小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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大変長らくお待たせいたしました、次話です!

楽しんでいただければ幸いです!


第68話 『もしもの為』に

 ユーフェミアの宣言から、黒の騎士団は文字通りハチの巣が突かれたように騒がしかった。

 アジトである潜水艦の中では、幹部たちが『行政特区日本』に関して議論を続けていた。

 

「事態は深刻です、支持者や団員の中からも“特区に参加すべき”という者たちが出ています。 今はまだ末端の者たちや入団して日の浅い者たちしか出ていませんが、このままではいずれスタンピードの法則で広がる可能性が出ます。」

 

 ディートハルトは彼独自の調査の結果、ため息交じりに上記の結論を出した。

 

「黒の騎士団と違って『特区日本』に参加するにはリスクがほとんどない上、得る()()が大きいですからね。 “ナンバーズ制度も適用されない”とか……」

 

 扇も同じ書類の『参加した方が良いと思う理由』の欄を見ながら、パラパラとディートハルトの用意した資料のページをめくる。

 

「それにあっちに実績はほぼ無しだけれど『由緒正しいお姫様』のお墨付き。 こっちは実績の数々はあるけれど『正体不明の仮面男』。 誰からどう見ても、あっちの方がよさげだしねぇ~?」

 

 ラクシャータが他人事のようにキセルを咥えながら、緩~い口調でそう横から口を出す。

 

「それだけではないぞ諸君。 キョウトも、『向こうに協力する』という流れになっているらしい。」

 

「ハァ?! なんじゃそりゃ?!」

 

 藤堂の言葉に玉城が本音を出す。

 

「とはいえキョウトも決めかねており、口論を続けている。 我々も早く手を打たねば二の舞になるかもしれん。」

 

「それって……内部分裂……」

 

 人の集まりが大きくなればなるほど統制は聞きにくくなり、どのような選択の局面でも『反対派』と『賛成派』が出てくる。

 

 普段なら『反対派』が少数ならば組織は運営続行可能なのだが、このような事態のままだと『反対派』が膨れ上がり、それに対応せねば、扇の言ったように組織は内部分裂をしてしまう。

 

「扇君、ゼロとの連絡は?」

 

「未だに取れません藤堂さん……」

 

 この頃のゼロ(ルルーシュ)は『組織』云々よりも私情と戦っていて、黒の騎士団どころではなかった。

 

「そうか。 早急に対応を決めないと、組織が半壊してしまうというのに……」

 

「「「「「………………」」」」」

 

「ここの者たちでやれることはやっておこう。 『参加する』と『しない』、双方のメリットデメリットを上げていこう。 まずは参加するという方面を────」

 

 藤堂の言葉に黒の騎士団が今まで以上に暗~い空気に変わり、扇は空気を変えようとして話題をゼロから切り替えて話をする横で、藤堂は腕を組みながら天井を見上げていた。

 

「(昴君……君ならばこの局面、どうするのだ? 君は今どこで、何をしている?)」

 

 

 

 


 

 

 

「……よし、書けた。」

 

 俺は満足げにペンを机の上に置いてから、最後の一通を折りたたんで封蝋を施し、それらを懐にしまう。

 

 あのユーフェミアの宣言、そしてナナリーの頼みごとと『タイムカプセル時』から俺は考えた。

 

『どうやって虐殺皇女イベントを阻止するか』を。

 

 原作でのユーフェミアとしては、『特区日本宣言』はただ単に『ナンバーズとして区別するのではなく、認め合うか仲良くするなど現実的には無理な理想論を実現化した』つもりでいたのだろう。

 

 だからこそ、俺はそれとなく幸運にも彼女と事前に会うことが出来たときに、それがどれだけ違うのか伝えたのだが……多少の戸惑いはあったものの、宣言はそのままされた。

 

 これで、元々『日本の独立』や『日本を認めさせる』ことを大義としていた反ブリタニア組織などは、嫌でも参加を強いられる。

 

 もし参加しないのなら組織が内部から瓦解し、完全に壊れなくとも力は大きくそぎ落とされて、今まで積み上げてきた様々なものは失われたままだろう。

 

 それに今回、全部が原作のようにいかないかもしれない。

 

 学園祭にはロスカラのオリジナルキャラであるノネットがいた。

 ということは、スザクとルルーシュのいい部分だけを取った、彼ら以上のチートキャラである『ライ』もいる可能性が高い。

 そう思って、あの日からミレイに頼んで学園の監視カメラ映像の記録などを観覧したが……

 

 得られたのはミレイのナイスな双山の感覚だった。

 

 もしやと思って去年やその前の年の録画を見ても、ライらしき少年の映像はどこにも見当たらなかったし、画像や記録が偽造された痕跡もなかった。

 

 というか、今になって考えるとアニメ含めてナイトオブラウンズの描写は(極数名を除いて)極端に少なかったから、単に俺がノネットの登場した場面や描写を覚えていない可能性があるし。

 

 うん、多分そっちだろう。

 そう思いたい。

 思わせてくれ。

 

『原作』、『ナイトメア・オブ・ナナリー』、『ロスカラ』なんてどんなごった煮パーティだよ?

 胃が崩れるわ!

 

 俺はそう思いながら屋敷の中を歩いて、とある部屋のドアにノックをする。

 

 コン、コン。

 

 シュタットフェルト家の召使いや給士の者たちは、それぞれ個室や敷地内での生活をしている。

 

 ざっと200人ほどだ。

 びっくりだろ?

 

 原作でも描写は少なかったので、俺も最初は度肝を抜かれたけれど詳細を聞いて納得した。

 

 住居の屋敷以外に、広い敷地をセットで『シュタットフェルト邸』は成り立っているわけで、使用人なども自然と『内側班』と『外側班』に分かれる。

 

 屋敷の中は掃除、洗濯、料理、執事、教師、服飾、美容師などなど。

 外は庭師、小さな畑と牧場に厩舎の世話係にあらゆる職人たち。

 そして、時と場合によっては上記の人たちの家族までもが住みこんでいる。

 

『家』というより『小さな町』だな。

 

 流石貴族といったところで、ノックした部屋の中から返事がようやく来る。

 

 さて、現実逃避はここまでにしよう。

 

『……はい、どなたですか?』

 

「私です、スヴェンです。」

 

『す、スヴェン君?! 待ってね、今開けるから!』

 

 ガチャリと音を立てて留美さんが自分の個室のドアを開ける。

 

「いらっしゃい! 何もないところだけれど────」

「────いえいえ、留美さんがいるだけで充分です。」

 

 原作ではリフレイン中毒者になるまで追い詰められていた彼女だが、俺の根回しでそれほど悪くない環境をキープ出来たので、今眼前にいる彼女にその面影はない。

 

 くそビッチ(シュタットフェルト婦人)も未だに自業自得で燻ぶる火の鎮圧化のために、ジョナサン様と同じで家を留守にするようになったから、差別意識の高い奴らを次々と排除できたし。

 

『排除の意味は何だ』って? ご想像にお任せするよ。

 

「め、珍しいわね? スヴェン君が私の部屋を訪ねるなんて?」

 

 それでも留美さんに宛がわれた個室はこぢんまりとした一室で(今でこそほとんど消えかかっているが)壁には彼女へ向けた罵詈雑言の落書き跡が見える。

 

 あれは骨が折れたな。

 誰だよ、工業用のマジックペン使ったの?

 誰でもいいか。

『排除後』に落書きの追加はなくなったし、今となってはどうでもいい。

 

「ええ。 実は()()を留美さんに渡したくて。」

 

「……封蝋付きの手紙?」

 

 しかも外は紙ではなく、サクラダイトを縫い込んだ布地に近い特殊なものだ。

 無理に手順を踏まずに開けようとすると爆発するタイプ。

 皇族や高等貴族でやっと使える代物で、その性質上、一家が持てる数は限られている。

 

 いやはやジョナサン様に感謝しかないよ。

 本当に『良いブリタニア人』の部類に入る。

 

「ええ。 ()()()()()()を想定したものです。 書かれた事態の場合にのみ、封を切って読んでください。」

 

 俺の言葉に留美さんがギョッとして、手紙に()()()()書かれた()()()()()()()()()()()()()()()項目等に目を移す。

 

「それって……でも、どうして私に?」

 

「もし(スヴェン)がいなかった場合の緊急時、ここで信頼できる人が常にいるのは貴方だけですから。 用はこれだけでしたので、失礼します。」

 

 そう笑顔で留美さんに言い、部屋を出てから今度はカレンの部屋を目指して前に立つ。

 

 コン、コン。

 カリカリカリカリカリカリカリ。

 

 今日は珍しく帰ってきているカレンの部屋に()()()()ノックをし、小指の爪でドアの表面を引っ掻くと、眠たそうな声が出てくる。

 

『……………………むぁぁぁぁい?』

 

「私です、スヴェンです。 入ってもよろしいでしょうか?」

 

むぃ(いい)よぉ~。』

 

「では失礼します、お嬢様。」

 

 入るとうつぶせになった桃色の桃が────

 

「────って服ぐらい着ろよ。」

 

 またかよ。

 

「ん~、別にいいじゃん……あっち(アジト)だとギスギスのし過ぎの緊張感で眠たくても眠れないし、扇さんたちは私を避けるようになったし……」

 

 藤堂さんにシメられた成果がもう出たのか。

 

 まぁ、いいか。

 

≪カレン、この封筒を『奇跡』に渡してくれるか?≫

 

 俺が日本語で喋るとカレンがピクリと反応し、首を回して俺を見る。

 

 だから服着ろよ。

 

≪別に構わないけれど────≫

≪────それと、お前にも封筒だ。 絶対に書かれたとき以外は開けるなよ?≫

 

≪え? それって────?≫

≪────要件はそれだけだ、じゃあな。≫

 

 ポカンとしてベッドの上で座る下着姿のカレンの部屋を後にする。

 

 学園でも、できるだけの根回しをするか。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「フゥー。」

 

 学園で、毒島とアンジュがいつもいるはずの体育館の前で息を吐き出す。

 この頃、ほぼ起きている時間は活動しているからか、俺も疲れがたまっているな。

 それももう少しの辛抱。

 そう思いながら体育館のドアをくぐると────

 

 ドッ!

 

「ホぅ────?!」

「────スヴェン! 良かった!!」

 

 ────なぜかアンジュが俺にアメフトタックルをし、思わず『優男の仮面』が外れそうになる。

 

 いかん。 『優男』だ。

 今は優男の仮面を維持せねば。

 

「“良かった”はこちらのセリフです。 丁度貴方に渡す────」

「────()()、どうしようスヴェン?!」

 

 タックルの勢いで俺の上に馬乗りしたアンジュが、そう言ながら顔面にまで近づけたのは封蝋が切られた手紙だった。

 

 ……俺のは懐に入れたままだったよね?

 

 いや待てよ? よく見たら封蝋は俺のじゃないぞ?

 

Eka・rüga(イカ・ルガ)家』?

 ってアンジュの実家じゃん!

 

 今まで(アンジュによると)シカトというか、絶縁気味だったのにどういう風の吹き回しだ?

 

 ユーフェミアの『特区日本宣言』で感化されたのか?

 

「それはよかったですね、アンj────」

 「────よくないわよぉぉぉぉぉ?!」

 

 ガクガクガクガクガクガクガクガク

 

 ウゲゲゲゲゲゲ。

 どうでもいいが俺を力任せに揺すらないでくれ。

 

 ……ウップ。 

 吐きそう……

 

「このままじゃ私、婚約させられちゃうのよぉぉぉぉぉぉ?!」

 

 What the f〇ck(なんでやねん)?!

 

「取り敢えず、場所を変えませんでしょうか? そして私の上から退いてくれ。

 

 そろそろ周りの視線が痛いでござる。

 

「ってなんで貴方が地面に倒れているのよ?!」

 

 おまんがタックル(押し倒)して来たんじゃろうがよ?

 

 毒島も意味ありげなニヨニヨするのをやめろ。

 

 じいさん(桐原)に似ているって言うぞコラ。

 

 言ったら言ったで、真剣を出すかも知れないが。

 

 

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

「なるほど、事態は概ね理解した。」

 

 あの後、体育館からなぜか悔しそうな顔を浮かべる生徒たち(男女両方)から、逃げるようにいつものテラスへと出ては、落ち着きを取り戻したアンジュから大まかな事情を聴きながら手紙を拝見し、使用人用裏サイトなどを携帯で漁った。

 

「で、どう思う?」

 

最悪だな。 お前は今まで何をしていたんだ?」

 

「ウッ。」

 

 俺の容赦ない言葉にアンジュは畏まる。

 

「そ、そんな風に言わなくても────?」

 「────ここまで事が悪化するまで放置させるなど、正気とは思えん。」

 

 アンジュがさらにシュンと小さくなる。

 

 掻い摘んで記すと、アンジュは今まで『実家は何も言ってこなかった』と俺に言っていたが、実際はかなり違った。

 

 今まで実家が送ってきた手紙はすべて『お見合い』に関してだったらしく、彼女はそれらをことごとく無視し続けていた。

 

 まぁ大方、『余裕がなかった』とか『面倒くさかった』とかだろうけれど……『無視』は駄目でしょうが。

 

 で、話を続けると、少し前から送り主の名前がある日を境に父親であるジュライ(アンジュパパ)から兄のジュリオに変わったけれど、手紙の内容は変わらなかったらしいから無視し続けていたと。

 

 だから『無視』は駄目でしょうが。

 

 そして今度はちゃんと封蝋された手紙を開けてみるとあら不思議。

 いつの間にか寝たきり状態になっていたジュライに代わってジュリオが当主になっていて、()()()()アンジュはザッド伯爵の息子であるヨハンソンが慈悲で婚約し、ザッド家をバックにEka・rüga(イカ・ルガ)家は安泰になると。

 

 そして婚姻の発表&場所はアンジュの実家だと。

 

「……………………………………………………………………」

 

「うぅぅぅぅ~~~……」

 

 アンジュがさらに今すぐにでも穴を掘って潜りたい様子で気まずくなりながら、『アンジューリーゼ』だった名残のドリル(縦ロール)を指でいじりだす。

 

「ちなみに一応聞いておくが、この悪評の数々は少しでも本当か────?」

「────ほ、本当のワケがないじゃない! 失礼ね!」

 

「だな。」

 

「はぇ?」

 

「しかし噂か……」

 

 「なんで即答で断言しちゃうのよ……」

 

 流石に俺でも本人確認したくなるような内容ばかりだ。

『落ちぶれた実家から逃げ出した。』

『極東の島国で男遊びに家族は嘆いていた。』

(ジュリオ)は落ちぶれた家を建て直すために奮闘しているのに、長女は何をやっている?』

 

 などなど。

 

 完全にくそビッチ(シュタットフェルト夫人)を悪役令嬢枠に詰め込んだような内容だ。

 

 そしてヨハンソン・ザッドは、世間的には『体格が大きく年の割には紳士的な振る舞い』&予想通りに『影の噂では女癖が悪い』か。

 

 ここまでくれば王道テンプレ『無理やりな婚約を無理強いされる元悪役令嬢!』の題名が付きそうだな。

 

 ってザッド伯爵の息子と言えば、昔アンジュに絡んできたあの豚野郎じゃねぇか?!*1

 

 まさかまだ懲りていないとは、ある意味凄い執着心だな……

 

 全然感心できないけれど。

 

「そ、それで……何かいい案は無いかな?」

 

「うん? どういうことだアンジュ?」

 

「だってほら、ミレイの相談にも乗っていたから。」

 

 何でお前がそれを知っているの?

 

「しかしそうだな……状況的にあまりよろしくない。 お前の立場が危ういからな、色々と。」

 

「そ、そうよね……」

 

「だが対策が考えられないわけではない。」

 

「ほ、本当?!」

 

 顔が近い。

 何この最近見たようなキラキラ目は?

 目からビームでも出る予兆か?

 

 頼むから『空裂眼なんちゃら』ではありませんように。

 

「あ、ああ。 とはいえ、少し気になることがある……お前の妹、シルヴィアはどうした?」

 

「そ、それが()()()()()の。 コールや手紙は出していたけれど、全然返事とかが無いから……」

 

 ……まずいな。

 

『世界のベースがクロスアンジュではないから』とてっきり思っていたが、確か『クロスアンジュ』でのシルヴィアは、自分を餌にしてアンジュを罠にはめてなぶり殺しにしようとしたはずだ。

 

 もしこの世界でもその設定が適応されるのなら、アンジュが実家に着いて婚姻がそのままされたら、アンジュがその後に酷い目に合うだろう。

 

 よりにもよって『家族』から。 それは絶対にダメだ。

 

 それでなくとも、ヨハンソンでも同じだろうが。

 

 ……いや待てよ?

 

「アンジュ。 兄であるジュリオはどんな奴だ?」

 

「…………………………」

 

 アンジュが浮かない顔をして目を逸らす。

 

「アンジュ?」

 

「私が純血じゃないことを知った瞬間、“人が変わった”としか言いようがないわ。 それに今回の婚姻も、彼が当主になって勝手に決めたことだし……お父様が倒れてからのタイミングが怪しすぎるわ。」

 

 ……なるほど。

『クロスアンジュ』でも(ジュリオ)が見せた選民意識は健在……と見ていいか。

 

 なら一番確実な方法がある。

 

「アンジュ。 俺に一応考えはあるが、この案はお前の家族との関係に問題が生じるかも知れない。」

 

 あるが……かなり過酷で強引な方法だ。

 

「何せ世間的に見れば、お前の家には利しかない。 お前がこれ(婚姻)を蹴ることは、ある意味お前が自分で実家の家名に泥を塗るような感じだ。」

 

「それでも……私は………………」

 

 どうにも反応が悪いな。

 

「ならばこうしよう。 一度()()()実家に行こう。」

 

「え?」

 

「一応、正式に招待されているわけだからな。 付き添いが必要だろう?」

 

「そ、それって────?!」

「────今更実家に戻っても、お前の味方がまだいるとも限らないからな。 保険だ。」

 

「………………あ、ありg────!」

「────それにお前、身の周りのことが未だにできていないだろう? 女子から聞くぞ? お前がたまに洗剤の量を入れすぎて、洗濯室が泡だらk────ごふッ?!」

 

 アンジュが頭突きを俺の顔に食らわせて、一瞬星が視界の中で散っていく。

 

「ま、まぁ今のは言いすぎた。 少し連絡を取るから待ってくれ。」

 

 暗号化機器をつけてスピードダイヤルをポチっとな。

 

『ふぁぁぁぁぁ……もしもし?』

 

「俺だ。」

 

『あんたか。』

 

「そうだ。」

 

 またこのくだりか?

 カレン、お前はCCにでも習ったのか?

 って、俺も原因の一部ではあるか。

 

()()()()()()()()()、留美さんにもそう伝えてくれるか?」

 

『また裏で何かするの?』

 

 何このサイレントジト目感?

 

「そんなところだ。」

 

『オーケー、伝えとくよ。』

 

「いつもすまないな。」

 

 よし、これでアンジュの実家に────

 

「────今の誰? 女の感じがするわね。」

 

 ジト目で『女の感じがするわね』って、お前はどこぞの噂好きのおばさんか?

 

「忘れたのか? 俺は『シュタットフェルト家の従者見習い』だぞ?」

 

ふぅ~ん? そうだったわよねぇ~。」

 

「どうしたアンジュ? お前、なんか不機嫌になっていないか?」

 

べっつに~?

 

 さ~て、アンジュの実家では鬼が出るのか蛇が出るのか。

 

 どちらにしても、『準備(装備)』は必要だな。

 

 ……『特区日本』の会場オープンまでに間に合うかな?

 

 

 


 

 

「あれはどういうことですの、お兄様?」

 

 スヴェンがアンジュの悩み事を聞いている間、トウキョウ租界の政庁では、ユーフェミアが珍しく声を上げていた。

 

『“どう”……とは? 私は何もした覚えはないよ、ユフィ。』

 

 通信先の相手は、帝国宰相として中華連邦に釘を刺しに出払っているシュナイゼルだった。

 

「先日、マスコミの方から『近々大きな発表がある』と聞かされました。 私の『特区日本』を誰よりも先に見たのはシュナイゼルお兄様だけなのです。」

 

『そうか。 なら私は謝るべきだね、あれはマスコミに身構えをさせる為、事前に報道局の上層部に知らせただけで、まさか末端のレポータにまでリークするとは思わなかった。 すまない、この件は私が()()すると約束しよう。』

 

「……シュナイゼルお兄様、聞いても良いでしょうか?」

 

『なんだい、ユフィ?』

 

「私は……私の提案したこの『特区日本』は、()()()のでしょうか?」

 

 シュナイゼルのいつもの笑顔が、一瞬だけピクリと不安になるユーフェミアに対して反応する。

 

『“正しい”、か。 なんとも言えない、あやふやな定義を聞くね?』

 

「“あやふや”、ですか?」

 

『そうだね。 “正しい”のは“行動”と、“その行動がもたらした結果”と私は思う。 だからもし、ユフィが自分の提案が正しくないと感じるのなら、正しい結果にする努力をすればいい。 私も微弱ながら手伝うよ。』

 

「……ありがとう、ございます……」

 

 ユーフェミアは言葉とは裏腹に胸がモヤモヤした気分のまま通信を切って、自分の企画の段取りの準備に戻る。

 

 あの宣言からほぼ毎日の起きている時間は、このことなどに彼女は費やしていた。

 

 何せブリタニア帝国全土でも初となる発想と企画だ。

 

 最初は戸惑っていたが、発表してしまったのならもう突き進むしかない。

 

 最初は渋っていた周りも最近では仕方なく手伝っている様子なので、二回、三回の見直しは欠かしていない。

 

 ()()()()()()()()()のだから。

*1
5話より




頑張りますが、投稿スピードがこれからもちょっと遅くなるかも知れません。

ご了承くださいますようお願い申し上げます。 m(_ _)m

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