小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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今回もキリの良いところまでですが、少々長めの次話です!

割と携帯でも書けた自分にビックリです。 (;´∀`)

何気に久しぶりのスヴェン視点です! 
少なくとも前半は。 (;・ω・)

お読み頂きありがとうございます、楽しんでいただければ幸いです! m(_ _)m

そしてタイトルが長くて申し訳ございません。 ┏(;_ _ )┓

8/31/2022 00:43
少々表現の文章不足のコメントを受けましたので冒頭に少しだけ加えました。
ストーリーや流れに変わりはございません、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。


第71話 ささやかな願いと芽生えた希望と計画と火を吹く銃口のセット

 おおお~。 狼狽えている、狼狽えている。

 

 薄暗くなったG1ベースの中で俺は手に取る様に、ヨロヨロになりそうなゼロ(ルルーシュ)の持っていたニードルガンが震えたのを見て俺自身の足がすくむのを気力で何とか抑える。

 

『まさに対岸の火事』って奴かね?

 俺の方も『火事』が起きているが。

 

 主に胃の中で。 ←*注*焦りとテンパりその他諸々が一周回って無自覚に精神は一時的に冷静になっているだけです。

 

「ああああああ?! 貴方は、学園とあの時の?!」

 

 そして流石は凄い順応性だ、生ユーフェミア。

本家歌姫(ラ〇ス・ク〇イン)』じゃないけれど、その順応性はピンクヘアー由来なのか?

 

 取り敢えず『優男の仮面』で行くか。

 

「お久しぶり……とこの場合は言えないのでしょうか、ユーフェミア様?」

 

「う~ん、どうなのでしょう? でも貴方が言ったことからすると……やっぱりルルーシュ、なんですよね? 昔からかっこつけたがる癖もあったし。」

 

「うッ?!」

 

 ユーフェミアが自信なさげに問いを投げるとゼロは明らかにギクリと動揺し、よろけながら後ろへと倒れそうになるのを何とか踏ん張る。

 

 やっぱり原作同様、どこかで薄々感じていたのかユーフェミア。

『いつ』? 『どこから』? 『なんで』?

 原作知識だから俺は知っていたけれど……そんな俺でも真っ青な直感的な洞察力をお持ちですよ、生ユーフェミアは。

 

 そしてゼロの方は、『あと一押し』ってところか?

 

「もういい、ルルーシュ。 俺も仮面を外した。 お互い……いや、お前は仮面を外さない方が良いかもしれない。」

 

「そそそそそその“ルルー()()”が誰かは存じ上げませぬが何故に私は仮面を取らない方が良いと申すのだ?」

 

 語彙力が滅茶苦茶な上に噛んだ。

 しかも“ルルーチュ”ってなんやねん?

 〇ッキーマウスかお前は、ハハ! ←最後は〇ッキーマウス風笑い

 

「お前のギアスは暴走していてオンオフが出来なくなっている……と思う。 信じられないのなら鏡か何かで左目を見てみろ、常時浮き上がっている筈だ。」

 

「何?! 本当か?! い、いやそれよりもなぜ貴様がギアス↑ををヲヲ↑↑ををヲヲヲ?!」

 

 うわ、予想以上にルルーシュが壊れていく。

 最後の方、完全に一年前の男女逆装パーティの時に本気で出したルル子(裏声)だし。

 

「ギアス……とは何でしょうかスヴェンさん?」

 

「一言で言えば『超能力』ですねユーフェミア様。 それと……不敬を承知の上で尋ねますが、皇位継承権を返上されましたよね?」

 

「えええぇぇぇ?! な、な、何故それを知って?! 本国からの発表もまだなのに────?!」

 「────↑↑↑フォッハァァァァ?!」

 

 どうやらゼロは仮面のスライドパネルを作動して本当に自分のギアスが発揮していることを確認したと同時に俺がユーフェミアに答えながら原作と同様の状態なのか確認をすると、ゼロがさらに変な声を出してしまう。

 

「ルルーシュ、今からポケットの中から箱を出す。 中にはコンタクトレンズが入っていて、お前のギアスをある程度は緩和できるはずだ。」

 

 これはコードギアスR2で、CCがギアスの暴走したまま日常生活を送れるように作ったもの……のアイデアを元に、俺がマオ(女)と一緒に共同開発したものだ。

 

 俺の知り合いの中で、ルルーシュのギアスに本質が一番近いのは彼女だからな。

 というか、悪ふざけで作った『綾〇レイ』の制服コスを気に入ったのは意外だった。

 

「あ、ああ? あり、がとう? って、吾輩は()()ーシュではない!

 

 もういい加減諦めろよ、ルルーシュ。

 “リリーシュ”以前に“吾輩”ってなんだよ?

 

 そう俺が思っていると、ユーフェミアがズカズカと後ずさりをするゼロに近づく。

 

 「ルルーシュ?! 他人が助けようとしているのに何ですかその態度は?!」

 

 そう注意するユーフェミアの前にゼロがタジタジする。

 あ。 これって『母ちゃんに叱られる子供図』そのまんまだ。

 

「え? いや、だから、その、えっと────」

「────てい────♪」

 「────↓ほぁぁぁぁはぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 ユーフェミアが急にゼロの仮面を手に取って外すと大粒の汗を掻いたルルーシュの素顔が露わになる。

 

「ああ……やっぱり! ルルーシュ!

 

「むぎゅ?! まままままてユフィ! ここここコンタクトレンズをつけさせいやその前にスバヴェンの話────!」

「────ふぇぇぇぇぇぇぇん!」

 

 “スバヴェン”って……呂律も上手く回ってないじゃん。

 

「……う、うむ。 ものは考えようだな。 こう君が近ければ俺のギアスにかかることもないし、スヴェンにはすでに使ったからな。 条件は全てクリアしている。」

 

 ルルーシュの顔を見たユーフェミアが涙目になりながら彼を深く抱きしめると彼が変な声を出して気まずい顔で天井を見上げながら頬を指で掻く。

 

 やっぱり身内には甘々だな、ルルーシュは。

 

 これなら、俺の考えていた提案を受けてくれるかもしれない。

 

 俺はユーフェミアの宣言が原作のようにされたことで迷って、どうすればいいのか悩んだ。

 別に『介入する』か『しないか』ではなく、元からユーフェミアの『虐殺です!』は止めるつもりだった。

 

 ユーフェミアの命を救えるが、原作からはさらにかけ離れて俺の持っている知識もとうとう役に立たなくなる。

 

 ルルーシュが原作同様に皇帝シャルルの計画を止められるかも怪しくなるし、最悪皇帝シャルルが計画を強行する可能性も出る。

 

 俺が生き残ることを考えれば、原作の流れから身を遠く置いて保身に走ればいいだろう。

 

 だが、考えると俺もいろいろとやらかしたから原作通りの流れになるのかわからない。

 それ以前に、俺はルルーシュたちには幸せになってほしい。

 

 それに形だけとはいえ、『お願い』をされたからな。

 

 だから俺はルルーシュにすべてを話し、行政特区日本に形だけでも黒の騎士団を参加させて形式上の『解体』をさせつつ本体と、俺の作った黒の騎士団や日本独立から完全に独立しているアマルガムも使って手を貸そう。

 

 全て、そして俺が今まで調べられた範囲と原作知識でマリアンヌに関しての真実を打ち明ければルルーシュは協力してくれると思いたい。

 

 少なくとも俺やシャーリーの為でなくとも、ナナリーの為に。

 

 さらに上手くやれば中華連邦との繋がりで、前もって星刻(シンクー)のクーデターを成功させて早く味方につければたとえ皇帝シャルルが計画……『ラグナレクの接続』を強行しようとしても何とかなる……と思いたい。

 

『ラグナレクの接続』。

 それは『全人類の思考を強制的に統一化させる』ことだ。

 つまり『誰もが他人の奥底まで観られることになって嘘をつけなくなる』、『嘘が無くなった世界』の誕生だ。

 

 ある意味、エヴァの『個体である事を捨てて一つになった人類(人類補完計画)』計画に似ている。

 

 さらにぶっちゃけると皆がマ()のようになって、周りの善意と悪意の本性を知ることとなる。

 

 え? 『なんで皇帝のシャルルがそんなおぞましいことをするのか』って?

 

 実はというとシャルル、とっくの昔に『嘘偽りばかりの世界』に絶望しているのだ。

 彼自身、皇族のいざこざや汚い大人の世界をさんざんと見せられた上、目の前で実の母親が陰謀で馬車の下敷きになって、彼女の首から上だけがLCL化したような『パシャ状態』を子供の頃に見たし。

 

 トラウマ確定イベント満載の人生を皇帝シャルルは味わったワケだ。

 

 だから実質ブリタニア帝国をシャルルは宰相のシュナイゼルに任せっきりでほとんど世捨て人状態気味に政治とかに関わっていないし、『人はいつの日か革新して解り合える日が来る』という夢想を現実に変えようと全力を注いでいるから滅多なことでは表舞台には出てこなかった。

 

 とまぁ、現実逃避しているうちにコンタクトレンズを付けて自分のギアスが発動していないことを確認した後、簡単な説明でユーフェミアに自分の『絶対遵守』を説明し終わったルルーシュとユーフェミアが俺を見る。

 

「……そ、その……ユフィはともかく、スヴェンはいつ気付いた? それよりも、なぜおまえがギアスを知っている? まさかとは思うが────」

「────俺が違和感を持ったのは、シンジュクゲットーで『スバル』としてお前の声を無線機越しに聞いた時からだな。」

 

「カレンと同じか。」

 

「そうだな。 次に河口湖で吐きそうになった俺に『おい、大丈夫か』と慌てて声をかけた時から徐々に確信に変わっていった。 テロリストのリーダー格がただの学生である俺に気遣う理由もないし、何より口調がルルーシュだったからな。 それからはゼロの活動でルルーシュがナナリーのそばにいなかったことがこうも続けば、自ずとたどり着く。」

 

「そ、そんなに早くから疑われてその答えにたどり着くとは……しかし、流石といえば流石でブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ……

 

『原作知識です!』とも言えないので、それっぽいことを言うとルルーシュが納得してしまうような声をしみじみと出してしまう。

 

 いや、だから原作知識だよ?

 ちょっとは疑うような言葉や素振りをしろよ、ルルーシュ?

 頭脳面で言えば世界で最高率の一人だろ?

 

「それよりスバル……いや、スヴェンか? お前はなぜギアスのことを?」

 

「どっちでもいい。 それになぜ俺がギアスのことを知っているかというと……それに類する能力を持っているからだ。」

 

「そうか……それで? このことを俺やユフィに打ち明けてどうしたいのだ? 何かそれなりの理由があるのだろう?」

 

「ルルーシュ、何もそんな言い方────」

「────ユフィは黙っていろ。 どうなんだ、()()()?」

 

 ルルーシュがユーフェミアをかばうように前に出てニードルガンを俺に向ける。

 

 うううぅぅぅ、お腹がキリキリするよぉぉぉ~。

 不安でいっぱいだよぉぉぉぉ~。

 

 深呼吸。 深呼吸だ。

 ここまで来たらもう引き返せない。

 

「ルルーシュ、体面的にでもこの特区日本に参加してくれ。 そして、そのあとのことで話を聞いて、協力して欲しいことがある。」

 

「“体面的”……つまりは末端のメンバーを参加させて“黒の騎士団は解体した”という虚無の事実を作るのだな?」

 

 流石ルルーシュ、頭の回転のお陰で1から100まで類推するのが早い。

 

「ああ。」

 

「聞いてほしい話と、協力内容は何だ?」

 

「両方とも、お互いに関係しているからな……」

 

 さぁ俺は言うぞぉぉぉぉ!

 言ってやるぅぅぅ!

 フヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!

 コール、コール! コールコールコール────じゃなかった。

 ええい、ままよ!

 

 緊張でお腹もキリキリしている上に、今度は喉が苦しくなり、口の中もカラカラになっていく。

 

「………………『マリアンヌ様の死の真相』。」

 

「「ッ?!」」

 

 ルルーシュ、そしてユーフェミアまでもが息を素早く飲み込み、二人がごくりと喉を鳴らす。

 

 当然だろう。 マリアンヌの死は二人にとって大きな意味合いを持つ。

 彼女の息子であるルルーシュはもちろんのこと、彼女を慕っていたコーネリアと仲良くしていたユーフェミアもだ。

 

「俺は知っている。 俺なりに調べたことで多少の仮説も入るがこれで間違いないと思えるほど断言できる。 信じるか信じないかはどっちでもいいし、調べるために協力も必要だ。 もし間違っていたら、俺をゼロに仕立てて公開処刑でも、濡れ衣を着せてもいい。」

 

「そこまで……まさか、本当に?」

 

「貴方が皇位継承権を返上したように、俺も黒の騎士団に発表してもいい。」

 

 ユーフェミアは隣の腕を組むルルーシュを見る。

 

「……………………少し考えさせてくれ、ユフィ。」

 

 恐らくは数々のシミュレーションを行っているのだろう。

『乗る』か『乗らないか』のメリットデメリット、そして元々ここにゼロとして来た理由も含めて、ユーフェミアが皇位継承権を返上したことも。

 

 原作でのルルーシュはギアスを使い、ユーフェミアに自分を撃たせてエリア11にいる日本人全員にブリタニアへの反抗する殉教者&旗印&大義名分を与えようとしていた筈だ。

 

 ここまで来てふと思ってしまう。

 

『もし、ルルーシュがゼロに見立てた俺を撃ってユーフェミアにギアスを使ったら?』、と。

 

 ブワリと、いやな汗が体中から噴き出す。

 

 俺のバカ。

 なんでこの可能性を、今になって考え付いた?

 

「……………………わかった。 ユフィの特区日本に参加してから話を聞こう、()()()()。」

 

 ホ?

 

「おい何だ、その皿のように見開いた目は? ここまで晒しだしたお前(スヴェン)の頼みを無下にすると思ったのか?」

 

「いや、少し意外だっただけだ。」

 

それに、お前には大きな借りが幾つもあるんだこの唐変木が。

 

 えええっと?

 どういうことだってばよ?

 誰か教えてプリーズヘルプミー。

 もしかして────

 

 ────カッカッカッカッカッカ。

 

 固まっている俺の耳に、上記のような音が届く。

 

 まぁ、電源を消してもG1ベースは精密機械満載の動く要塞だ。

 非常用電源中でも動く機械はあるだろうさ。

 

 ただし、俺やルルーシュたちがいるコンダクションフロアの()()()()()()()()聞こえてきたそれはまるで軍用ブーツで速足の忍び足で、鉄製の床を優しく踏んでいるような音だったことを除けば。

 

「それで? 母さ────母上の真相について────」

「────シッ。」

 

 ルルーシュの言葉を俺は遮りながら『静かに』という合図をしてから『森乃モード』の仮面とフルフェイスヘルメットをかぶり直して扉のほうを指さす。

 

 カチカチカチ、ビィー。

 

「ッ! スヴェン、これを。 ユフィ、俺たちは隠れよう。」

 

「助かる。」

 

 今度はハッキリとルルーシュたちにも聞こえるカチャカチャした音と電子音にルルーシュはゼロの仮面をかぶり直してニードルガンを俺に手渡し、ユーフェミアを連れてコンダクションフロアにおいてある司令席の後ろに身を隠す。

 

 俺はニードルガンをしっかりと握りながら音のするドアの付近に立つと、急に扉が開いて全身に見たこともない防護服をした人影が突入してすぐに隠れていた筈の俺に銃口を向け────あ。

 

 やばい。

 

 散弾銃。

 

 トリガー。

 

 眼前。

 

 引かれた。

 

 

 

 () () () () () ()

 

 

 

 ド────

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 アッシュフォード学園のクラブハウスの一室で、ナナリーとライブラは咲世子がどこからか借りてきた旧式のラジオで放送を聞いていた。

 

「あ、チャンネルを合わせられましたよお嬢様。」

 

「ありがとうございます、咲世子さん。」

 

「作り置きのスヴェン先輩の特製茶菓子も持ってきたでーす!」

 

「ありがとう、ライブラちゃん。」

 

『行政特区日本の会場にゼロが現れました! そしてユーフェミア皇女殿下と話があると宣言して30分が経過しました! 未だに会談中の様子ですが、この交渉に成功すればブリタニアの植民地体制に風穴を開け、新たな歴史の幕上げとなりえる瞬間に我々は立ち会っているのです!』

 

「おお~。 ドキドキするですね~!」

 

「(ユフィお姉様……)」

 

 ナナリーが手に持っていたのは、半分に割れたお皿のようなものだった。

 

 だが半分に割られても尚、それが食事用ではなく明らかに高価なものだとわかる装飾と途切れているが掘られていた文字ははっきりと以下のことが書かれていた:

 

 “98th Emperor, Charles di Britannia”。

『第98代皇帝、シャルル・ジ・ブリタニア』と書かれていた。

 

 そのお皿の話はとある幼い日に、お忍びでナナリーとルルーシュがユーフェミアの部屋にお泊りした夜の事だった。

 

 勿論、“お忍び”といっても実際はマリアンヌが付いて行こうとしたSPたちに『目をつむっていてね♡』とニッコリした(プレッシャー)付きの笑顔でお願いされていたのでバレバレだったのだが。

 

 あの頃のナナリーは今のように体が不自由な様子はなく、かなりの腕白者お転婆()()()()()()()()()()()で年相応な我儘な面がまだまだあった。

 

 他人(特にユーフェミア)の部屋にお泊りすることが初めてだったナナリーは部屋の隅々を夜遅くまで走り回ってはルルーシュを困らせ、ユーフェミアも(コーちゃん以外で)初めてのお泊り会で興奮していたのか、ベッドの上で(皇族である以前に)淑女としてはしたなくゴロゴロしながらナナリーたちの様子を見て面白がっていた。

 

 既にこの時点でそろえる以外に切っていないユーフェミアの髪は長く、ケアをする侍女などは苦労していた。

 

 ある日、彼女が美容師の係員に『コーちゃんがキレイって言ったから伸ばす~♪』は大いに()()、関係ないだろう。

 

 これを聞いて顔を両手で覆いながら地面の上で足をバタつかせて悶えていたコーネリアから『ン゛ンンン゛ンンン゛ン゛ン゛ン゛ン゛!!!!』と意味不明な音が出たことで『あ、やっぱり人間っぽい部分はあるんだ』と思った周りの者たちとも関係は無いだろう。

 

 取り敢えずお泊り会の夜に話を戻すと、子供の頃から体力の少ないルルーシュがナナリーに追いつけるわけもなく、息を切らした彼がやっと追いつけたと思えばナナリーがユーフェミアの部屋に飾ってあった綺麗なお皿に目を釘付けにされたからである。

 

 そのお皿とは、ナナリーたちの母マリアンヌの騎士叙任記念の物でコーネリアが愛しいユフィの甘々なおねだりに骨抜きにされて折れて譲ったモノだった。

 

 余談であるが、本来ならマリアンヌがこれを誰に持たせるか決めるはずなのだが彼女は『皿なんか欲しけりゃ誰にでもくれてやるわよ。 それより張り合いのある相手が欲しいわ! どうかしらコーネリアかノネット?! 相手するならそれ貴方たちにあげちゃうわよ!』と興奮しながら言ってその日のコーネリアとノネットは珍しくボロボロに帰って来たとか。

 

 なお勿論、模擬戦の結果はマリアンヌの圧勝である。

 

 仕来りの形式上、『叙任した本人やその家族は叙任に関するものを持たない』のが常識なのだがナナリーがどうしても自分の母が描かれたお皿が欲しくなり、ユーフェミアにおねだりして珍しく彼女を困らせていた。

 

 これを今のルルーシュならば、やんわりとナナリーに説明して理解してもらっていたかもしれないが彼も幼く短気で、お皿の取り合いと発展してしまった。

 

『これはユフィのモノだよナナリー! は~な~し~な~さ~い~!』

『ず~る~い~! おにいさまはいつもユフィおねえさまにだけやさしい!』

『そそそそそそんなことはない! だからお皿を放しなさい!』

『じゃあいますぐこたえを聞かせて! わたしとユフィおねえさま、どっちをおよめさんにするの?!』

『そそそそそれとこれは話がちがう!』

『ちがわないもん────!』

 

 ツルン。

 バキッ。

 

『『────あ。』』

 

 そして装飾用でコーティングされていたことが災いし、二人が全力で引っ張り合って手が滑った結果、お皿は見事真っ二つに割れてしまった。

 

 流石のナナリーも、自分がしたことに泣きながらユーフェミアにただひたすら謝った。

 二人はユーフェミアが怒ったり、泣いたり、荒れるのを覚悟したが────

 

『────よかったぁ~♪』

『はぁ?! “よかった”?! 割れてしまってはもう価値はないんだぞ、ユフィ?!』

『そんなことないわルルーシュ。 これで私とナナちゃんは半分ずつ持てるもの! それに壊れているから“叙任品”には当てはまらないし、仕来りを破ったことにならない筈だわ!』

 

 そうしてユーフェミアの突拍子もない斜め上の発想から来た解決策を目にしたルルーシュは感心しつつ、彼女にありがたく思った。

 

 

 

 ナナリーは過去のエピソードを思い出しながら持っていたお皿の感触を堪能していた。

 

「(あれが、私とお兄様が『優しい世界の中の子供』として最後に過ごした時間だった……やっぱり、昔も今も、ユフィお姉様は凄いです。)」

 

『ん? 何────会場がざわついていますね? もしかして会談が────ったのでは?!』

 

「もう! このポンコツラジオ、聞こえないですー!」

 

「(ユフィお姉様……貴方は、あの頃の思いをまだ信じているのですね? 『優しい世界は可能なはずだ』と、自ら創り上げようとしているのですね?)」

 

 ライブラがバシバシとラジオを叩いてナナリーは聞き耳を立てるが、ラジオからのノイズがさらに酷くなっていく一方だった。

 

『えっと? なにやら────たちが────ぎ出し────あ────兵士たちが銃を────?!』

 

「え? い、今のは? 会場では、どうしたのでしょうか?」

 

「えぇぇえぇぇぇぇ? このタイミングで途切れますですー?! 何か『嫌な予感』の感じがプンプンするです!」

 

 ライブラがプンプンと怒る横で、ナナリーも原因が分からない不安に駆られて思わず残ったお皿をギュッと抱きしめる。

 

「(ユフィお姉様……お兄様……スヴェン、さん……)」

 

 静かに祈る様に、三人の名を彼女は胸の中で繰り返し、ノイズだけになったラジオを咲世子が慌てていじる。

 

『きゃあ────ああ?!』

『わぁぁぁぁ────?!』

『だ、誰か────!』

 

 何とかラジオの調整を終えるが今度聞こえてくるのはノイズに混じった人の悲鳴だった。

 

「人の叫ぶ声────?」

 

 ────バキッ! ガラン!

 

「ぁ……」

 

 ナナリーが続きを聞こうとラジオのボリュームを上げようとして手を出すと、お皿が急にひび割れて床へと落ちていく。

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