日本侵略後によくイジメられてビービー泣いたカレンもそうだったし……

 あれ? よく考えたら泣く奴をあやしたのって、カレンぐらいか?

 

 あいつはあいつでクッキーとか甘菓子を作ったらコロッと機嫌を直すし……

 

 うむむむむむむ……そうだ!

 

 森羅万象、イケメンキャラにしかできないあやし方があるではないか!

 

 (一応)イケメンに部類される今の俺ならば可能なはずだ!

 

 ポン。

 

「……?」

 

 ナデナデナデナデナデナデ。

 

 秘儀、『頭をさりげなくかつ優しくポンポンナデナデ』のじゅ────

 

「ッ!」

 

 ドシッ!

 

 ────ごぉへがぁぁぁぁぁぁぁ?!

 

 横腹にグーパンナンデ?

 

「バカ! 急になにすんのよこのバカ!」

 

 に、二回言わなくても良いじゃんもんもん……

 キレイに入った。 い、痛い……

 涙が出そう……グスン。

 

 「……がと。」

 

「??? 何か言ったか、アリス?」

 

 「何でもない!」

 

「アンジュ、私がいつも言っているのはああいう事だぞ?」

 

「うぐ……た、確かにあれじゃあ伝わらないわよね……」

 

 これを聞いていた毒島が何かアンジュリーゼに言ってアンジュリーゼがタジタジし、アリスが彼女たちのいるところへと走る。

 

『伝わる』って何を意味するのか知らんが今日は散々だったよも~。

 

 マオを殺すつもりがマオに会ってギアスが効かなかったのに何故かマオに懐かれてCCからマオの連絡を受け取って今度こそマオを殺そうと思ったのに予想外にもパパ呼ばわりされるしアリスが乱入するしで使うのが怖い特典の充電(リチャージ)を予定外に使っちゃうしそこにマオたちが来て『CC細胞の中和』がなんか俺との物理的距離に反応するとかどういうこっちゃ状態の中でマオが噛ませてとか言い方がどこからどう見ても悪くてトンチキなことを言ってアリスが泣き始めちゃうしで安心させようとイケメンにしか許されない『頭ポンポン』しても殴られるし……

 

 あと手持ちの胃薬が結構やばい。

 

「────スバルもそれでいいか?」

 

「はい?」

 

 突然俺の名前が呼ばれたような気がして思わず聞き返す。

 

「そうか、君ならそういうと信じていたよ!」

 

 「……バカ。」

 

「…………む~……」

 

 毒島が満足そうに微笑んでいたし、アリスはどうやらさっきのが恥ずかしかったのか耳がほんのりと赤くなってそっぽを向いているし、アンジュリーゼは面白くなさそうなジト目を俺に向ける。

 

 ………………………………なんで?

 

 

 

「お帰り、兄さん!」

 

 特に会話がないまま近くのアパートに帰るとマオがいた。

 

 ……なんで?

 

 ピコーン♪

 

『マオは任せた。』

 

 ナンデ?

*1
ありがとうございます心は永遠の中学二年生さん!




転生、(自称)神様特典、スヴェンと昴、租界、コードギアス。

それぞれが糸をぬり、運命によって手繰り寄せられる。
『世界』というタペストリーに描かれる壮大な『ストーリー』。

それらが示す文様は何だ?

その時ふとスヴェンは思った、『俺、生き残れるのか?』と今更ながら。

次回予告:
『キャスティング完了であってほちぃ』

スヴェン。 済まないがその願いは叶えられそうにない。



久しぶりに次回予告です。 
マッド大佐は逃げる段取りをしても良いかもしれません。 (汗

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