小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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お読みいただき誠にありがとうございます、楽しんでいただければ幸いです!

上手く表現できたかの不安&カオス&独自設定&独自解釈などが続きます。 申し訳ございません。 m(;_"_ )m


第82話 一番暗いのは夜明け前2

 今の(スヴェン)の状況を、ありのままに言うぞ。

 

クラブ(ノネット)と隠れながら生身で追いついてくるライ(仮)から逃げて学園のほうに向かっていたら、地面の下から強い熱源反応が上がってきて“まさか”と思っていたらガニメデがあったので、勢いのままアッシュフォード学園のグラウンドにサザビの腕がもげてしまうほどの圧縮空気式パイルバンカーを使って飛来したら、原作通りにニーナが“フレイヤ”という名の実質核爆弾の起爆スイッチを持っていた。』

 

 “何を言っているんだ?”と思っているかも知れないが、言葉通りだ。

 

 ここまで来るのに黒の騎士団やら黄色い反乱軍やらブリタニア軍の銃弾や、追って来るノネットが拾い上げて投げるランスなどを躱す為に酷使した機体の損傷具合は二足歩行だけでもミシミシという音が響く程で、スラッシュアンカーも何本かは千切れている様子だった。

 

 かなり無茶をしてごめんよ、ネタ搭載機(サザビ)

 

 え? “なんで謝る?”って?

 そりゃあ、観賞用というかロマンというか……

 “元々『実戦』を想定していなかった機体なのによく頑張った”……とか?

 

 「ニーナ────?!」

 「────下がっていて。 危ないわ。」

 

 上半身を外に乗り出した俺の耳にぼやけた声が届く。

 

 カレンと………………この場は原作から言ってセシルだろうか?

 

 いや、待てよ。

 何でここにカレンがいる?

 いや、そんなことはどうでも良い。

 

 今はニーナだ。

 

 クソ、まさか原子力発電を目指して作った原子炉のテストモデルを放射性物質散布装置(ほうしゃせいぶっしつさんぷそうち)に転換し、『即席フレイヤ』に仕上げるとは……

 

 ニーナの凄さには純粋に恐れ入るぜ。

 

 問題は、彼女をどう止めるかだ。

 

 考えろ考えろ考えろ考えろ、考えるんだ俺。

 

 答えを出さないと原作のように不発……とは違うかも知れないのでスイッチを押されたら最後、『ゲームオーバー』になる可能性『大』だ。

 

 今の彼女は既になけなしの勇気を出し、起爆スイッチを両手で握っている。

 緊張状態で『手を放したくても放せない状態』って奴みたいだ。

 

 さて、脳が『動け』と命じて指先に電気信号が伝わるまで約0.2秒……

 確か、脳幹だったよな?

 鼻と口の間を撃てば起爆スイッチを押せる前に処理できる。

 それに今後も────

 

 ────って何を考えているんだ俺は?! ダメだ! せっかくここまで来たんだ!

 そいつ(殺し)は最悪の最悪中の最終手段だ!

 

『理解』は出来ても……『許容』はできない。

 

 それにアッシュフォード学園に来てからだけとはいえ、ニーナの過去を知った今では彼女のことも何とかしてやりたい。

 

 以前、俺は彼女の昔話をした*1と思う。

 強盗が入って、扼殺を試みた犯人をニーナがステーキナイフで刺したと言ったな?

 実はその時、一部だけの詳細を省いた。

 

 悪いな、けどあの時は『言うべきではなかった』と思ったからけど……今さらながら言うから許して欲しい。

 

 実はニーナ、まだ子供だったその時に首絞められながら強姦されかけたんだわ。

 

 な? ダークだろ?

 俺も実際、そのことを隠蔽というか警察の報告書ではっきりと書かれていなかったけれど『精神カウンセリング』に『DNAの鑑定、必要なし』などの強姦後の対策を見たら思わず『ゑ?』ってマヌケ声を出したし、『コードギアスでこれはアカンやろ?!』と思ったさ。

 

 これで何故ニーナが原作でも日本人……イレヴンを嫌い、暗がりを怖がり、『男性恐怖症』っぽい描写があったのか理解出来た。

 

 彼女がなぜコードギアス(原作)で、過激なまでに『イレヴンは皆死ねばいいのよ!』ウーマンになったか不思議ではないだろう。

 

『虐殺皇女』云々以前にこんなことを経験して、ヒステリック気味の暴走を蓋していた感情が爆発したのが、原作での『ユーフェミア様の仇(ゼロ)はどこなのよ!』シーンだと思う。

 

 さてさて。

 なんでこんなことを今になって言っているかというと、現在の俺が取っている行動から俺自身の気を逸らす為である。

 

「ヒ?! こ、来ないでぇぇぇぇ!」

 

 ゆっくり、ゆっくりとサザビをガニメデに近付かせていた俺に、ようやくニーナがそのように声を上げて叫ぶ。

 

 オープン式コックピットに座るニーナは俺を見て震えながら両手が真っ青になるほど力強く起爆スイッチを握っていた。

 

 そんな彼女が叫ぶと同時にサザビの前進を止める。

 もう互いを直接目視できるような距離まで来られた。

 

 ここからは言葉一つ、僅かな動作一つを間違えれば状況が一転してもおかしくはない。

『カチ!』、『ボッ!』、『あ゛?!』からの『さよならバイバイ(消滅)』もあり得る。

 

 ゆっくりと、降伏するかのように手を上げる流れでヘルメットのバイザーを開け、俺の(目とその周りだけ)が露出する。

 

「な、何を────?」

「────止めろ。 そのスイッチを……発明をそんな風に使ってはダメだ。」

 

 頼む。

 押さないでくれ、ニーナ。

 

 周りは耳鳴りが鳴るほどの静寂に包まれ、如何に皆が緊張しているかを思い知らせる。

 

 先ほど言葉を出したことで、ごくりと生唾と一緒にせり上がってきた鉄の味のするモノを飲み込む。

 

 するとニーナがハッとする。

 

「な……何で、貴方が……そこに?」

 

 少しだけ安堵したいが、まだだ。

 

 まだ何も終わっていない。

 

 まだ始まったばかりだ。

 

「何故、それ(原子炉モデル)を出した?」

 

 俺の質問に、ニーナの目が少し泳ぐ。

 

「だって……だって、こうしないと……嫌だから……イレヴンに、皆が……ここ(学園)が……

 

()()()()()()()()()。』

 

 そう、俺でもほとんど聞き取れなかったほど消え入りそうな声で言うニーナの言葉と、その続きが聞こえたような気がした。

 

「そうか……」

 

 「ごめんね……こんな風に使うことぐらいしか、思い浮かばなかったから……だから、ミレイちゃんや皆を避難させて! ここから皆と一緒に、貴方もッ! 離したくても手が、離せないのッ! だから……だから────!」

「────分かった。」

 

 俺はいつものニーナに戻りつつ────と言うか子供のように涙目になっていく彼女のガニメデのオープンコックピット前に、俺がふわりと飛び移る。

 

 “子供のように”と言ったが、実際に思春期真っ最中の子供か。

 

「え? えええぇぇぇ?!」

 

 眼前には予想通りに狼狽えて、完全に手のことから意識が移るニーナ。

 

「どどどどどどうして────?!」

「────()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 やっぱり『押し』に弱いな。

 グラつく白と黒と灰色の視界の中俺は踏ん張りながら、何かそれっぽいことをがんがんとする頭痛の中で言ったような気がするがこのまま何か喋ろう。

 

 効いているみたいだしな。

 

「で、で、で、でも! 私は! 貴方の事を巻き込みたくないの! このままじゃ、スイッチを押せない────!」

「────ああ。 だから先ほど“分かった” と言っただろう?」

 

 心臓がバクバクと脈を打ち、耳朶が『ドッ、ドッ、ドッ!』とうるさくなり、頭痛がさらに酷くなっていく。

 

「私は……()はお前にスイッチを押させたくない。 これの開発を始める時に、俺の言ったことを覚えているか?」

 

「『ウランを使った新しい可能性』……だよね?」

 

「ああ。 装置を転換したお前ならばもう予想はついていると思うが、ガニメデに付けたそれは本来『新しい電力』として開発していた。 何故だか分かるか?」

 

 吐きたいけど我慢だ、俺。

 今までで一番ひどい状態かも、俺。

『俺』を『コレ』に変えたらどこぞ丸だな、コレ。

 

「……?」

 

 よし、ニーナの科学的好奇心をくすぐった。

 キョトンとしているぞ、コレ。

 なんか初めて雨に濡れた子犬みたいだ、コレ。

 徐々に興奮状態から覚めつつあるな、コレ。

 

「何故日本が……エリア11が世界に重要視されているか分かるか? サクラダイトだ。 この世界の電力はごく少数の例外を除き、全てがサクラダイトに依存している。 

 つまり、『世界はサクラダイト中毒』ともいえる。 

 そこで質問だ、ニーナ。 もしウランの使った電力などを流通させれば……この現状はどうなると思う?」

 

「…………………………………………………………あ!」

 

 メタな電球がピカッと光ったような顔のするニーナ。

 流石ニーナ、頭の回転が速い。

 俺はもう一度ごくりとせり上がる、鉄の味をする()()を唾と一緒に飲み込む。

 

 喉が燃えるような、熱が籠ったような感じがする。

 

「理解、したか?」

 

「もしこれが広がれば、サクラダイトに頼っている今を────!」

「────そう、だ。」

 

 俺はゆっくりと、ニーナの起爆スイッチを握る両手を包むように自分の手で覆う。

 

「誰、も傷つけず……法的にも、道を踏み外さず……日本人に……仕返しが出来、る。」

 

 そう言いながらさっきのゆっくりとした動作で、俺はニーナの指を解いていき、やがて起爆スイッチが俺の手へとすっぽりと移る。

 

「……ぁ────」

「────っと。」

 

 起爆スイッチを手放したことで、緊張感から解放されたニーナから力が抜けて彼女が倒れそうになるが、やっとの所で彼女を支える。

 

 腕が思ったように動かない。

 重い。

 鉛が血の代わりに詰められたようだ。

 

 おかげで背中じゃなくて、腰で支えちまったじゃねぇか。

 これで“きゃー! 変態ー!”からの『顔面平手バチン』されたらただの阿保じゃん。

 

 ……今更か。

 

「あ……あり、がとう。」

 

 俺は何も言わず、ただニコリと『優男』の仮面の笑みをニーナに返す。

 

 目を凝らすのも億劫になってきた俺は起爆スイッチをとりあえず外し、ポケットにそれを入れてからサザビに戻っていく。

 

 別に『何も言いたくないから』とかじゃないぞ?

 

 ただこれ以上、口を開けたら思わずむせてしまいそうだったからだ。

 それにナナリーたちのいるところに向かわせたマオ(女)が────

 

『────スバル?』

 

「カレン、か。」

 

 バイザーを閉めなおしたヘルメットのブルートゥースに接続した携帯から、カレンの声が聞こえてくる。

 

『大丈夫。 以前、貴方にもらった携帯を使っている奴だから安心して。』

 

 俺が前にシンジュク事変の前に渡した、旧式の携帯の形をしたスペシャルのヤツか。*2

 俺でさえ忘れていた物をまだ持っていたのか。

 

 俺はハテナマークを出す元気もなく、ただ流れに身を任せてマオ(女)がいる筈のクラブハウスへと、ボロボロのサザビをゆっくりと動かす。

 

『大丈夫?』

 

「何故、お前(カレン)ここ(学園)に?」

 

『その……学園が本当に“非戦闘地帯”かどうかを確かめるために……ねぇ? 私、()()()()()()()?』

 

 どう言う意味だ?

 

 質問の意味が解らん。

 

 俺が黙っている理由を察したのか、カレンが次に言ったことで俺の頭から(さらに)血の気がサァーっと引いていくような気がした。

 

『ゼロが、居なくなったの。 他の人たちの話によると、スザクに追われ────』

 

 ゼロがスザクに追われている……だと?

 

 なんで?!

 なぜ?!

 どうして?!

 なんでやねん?!

 

 カレンは未だに何か言ってきているが、上記の質問等が俺のグラグラする頭の中をグルグルと回る。

 

 が、そんなことより今はルルーシュ(ゼロ)とナナリーだ。

 

 さっきまで白黒&灰色だった視界に色が少しだけ戻り、朦朧としていた意識がはっきりとする。

 正直、火事場の馬鹿力でもありがたい。

 

「カレン、フロートユニットはあるか?!」

 

 原作のように“ある”と言ってほしい。

 

『え? う、うん。 鹵獲した奴が────』

「────今直ぐにそれを紅蓮に取り付けて、神根島に向かってくれ! ゼロを……()()()()()をスザクから守ってくれ!」

 

『え?! ゼロ?! っていうか、何でそこでルルーシュが────?』

「────あとで話す! 頼んだぞ!」

 

 俺は漠々と早くなる心拍音と焦る気持ちでサザビをクラブハウスの方向に走らせると、衛生兵らしき者たちがさっきの停戦状態を利用して生命維持活動を再開していたらしく、一組の者たちが持っていた担架の上に点滴を打たれていたマオ(女)がいた。

 

「俺の連れだ────!」

「────ちょっと、君?! 安定したとはいえ、絶対安静の患者だぞ────!」

 

 そんな軍医を無視して俺は担架と繋げられた点滴ごとサザビの手ですくい上げて、シートを上昇したことで空洞になったコックピットブロックの中に彼女を寝かす。

 

 マオ(女)がKOされたということは、やはりナナリーは攫われていたのか。

 そしてルルーシュ(ゼロ)は原作のようにCCの“ナナリーが攫われた!”で追ったと。

 

 俺はサザビをアッシュフォード学園の敷地を、開かれた正門から出てトウキョウ租界へと再び出る。

 

『“時間”に意味はない』、発動。

 これで時間を稼ぐ。

 

 まずは全体の戦況把握が必要だ。

 サンチアとルクレティアが居ればよかったが、無いものねだりはできない。

 

 サザビのファクトスフィア代わりに~、ブリタニア軍の~、撃破中の機体からデータ拝借~♪

 

 なるほどなるほど。

 

 原作よりヤバいじゃん、黒の騎士団&反乱軍組。

 

旗印(ゼロ)がいない。』

『統率が取れていない。』

 

 これだけでこうも数十万もいた暴徒は既に各個撃破されて、ナイトメアだけでも数はすでに半数以上が『LOST(撃破)』となっている。

 

『さすがはブリタニア軍』……いや、『コーネリア軍』と『グラストンナイツ』と言ったところか。

 

 毒島たちらしき者たちは……()()()()()()()()

 ブリタニアに発見されていないということはやはり何かのアクシデントが起きたのか。

 

 こっちは飛来する『UNKNOWN(識別反応なし)』の機体情報?

 オレンジ(ジークフリート)に乗ったオレンジ(ジェレミア)といったところか?

 

 コーネリアは……って、総大将のコーネリアの反応はどこだ?

 ギルフォードの位置は前線にあるのにコーネリアのが無い……だと?

『ルルーシュはスザクに追われている』+『ナナリーがアッシュフォード学園にいない』+『オレンジの追跡』となると……

 

 政庁での『ようこそ、ゼロ! ダンスはお得意かなぁ?!』のブチ切れコーネリアと、ルルーシュの『スペックではガウェインが圧倒しているのに?!』という流れの一騎打ち後になるのか?

 ああ耳鳴りがする。

 いや、それは無い筈だ。

 その『すれ違いフラグ』を折る仕込みの一環として『マリアンヌ暗殺事件の真相』を俺が出したのだから、ルルーシュくらいならリスクを冒してまでコーネリアと敵対するのは最終手段のはずだ。

 原作より酷い反乱軍も何かの手違い……だと思いたい。

 吐き気が半端ない。

 ならばなぜ総督であるコーネリアがここ(戦場)にいない?

 まさかこちらも何かあったのか?

 それに断層構造を利用した『どんでん返し』も何故????

 わからないことが多すぎる。

 頭がぐるぐるする。

『“時間”に意味はない』が作動しているうちに、メッセージだ。

 まだだ、まだ寝ちゃだめだ。

 届くかどうかは知らんが、しないよりはマシな筈だ。

 ……良し、送れた。

 これで毒島たち────

 いや、藤堂たちが────

 そもそもアリスとユーフェミアのこともまだ、俺は────

 このままじゃブラックリベリオンのなg────

 

 

 

 

 

 

 ────ブツン。

 

 そう考えていると、視界が電源を消したテレビのように突然真っ暗になる。

 

 

 

 

 

 


 

 

 アッシュフォード学園はアヴァロンとセシルの寄せ集めパーツのサザーランド、カレンの紅蓮、ニーナのガニメデ&フレイヤ、そしてスヴェンのボロボロのサザビという突然の登場で静まり返っていた。

 

 あっけにとられている間に黒の騎士団とブリタニア軍の人命救助活動は再開し、学園から学生を避難させるためにもアヴァロンは着地していた。

 

「全員銃を捨てろ!」

「冗談じゃねぇ、ブリキ野郎どもが! 誰が大人しく捕まるか!」

「死ぬのなら道連れにしてやる!」

「なんだと、イレヴンのくせに!」

 

 だがそれは一時的なものの様子で学園はまたも緊張感が高まっていき、またも一触即発の状況に戻りつつあった。

 

「あー、こりゃ私たちもトンズラしたほうが良いんじゃない?」

 

 上記の場面では人命救助をしていた軽装の黒の騎士団を、ブリタニア軍が好機と見たのか『隙あらば包囲し、捕縛』などをしていく様子にラクシャータが学園の屋上からディートハルトと共に見ていた。

 

「で? どうするの、()()()?」

 

 ディートハルトはビデオカメラを肩に乗せ、ニヤニヤしながら学園の様子を撮っていた。

 主に場の混乱を利用するブリタニア軍を。

 

「どうするも何も、我々は元々ブリタニアの非道さ等をプロパガンダ利用するためにゼロが派遣した身。 ならば最後の最後までそれを全うするのが────ん?」

 

「あ? ありゃま。」

 

 ディートハルトの生き生きとしていた表情が初めて曇ったことに、ラクシャータが彼の見ていた方向に視線を移すと彼女もびっくりする。

 

『私はノネット・エニアグラム! 神聖ブリタニア帝国第98代皇帝にてナイトオブナインの座を預かっているノネット・エニアグラムだ!』

 

 現れたのはスヴェンを追っていたクラブ(ノネット)だった。

 

『双方、戦闘行為を直ちに止めよ! いかなる理由があれど、ここは“非戦闘地域”と定められている!

 戦闘行為を続けるのなら私がそいつをぶっ飛ばす!

 これに不満がある奴はブリタニアでも黒の騎士団でも良い、名乗り出ろ! 私が相手になってやる!』

 

『エニちゃん……それって要するに、“気に入らない奴はぶっ飛ばす”って言っているんじゃないの?』

 

 ノネットにアヴァロンにいるロイドの通信が届く。

 

「なんだ、ちゃんといたのかロイ。」

 

『残念でした~! ちゃんといるよ~ん。 それにしても、最初だけとはいえ騎士らしく振舞うなんて珍しいね?』

 

「……まぁね。」

 

『あり?』

 

 てっきり自分の言葉に何らかの反応を示すと思ったロイドがポカンとする。

 

「(ま、無理もないか。 でも、少年の行動を見ちゃったらなぁ~……『学び舎(学園)で戦闘』なんてバカバカしく思えちゃうよ。)」

 

 

 

 ……

 …

 

 

 

 さっきからトウキョウ租界でも再開発エリアの一つの中、倒れていく建物と共に響く地鳴りがやっと止む。

 

 重苦しいそれは、明らかに『人工的な地震』と呼んでもおかしくはない規模で、わずかにそこに居着いていた者たちでさえも、酔いやリフレインで浸っていた記憶や眠りから元日本人たちを覚ますほどだった。

 

 やがて土煙などが巻き起こったそんな地域の中、瓦礫などが混ざった土の山へと場面が移る。

 

 地震は終わったはずなのに、もぞもぞと動き出す土と瓦礫の山を。

 

 ズボッ!

 

 次の瞬間、土まみれのままの手がその出来上がった山の中から勢いよく、某ゾンビ映画のクライマックスのワンシーンのように出てくる。

 

ブハァ! ゲホゲホ!」

 

 全身が土まみれのまま咳をした誰かは、それでもポケットの中から何かを出す。

 

「神様からのお告げ! ……へ?」

 

 生き埋め状態から生還したマーヤは、取り出した携帯のメッセージを見て固まってしまう。

*1
26話より

*2
18話より


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