楽しんでいただければ幸いです!
「………………」
ブリタニアの紋章がデカデカと書かれている政庁の中で、ユーフェミアは書類と睨めっこをしていた。
軍、財政、税政、商政とあらゆる部門に関するそれらを見て、彼女は自分が惹かれるものを探そうとしていた。
『副総督に就いたとはいえ、殆んど何もできなかった自分でも何かしないと』と言う焦りと、少々の自己嫌悪を感じながら。
それは別に今に始まったことではない。
着任直前、『オレンジ事件』によって失墜した純血派たちの内部粛清もその場に居合わせて偶然会ったスザクに時間稼ぎをしてもらって自分が皇族であることを明かして停戦させたものの、後にコーネリアを補佐するはずの副総督の座になっても出来ることと言えば書類の見直しや場の静観だけで口を挟んだり、詳細を聞いても除け者扱い。
数少ない頼れる人物といえばダールトン将軍かギルフォードなのだが、彼らはもともとコーネリアの部下と騎士。
よって彼女は元総督であり今は(名目上だけでの)副総督補佐官のクロヴィスに話を聞こうとしたところ、コーネリアには『
だがユーフェミアもコーネリアに似てちょくちょく『お見舞い』と称し、彼の元で総督時にどのようなことをしていたり、どんな問題を抱え込むなど自分が分からないことを素直に質問しに行っていた。
クロヴィスは最初、ユーフェミアがコーネリアの差し金で動いていたと思って警戒はしていた。 本来ならこのような行動は皇族ならば控えるが、ユーフェミアはコーネリアでさえも(決して自分と似ているなどと言えない)強情さで彼の元へ頻繁に通っていた。
次第にクロヴィスも彼女をあしらう事に疲れたのか、彼女の質問などをできるだけ彼なりに(バトレーや部下などから過去に言われていた)モノを喋っていくと────
『あれ~? お兄様、ライラってお邪魔でしたか~? (ニヨニヨニヨ。)』
『へ? “お兄様” って────?』
『────ぬああああああああ?!』
────何を思ったのか、偶然同じくお見舞いに来たライラがニヨニヨして勘違いされそうになったと思ったクロヴィスは今までユーフェミアの前で維持していた『元総督の箔』が見事なまでに崩れるまでライラの誤解を必死に(車椅子の上からあたふたと彼らしくない言動をしながら)解こうとした。
無論、クロヴィス以外の皇族御用達しのSPたちがいたことでライラはユーフェミアが皇族で異母姉妹の者だと知っていたが、クロヴィスはあまりのテンパりからそれに気付くことはなかった。
この時からユーフェミアはそれまで隠蔽されていた
どこか
そしてクロヴィスはコーネリアの
最初こそ(クロヴィスの所為で)同じ皇族でありながらほとんど初対面同然でギクシャクしていたが次第にユーフェミアとライラは仲良くなっていき、その過程でユーフェミアはライラがどれだけ兄であるクロヴィスの事を想った為に皇族としてはありえない『下働き』や『世話係』がするようなことを学習していたことを知った。
それが後に河口湖では何もできずに人質が連れていかれるのを見ているしかなかったことで、ユーフェミア自身がする悔しい思いを原作以上に加速させた。
『あの時、強引にでも護衛の腕を振り切ってでも自分が名乗り出れば時間が稼げたではないのか?』というのもあるが、自分とさほど歳が離れていなさそうな少年が自分の代わりに『日本語』と言うエリア11以外では用途が殆ど無いどマイナーな言語を巧みに使って
それに続いてエリア11で蔓延し始めたリフレインもコーネリアに頼まれて警察の巡回ルートを増やすことが出来たが、黒の騎士団の活動でそれも大幅に減り、彼らに報道された証拠付きの情報によるとまさかの警察(の一部)もリフレインの拡散に関与していたことも明らかになった。
そしてナリタ。
土砂崩れが起きてもユーフェミアは何もできず、ただただコーネリアに頼まれたことをこなして野戦病院と化したG1ベースを動かさず、『
『お飾りの副総督ユーフェミア』、とも。
それがいつしか、エリア11の士官や代官たちの間で囁かれていたユーフェミアに対してのあだ名だった。
「(私にも、何か出来る筈。 たとえそれが『文武両道』で名高い
不意に、河口湖で見たあの勇敢な少年を思い出してはとある考えに至る。
「(そう言えば、あの人……私にウィンクを向けていましたね? あれは、私を『皇女』と知って私が名乗り出ようとしたことからの行動? でも、どうして……)」
どれだけ悩んでも答えが出なかった彼女は覚えている限り少年の特徴をメモに記入して後日、クロヴィスに頼んで彼の似顔絵を頼むこととなる。
後にこれが、大きな嵐を呼ぶこととなると知らずに……
「ねぇ、すb────スヴェン。 この頃付き合い、悪くない?」
「そうか?」
アッシュフォード学園、俺は珍しく登校してきたカレンと共に屋上へ昼ご飯を一緒に食べていると唐突にそう言われる。
「そうだよ。 いくら“呼び出されていない”からって来ないのは……ちょっとね?」
“ちょっとね”ってなんだよ?
まさか寂しいのか、こいつ?
……いや、カレンに限ってそれは無いだろ。
多分、アレだ。
『
でも俺、元々黒の騎士団に入ったのも扇グループからの流れなんだよな~。
それに何だか
俺だって暇じゃないんだが、
どうしたものか……
カパッ。
そう思いながらカレンと一緒に弁当箱を開けるとタコさん型ウィーナーが────
「────あ。」
「“タコさん”って……スヴェンも気が利くところあるじゃん♪」
「いや、これは……まぁ……その……なんだ……」
ウキウキしながらはにかむカレンに、俺は言い淀んでしまう。
さっき言ったように俺は暇じゃない。
うん。 もう察しているかもしれないが、これは俺じゃなくて
この頃『黒の騎士団お助けサークル』の為に備品入手には
俺自身はこれらの装備の点検や整備、そしてベルマの前では『スバルとしての活動』。
そしてアリスたちのような人造ギアスユーザーたちの為に『CC細胞の中和』解明に時間を殆んど費やしている。
でないとこっちが危ないからな。
なにせアリスたち
何時アリスや彼女のチームとの関係が壊れるか分からないし、もし俺たちの事が
ちなみにマオ(男)には手伝ってもらっているご褒美として、CCと会わせているかつマオ(女)にぐっすり眠れるように面倒を見てもらっている。
嫌がるCC?
ごっそさんどすえ!
と言うのも、口では
ちゃんと面倒をしっかり見ていれば良いだけなんだ、マオ(男)は。
ただし彼はなぁなぁでものを済ませようとすると暴走しがちと言うだけで、後から知ったことだがマオ(男)は原作アニメではほとんど寝不足状態だったらしいからカリカリしていたけれど適度にガス抜k────“休憩”さえすれば割とマトモだぞ?
過激気味なのは認めるけれど。
だからサボろうとするなよCC。
ミレイもかつて言った、『死にゃばもろとも♪』と。*1
「ふ~ん……ま、
「カレン、日本名が出ているぞ。」
「あ。 ご、ごめん……わ?! もうこんな時間?!」
「別に構わないが、そうモリモリと食っていいのか? 女の子だろ、一応?」
「
「ちゃんと食ってから喋れよ、『おしとやかな病弱お嬢様設定』。 それと胡座を掻くなよ。 今のお前、ミニスカなんだぞ?」
そう言うとカレンはすぐに立ち上がり、(ほほを食物で膨らませた)鬼の形相を浮かべながらフォークで俺を刺そうと────おいバカやめろギャアァァァァス?!
ガチャ。
「スヴェンせんぱ~い! 一緒に食べますですよ~!」
「あ、あのライブラちゃん? 屋上へは出てはダメかと思いましたが────?」
「────たまにはいいんじゃないナナリー?」
「アリスちゃんの言う通りです~! ……あれ? カレン先輩もいるのですか────?」
「────むぐぉふぁごほぉ?!」
屋上へ通じるドアが開いて、活発そうな少女の声が響き渡ってそれに続く声たちを聞いて一気に弁当を頬張ってたカレンが思わずビックリしてそれらを飲み込もうとし、むせてしまう。
「やぁライブラさんにナナリーにアリス。」
「来ちゃいました~♪ あ、聞いてくださいます?! この間、お兄様だけじゃなくてお姉さまにも料理を振る舞ったら二人とも感動してくれたですよ~!」
「へぇ、それは幸いですね。」
咳をし続けるカレンに缶ジュースを渡しながらそれとなく『
あれ? ブリエッラ家にライブラとお兄さん以外にいなかったような?
今の会話から察するに『お
多分。
「なんかスッゴイ違和感ある……」
お前にだけは言われたかねぇよ、アリス。
それと一々反応に困るな。
『感じるな。 慣れろ。』 byどこぞのリー。
マイペースなライブラとどんな状況でも平然とするナナリーを少しでも見習え。
「ええと……僕もお邪魔して良いのかな?」
そこで彼女たちの後にスザクが────
────なんで
そう思ってアリスを見ると、彼女がフイっとそっぽを向く。
……あー、だから気まずい顔をしていたのか?
「えっと、ライブラちゃんが屋上に行くと言っていたのでちょうどお邪魔していたスザクさんも付き添う形になって────」
あー、うん。
ありがとうナナリー、大体わかったよ。
「おおお! 何か変な形のソーセージです~!」
「……たこさん?」
「「「“たこさん”???」」」
んげ。
スザクの言ったことにナナリー、ライブラ、アリスの三人がコテンと首をかしげて俺は冷や汗を出す。
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。
どうしよどうしよどうしよどうしよどうしよ?
「ああ。 これはイレヴンのメイドさんが作ってくれて……」
ナイス
「なるほど、だからだね? ああ、ナナリーたちは初めて見るのかな?」
「あ~、確かにこれタコだわ。」
「あの十本足の?」
「「「それはイカ。」」」
俺、スザク、カレンの声がハモッってはナナリーが笑みを浮かべる。
めっちゃええわ~。
和む~。
「あ! そうです! 今度新しく追加された『グランドリゾート』の落成式に招待されたので生徒会の皆さんと行くのです~!」
「ああ、それって確か
「ブフ?!」
「おごっ?!」
スヴェンは思わずお茶を吹き出してしまい、アリスは食べていた弁当をのどに詰まらせてしまう。
表側の理由としては『お茶が苦かった』、『苦手なピーマンがサプライズで入っていた』ということでスザクが日本のお茶と野菜に関して天然で喋りだし、内心でスヴェンは『なんでやねん?! もう勘弁してよ、キャスティング完了であって欲しいわ~』と願っていた。
ちなみにアリスは『なんでよりにもよって
ライブラはのほほ~んと、『そういえばこの間、水着をお兄様がデザインしてですね~』と
そしてカレンは────
「(生徒会の皆って……私も? やった!)」
────表面と内側同様にウキウキしていた。
『この時は』、とだけここで追記しておこう。
青い空。
海や川をイメージした人工的な構造。
あふれる肉体美と健康美に白い肌。
そしてそれらを照らす陽光。
かつてここでは血が(少しだけ)流された遊園地(の一部)。
ここにはその爪跡が上手く隠され今では当人たちしか知らない。
だがここでまた血が流されそうになり、かつて敵対していた者たちが手を組むこととなる。
次回予告:
『修羅場(意味深)を全力で回避』
スヴェン、胃の調子は大丈夫か?
……えええっと……次回は『あの』エピソードの予定です。 (;´ω`)