小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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お待たせいたしました、少々長めの次話です。

お読みいただき誠にありがとうございます、楽しんでいただければ幸いです。


第59話 キュウシユウ戦役

『我々はここに正当なる独立主権国家日本の再興を宣言する!』

 

 テレビに映ったのはピシッとスーツを着た細身の中年男性がそう高らかと宣言する姿だった。

 

 グシャ。

 

「ちゅ、中佐……」

 

 黒の騎士団アジトの中で藤堂は珍しく怒りを露わにしながら手に取っていた文を思わず力強く握り、近くの千葉がびっくりして彼を呼んでしまう。

 

「ッ……」

 

 藤堂は何も言わずにクシャクシャになりかけた紙を仙波に渡す。

 

「……ムゥ。」

 

 そして彼から意外な声が出て、テレビのリモコンを手に取って映像を先ほどの独立宣言時に巻き戻し、その映像を再度見る。

 

「……藤堂中佐、本当にこれは少将で間違いないでしょうか?」

 

「だと見ていい。」

 

 彼と仙波が読んだ文には片瀬直々が書いた『今こそ日本の再興に合流せよ』という旨が藤堂宛に書かれていた。

 

「ふぅ~ん……どうします、中佐?」

 

「お前たちはどうなのだ?」

 

「『中佐の居る場所に我アリ』、ですよ。 ね、千葉さん?」

 

「当たり前のことを言うな朝比奈!」

 

「そんなにムキにな()ることないでしょ……」

 

「仙波は?」

 

「勿論、ここにいる二人と同じ考えです中佐。」

 

「そうか。」

 

 藤堂がもう一度見るのは再生される映像の中のスーツ男……

 の横に立っている片瀬少将……

 の背後に聳え立つ数々のナイトメアたちだった。

 

 無頼改が2割、無頼が2割。

 そして中華連邦の鋼髏(がんるぅ)が残りの6割ほどで隊列は作られていた。

 

鋼髏(がんるぅ)』。 それは中華連邦が運用しているナイトメアフレーム……のモドキである。

 技術力がお世辞にも高いと呼べない中華連邦が通常兵器を運用していた日本が第二次太平洋戦線にてブリタニア蹂躙されるのを見て急遽作ったKMF(ナイトメアフレーム)モドキ。

 コックピット自体が機体の6割ほど構築する卵型で短い『手』には折りたたみ式機関銃と両腰に固定兵器のキャノン砲、二足歩行ではなく三輪車のように前足二つに尻尾のランドスピナーで移動する。

 それに加え、脱出システムは搭載されていないどころかコックピットのハッチは前方に開く。

 

 完全に『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』を、中華連邦を牛耳る者たちの考え風に作られた機体だった。

 

下手な(数だけ多い)人口(貧民)壊れて(死んで)もすぐに替えが効く(代わりがある)』。

 

 そんな国をバックに、『日本独立』の宣言がされていた。

 

「キョウトに連絡を。 彼らを通し、返答をする。」

 

 

 


 

 

「ねぇ、学園祭のチェックリスト誰かお願~い。」

 

「あ! じゃあ私がやるですー!」

 

「お、やる気満々だな?」

 

「ムフフ~♪」

 

「各部活の出し物は~────」

「────あ、私が先日チェックを入れておきました。」

 

「さっすがアリスちゃん!」

 

 リヴァルの声にライブラが答え、シャーリーの独り言にアリスがテキパキと動く。

 

「こうやって皆で何かするのも久しぶりな感じがしますね、スヴェンさん?」

 

 そしてブライユ式に文字をプリントした用紙を確認するナナリー。

 

「ええ、そうですねナナリー。」

 

 本当に久しぶりだなぁ~。

 あの神根島イベント後、俺はそのまま黒の騎士団の潜水艦へと合流した。

 

 皆からは驚きの言葉……というか嵐だったけれど、一部は不安しかなかったよ。

 

 カレンの『胸張ったどや顔』。

 井上の『あらあら微笑ましい♪顔』

 藤堂の『意味深スマイルに“フッ”』。

 ミラクル八極拳使い情報部ディートハルトの『無表情ながらもムッとする顔』。

 扇の『“訳が分からないよ?”顔』。

 そしてCCの『“なんでお前がいる”ジト目』。

 

 そんな奴らにどう答えるかは決まっている。

 

 成り行きです。

 

 ……とは言えないので、濁すことに。

 後はゼロが機転を利かせてくれて『保険として近くの島に待機させていた』というのが効いた。

 

 あと別ルートで事前に備えさせた装備でアンジュやアリスたちはディーナ・シーに帰還していた。

 

 そんな時、生徒会室に浮かない表情をするミレイが入ってくる。

 

「おかえりなさいで~す! ……何かあったです、ミレイ先輩?」

 

「あー、そのー……テレビ点けてくれるかしらスヴェン?」

 

「ええ、勿論。」

 

 ポチッとな♪

 

『────テログループの中心人物、澤崎敦は戦後に中華連邦へと亡命していましたが黒の騎士団と名乗るテロ活動に伴う昨今の内情不安につけ込み行動を起こしたもの────』

 

 ────あ゛。

 

 テレビのテロップには『旧日本亡命政権残党、フクオカ基地を占拠し独立国家を宣言』。

 

「え? えぇぇぇぇぇ?!」

「これって、戦争?!」

 

 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!

 

『キュウシュウ戦役』! もう来ちゃったの?! 早すぎない?!

 

 ピリリ♪ ピリリ♪

 

「? ……ンンソンン?!」

 

 途端に俺の携帯が鳴り、連絡してきた相手を見ると思わずくぐもった悲鳴を上げそうになる。

 

「どうしたのですかスヴェンさん?」

 

「あ。 えー……少々席を外します、シュタットフェルト家に関連することですので。」

 

 

 

 俺は生徒会室を後にして屋上へと上がっていきながら『優男』の仮面を取り、屋上にいる毒島が振り返る。

 

「よく来たな、スヴェン。 ニュースは見たな?」

 

「ああ。 (ついさっきな。) 爺さん(桐原)は何と言っている?」

 

 毒島が喉を整えてデコ頭を作ってから桐原風にしゃべり始める。

 

「コホン……“一方的にサクラダイトの採掘権だけ通告してきおって、何様じゃ! 寝耳に水じゃい! 澤崎のハゲ気味小僧が、中華連邦に毒されおって!”……だとさ。」

 

 なるほど、原作同様に澤崎は中華連邦の傀儡国家のトップになるつもりか。

 

 というか何気に似とる。

 言ったら言ったらで、半殺しにされそうだが。

『どっちに』って??

 

 もちろん両方。

 

「そうか。」

 

「おじい様によると、キュウシュウブロックと周辺にいたレジスタンスの殆んどが日本解放戦線の片瀬少将の呼び掛けに応じ、“日本”に次々と殺到している。 我々はどうするのだ?」

 

 片瀬?

 どういうこっちゃ?

 ヨコスカ港『な、何事だぁぁぁぁ?!』で死んでなかったんかワレ。

 

「片瀬少将が?」

 

「ああ。 ヨコスカ港区から脱出し、中華連邦に亡命していた旧枢木政権に合流した後に流体サクラダイトを交渉に使って“日本”の司令塔の一部に組み込まれている。」

 

 ええええええええ、うそーん。

 なんでやねん。

 

 

 余談だがスヴェンもまさかタンカーが原作とは違い、余力を残した日本解放戦線が三つの船にそれぞれ流体サクラダイト、無頼改、無頼が積み込まれていたとは知らないだろう。

 

 

「そこでおじいちゃ────おじい様たちにも声がかかり、決を採ったらしい。 支援するか否かを。」

 

 Oh……それは意外。

 

「結果は?」

 

 原作のように『静観』でいてくれ!

 

「“保留”だそうだ。 神楽耶様はちなみにカンカンだったぞ、“ゼロ様を通さずに何勝手なことをしているのですあの金魚頭は! プンプン!”とも。」

 

『プンプン!』って、頬をぷっくりさせながらだろうか?

 

 だとしたらそのお餅を指で突いて割ってみたい。

 いや、そこはゼロにさせたい。

 

「そうか……これから俺にも(黒の騎士団の)召集がかかると思うが、『合流すべきではない』と思う。」

 

 毒島が眉毛を片方だけ上げる。

 

「それはまた……考えを聞いても良いか?」

 

「独立宣言時の映像を携帯で再生できないか?」

 

「……あ、ああ。 再生するぞ。」

 

 毒島が動画サイトにアクセスし、独立宣言を再生していくと俺は確認するかのように原作知識を加えた解析アレンジを口にする。

 

「……澤崎と片瀬少将をメインに画像が取られているが、後方には中華連邦の者らしき人物が立っている。 身なりからしてそこそこの地位を持った高官だ。 それに無頼や無頼改も映っているが、数は中華連邦の鋼髏(ガンルゥ)の方が多い。 だからもし、独立を成功させたとしても“名だけ日本”になるのがオチだろう。」

 

「傀儡国家、か。 それならば利用するにしろ、合流するにしろ、あまりメリットはないな。」

 

「いや、()()()出来る。」

 

「なに? どういうことだ?」

 

「そうだな……こいつらを仮に“日本”とこのまま定義しよう。 エリア11のブリタニア(コーネリア)軍と“日本”が衝突すれば、勝敗に関わらず消耗はする。 恐らく、カラス(ゼロ)はその機に何かしでかしてもおかしくはない。」

 

 余談だが『黒の騎士団』や『ゼロ』の言葉を口にするのはタブーで、ゼロの事は『カラス』と呼ぶようにしている。

 

 後、何故かそれを通信越しでディーナ・シーに伝えるとアリスのお腹から『ぐぅ~』とする音が鳴ったな。

 

 ……カラス、食べたことあるのお前?

 というかお腹を鳴らすほど美味しいの? *注*ちゃんと下ごしらえと調理し実際に食べるとカモに似ています。

 

「確かにな……(ナリタ)での件もあるぐらいだし、おかしくない……」

 

「取り敢えず、いつでも動けるようにしてくれ。 これから忙しくなるが、新しいあいつら(サンチア)たちはどうだ?」

 

その手の者(元軍人)だけあって、かなり見込みがある。 それに意外と話せるから私を含めて楽しいぞ? ……疲れるが。」

 

 あ~、なんか分かる。

 

 姉妹というか、兄妹というか、なんというか。

 

 コミックやアニメなどの原作知識でいくと、こうなるか?

 

 毒島とサンチアが『しっかり者の長女』。

 マーヤとマオ(女)が『要領の良い次女』。

 アンジュ(予定)とルクレティアとアリスが『苦労性の三女』。

 マ()とダルクが『元気な末っ子』。

 

 後に残った俺は?

 

 俺は……どうなんだろうな?

 

「……そうだな。 取り敢えず、いつでも動けるように。」

 

「了解だ。」

 

「いつも助かっている。」

 

……サラッと卑怯だぞ。

 

 そして小声で毒島が何かボソリと言う。

 

「ん? 何か言ったか?」

 

「あ?! いや、その! ほら! あれだ! ルクレティアの抱き枕用に作った、ぬいぐるみの事だ!」

 

 あー、あれね。

 

『すくす〇白沢モドキ』ね。

 ルクレティアは寝る時、何かに抱き着かなければ寝られないらしい習性なのでせっかくだから巨大なオルカを編んでみたら女性陣に『私にも!』とせがまれた。

 

 まぁ、その気持ちは分からなくもない。

 ふっくらボディに小さなフリッパーっぽいおてて、つぶらな瞳はいろんな奴らに刺さるからな。

 

 そこから俺はぬいぐるみ製造機の如く、皆の為に編んだら唯一頼んでこなかった毒島がチラチラ見ていたので、渾身の出来である『すくす〇白沢』(抱けるサイズ)をプレゼントしたら一瞬無邪気な少女のようなふんわりとした笑顔を向けられてドキッとした。

 

 こう……なんていうの?

 ギャップ感でグッと来た。

 

 次の瞬間、何時もの毒島に戻って感謝されたが。

 

「あとアンジュがボヤいていたぞ、“なんで私のだけ違う”って。」

 

 そういや、アイツには『ペロリーナ』を編んだな。

 クロスアンジュでペロリーナだし。

 

 「まぁ、あれはあれでダルクのイルカとの交換は嫌がっていたが……」

 

 毒島が何か言っているようだが、どうしよう?

 

 原作より“日本”……“傀儡国家の日本”は軍事方面でパワーアップしてしまっている。

 原作のように単騎突貫するランスロット、下手したら……いや、スザクが乗っている限りゼロが何とかするだろうが……

 

 さて……どう出ようか……出ないか……

 

 

 

 

 


 

 

 

「ハァ~。」

 

「ん? ため息なんて、コーネリア自慢のユーフェミアらしくないね? もしかして私がいることは迷惑だったかな?」

 

 ユーフェミアは政庁にてため息を出し、近くで副総督補佐(に正式な任命されたわけではないのだがシュナイゼルが何も言っていないので)書類の手伝いをするクロヴィスがそう声をかけてくる。

 

「え? あ! そ、そんなことは無いです! クロヴィスお兄様が手伝ってくれるのはその……凄く助かっています。」

 

 実はというと以前からクロヴィスにユーフェミアが相談していたことからある日、政庁のコーネリアにクロヴィスから連絡が届いた。

 

『副総督補佐官ぐらいはやって見せる』、と。

 

 本来のコーネリアならば即却下していただろうが、ユーフェミアの補佐につけていたダールトンもギルフォードも活性化したエリア11暴動鎮圧と“日本”の対応に駆り出された上に、シュナイゼル(絶対に借りを作りたくない相手)もその時はいた。

 

 それに仮にも総督をやっていたクロヴィスをそばに居させることで、『監視』の意味もあった。

 最近何かと必死に副総督の任を頑張るユフィが、未だに租界に出ようと危ういので『ユフィに何かあったら今度は上半身を潰す』という脅し文句の名をした脅迫付け加えた上でクロヴィスに副総督補佐官(仮)のようなものをさせていた。

 

 普通なら現在皇族が三人(身元がバレていない様子のライブラを入れると四人)がこうもテロや反ブリタニア活動が続くエリアに留まるのは良くないのだが独立宣言やナリタで多くの士官などを失ったことでさらに護送が危なくなり、政庁は人手不足になっていた。

 

 かくいうノネットもランスロット・クラブの修理を待っている……という大義名分でユーフェミアの側にいた。

 

 ちなみに『書類仕事? そう言うのは無理無理無理! キッ』とクロヴィスを睨んだそうな。

 

「そうかい? それにしては尋常ではないため息だったよ? もしかして、あのイレ────名誉ブリタニア人のことかい?」

 

 クロヴィスの脳裏に蘇るのは『イレヴンを騎士に任命するなど』といつもの調子で言ってしまい、コーネリアに劣るとも言えない圧力を先日放ったユーフェミア(と後ろでタジタジになったクロヴィスを笑いそうになるノネット)の姿。

 

 ギクッ。

 

 だが今回、形勢は逆転とばかり痛いようにユーフェミアが動揺したことでクロヴィスは言葉を続けた。

 

「それとも……自分の力量に悩んでいる、とかかい?」

 

 ギクギクゥ!

 バサバサバサバサバサバサ。

 

「あわわわわ?!」

 

「「おっと。」」

 

 ユーフェミアが連続で動揺した弾みでとうとう束になっていた紙が崩れそうになり、彼女とクロヴィス、そしてノネットがそれらを抑えて机の上に戻す。

 

「そ、そ、そ、そんなことは────ない……とも……

 

 原作……というよりは以前とはどこか違う様子のクロヴィスに戸惑いながらもユーフェミアは否定しようとしてスベリながら声がどんどん小さくなっていく。

 

 それは神根島で、スザクが命令違反を起こしてトウキョウ租界にある政庁にやっと戻ったと思えば、今度は彼から騎士の証を返されたのだ。

 

『事故とはいえ、自分は父親を手にかけました。 それに、自分には資格がございません』とだけ言い残しながら。

 

 スザクは詳しく話してくれなかったが、親しい人を────特に父親を殺したならばどんな事情があっても後悔の念は相当なものだろうとユーフェミアは感じていた。

 

 どんなに幼く世間知らずとも────いや。 ()()()()()()、その傷跡は深層深くまで刻まれているのだろう。

 

『うるさいよ、このお飾り姫が!』

 

 そしてこの間、自分とあまり歳が離れていなさそうな少女、黒の騎士団員の言葉はユーフェミアに刺さった。

 

 キュウシュウの対応にコーネリア、ダールトン、ギルフォード。

 中華連邦がこれ以上、『人道支援』を名義に介入しない対処のために動いているシュナイゼル。

 

 そしてコーネリアとシュナイゼルからは(言い方は違ったが)『外に出るな、何もするな』と。

 

「……私のことをどう思う、ユフィ?」

 

「え?」

 

 ユーフェミアが珍しくノネットから自分に対しての意見を聞く声がかかり、目が点になっていた。

 

「えっと……エニアグラム卿────」

「────かゆ! だからノ姉ちゃ────ノネット姉さんで良いって!」

 

「……“ノ姉ちゃん”?」

 

「え?! あ、その、そのえええええええっと────」

 

 ユーフェミアはクロヴィスがノネットの言いかけた言葉でさらに慌ててしまい、両手が宙をバタバタとする仕草がどこか慣れていないまま自分の世話をしだしたてのライラをクロヴィスに思い出させてしまう。

 

 そしてノネットにそれは幼い頃に慌てるコーネリアを連想させていた。

 

「────少し意地悪をしてしまったようだね。 私が言いたいのは、人の身である限り誰も完璧じゃないってことさ。 人参────じゃなかったクロヴィス殿下も考古学や芸術、保養施設などの分野においては非常に優れている。」

 

「なんだ、エニアグラム卿も姉上と違ってよく見ているじゃないか。」 ←ナルシスト風ドヤァ

 

「でもその反面統治能力は高くないね。 ま、ぶっちゃけると『総督と戦ごと以外なら優秀』ってわけさ。」

 

 グサッ。

 

「ングッ。」

 

 クロヴィスのどや顔に影とセットした髪の毛が落ちる。

 

「私だってそうさ。 『女なのに美容に気にかけなさい』とか『男見つけなさい』ってオカノン(カノン)が毎度言ってくるし……あとここだけの話、モニカ(ナイト・オブ・トゥエルブ)はちょっと羨ましい。 あの見た目に文武両道の腕だからね。」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「ヘキチッ! ………………誰か私のことを話している。 このクシャミの仕方はエニアグラム卿辺りね。 多分。」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「(あと彼女(モニカ)の方が若い。)」

 

 クロヴィスがそう考えると何故か凄い形相のノネットの錯覚を見てしまい、笑みを隠す。

 

「そ、そんな! ノネットさんは全然綺麗ですし、美容に気を使っていなくとも可愛いです!」

 

「アッハッハッハ! 嬉しいことを言うね副総督は! でもそんな言葉をアンタから聞くと人に寄っちゃ嫌味に聞こえるよ?」

 

「そんな……だって私の取り得なんて……何も────」

「────だとさ、クロヴィス殿下?」

 

 ノネットが突然話題を自分に振ったことに眉間にクロヴィスはシワを寄せながらも紅茶に口を付ける。

 

「ん? どういうことです?」

 

(ライラ)ちゃんから聞いたよ? アンタ、コーちゃん(コーネリア)に毎回ボコボコにやられたことで(ライラ)ちゃんに良いところ見せようと武術方面を頑張ったけれど全然ダメという事でコーちゃんの苦手な分野────」

「────ブフッ?! そ、それは少々の誤差が────」

「────ま、と言う訳で周りの『持つ者たち』に対して、『持たざる者の苦悩』ってのは大小の違いで誰でもあるのさ。 それがどれだけ深刻で、どうやって向き合うかで変わる────」

「────聞いているのかエニアグラム卿────?!」

 

『帝国最強』のラウンズであるノネットの言葉と、『元総督』だったクロヴィスの慌てようにユーフェミアはキョトンとしていたが、何かがはまる様にノネットやクロヴィスも自分に対してのコンプレックスを持っているという考えに至る。

 

「……ぁ。 (では、あの時の『自分に資格はない』って……もしかして────?)」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 フクオカ基地の管制室で、澤崎が様々なデータ映像などが集結するスクリーンを眺めて笑みを浮かべる。

 

「流石ですな、(ツァオ)将軍。」

 

「いえいえ、ここまで上手くいったのも日本解放戦線の合流もあったからこそ。 優秀な部下を持っていますな、片瀬少将は。」

 

 澤崎が横を見ると元中華連邦第七機甲師団の曹将軍が()()への指示を出しながら答える。

 

 以前、河口湖でも触ったがコードギアスの世界は化石燃料が発達していない代わりにサクラダイトを利用した電気技術が発達し、世界のサクラダイトのほとんどがエリア11(日本)から輸入している。

 

 無論、ブリタニアだけでなくほかの国もサクラダイトに依存していると言っても過言ではなく、中華連邦もその一つだった。

 

「一つ誤算だったのはまさかこうも早くブリタニアが中華連邦に圧力をかけることですな。 その所為でこれ以上の援軍は見込めない。」

 

「帝国の宰相か……だが日本のレジスタンスのおかげで人員は補充できる、それに片瀬少将と一緒についてきた日本解放戦線もいる。」

 

 コン、コン。 ガチャ。

 

「ただいま戻りました。」

 

「おお、噂をすればなんとやら。 どうでしたか、片瀬少将?」

 

 ドアをノックしてから入ってきたのは中華連邦にタンカーに日本解放戦線の残存兵力を乗せて逃げた片瀬少将。

 

 彼について来た日本解放戦線、無頼、無頼改、そして流体サクラダイトは中華連邦にとって喉から手が出る程に欲しかったものばかりだった。

 

「藤堂は、『我、賛成しかねる』とだけ────」

「────なに!?」

 

「むぅ……」

 

 澤崎がびっくりし、曹将軍が考え込む。

 

「藤堂は深い考えを持つ。 もしかすると、黒の騎士団とやらで何かあったのかと。」

 

「どちらにせよ、“日本”が勢力を拡大すれば黒の騎士団とやらも合流するだろう。 そうなれば我々の同士になるも同然。 この勢いで“日本”の領土を取り返せば勝ちますよ。」

 

 澤崎(政治家)は笑みを浮かべ、スクリーンに出ている勢力図にほくそ笑む。

 

「(もし、万が一藤堂とやらが合流しないのが黒の騎士団の総意となれば……この騒動を利用し、今後敵対もあり得る。 ならばその時、どうやって元日本軍を御しようか……)」

 

 曹将軍は難しい顔をしながら如何にして “日本”を早く世界に認めさせ、中華連邦の()()()におけるか考えていた。

 

「(藤堂……お前なら“日本再興”に名を貸すぐらいならすると思ったぞ……)」

 

 そして片瀬はどうやって取った領土の守りを、今の兵力と装備で盤石に出来るかを考えていた。


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