楽しんでいただければ幸いです!
「……………………」
クロヴィスランドに行ってから数日後、アッシュフォード学園のクラブハウスでいつになくルルーシュは考え込んでいた。
黒の騎士団の活動が軌道に乗って日に日に勢力を増していく中、一つの小国が持つ『軍』に近づくにつれて業務は増えていくばかり。
「(やはり、俺が『ゼロ』として活躍している間の『騎士』が必要になるか。)」
彼がそう思いながら見たのは最近、傍を離れがちになっていたナナリーだった。
「(このまま行けば、俺がナナリーを護れなくなる時がいずれ来る。 いざというときに身を犠牲に出来、彼女を護れる存在が必要になる。)」
その際、彼の脳裏に浮かぶ候補たちを次々と思い浮かべては様々な来るべき状況や条件にはめては落としていく。
最後に残ったのは
「(やはり、この二人になるか。 だが最後の条件……『その人間にとってナナリー一人が生きる目的に成り得る』となると……やはりスザクに軍配が上がるか。) ナナリー、少し聞いていいかい?」
「はい? 何でしょうお兄様?」
「ナナリーは、“共にいたい”と思っている人物は今いるかい?」
「唐突ですねお兄様。 でもそれは昔から変わっておりません。 お兄様以上の人です♪」
「……そ、そうか。 そうだったな。 でも、俺以外とだったら誰かいるかい? 例えばその、スザクとか?」
「スザクさん? 好きですよ? でもやはりお兄様の方が好きです。」
「……そうか。」
「変なお兄様♪」
「(やはり、一刻も早くナナリーが幸せになれる世界を作らねば! だが、『保険』は必要だ。)」
その後彼は携帯でスザクへメールを送る。
『今度大事な話がある』、と。
…………
………
……
…
別の場所で、黒の騎士団アジトの一つであるビルの地下駐車場でルルーシュはゼロとしてインド軍区からの来訪者たちを迎えていた。
「ふぅ~ん、あんたがゼロね? よろしく。」
キセルを持ち、白衣を身に着けた女性があまり興味なさそうでルーズな口調で喋りかける。
「こちらこそ、ラクシャータ。 君のことは
「以前?」
「医療サイバネティック関係の記事を、すこし。」
実はというと不自由な体になったナナリーの為に、ルルーシュが治療法などを漁っている時にラクシャータの事を知ることとなったが、まさか彼女がナイトメアの開発に転じていたとは思っていなかった。
「君の教授の事は残念だったが。」
「ああ、マッド教授ね。 アイツなら『自殺』なんて絶対してないわよ。」
「なに?」
『マッド・カニングハム』、通称『マッド教授』。
その昔、ロイドやラクシャータにセシルの先生ともいえる存在で教授をやりながら科学者と技術者でも『天才』と言われていた。
そしてその頭脳を買われ、当時で様々な『最先端技術』とされていた物の開発に加わっていた。
『ガニメデ』もその一つだった。
学会でも見境なく実験や課題を出しては『変人』として有名だったが、すでに金食い虫であるアッシュフォード家のガニメデに新たな技術をアインシュタイン博士と共に発表したことでついに笑われ者に。
即ち、『サクラダイトを
「あれだけ笑われても、各国の上層部を無視したり反対したりで開発予算を削減されても、周りから腫物扱いされても、頭を撃たれても諦めなかったんですもの。 案外、どこかでしぶとく生きて研究続けているんじゃない? ゴキブリのように?」
「そ、そうか……(まぁ、未だに『行方不明』でなければスカウトはしていたのだが……先生相手でも『ゴキブリ』呼びか。)」
「あ! それよりさぁ! アンタがこの間送った血液サンプルの結果なんだけど? 一つは平凡なブリタニア人の血液だったわよ。 あとで結果を送るわね。」
「ほぅ……(これであの現場にいたのがブリタニア軍、それもスザクが俺の正体を知らなかったことで正規軍とは違う系統のモノだと絞れた。)」
「んでその……もう一つなんだけどさぁ……『
「……は?」
ルルーシュが呆気に取られ、それを思わず口に出してしまう。
ラクシャータは元々医療に携わっていたことで、そっち方面のコネもかなり手広い。
よって以前、ゼロの仮面が取られて素顔が見られた日に採取したサンプルを彼女に送って検索結果を待っていた。
そしてその結果の一つが『
特に科学技術が飛躍的に進歩したこの世界では。
「まぁ、それは別として私個人でまた血液のデータを見たんだけれど、
「は?」
本日二回目の呆気に取られたゼロの声が出てしまう。
「(『私の子供』? 何を言っているんだ、この女は?)」
俺が珍しくゼロから呼び出されて『整備班のスバル』として来ると、紅蓮弐式の追加パーツとキョウトによって新しく開発されたナイトメアフレームがあった。
「(第7世代……に近い第6世代KMF、『
通りで毒島達に
Type-03、通称『月下』。
ラクシャータがキョウトに依頼されて開発した、コードギアス一期の時点で『黒の騎士団側のグロースター』と言っても過言ではない性能を持つ量産を視野に入れた機体だ。
「ね、ねぇスバル?」
そして近くではアニメで見たことのあるカレンの姿があった。
「この、キョウトから送られた新しいパイロット用スーツの事なんだけれど……」
正式にゼロの親衛隊とも呼べる『ゼロ番隊』になってからよく見るようになったカレンの姿がそこにあり、思わず『おおう……』と息を吐きだそうになる。
アニメで見たが、生で見るとカレンの赤い
いやはや出るとこは出て引き締まっている所はさらに引き締まってクッキリとボディラインが出て……
ウホホホホホホホホ♡
ポーカーフェイスに感謝!
「どうした? 何か不具合でもあるか? さっきからモジモジしながら殴りかかろうとしていないか?」
「あ、いやその……『ちょっと恥ずかしいな~』と思って。」
ご尤も。
俺もアニメを客観的に見ていたときは『おお、スゲェ!』とファンサービスに興奮していた(と思う)が、いざリアルとなると正直目のやり場に困る。
だが取扱書を読んだら、このデザインにはちゃんとした理由があった。
前世で見た設定資料にもなかったっぽいから感心はしたので、それをカレンにも分かって欲しいところだ。
「……“慣れろ”、と他に言いようが無い。 さっきも見たがかなりの性能を誇っているスーツだ。」
「え? そ、そうなの?」
「ああ。 そのスーツには光ファイバーを使った電気紡績技術が使われている。 スーツ内には各種センサーも埋め込まれて、各部位の損傷や出血量に反応して痛み止めと止血の性能も備わっている。 体にフィット感気味になっているのはそれだけではなく、体内の各臓器を圧迫して機能促進と保護も図っている。」
「ほぇぇぇぇぇぇ……」
カレンが口をポカンと開けて感心の息を吐き出す。
俺もびっくりだよ。
『流石ロイドと同じレベルのラクシャータ』てか?
「今スバルが何を言ったか分かんないけれど、要するに『凄い!』ってことは分かったよ!」
「おい。」
この
「アンタかい? ウチの子に手を出した奴は?」
「「は?」」
俺とカレンが同時に声を出してみたのはこめかみをピクピクさせていたラクシャータだった。
うっわ。
リアルだとスッゲェ露出と恰好。
「こっちに来な!」
「へ?! ちょ、ちょっと?!」
うごごごごご?!
何ラクシャータさん?!
なんで俺の襟をつかんで────って力強い?! 声が出せない?!
「待て。」
「ん? 誰だいアンタ?」
ええええええええええ?
と、藤堂鏡志朗?!
な、なんで黒の騎士団にいるの?!
確か原作だと、四聖剣を逃がす為に捕まったんじゃなかったの?!
ユーフェミアの『私の騎士は枢木スザク准尉です!』宣言の後に合流していたでしょアンタ?!
ここで短く説明すると、スヴェンの行動によってナリタで大打撃を受ける筈だった日本解放戦線は余力を残したことで、一部が無事に海外へと脱出しもう一部が藤堂たちを支援するために大多数の希望者が残った。
これにより藤堂たちはブリタニアから逃げられたものの、彼ら五人の為にエリア11に残った日本解放戦線は全滅してしまった。
「君が技術者のラクシャータ殿だな。 月下、感謝する。 だが君同様に私もその者に用が────」
「────あっそ。 じゃあアポ取りなツンツン剃り込み頭の軍人さん。」
「「……………………」」
な、何で藤堂とラクシャータが睨む羽目にッ?!
「あ、あの! ラクシャータさん!」
「あん? あんたは確か……紅蓮ちゃんのパイロット?」
「あ、はい! ちょっと紅蓮の輻射波動で詳しいことを聞きたいのですけれど……」
「お! いいねぇ~! そんなパイロットだったなんて、気に入ったよ!」
ラクシャータが俺を話してルンルン気分でカレンの方へと歩きだし、カレンと(ヘルメットのバイザー越しの)俺が
『すまん、カレン。』
『いいってことよ。』
「……さて。 『スバル』だな。 少し君と話したいことがある。」
あ、今度は藤堂が。
カレン様、コッチモおたすけぇぇぇぇぇぇぇ!!!
俺が藤堂と四聖剣に連れてこられたのは黒の騎士団アジト……の外でも人気のない倉庫だった。
なんかヤな予感。
「仙波、千葉、朝比奈、卜部。 お前たちはここまででいい、人払いを。 近辺の警戒に当たってくれ。」
「「「「ハッ!」」」」
滅茶苦茶ヤな予感。
それでも藤堂の後をついていくしかない俺が更に倉庫の中へ入っていく────
シュラン!
「フゥゥン!」
────と藤堂が抜刀して突きを繰り出したもう勘弁してイヤやぁぁぁぁぁ!!!
ギンギンギン!
藤堂の三段突きを俺は整備中の為に未だに持っていたレンチで受け流してから距離を取る。
毒島の時にこれを見ていなかったら確実に────ふぉぉぉぉぉ?!
う、腕がジンジン痺れるぅぅぅぅぅ?!?!?!
レンチも滅茶苦茶にぃぃぃぃ?!
≪……フ。 腕を上げたようだな、
あ゛。
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!
≪日本侵略後、君のような者が死んだとは思えなかったが……まさかこのような形でまた再び出会えるとは思わなかったよ……って頭と腹を抱えてどうした?≫
んくくククく……
久しぶりの日本語で俺に喋ってくる藤堂だが……俺は思わず
…………
………
……
…
≪落ち着いたか?≫
≪は、はい。≫
あの後、心配する藤堂に背中を擦ってもらって落ち着いた。
『見た目とのギャップ感のあるキャラ、意外とコードギアスに多いな~』と思いながら藤堂に今の俺の状況を(お助けサークルやギアス関連以外)サラサラ~っと日本語で説明した。
≪なるほど……しかしよく英語と日本語の使い分け方を思いついたな? まさかと思っていたが、あの『昴』を『スバル』と使い分けるとは。≫
『前世のゲームとかからです!』とは言えないので、ここは安定のある答えにしよう。
≪結果的にそうなっただけです。≫
≪ふむ、そうか。≫
≪……詳しく聞かないのですか?≫
≪君が話したい時で良いさ。 しかし、まさかナオトくんが……惜しい人を……≫
うん……そうなるね。
≪道理で君は整備士に徹しようとしているわけだ。 優しいな。≫
……どゆこと?
≪……私は、そんな大した者じゃないですよ。≫
≪ゼロとは違う道を歩もうとしているのにか?≫
≪それは……え?≫
≪桐原殿から聞いたぞ、君は『保険』を設立しているそうじゃないか。≫
桐原のじっちゃ!
なに言いふらしていんの?
毒島に『無視しろ』言うぞ?!
≪それに君のおかげで、片瀬少将が逃げおおせたと言っても過言ではない、礼を言う。≫
……………………………………
≪そこでだ。 私に何かできることは無いか?≫
まさかの藤堂自ら申し出?!
しかも片瀬が生きている?
え?
これ、夢?
現実?
ほっぺつねってもらっていい?
≪それはそうと、そのヘルメットを取ったらどうだ? 暑苦しいだろう?≫
≪あ、いえ、これはえっと……ビックリしないでくださいよ?≫
俺がヘルメットを取ると藤堂の目が冷たい怒りに満ちていく。
≪……………………そうか。 それが君とカレン君の戦う────≫
≪────違います。 これは一応……
≪ほぉ、これは中々……実際に尋問を受けていなければ到底再現できないものを?≫
『漫画で見ました』とは言えない。
そもそもこの世界、『NARUT〇』ないし。
話をそらそう。
≪えっと……藤堂さんの申し出は大変ありがたいのですが、
≪そうか?≫
≪ええ、こちらはこちらで
≪フ、そこまで成長していたとは……9年前の種が芽を出したか。≫
なんかしみじみとしながら微笑する藤堂かっけぇ……
こう、『男の中の男』的な。
ちなみにこの後ヘルメットをかぶり直して戻った俺に、カレンが助けを求めてラクシャータにパイルバンカーの事を根掘り葉掘り聞かれた。
「火薬ぅぅぅ?! そんな時代遅れの骨頂品であのプリンのMVSやブレイズルミナスを破ったですって?! アッハッハッハ! こりゃ傑作だよぉぉぉぉぉぉ!」
ラクシャータ殿、露出いっぱいの乙πが吾輩の首にむ二むにむニむニむ二むにむニ。
………………
……………
…………
………
……
…
「ど、どう? 何か分かった?」
あれから更に数日後、俺は更に『CC細胞の検証』をしている所にアリスがそう声をかける。
「そうだな。 俺との物理的距離でも効果はあるが、やはり接種が一番効果的のようだな。」
「せ、せ、せ、接種って……」
ちなみにユーフェミアが美術館のオープニングセレモニーで来ていた記者たちの前で『枢木スザクを騎士に任命します』と宣言した時近くにいたクロヴィスは顔を真っ青にして愛想よい笑みを浮かべながら気を失っていたな。
あとスザクの叙任式は無事に終わったらしい。
な~んか厳し~い睨みをした、いかにも『自分はここに居たくない!』空気を出すコーネリアがいつ暴走するのかハラハラしながらテレビを見ていたと生徒会の皆が言っていたけれど。
一階ではスザクの叙任式をアッシュフォードで祝っている声が聞こえてくる。
それにミレイの婚約者、ロイド・アスプルンドも来てリヴァルが真っ白に燃え尽きたのを見て即座に個室へと戻った。
その時ルルーシュは放心していたな。
多分、アレだ。
『ナナリーの騎士にさせる筈のスザクがユーフェミアの騎士になってしまった』から何かだろ。
それは別に置いておくとして、今は
大至急、彼女らを『虐殺の皇女』誕生前にどうにかしないと今考えつつある大まかな作戦に支障をきたす。
だが見れば見る程、やはり近くにいることでCC細胞の活動はどうやら『停滞』、あるいは『中和』されるがその速度は遅い。
マオ(女)の例からすると『距離』で
だが最終的に『完治』までは程遠い。
『ほぼ完治』になりつつあるアリスの場合、『接種』は『距離』の数倍は効果があったが近くに居なければ
この二つの例からやはり、一番は『距離』と『接種』両方が手っ取り早いか。
ちなみに変な妄想はしないでくれ。
『接種』といえば、俺の血を元に作った輸血用パックに詰めた試作品のことだぞ?
しかもリンゴ味。
「やはり……アレしかないか。 アリス。」
名前を呼ぶと何故か彼女が気まずそうにびくりと身体を強張せる。
「頼みがある。」
「な、なによ?」
「
鉄の機械が走る、手に持つ兵器が吠える。
機銃がう唸り声をあげ、ミサイルが弾け、鉄の腕が吹き飛ぶ。
戦火の向こうに待ち受けるゆらめく影は何だ?
今こそのろしを上げる陰の部隊。
次回予告:
『神の島』
ついに、牙城を撃つか?
と言う訳で式根島です……カオスです…… (;・∀・)