少々長めになりましたが、楽しんでいただければ幸いです!
エリア11のトウキョウ租界に聳え立つ政庁の近くにある空港で、珍しい光景があった。
ずらりと並んでいたナイトメアの一部に指揮官クラスのグロースターで、どれもがザッテルヴァッフェという特殊ミサイルランチャーを装備していたこともある。
だがそれよりもそれらのパイロットが全員バイザータイプのサングラスをした『グラストンナイツ』という、ある意味『皇族でもないダールトン将軍の親衛隊』であることかもしれない。
以前にも記入したが、一人一人は身寄りのない戦争孤児で将軍自らが引き取って父親同然に育てた者たちである。
その、絆、想いは本物の家族以上で、連携も絶対的な信頼がなければできない猛者の集まりである。
彼らの前に立っていたのはコーネリアで、宰相であるシュナイゼルを見送るかのように整列していた。
「流石コーネリアだよ、これだけの短期間でキュウシュウ騒動を鎮圧化させるなんて。」
「とんでもない、これは迅速に中華連邦に圧力をかけた兄上と自ら回してくれた本国からの正規軍、それに待機中だったグラストンナイツも呼び寄せてくれた今では以前より強固な軍へと戻りました。」
「私にも落ち度はあるからね。……流石に業務中に部屋を飛び出て実弾を装填した銃剣を持ちながら食堂に飛び込むほどのストレスを、コーネリアが抱えていただなんて……宰相として申し訳が立たないよ。」
「ウグッ……」
余談であるが、ユーフェミアのストレス発散は『夜中に人知れずお菓子を食べること』である。
彼女が副総督になってからもこれは続いた────否、勢いと食べる量が以前より増した。
これのせいで、彼女の着るドレスがきつくなっていたが
このおかげでデザート類の品数が劇的に減ったことを知ったユーフェミアは固まり、今まで見せたことのない顔をした。
これをノネットが面白半分で写真を撮ってコーネリアに送ると、どう頑張っても5分はかかる総督室から食堂の道をわずか一分で(しかも建物内で取り回しが難しい)銃剣を持ちながら突貫してきたそうな。
その勢いのまま食堂のシェフたちを問い詰めようとするコーネリア。
シェフたちもシェフたちで『閣下のご命令通りにしただけですー!』と叫べばすぐに撃たれる気迫のコーネリアの前でノネットは責任を感じてか彼女を(物理的に)なだめた。
余談だが賭けが生じ、オッズは6対4でノネットが若干有利だったところまで昔のようで、二人の学生時代を知っていたダールトンは『姫様、全く変わっていませんな』とほろりと涙腺に涙が出てきたそうな。
「あ、あれは……一時的なもの……です。 それに思いのほか、人参────クロヴィスたちの手伝いもあってキュウシュウの被害からくる修理費用に民間施設への補修費用の捻出などを担当してもらっているというのに……」
コーネリアが気まずく人参役者クロヴィスを珍しく認めるような言葉を出しながら視線を逸らし、シュナイゼルは愛想笑いを向ける。
「そうだね。 あれは私も意外だったよ。」
その『意外』とはクロヴィスのことだった。
以前総督としての彼の手腕はお世辞にも『良い』とは呼べず、最低の合格ラインを保っていたにすぎなかった。
軍事方面にも、政治にも。
だが最近の彼はいまだに軍部のことはからっきしだが、まるで憑き物が落ちたように内政面で大いに開花したような働きぶりを見せてコーネリアとシュナイゼルを驚かせていた。
「それに普段の君が今ここにいるからこそ、私は安心してエリア11を頼める。 ああ、それとバトレーが管理している件だけどくれぐれも内密に。」
「……『アレ』にそれほどの価値があるのでしょうか?」
「上手くいけばね。」
「兄上らしくないですね。 ひょっとしてユフィが見送りに来ていないからですか?」
「ああ、彼女とは昨夜話したから大丈夫だと思う。 それに……」
ここで初めて、コーネリアはシュナイゼルから『不安』のようなものを直感的に感じた。
数多の戦場の空気を読み取ってその流れを感じ取って有利に戦術を組みなおせる彼女だからこそ、感じ取れた『違和感』程度のものだった。
「……兄上? どうかされましたか?」
「ああ、何でもないよコーネリア。 少し考え事をしてね? じゃあ、行ってくるよ。」
「よい旅路を、兄上。」
シュナイゼルが敬礼するコーネリアたちに背を向けて待機している飛行機に向かうが、足を一瞬だけ止めてコーネリアに振り向いた。
「言い忘れるところだった。 コーネリア、少し耳を貸してもらえないかい?」
「??? は、はぁ……」
珍しくコーネリアがハテナマークを頭上に浮かべたことにギルフォードとダールトンがカメラを出すのを我慢する。
「これから何があっても、君は第一に『エリア11の総督』であることを忘れないでくれ。」
「??? はぁ、勿論のことですが……どうしてそのようなことを────?」
「────いや、いい。 気にしないでくれ。」
これを最後に、シュナイゼルは飛行機に乗って政庁を後にする。
「……カノン、あれを出してくれないか?」
「はい。」
そして彼はカノンから手渡された書類を再び見直す。
ユーフェミアの直筆で、『行政特区日本』と題名に書かれた書類を。
「(念には念を入れるか。) カノン、アッシュフォード学園にHiTVなどのテレビ局と連絡を入れてくれないか? 『政庁から何やら重大な発表が近々にある』と、匿名付きでね。」
『さぁさぁ、皆さんお待ちかねのピザタイムがやってまいりました~!』
「(まったく、スヴェンの奴はまだ来られないのか……)」
ルルーシュはこのイベントの為だけに作られた巨大オーブンの制御室で、外の様子とアナウンサー役をするリヴァルの声を聞きながら愚痴っていた。
「(本来なら奴がここにいる筈で、俺はクーデターの準備に取り掛かっているのだが……これはこれでいいかもしれん。 俺の司令ミスで、誰一人として死なないからな。 ちょっとした『休憩』としてみれば気楽になる……のか?
ここのところ、黒の騎士団にほとんど身を入れすぎて、出席数が
「さすがルルーシュね。 一時はどうなるかと思ったけれど、何とかなりそうね。」
「ええ……ですが皆よく能天気でいられますね? ついこの間、キュウシュウのいざこざがあったというのに。」
ルルーシュが見るのはステージに群がる人たちの姿だった。
「だからよ……人間、誰でも休息は必要でしょ? パァッとして、一時にでも世界のことや身の回りのことを忘れてさ?」
「……」
つい先ほど正に自分が考えたことを言葉にするミレイに、ルルーシュは黙り込んでしまう。
コン、コン。
「あのぅ……少しよろしいでしょうか?」
「ん?」
ミレイが開けたままのドアから来た声に振り向き、それにつられてルルーシュも顔を向けながら注意する言葉を出す。
「ここは関係者以外、立ち入り禁止だよ────ぉ↑ほぅ↓ぉ~~~~~?!」
ルルーシュがそちらを見ると急に裏返った声を、空気を吸い込むことで相殺させようとして結果、素っ頓狂な声で言語化できない音が彼の喉から発されていた。
それは無理もない。
扉ではサングラスに帽子という簡単な変装(?)をしたユーフェミアが居たからだ。
「(なぜここにユフィが?! それよりも誰かの差し金か?! だがコーネリアなわけがない────)」
「────えっと、ここにルルーシュがいると聞いたのですけれど────」
「────ルルーシュの知り合い────?」
「────かかかか会長! 俺は少し席を外しまーす!」
「え?」
「何かあったら連絡ください!」
ルルーシュはミレイの横を風のように横通ってはそのままの流れでユーフェミアの手を取ってその場から
……
…
管制室から少し離れ、オーブンのあるステージに注目が行っていることで人気がなくなった段差のある丘の上まで
「何で君がここにいるんだ?! (マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ。)」
「実はスザクに話したいことがあって来たのだけれど、さっきナナリーと偶然会っちゃって! そしたらスザクは少し忙しそうだから、貴方と話しに来たの!」
「そそそそそうか。 いいいいいきなりだな? (バレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレたバレた。)」
ルルーシュは内心では猛烈に焦りながらどうやってユーフェミアに対処しようか頭をフル回転で巡らせる。
その平行思考の数、実に20を超えていた。
原作での『対マオ』以上である。
「(ハァ~……)」
スヴェンはあの後、巨大オーブンとピザを作るガニメデの最終チェックとエナジー供給配線のためにシャーリーから呼ばれ、会場の裏にいた。
どうにか『
マ
前者と後者双方は彼を悩ませるも、後者は嬉しい知らせだった。
今は詳細を伏せておくが、これでかなりの戦力アップが見込まれるからだ。
「(それより問題なのはヴィレッタの方なんだよなぁ~……『残ってもいいですよ、エリア11に』なんて言って……フラグ立っちゃっているっぽいよね、これ?)」
「それにしても驚きました。 スヴェンさんが河口湖でしたこと。」
「です!」
「アハハハ、お恥ずかしい限りですよナナリーにライブラさん。」
スヴェンは自分のやることをすべて終えて座っているとナナリーの車いすを『キャハハー!♪』とさっきまで乗り物扱いしながら押していたライブラが近くまで来る。
『それでは紹介しましょう! こちらはアッシュフォード家のガニメデ! もう十分クラシックですがまだまだ現役で動くナイトメアです!』
「おお~! いつもスヴェン先輩がいじっている、ヘンテコなナイトメアの登場です~!」
ライブラはキラキラとした、まさに『ロボットアニメに魅入られる少年』のような仕草でステージの上でスザクに操られるガニメデを見る。
「見に行ったらどうでしょう? ここからではほとんど見えませんし、私はここにいますから。」
「わは~い! トライダーナナ号、出撃で~す!」
「リミッター解除、行きま~す。」
「ングブッ?!」
『ヴィーン』としたモーター音とともにナナリーの車いすが普段出さない速度でスヴェンから離れ、彼は思わずゴチャ混ぜになったロボットアニメの連想でくぐもった笑いを押し殺す。
「ねぇ。」
ちょうどナナリーたちが離れたと思うと、今度はいつの間にかそばに立っていたアリスが声をスヴェンにかける。
「(いつの間に……いや、ギアスか。)」
「……スヴェン先輩? 一つ聞いていいですか?」
「なんでしょう、アリス?」
「
「???」
「
「っ。」
アリスの質問にスヴェンの胸はドキリと脈を打ち、アリスはいつでもスカートの下に携帯している小型銃を手に取れる心構えをする。
「(いつだ? いつアリスは知った? それとも『ナイトメア・オブ・ナナリー』と同じで学園のデータベースにハッキングしたのか? いや、それよりも以前戦った時と同じ緊張感を感じる……どうする、俺?)」
「(確かに恩はあるし、今の生活だって悪くない。 でも……もしそれらが全部計算されているのなら……全部が私たちやナナリーやルルーシュ先輩を利用するため策だとしたら、今ここではっきりさせないとなんだか手遅れという気がする。)」
「「………………」」
活気があふれる表のステージの反対側にいる二人の間に会話はなく、周りに人気もなかったことでガヤガヤする背景音だけが程よい雑音として流れる。
「……
二人の間にあった静寂な空気を破ったのはポーカーフェイスになったスヴェンだった。
「(『最初から』、ですって────?)」
「────お前も分かっているように、俺は『従者見習い』をしている。 その昔、『帝国後宮でテロ』なんて事件を知らないわけがない。 その時、生き残った子供たちの特徴がルルーシュとナナリーに合っていたのでただの疑惑だったがな。」
「日本侵略時に『死亡』と正式発表されていたのに?」
「あくまで『可能性の一つ』としてだ。 確信に変わったのは、ついさっきでのクラブハウス。」
「それを知ったあなたは、どうする気? (返答次第では────)」
「────別に、何も。」
「……は?」
「何もしない。」
「いやいやいやいやいや。 相手が相手だよ? 知ったら……というかなんであの時あの子を助けたのよ?!」
「??? 困っている人を助けるのは当然のことではないのか? (嘘は言っていない生き残るための布石で会って相手にもマイナス点はないし恩着せがましく動いてもいないからバレませんように!)」
「(え? じゃあ、こいつ……え?
「(嘘は言っていない嘘は言っていない嘘は言っていない嘘は言っていない嘘は言っていない。)」
アリスが思い起こすのはスヴェン、そして 彼の『スバル』としての活躍だった。
「おい。」
「(……………………え? マジなのこいつ?)」
そして結論としてアリスがたどり着いた結論は彼の言ったことと今までの行動に矛盾がないことだった。
「おい。」
「(え? ちょっ、待っ、え? マジでこんなことあるの?!)」
「おい。」
「(こんなにお人よしな不愛想人間がリアルでいるの?! どこの漫画に出てくるキャラよ?!)」
「聞いているのか────?」
「────うひゃう?!」
悶々と考え込むアリスが固まっていたことでスヴェンが何度声をかけても動かない様子にびっくりする。
「話はそれだけでしょうか?」
「あ、うん……」
「では私は会場の表に行ってきます。」
スヴェンが『優男』としての設定に戻り、アリスは一人でステージ裏に残される。
ビビっっっっっったぁぁぁぁぁぁ!!!
何?! 何なの今日は?!
厄日か何かなのか?!
う……お腹が……
この様子じゃいつか穴ができちまうよ~。
助けてドラ〇も~~~~~~~ん!!!
「あれ? この足音……スヴェンさん、大丈夫ですか?」
すると人だかりの外側にいたナナリーが急に話しかけてくる。
「えっと……ライブラさんは? それに大丈夫とはどういうことでしょう、ナナリー?」
「ライr────ライブラちゃんなら“もっと近くでガニ
『ガニガニ』って、体操でもするのか?
…………………………教えてもいいかもしれない。
「スヴェンさん、スザクさんの操縦はどうですか?」
「立派なものです。 ピッツアの生地はもうすでに去年の2メートル超え、グングンと伸びています。 目視で4、5メートルはありますね、さすがは本職といったところです。」
「それは凄いですね。」
う~ん。
ナナリーマジ天使。
お? あそこにいるのはプリン伯爵ことロイドとミレイ?
あれか?
『第三世代ナイトメア、ガニメデ。 閃光のマリアンヌ様も使っていた機体だね?』
『基本フレームのみですよ。 イベント用のお人形です……やっぱり結婚の目的はあれでしたか。』
と言った流れのシーンのところか。
と、いうことは?
おお、いたいた。
階段のところにルルーシュと変装とも呼べないような変装をしたユーフェミアだ。
『すばらしい! どこまで大きくするつもりなのかぁぁぁ! スザク君、期待していますよぉぉぉ?!』
「……凄いですね、スザクさん。」
「そうですね。
そう軽く口にしながら俺はシャーリーの姿を探し────お。 ちゃんとご不満にもルルーシュたちを見てムスッとしているな。
「スヴェンさん……」
っと、そろそろ風が吹いてユーフェミアの帽子が飛ばされるところか。
ナナリーとの移動準備をするか。
ヒュウゥゥゥ!
立ち上がるとほぼ同時に一際強い風が案の定、ユーフェミアの帽子を吹き飛ばす。
「ユーフェミア様?!」
彼女の名前をシャーリーが呼んでしまうと、明らかにステージの周りにいた人たちにどよめきが走る。
「ここから移動しますよナナリー────」
「────え────?」
「────ユーフェミア殿下がマスコミや他の人たちの注目を浴び始めています。」
ナナリーの車いすを押して人がいなくなった屋台の中へ逃げ込む。
「ッ。 お、お兄様は?!」
「大丈夫です。 別の屋台に身を隠していま────あ。」
「こ、今度はどうしたのですか?」
「えっと……スザクが気を取られてピッツアの生地が木のデコレーションになりました。」
うわぁ……CC、絶対ショック受けているよなぁ~。
画面越しでは実感ないけれど、スッゴイ勿体ない────
────パパパパーン!!!
「ヒッ?!」
ギュ。
乾いた銃声がするとナナリーは目端に涙を浮かばせながら腰に抱き着いてくる。
ナデナデナデナデ。
「大丈夫ですナナリー。 今のは威嚇のものです。」
そう言いながら震えるナナリーを抱きしめてあやしながら頭を優しく撫で、首を回して屋台の中から様子をうかがう。
ナデナデナデナデ。
原作通りなら、今のはユーフェミアの周りにSPたちの代わりに割って入った特派だよな?
『いい加減にしなさい貴方たち! 相手は副総督にして第三皇女殿下ですよ?!』
お、セシル発見。
ナデナデナデナデ。
そしてユーフェミアのSPとスザクも発見。
ナデナデナデナデ。
「あの……スヴェンさん……」
あ。
しまった、抱きついて撫でていたままだった。
「ああ、これは申し訳ございませんでしたナナリー────」
というわけで、ハグ解除!
「────ぁ……えっと……ユフィお姉さまやライr────ライブラちゃんは?」
「ユーフェミア様なら今、スザクがガニメデで向かっています。 ライブラは……ジタバタしながらアリスに引きずられていますね。」
何やってんだか……
「そう、ですか……お似合いですね、ユフィお姉さまとスザク……」
「……………………」
気まずい。
何も言えない。
原作知識が合っているなら、『ナナリーの初恋相手はスザクだった』という描写があったはずだ。
無理もないか。
スザクは子供時代も今も、根は良くも悪くも『真っ直ぐすぎる』もんな。
あと超人だし。
もやしっ子であるルルーシュとはいろいろ違うし。
「手を、握ってくれるでしょうか? 少々寒くて。」
さっきの銃声で体が冷えたのかな?
「勿論いいですとも。」
ナナリーの手をそっと包み込むように俺は手に取ると、確かに少し冷えていた。
「あのお兄様といた方が実は、私とお兄様とは異母の親族だと言ったらどう思いますか?」
「(??? なんだ、急に? さっき一緒にいたところに会ったからか?) 別に何も思いませんが? それでルルーシュやナナリー本人が変わるわけでもないでしょう?」
「ッ……」
「(……全く話の先が分からん。)」
ナナリーは人気が周りにいないまま言葉を続ける。
「……ではどうか、お兄様のことを頼んでもいいですかスヴェンさん? お兄様は、やはり何か危ないことをしているから最近帰ってこないのでしょう?
「ッ。 (そこまで思い詰めていていたのか、ナナリー。)」
果たしてそれは原作でも彼女が持っていた気持ちだったのかスヴェンには分からなかったが、少なくともユーフェミアとの出会いで何かを感じていたようだった。
「この間、私は“独りは嫌”*1と言いましたが……私はお兄様が幸せでいられるならば、それだけで良いのです。 ですから、スヴェンさんにはお兄様の助けになってください……と頼んでもいいでしょうか?」
「………………少々語弊があるようですね、ナナリー。」
「え?」
「そこは『私たち兄妹の助けになってください』、でいいのではないでしょうか?」
「でも……私のわがままで、そこまで頼んでも……いいのでしょうか?」
……ここは少し変えてみるか。
俺は膝を地面につけて、胸に手を置く。
俗にいう、『騎士の誓い』ポーズだ。
ナナリーに見えなくとも、誠意の気持ちは伝わるだろう。
「……スヴェンさん?」
「ならば私に
「そんな! だって私……私は……だってスヴェンさんは、日本人なのでしょう?」
「……」
「咲世子さんも言っていました。 “折り紙をあれほど知っているのはおかしい”と。 日本の和食の作り方や、ユフィお姉さまに聞いたあなたは河口湖で日本語でテロリストたちの注意を引いたとも────」
「────それでも、私の体にはブリタニアの血も流れています。 それとも、私ではご不満でしょうか?」
「そんなこと絶対にありえません! でも……でも────」
「────では、頼んでください。」
「…………………………スヴェンさん……
「
俺は頭を深く俯いては、地面を見る。
「……ッ……ッッ……」
……ナナリーに前もってハンカチを渡せばよかったかな。
『Hiテレビです! 近々発表されることがあるとのことですが、一言コメントお願いできませんでしょうかユーフェミア様?!』
『ッ……その話を、どこで?』
『“とある者”としか!』
『……この映像、エリア全域に繋がれていますでしょうか?』
『勿論です!』
ああ。
やはり……現実を言っただけでは止まらないか。
『スゥー、ハァー…………………………皆さん! 大事な発表があります!』
俺たちのいる場所からでも、ユーフェミアが深呼吸してから口を開ける。
『神聖ブリタニア帝国、エリア11副総督の第三皇女のユーフェミアです! 私、ユーフェミア・リ・ブリタニアは……………………フジサン周辺に、“行政特区日本”を設立する事を宣言致します!』
ガシャァン!!!
トウキョウ租界の政庁の総督室から、ガラスが割れる音がする。
「WHAT THE F〇CK IS THIS SHIT?!」
特別通訳:どういうことだこれはぁぁぁぁぁぁ?!
こめかみに青筋どころか怒りのあまりに無数の血管を浮かばせたコーネリアが、拳でテーブルを叩いた弾みにテーブルの一角が割れてしまい、その拍子に彼女の手袋が破けていて手もところどころガラスの破片が突き刺さっていた。
「ひょほあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」
政庁でも別の部屋にいたクロヴィスは彼らしくもない巣頓狂な声をあげながら顔を歪ませ、あまりの動揺に車いすから転げ落ちてしまっていた。
『この行政特区日本では、イレヴンは“日本人”と名乗ることが許されます! 彼らへの規制、ならびにブリタニア人の特権は“特区日本”には存在しません! つまりはブリタニア人もイレヴンも平等な場所になります!』
電動式ジェットエンジンの音の上からでも聞こえるユーフェミアの宣言を聞きながら、シュナイゼルはついさっきカノンに入れてもらったワイングラスをあげた。
「流石殿下ですね。 これでエリア11の掃除ははかどり、前に出なくとも利しかない状況です。」
「買いかぶりすぎだよ、カノン。 私は可愛い妹の頼みを聞いてやっただけだよ。」
『聞こえていますか、ゼロ?! 貴方の素性も事情も何一つ、私は問いません! ですから、貴方も特区日本に参加して下さい!』
「フ……フフ……フフフフフフフフフフフフフフ。」
カノンは片手で数えるほどしか聞いたことのない、シュナイゼルの静かな笑い声に背筋が凍るような感覚に浸りながら、自分の主が血のように赤いワインを静かに飲み干すのを見届けた。
「アッハハハハハハ!」
シュナイゼルとは別のジェット機では、以前に見た背丈より長い金髪を持った子供が無邪気に面白おかしくお腹を押さえながら足をバタつかせながら笑っていた。
「ああ、笑った笑った! 傑作だよシャルル! 君の子供の中でも、一際斜め上の発想ができる子がいるんだね!」
「どうしたの、パパ?」
「何でもないよ……人生、何が起きるかわからないね♪」
彼が浮かべていた笑顔は決して彼のような見た目をした子供がしてはダメなモノだった。
やっといつもの時間に投稿できました!
余談:
コードギアスのサントラ、いいですね。
聞きながら書くと、脳内でアニメを見ている気になれます♪
特に“Alone”や“With you”などのコーラス付きは好きです。