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トウキョウ租界の政庁でクロヴィスが起き、いつものように足のリハビリ体操を終えていると通路が何やら騒がしく、彼は車椅子を動かしてドアを開けて外に待機していたSPに話しかける。
「何事だ、騒がしい。」
「申し訳ございません、殿下。 殿下に会いたいとの軍人がございまして────」
「────何だと? 今日は誰ともアポを取っていない筈だが────」
『────でででで殿下ぁぁぁぁぁ!』
クロヴィスが少し前まで聞き慣れた声にギョッとしながら通路へと出ると案の定、ゲコゲコと大声を出したガマガエルオジサンのバトレーがSPたちに取り押さえられていた。
「ば、バトレー?! お前たち、その者を放せ!」
「で、ですが────!」
「────クロヴィス・ラ・ブリタニアが命じる! 即刻我が
SPたちが手を放すと歳なのか涙もろいのかバトレーは涙を浮かべていた。
追記となるがクロヴィスが暗殺未遂にあってバトレーが責任を問われるために更迭された後、クロヴィスの側近たちは全員まるっきり代わっていたので誰もバトレーの事を知らなかった。
「で、で、殿下ぁぁぁぁ……グスッ、お久しぶりでございます。」
ハンカチを出すこのバトレーを見てクロヴィスはどう接して良いのか困ったような顔をする。
「あ、ああ。 久しいな、バトレー。 今は兄上の元にいるのでは?」
「シュナイゼル殿下から『エリア11の政庁を手伝え』と申しつけられ、先ほど
かつてエリア11の総督だったクロヴィスの内政はお世辞にも良いとは言えなく、物資の横流しや横領が絶えなかった。
というのも、以前の彼はどれだけルルーシュとナナリーを間接的に死に追いやった原因である
「“ダリル”? もしかして、ダールトンの事かい?」
「う……今のは忘れてくださると……」
そんな彼の腹心であったバトレーも軍属なので軍部ならともかく、内政は上手く回せなかったがようやく、先日ユーフェミアの『特区日本宣言』によりキョウトとの繋がりや保身に自分の肥やしを蓄える獅子身中の虫が慌てだしたことで(苦々しくも)ライバルのダールトン将軍と一緒に一掃できたのだ。
「まだ彼をそう呼ぶんだね、バトレーは……ん? どうした?」
「い、いえ……クロヴィス殿下がその……以前より、やんわりしたというか……妹君に近付いたというか……」
クロヴィスとバトレー、そしてSPたちの頭上に『です!♪ です!♪』というデフォルメ化したライラのすぐ後ろで同じく『です!♪ です!♪』と同じ動作&デフォルメ化したクロヴィスが浮かび上がる。
「「「「……………………」」」」
笑いを内心にだけとどめるSPたちと、顔色を悪くさせながら車椅子の上にいるクロヴィスを見るバトレー。
「そうか。 私もライラに似てきた……か。 それはそれで嬉しいものだね。」
……
…
総督室の皇族用回線でコーネリアは北京のブリタニア大使館にいるシュナイゼルに連絡を取っていた。
「兄上、何故ユフィの後押しを?」
『後押し? 私は彼女に頼まれて書類の見直しをしただけだよ。 でも珍しいね、君がこのことに反対するのは。 このプランが決行されればエリア11のテロ組織は民衆の支持を失い瓦解し、治安も安定する。 長らく手こずっていたエリア11も平定し、ようやく衛星エリアに昇格できる目途もつく。』
「個人的には反対です。」
『だからこれが成功するように、君も渋々手を貸しているのだろう? ユフィの
「……」
シュナイゼルの言葉にコーネリアが口をつぐむ。
……
…
カコーン。
上記の出来事とほぼ同時刻かつ別の場所ではししおどしが涼しい音を出し、キョウトの桐原泰三、刑部辰紀、公方院秀信、宗像唐斎、吉野ヒロシの五人が議論を続けていた。
「公言された『特区日本』が真なら、悪い話ではない────」
「────だが所詮は与えられた日本。 果たして価値がありましょうか?」
「(ゼロ……いやルルーシュよ、どう動く?)」
「生きるだけならば意味はないが、それを軸に経済的に勢力を広げれば────」
「────だがそもそも『特区日本』をブリタニア本国は許すのだろうか?」
「(それにもし仮にも冴ちゃんが言うように昴がこの事態を予測し、秘密裏に『日本独立』を大義にしておらぬ組織を作り上げたというのなら────)」
「────桐原候。 先ほどから黙っているお主はどう思う?」
「ん……」
「そう言えば貴方は『サクラダイトの採掘に絡んで、特区での地位を約束されている』との噂を聞きましたが?」
「それは無い。 ワシにも式典参加の要請が送られてきただけだ。 (こ奴らめ、急に引け腰になりおって────)」
「────ゼロは……黒の騎士団はどう動く?」
「「「「………………」」」」
ここで老人たちとは違う、少女の声に桐原以外の者たちが黙り込む。
「返答はまだございません、皇殿。」
「そうですか……彼らも理解しているのでしょう、『特区日本』に参加するか否かで事態が……世界が大きく揺れることを。」
カコーン。
ししおどしが少女────
…………
………
……
…
『ユーフェミア様の行政特区日本の宣言以来、大多数のイレヴンが参加の為に急遽立ち上げられた査証発行庁では毎日約一万人を超え────』
「(────クソ! こんな、こんな筈では!)」
ルルーシュはリヴァルのバイクのサイドカーからビルに付いた大きなモニター画面とスピーカーから流れるニュースにイライラし、目を細める。
ヘルメットが無ければ彼の睨みにも似た形相に知人たちはびっくりしていただろう。
「なぁ、ルルーシュ? あの後シャーリーとはどうなんだよ?」
「……リヴァル、“どう”とは何のことだ?」
リヴァルがバイクを止めてヘルメットを取って買い出し用のメモに目を通す。
「だからさ、キスとかした?」
「……………………………………は?」
さっきまでのイライラが嘘のようにルルーシュは固まり、気の抜けた声を出すと道の少し先から怒鳴り声と、誰かが強打される音が聞こえてくる。
「何が行政特区だ! 援助だ! “署名をお願いします”だ?! もう平等になった気か、イレヴン風情が?!」
ルルーシュたちが視線をそっちに移すと名誉ブリタニア人と思われる少年を、見た目からして貴族と思われる男性が(護衛と思われるいかつい男を背後に)持っていた杖でひたすら殴っていた。
「あらら、こんなところでも貴族はお構いなしなんだな────」
「────そうか。 それがやはり副総督の博愛か?」
「ん?」
「お、おいルルーシュ?!」
ルルーシュは思わず前に出て貴族らしい男性を挑発していた。
「なんだねお前は?」
「さぞかしいい気分なんだろうな。 相手を見下すのは────」
「────学生は下がって帰っていろ────」
「────『お前こそ帰った方が良い』んじゃないのか?」
「……そうだな。 私はこれで失礼する。」
「はぁ?! お、おい待て!」
ルルーシュの
「へぇー、ルルーシュでもムカつくときが────って、大丈夫か?」
リヴァルが感心しながら未だに貴族の言葉を無視する護衛を見送り、ルルーシュを見ると彼は左目を押さえていた。
「あ、ああ……少しゴミが入ったようだ。」
「ルル~! お待たせ~!」
道の反対側では、制服姿のシャーリーが腕を振りながら走って来ていた。
「おっと、んじゃ俺はここまでにしとくよ。 帰りの時間になったら連絡をしてくれ。」
「分かった。 ありがとうリヴァル。」
「ごめんルル! 待たせちゃった?」
「いや、俺もついさっき来たばかりだから────」
「────あ、あの! ありがとうございます!」
「ルル……何かしたの?」
先ほどの貴族に殴られていた少年がルルーシュに礼を言い、ルルーシュは半笑いを浮かべる。
「ああ。 その子がちょっと貴族に絡まれていただけさ。 話してみたら、意外にも帰ってくれたよ。」
「フゥ~ン……なんかルルっぽい!」
「え? どう言う意味だ?」
「んふふ~、教えなーい!」
「???」
シャーリーの言葉にハテナマークをルルーシュは浮かべていた。
そして原作でのシャーリーが
「やぁ、僕だよ兄さん……うん、『左目が痛い』って思っていたよ。 やっぱりすごいねぇ~……え? また出たよ、兄さんの“そう思っただけだ”が!」
……
…
ピ♪
学園にいたスヴェンは携帯を切って、屋上からアッシュフォード学園の校内を見下ろす。
「(やはりルルーシュのギアスが暴走する寸前か……万が一の為に作っておいて良かった。)」
彼は手に持っていた小さな箱を見る。
それは宝石店などでよく見る箱に似ていたが、彼は別に誰かにプロポーズをする予定はなかった。
「(俺は……)」
彼は箱を持つ手に力を入れそうになり、それをポケットの中に戻してアッシュフォード学園ののどかな景色を焼き付けるかのように校内を見渡した後、暗号化機器を付けたままの携帯で番号を入れてから耳に付ける。
『……もしもし?』
「俺だ、毒島。 特区日本の事で話がある。 メンバーを全員、例の場所に集合させてくれ。」
………………
……………
…………
………
……
…
あれから日付と場所は富士山の付近へと変わりドーム型のスタジアム、行政特区日本開設記念式典会場にはびっしりと
式典会場壇上に、並べられた椅子に腰掛けていたのは政庁でユーフェミアの企画に賛成したブリタニア人やエリア11で代表的な役割を持った者たちにユーフェミア本人がいた。
「(ゼロ……)」
彼女は隣の空席に横目を移し、耳に付けたインカムからニュースを聞いていた。
『こちら 行政特区日本、開設記念式典会場です! 会場内は既にたくさんの“日本人”で埋め尽くされています! 入場できなかった大勢の日本人が会場の外にも集まりつつあり────あ、あれは?!』
まるで聞いていたニュースと連動していたかのようにスタジアムにさっきまでのざわめきがどよめきへと変わる。
ユーフェミアたちが上を見上げると奪取された筈のガウェインがゆっくりと近づいていた。
「ゼロ! 来てくれたのですね!」
同じく空を見上げていた桐原が杖を握っている指に力を入れる。
「(ゼロ、こんなところで負けを認めるのか? ……やはり、まだ公私混同するところは子供の頃のままだな。 だがどうするつもりだ? お前が皇子と知られれば、この行政特区は終わりを告げるだろう。)」
ガウェインがゆっくりと壇上に近づく。
「ようこそ、ゼロ! 行政特区日本へ!」
「まずはお招きいただき、ありがとうございますユーフェミア・リ・ブリタニア。 折り入って、貴方とお話したいことがあります。 二人っきりで。」
「私と、ですか?」
ユーフェミアが目を見開いていたダールトンを見る。
「ッ……ゼロ! まずはG1ベースに着陸し、検査をする!」
「良いだろう。」
ガウェインが指示通りにG1ベースのある場所に着陸するとゼロは乗っていた肩から、ユーフェミアが立ち上がったままダールトンを連れて裏へと歩きだす。
近くの警備の者がゼロに同意を得てから金属探知機で凶器の類がないかどうかを調べられてから、ユーフェミアとゼロが互いに接近する。
「ユーフェミア様、やはりその男と二人きりになるのは反対です。」
「大丈夫だと思いますスザクさん。 ではゼロ、こちらへ。」
…………
………
……
…
会場から離れた山の森の中、黒の騎士団でも精鋭である者たちが息を潜んでいた。
『なぁ? 俺達いつまでここにいりゃあ良いんだよ?』
『玉城君、君は無線封鎖の意味を知らないのかね? もう一度指導が必要か?』
『すみませんでしたぁぁぁぁ!』
藤堂の言葉にピリピリしていた黒の騎士団たちは苦笑いを浮かべ、緊張が少しほぐれた。
「(“真相を確かめる”とゼロは言っていたものの、四方に黒の騎士団を待機させるだけでなくディートハルトとラクシャータを近くに配置した……恐らく、ゼロはユーフェミアの暗殺、もしくは挑発を狙っているのだろう。)」
藤堂はカレンから渡された封蝋付きの手紙を入れた懐に手を置く。
「(スバル……)」
紅蓮の中のカレンは周りを見て、スバルが『待機命令』を出されていないことに少し不安を感じた。
否。 それとは別に、胸がざわついていた。
「(何だろう、これ? まるであの時みたいだ。 日本が降伏したあと、お兄ちゃんをボコボコにして片っ端から金目のものを盗んだブリタニアの奴らを昴が追って、次の日にそれらを持って帰ってきたときの……)」
カレンはポケットの中から先日スバルに渡された手紙を出して、日本語で書かれた文字を読む。
「(“もしもゼロが行政特区日本に行って、式典会場の様子がおかしくなったら開けろ”、か。)」
ガウェインがG1ベースに着陸するのを会場に入れずに遠目で見ていた日本人たちの中に、ギターケースを背負ったフルフェイスヘルメットとライダースーツの者がするりと人混みの中を移動していく。
普通なら不審者極まりないその姿を、誰も不思議に思わなかった。
…………
………
……
…
ユーフェミアとゼロはG1ベースのコンダクションフロアに入ると、ゼロは扉にロックをかけて次々と録音機材や機器をチェックしていく。
「用心深いのですね。」
「私は世間的にテロリストと呼ばれているからな。」
最後には電源を切って、非常用電源に切り替わった薄暗い照明が
「さて。」
ゼロはマントの内側から変な形の銃を取り出してそれをユーフェミアに向ける。
「これはセラミックと竹を使用した、“ニードルガン”という。 検知器では見つからない暗器だ。」
「でも……どうして?」
ユーフェミアの質問にゼロは仮面を手で掴んで、それを取る動作に入る。
「“どうして”? その答えは単純に、君がブリタニア皇族……あの男の子供だからだ。」
「それは……どういう関係があるというのです?」
ゼロの仮面のギミックが作動し、彼が仮面を取ろうとしたところで
「その質問の答えも簡単なものだ、ユーフェミア・リ・ブリタニア。
「え?!」
「ッ?! 貴様、いつの間にそこに?!」
ルルーシュたちが見たのはさっきまで誰もいなかった筈の壁に背中を預けて両手を上げていたスバルだった。
「“いつ”、と問われれば“
「貴様────!」
「────今から仮面を取る。 いいか?」
ゼロはニードルガンをスバルに向けたまま、ちらりとユーフェミアの方を見てからこくりと頷く。
「ッ?!」
フルフェイスヘルメットを取ると、『森乃モード』の顔にユーフェミアは青ざめる。
「それで? なぜここにいる、スバル?」
「待ってくれ。
「何? ……………………バ、バカな?!」
スバルはフルフェイスヘルメットを床に置いてゆっくりと襟の中に手を入れて『森乃モード』の仮面さえも外すと『スヴェン』の素顔が露わになり、ゼロは驚愕の声を出した。
「(うおおおおおおおおお!!! 胃薬たんまり服用してて良かったぁぁぁぁぁ! 足がすくみそうぅぅぅぅぅぉぉぉぉ!)」
尚スヴェンは内心叫んで冷静さ(の見た目)を保とうと必死だった。
今のスヴェンのようにドキドキ不安ですがこのまま時間がある時に携帯で次話を書き上げに行ってまいります! (;⌒_⌒)ノ