小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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未だに暑い日が続いていますが共に頑張りましょう!

尚勢いのまま書きましたので少々カオスかも知れません。
ブラックリベリオン自体がカオスですけれど。 (汗

楽しんでいただければ幸いです!


第74話 ブラックリベリオン2

 カレンは会場の周りを包囲しているサザーランドが発砲し始めた時点で紅蓮を突撃させ、真っ先にG1ベースへと移動する際に出来るだけの敵機を再装填の長い輻射波動ではなく、すぐに使えてかつ無駄な損害なくピンポイントで敵を撃破できるパイルバンカーを駆使してゼロと合流した。

 

「どおりゃぁぁぁぁぁ!」

 

 そのまま彼女は会場内へと突入し、対人機銃を逃げ惑う日本人たちに撃つグロースターを防御のために腕で持ち上げた腕とランスごと高出力の輻射波動で粉砕する。

 

「ブリタニア……ブリタニアッッ!!! よくも!」

 

『日本人か、貴様?!』

『日本人は抹殺対象だ!』

 

 新たに自分の紅蓮に気付いたサザーランド二機にパイルバンカーそして輻射波動を同時に使って同時に撃破する。

 

 『なんで“日本人”ってだけで殺さなきゃいけないのよ?!』

 

 会場の酷い惨状と理不尽な理由にカレンは歯を食いしばり、緩み始めた涙腺を引き締めながら昴が先日渡してきた封蝋付きの手紙の内容を思い出す。

 

カレン、“会場に異常があった”という事は恐らくブリタニア軍が何かしらの動きをし始めたのだろう。 直ぐに突撃し、ブリタニアの皇室専用陸戦艇(G1ベース)へ直行してゼロがいればすぐに指示に従って出来るだけ騒動を早く終わらせる為に援護。 追伸、もし藤堂さんが止めようとするのなら(スバル)の名前を出して構わない。

 

「(まさかこれが、昴の止めたかった事態なの?!)」

 

 カレンが見た悲惨な光景に、理不尽さから来る怒りと悲しみがマグマのように心の奥を沸かすのに十分すぎた。

 

「た、助け────!」

「(────やばい?! あの子が!)」 

 

 だが仮にも数々の修羅場を潜った猛者であることに変わりはなく、今度はおぼつかない足取りで自分の方向に逃げようとする少女に照準を合わせるサザーランドを見て急速に対処を脳内で巡らせる。

 

「(輻射波動────は駄目。 グレネードランチャーも同様、子供が巻き込まれる!

 呂号乙型特斬刀────はリーチが短すぎる。

 飛燕爪牙────は可能性はあるけれどスラッシュハーケンとは違うから絶対的じゃない。

 なら────!)」

 

 カレンは左の操縦桿でパイルバンカーの狙いを済ませてボタンを連続で二回押すとパイルバンカーの釘部分がそのまま射出してサザーランドの右腕を貫く。

 

「可動部に────?!」

 

 紅蓮の飛燕爪牙が今度はサザーランドの左肩に引っ付き、少女を迂回するように動いていた紅蓮に引っ張られて倒れたところを呂号乙型特斬刀でサザーランドにとどめを刺す。

 

 『────来い、ブリタニア! “日本人”ってだけで殺したいのなら、私が相手になってやる! 私は日本人! 日本人なんだ! 日本人はここにいるぞ、ブリタニアァァァァ!』

 

 出来るだけ敵のナイトメアを目立つ紅いカラーリングをした自分に注意を引かせようと、カレンはオープンチャンネルと外部スピーカーを使う。

 

 そんな『(あか)』を、血の『(あか)』の中から救われた少女は呆然として奮闘する紅蓮に魅入られていた。

 

『もし、紅蓮が先行していなければ。』

『もし、カレンが原作より取り乱していたら。』

『もし、“パイルバンカー”という非現実的な(ロマン)武器を搭載していなかったら。』

 

 それぞれの『もし(if)』がその日に重ねりあった結果、原作では大勢亡くなるはずの者たちは命を取り留めた。

 

 上記でカレンに救われた少女────『朱城ベニオ』もその内の一人である。

 

 

 ……

 …

 

 

 藤堂の操る月下・指揮官機が峰部分にブースター噴射機を付けた制動刃吶喊衝角刀(せいどうやいばとっかんしょうかくとう)を使って『行政特区日本』を四方から突貫する黒の騎士団でも(先導したカレンを除けば)一番前に出ていた。

 

『各機、小隊ずつに散開! 出来るだけブリタニアを我々、黒の騎士団に注目させて各個撃破! 出来るだけ多くの日本人を救うのだ! 紅蓮に続け!』

 

『『『『『了解!』』』』』

 

 藤堂の指示に従って黒の騎士団が浅くかつ広い布陣へと変わり、藤堂本人の前に出ていたグロースターが振り返ざまにランスを構えようとする。

 

『日本人を名乗るイレヴンは抹殺対象だ!』

 

「(やはりそれが本音か────)────ブリタニアァァァァァァ!」

 

 藤堂の制動刃吶喊衝角刀が突撃する機体の勢い、ブースターから生じる遠心力、そして廻転刃刀より質のあるそれはグロースターを肩から腰まで両断させるには十分だった。

 

『流石藤堂さん!』

『半端ねぇ……』

 

『作戦中だ、私語は慎め! 一番隊は私に続け!』

 

 彼にしてはかなり荒い剣術だったが彼も怒りを覚えていた。

 理不尽なことはブリタニアに取って日常茶飯事だが、噂では他の皇族と違って真にエリア11のブリタニア人と原住民(日本人)双方の為に精を出していたユーフェミアには彼でさえも少なからず期待していた。

 

 日本が破れて7年、藤堂は『奇跡』の重荷に苦しんでいた。

 一見すると彼の二つ名は名誉だが、『厳島の奇跡』では瀕死に陥った仲間数人を利用して彼らの介護に来たブリタニア軍の後方支援部隊と海上部隊を一気に彼らブリタニア自身が持ち込んだ装備のサクラダイトに誘爆させ、大打撃を与える。

 その混乱に乗じて電撃作戦で攻め込んできたブリタニアを持ちうる火力と機動力で一掃するというモノがかなり省略化した内容だった。

 

 僅か数人の犠牲で初めて日本はブリタニアに勝利を収めていたが、この作戦によって如何にたとえ少量でもサクラダイトが『自爆玉で誘爆させる』として有用か日本人に日本政府が知らしめてしまった。

 

 結果、猛攻を続けるブリタニアに対して民間人でさえもサクラダイトを使った自爆攻撃をするようになった。

 しかも彼ら彼女らが口にするのは『藤堂に続け』、『神風を呼び起こせ』、『ブリタニアに思い知らせろ』など。

 

 年代は多種多様で老婆もいれば十代の学生もいて、決して小さくはない『戦果』を戦時と戦後でも挙げていた。

 

 ブリタニア正規軍の部隊や拠点、そして駐屯地や駐屯兵を丸ごと誘爆させるなどが絶えなかった。

 

 喜ぶ人はいたかもしれないが、藤堂には苦痛でしかなかった。

 

 だが彼という『旗』があったからこそ『希望』を人々が持って生き続けられたたことも、その『希望』が更に人を死なせるとしても同時に生きる『希望』でもあったことにも。

 

 この二律背反がある意味、藤堂の言動を今まで縛っていた。

 

 だがもし、『行政特区日本という別の希望が出ればあるいは……』とも考えていた矢先にブリタニアが一方的にほぼ民間人で結成されていた日本人を虐殺し始めたことに、彼は久しぶりに何とも言えない怒りと失望を感じていた。

 

 

 ……

 …

 

 

「ウワッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」

 

 黒の騎士団の後方部隊用に変えたキャンピングカー型アジト内で情報部のディートハルトは愉悦に浸りながら笑っていた。

 

「思っていた以上の、ドデカいネタだねぇ~?」

 

 ラクシャータはディートハルトと数名の者たちがアジト内部に設置してある機材で、会場内の報道設備の主導権をジャックし、惨状をあらゆるメディアやアングラサイトなどに流していた。

 

「素晴らしい! どうやったかは知らんが、やはり(ゼロ)は最高の素材だ! (彼はこの世界に波乱を導く存在! カオス! 私が追い求めていた存在そのものの誕生に私はいま立ち会っている!)」

 

 

 ……

 …

 

 スザクは気が付くと、銃身から煙を放つ銃を持ちながら会場の中で立っていた。

 

「……僕は……俺は……何を────う?!」

 

 そして彼が自分のいた通路を振り返ると()()()()絶命した無数のブリタニア兵士の遺体が横たわっていた。

 

「まさか……僕が、これを? (だ、だが……僕は何も覚えて────)」

 『────生きろ!』

 

 一瞬だけスザクの脳内を、上記の言葉がおぼろげに浮かんでくるが視界はまるでノイズが混じった上に色も赤く塗りつぶされていたようなものだった。

 

 『枢木少佐! スザク君! お願い、応答して!』

 

 スザクは胸ポケットに隠し持っていたインカムから聞こえてくるセシルの声に気付き、それを耳につける。

 

「セシルさん!」

 

『スザク君! 良かった────』

「────会場は……ユーフェミア様は今どこにいますか?!」

 

『わからないの! 少し前からブリタニア軍は“皇族命令だ”の一点張りでここに集まったイレヴンたちを襲っていて、聞く耳を持たないの! さっきから近くにいるダールトン将軍にも繋がらないし、長距離通信が上手く出来ない状態なの!』

 

「ランスロットは出撃できますか?!」

 

『今アヴァロンに貴方が安全に乗れる空域に移動するからそこまで来て!』

 

「了解です、セシルさん! (さっきのことはとりあえず後回しだ! まずは、ユフィの安全を!)」

 

 スザクはそう思いながら、いまだに銃声の続く会場を走る。

 

 

 ……

 …

 

 

 上空から攻撃できるガウェインは次々と指先を射出するスラッシュハーケンを使ってブリタニア軍を駆逐していく。

 

 本来、ナイトメアは一人乗りなのだがガウェインは複座型だった。

 

 これはガウェインが試作機であると同時に特殊なシステムを搭載していることから一人が機体の操縦、もう一人がドルイド(特殊な)システムの制御と武装管理をするものだが同時に機体を操縦することは可能である。

 

 ゆえにルルーシュがスラッシュハーケン()を使う間、CCがハドロン砲()移動()の操縦をしていた。

 

「(クソが! 誰だか知らんが、この俺の邪魔をしやがって!)」

 

 この役割分担は自然とルルーシュの怒りを表現するかのような、ガウェインは圧倒的な速度で周りを単騎で制圧していた。

 

「おい! あれを!」

 

 CCの声と見ている方向を見るとアヴァロンが会場の近くまで来ていた。

 

「やはり待機させていたか! (相手はやはりシュナイゼルか?!)」

 

「どうする? 撃ち落とすか?」

 

 CCの問いに、ルルーシュは思考を加速させる。

 

「(そうしたいのは山々だ。 だが恐らくはランスロットもあるだろう。 ここで鹵獲できるのならこれ以上ないのだが黒の騎士団は陣を広げすぎた。 多大な犠牲が出るだろう。 ならば今はこの事態を収束させつつユフィたちとトウキョウ租界で────)────んな?! ば、バカな?!」

 

 ルルーシュがふと見て、思わずガウェインのカメラズームを使って画像を拡大化する。

 画面の中には、()()()()()()()()()()()()だった。

 

「(ユフィ……だと?)」

 

 しかもあろうことか、少女は銃を手に持っていて日本人を撃って────

 

 「────やめろぉぉぉぉぉ!」

 

 ルルーシュは算段も何もなく、ただただ私情に身を任せてガウェインの操縦権を乗っ取ってガウェインを急降下させて少女の近くに荒い着陸をする。

 

「クッ?! ルルーシュ?! 待て────!」

「────やめろ! やめるんだユーフェミア!」

 

 ルルーシュがゼロとしてガウェインの中から飛び降りながらそう叫ぶと()()()()()()がガウェインの着陸した際に巻き上げた土煙から覆っていた顔で彼を見る。

 

「あら? 来てくれたのですね、ゼロ!」

 

 ここでゼロはルルーシュとして小さな違和感を抱く。

 

 見た目も声も、全てがユーフェミア。

 

「(だが()()()()()。)」

 

 そうゼロは感じた瞬間に、彼はスヴェンに手渡されて懐にしまい込んだ拳銃に手を伸ばす。

 

「ユーフェミア。 私が誰だかお判りでしょうか?」

 

「もちろんです! ゼロですよね?!」

 

 拳銃を握る手にゼロは思わず力を入れた。

 

「あ、不躾で申し訳ないのですが仮面を取ってもらえませんでしょうか? 日本人であれば虐殺しなければいけないのです!」

 

「(やはり、違う!)」

 

 ここでユーフェミア────否。 ()()()()()()()()()()()の声、姿、動作、仕草、その一つ一つの全てがルルーシュの癇に障った。

 

 彼は腹が煮えくり返るような感情が一気に彼を支配する一方で、冷静な一部が自分に語り掛けた。

 

「(やはり、違う。 こいつはユーフェミアではない。 今思うと、彼女はスヴェンと彼の仲間に保護されている筈だ。 それに本物ならば、ユフィはゼロがルルーシュだと言うことも、日本人ではないことも知っている……ならば目の前にいる奴は別人だ。 それも巧妙な完成度の『ユーフェミア』。) CC。 ギアスの中に、『他人に成り済ます』類のものは存在するのか?」

 

 ゼロは仮面についた通信機能で背後のガウェインにいるCCに上記の質問を投げかける。

 

『……先に言っておくが、発現する能力は人によって違う。 お前の聞いているようなもの、それとお前と似た能力が他にあっても不思議じゃない。 ついでに言うと、私はそのような奴に心当たりはいない。』

 

「そうか。 (つくづく強力であると同時に面倒な能力だな、ギアスは)────」

 

 ────カチャ。

 

 ゼロはスヴェンから譲られた拳銃、『コルトガバメント』を明らかにびっくりする()()()()()()()()()()に向ける。

 

「無礼な! 私はユーフェミア・リ・ブリタニア────」

 「────貴様ごときがその口で! 彼女の名を語るな、下郎が! 誰だ貴様は?! 目的は何だ?!」

 

 ゼロはいまだに自分を『ユーフェミア』と主張する少女から情報を取り引き出そうとする。

 

「ですから私は第三皇女、ユーフェミア・リ・ブリタニアです! そして何があろうと日本人は抹殺しなければいけないのです!」

 

「……そうか。 ならば、もういい。 (このやり取りから、こいつは俺のようなギアスを持つ奴に恐らく『ユーフェミアになりきれ』と、『日本人を名乗るものは殺せ』と命じられているのだろう……哀れだが、見逃すわけにもいかない。)」

 

 バァン!

 

 ゼロの撃った弾は正確にユーフェミアの心臓を貫き、銃を撃ったゼロ本人は反動と音にびっくりしそうになる。

 

 コルトガバメントは45口径とかなりの大き目で、音量は銃や同じ口径でも弾丸の種類によって違ってくるが、(『普通』を外国で一般の者が手に入れられるものと定義して)約110~140dbである。

 

 自動車などで『五月蠅い』部類のクラクションで約110dbなのでどれほど火薬式のコルトガバメントが出せる音量が理解できるだろうか?

 

「(反動のことは聞いていたが、なんとうるさい銃なのだ────!)」

 『────ゼロ!』

 

 CCの声とハドロン砲が上空に撃たれたことでゼロが上空を見るとランスロットが急接近していた。

 

「スザク?! (ええい! なんで毎度のことながら最悪のタイミングに来るのだ、お前は?!)」

 

 

 ……

 …

 

 

「も、戻らなくていいのですか?」

 

『特区日本』現場から、アリスのガニメデ・コンセプトの中にいたユーフェミアがはるか遠くになった会場の方向を見る。

 

「今あの現場は混沌としていて貴方の安全が保障できない。 それに、あそこには安心して使える医療器具とかあるなんてわからないわ。」

 

「医療器具?」

 

「そいつに死なれちゃ困るからね。」

 

 アリスが“そいつ”と呼んだスヴェンは息を浅くしながらパイロット席に前かがみに寄りかかっていた。

 

「だから今は近くのアジト────ッ?! もう追手が?! ユーフェミア様! 次いでにアンタ(スヴェン)も! しっかり掴まっていなさい!」

 

 アリスが後ろにいたユーフェミアに振り返っていたおかげで自分たちを追う黒い機体たちに気付き、彼女は一気に機体の速度を上げる。

 

「(これでもついてくる? 速度を更に上げる? そうするとエナジーが心許ない。 “ザ・スピード・オーバーホエルミング”なら確実だけれど、反動でこいつが更に傷が深くなる。 多少の応急処置の知識はあるけれど、専門じゃないし。 なら、弱めの“ザ・スピード”で何とかする!)」

 

 

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「…………………………」

 

 スザクは頭を抱えながらアヴァロンの中の医務室でこう思っていた。

 

『なぜもっと早く駆けつけられなかった?』

『なぜ彼女を一人にした?』

『なぜゼロをあそこまで信用した?』

 

 等々と言った疑問がグルグルと彼の荒れ狂う、火のような気持ちに油を注ぐ。

 

「……あなた、は。」

 

「ッ! き、気が付いたんだねユフィ!」

 

「……みえない。」

 

 その光景は原作に近いものだが、スザクの前で開いた医療ポッドの中に横になっていた少女────ユーフェミア(偽?)にゼロが使ったのはコードギアスの銃では無かったことから原作より早く死の淵にいた。

 

「ぼ、僕はここにいるよ、ユフィ!」

 

 スザクは冷たくなっていく彼女の手を両手で握る。

 

「ちが……ちが……」

 

「うん、大丈夫! 出血は医者が止めてくれたよ!」

 

「ちが……ちが……わた……わた……」

 

「だから……だから!」

 

「(ちがう、の……わたしは……わたしは……)……わた、しは……」

 

「僕を独りにしないでくれ! ユフィ!」

 

「わた、し……は………………………………ゆ────(ーフェミアなんかじゃ……ない。)」

 

 惜しくも死の間際に少女は伝えようとした言葉はスザクに届かず、ただ心拍音が停止した電子音にスザクが泣き出す。

 

 

 この光景を、医務室に取り付けられたカメラ越しに頬杖をしながらつまらなさそうなVVが別の部屋で見ていた。

 

「(……うーん、連れ去られるのが阻止された時は少し慌てたけれど、前倒しにしたプランBは及第点だね。 こうも死にそうになっただけ解けちゃうなんて、やっぱりあの子のギアスはちょっと甘いかな。)」

 

 彼は椅子から立ち上がり、医師や看護婦たちが待機している部屋の中に入る。

 

「んじゃあ『皆、普通通りに動いていいよ』。」

 

 そうVVが掛け声をかけると、一斉に部屋の中の者たちが動き出す。

 

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 

『ここ、行政特区日本で起きたことがブリタニア偽善の象徴そのものである!』

 

 騒動が収まったフジサン付近では、ゼロが演説を行いながら今後の事を考える。

 

「(奴は確かに言った……“トウキョウ租界で落ち合おう”と。 ならば俺に出来る事とは黒の騎士団をトウキョウ租界に動かし、彼とユフィに合流してコーネリアに接触する! 彼女ならばユフィ、そして母さん(マリアンヌ)の死の真相の為ならば手を貸してくれるはずだろう!) 我らが作る新しい国は、あらゆる人種、歴史、主義などを受け入れる広さと、強者が弱者を虐げない矜持を持つ国だ! その名も、『合衆国日本』だ!」

 

 元行政特区日本の会場、そしてゼロの報道を見ていた日本人たちが黒の騎士団含めて拍手と歓迎の声を上げていた。

 

「(ならば! 『合衆国日本』という隠れ蓑とナナリーでも住める世界の原点とし、真相をコーネリアたちと共に秘密裏で追い求めるまでだ!)」

 

 

 このことに関し、ラジオとニュース報道局などに緘口令が敷かれるが既に映像などが流れた時点で遅かった。

 

 結果、エリア11で今まで見たこともない比の反ブリタニア暴動がエリア11全土で一斉蜂起することとなり、名誉ブリタニア人までもがこれに加勢するという前代未聞の事件が多発する。

 

 この一大事に対処すべく、エリア11の総督であるコーネリアは無理やりにでも暴動の中心地となったフジサン付近に専用機ですぐに出撃しようとし、自分を止めようとするギルフォードを殴り倒し、車いすに乗ったクロヴィスを殴ってやっと自分のしようとしていることに気付き顔色を悪くしながらも、一つの命令を下す。

 

『全軍、()()()()()()()()()()』。

 

 コーネリアはそれだけを言い残し、生きた屍のような足取りで彼女は政庁でユーフェミアが使っていた部屋に籠りながら、何度も何度もユーフェミアに連絡を取ろうとするが一向に繋がる様子はなかった。

 

 後にこれが、『ブラックリベリオン』と世間で呼ばれる事件と長い()の始まりであった。


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