小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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第84話 一番暗いのは夜明け前4

『藤堂さん! 報道局がブリタニアに奪還されました!』

 

「時間稼ぎはもういい、部隊を引きあげろ!」

 

『了解です!』

 

 ゼロから急に『この場を任せる』と言われた藤堂は頑張ってはいたが、全ての戦線の把握をしていなかった彼は出来るだけ黒の騎士団の被害を抑える為に動いていた。

 

 被害は決して小さくはなかったが。

 

 元々はゼロの元に集まっただけの反乱軍が先走って暴徒化し、その鎮圧に黒の騎士団は広く展開していたのが裏目に出てしまった。

 

 彼らは孤立してしまい反乱軍の攻撃、そして途中からブリタニア軍からの反撃を受けてしまった。

 

 小さな部隊は殆んどが独断で動くようになり、途中で乱入したランスロットからの被害もスヴェンの書置きによって被害は少なかったが、とても『黒の騎士団』として後退出来る状況ではなかった。

 

『中佐! 学園エリアからのディートハルトからです! “現れたラウンズによって非戦闘地帯に戻りつつあり、現在は技術部門と脱出中。 負傷した者たちの捕虜化は免れず”とのことで、残存戦力を率いてG1ベースに移動中!』

 

「そうか……(ラウンズにも、まさかそのようなものがいたとはな……)」

 

 藤堂は少しだけブリタニアのラウンズに感心をすると肩への重みが少しだけ楽になる。

 学園に取り残された者たちは捕虜になるが、殺されることがないのもあった。

 

『お久しぶりです、()()。』

 

 そんな時、藤堂が全く予想だにしなかった通信から来る声に彼はギョッとする。

 

 数ある門下生でも、自分の事を『師匠』呼ばわりするのは例外を除いてごくわずか。

 

 殆んどは『中佐』や『先生』で────

 

『────私です、毒島です。』

 

「やはりそうか! 何故、君がこの通信周波数を知っている?」

 

おじい様(桐原)に聞きました。 師匠、今から戦況把握のリアルタイムデータを送信します。 トウキョウ租界から退却の指揮をお願いします。』

 

「なに? それは────」

 

『────どういうことだ?』と藤堂が言う前に膨大かつ的確な量のデータが彼の月下に届く。

 

「これは────」

『────スバルに頼まれていたものです。』

 

「……なるほど、助かる!」

 

 思わず藤堂は納得しつつも、送られた情報をもとに素早くかつ現実的な撤退ルートなどを割り出していく。

 

 これは彼にとってどうという事はなく、皮肉にも『撤退時と方法を見極めなければブリタニア相手に要らぬ犠牲を出すか全滅させられる』という豊富な経験を活かしただけだった。

 

 そして()()()()()ことに、自分のいる場所に敵のリーダーらしき機体が近づいていた。

 

「仙波、卜部、朝比奈、千葉。 お前たちは今送ったルートを使って撤退時の援護に回れ。」

 

『中佐はどうなされるのですか?』

 

「私は敵の大将の注意を引く。」

 

『待ってください中佐!』

 

『そうですよ! 藤堂さんが居る所が僕の居場所────!』

「────ならん! ここで希望を……反抗の意思を絶やさぬために、私は一騎打ちを仕掛ける!」

 

 藤堂はそのまま物陰から出て彼の月下に応戦しようと試みたサザーランドを容赦なく真っ二つにしながら政庁へと向かう。

 

「敵が私の思っている通りの人間ならば、これに応じないわけがない! ブリタニア軍の大半は奴の指揮一つに頼っている! ならば、奴さえ抑えれば生きてまた戦える同士が多くなるはずだ! それに敵が私だと分かれば、ブリタニアは捕縛を狙う筈! 生きていれば、希望はあるのだ!」

 

 藤堂の月下がロケットランチャーを搭載した部隊、そして以前のナリタで相対したグロースターを見ては外部スピーカーを繋げる。

 

「私は『奇跡の藤堂』! 藤堂鏡志朗だ! 問おう! ブリタニアは一騎打ちにも応じない、腰抜けばかりの集まりか?!」

 

『聞き捨てならんな、“日本の亡霊”如きが! 私はギルバート・G・P・ギルフォード! エリア11の総督にして第2皇女殿下の騎士にして親衛隊隊長! いざ、参る!』

 

 藤堂の狙い通り、ナリタで相対したグロースター(ギルフォード)は彼の挑発に乗ってMVSで斬りかかって月下の制動刀とぶつかり、火花が飛び散る。

 

 

 ………

 ……

 …

 

『全軍、突撃! 反乱軍を一挙に粉砕する!』

 

 黒の騎士団……と呼ぶよりは『暴走化した反ブリタニア陣営』は断層構造のハプニング(奇襲)を利用した勢いで猛攻を仕掛けたものの、所詮は武器を手に取った素人同然の烏合の衆がほとんどだった。

 

 現状で指揮をとれるのは正規の訓練を受けた者たちだが、手が現在で比較的に空いているのは寝返った名誉ブリタニア人の兵士や黒の騎士団が数十人程度。

 

 とてもではないが、ブリタニア軍のように体勢を立て直して正規軍を相手に持ちこたえるわけがなく、最初の奇襲攻撃で決定打を打てなかった時点で敗北は必須であった。

 

「押し切れない!」

 

「井上、もう無理だ! 撤退しよう、このままじゃ俺たちもやられちまう!」

 

 後方部隊をまとめて退却時に出来るだけの被害を少なくしようとする井上、そして陽動のために広く展開した彼女の部隊のフォローを自分の部隊でしていた杉山の無頼たちが、ほかの者たちと比べて比較的トウキョウ租界の外延部近くで活動をしていた。

 

「早くしないと、敵の進軍と援軍で挟み撃ちになる!」

 

 井上の無頼は周り角を曲がるために無頼を道の中心に移動させる。

 

『気をつけろ、その先にはブリタニア軍が既に待ち受けている。』

 

 

 黒の騎士団幹部専用の周波数で来る、機械音声の音声通信に井上と杉山が思わず立ち止まって周りを警戒する。

 

曲がり角の高層ビルの屋上、11時と9時の方向だ。

 

「だ、誰?!」

 

味方でも敵でもない。

 

「なぜこのチャンネルを知っている?!」

 

頼まれたからだ。

 

「誰にだ?!」

 

“お前たちに死んで欲しくない”、とのことだ。

 

 少し離れたビルの屋上に、対KMFライフルに取り付けていたスコープを単眼鏡代わりに使って服装が土まみれのマーヤがその場から撤退する井上と杉山を見ては通信機を切り、自分も移動しながら黒の騎士団の幹部たちに上記のような助言を含めた通信を送っていく。

 

 

 ……

 …

 

 

「歩兵を下がらせ、建物の中からゲリラ戦をかけさせろ! 相手がナイトメアでは分が悪すぎる! G1ベースの機銃をすべて使え!」

 

 今や否が応にも反乱軍の象徴になってしまったG1ベースに、撤退をし始める反乱軍を追って進軍するブリタニア軍が目視できるほどまでに近づいていた。

 さっきまでの静けさが嘘だったかのように、G1ベースの機銃がすべて唸りを上げて弾幕を張って出来るだけ敵を近づけないようにしていた。

 

「ゼロ様……本当に居なくなってしまわれたのですか?」

 

 そんなG1ベースにあるブリッジで戦況が徐々に不利なっていく様子の中、桐原がため息を出す。

 

「皇、ここはワシに任せてお主は今すぐに逃げよ。」

 

「桐原殿?! 何を急に言い出すのです?!」

 

「状況から察するに、ゼロはこのような展開を望んではいない。 それに長年ワシが生きながらえた感が伝えておる、“これは負け戦”だと。 それに、NACとワシの関係はブリタニアに見破られておる。 ワシが見つかれば、ある程度はお主の生存から目を引き付けられるだろう。」

 

 今までとは違う、連続で起こる爆発音でG1ベースは揺れる。

 

 ザッテルヴァッフェ(特殊ミサイルランチャー)を全弾打ち出しながら特攻を仕掛けたグロースターが二機ほどG1ベースに張り付いてランスを構える。

 

『『覚悟────!』』

 『────覚悟するのはお前たちだぁぁぁぁぁぁ────!』

 

 ギュィィィィィィィィィ!!

 

 まるで投げられたかのように突然G1ベースの横から文字通り飛んできた無頼改が、持っていた廻転刃刀でグロースターたちを過ぎ通りざまに切る。

 

 ボキン。

 

 『────あぁぁぁぁぁぁ止まらなぁぁぁぁぁい?!?!』

 

 ドゴォン!

 

 廻転刃刀は無茶な切り方をし過ぎたのかそこで折れてしまい、無頼改はそのまま止まることなく飛んできた勢いのまま廃墟となった建物に突っ込んでしまう。

 

「「…………………………冴子/冴ちゃん? え?」」

 

 目を点にさせながら神楽耶と桐原が同時に相手の声から連想した人物の名前(愛称)を口にすると互いの意外な面を垣間見たような気がした。

 

「(いつもどんな席でも堅物で通っている桐原殿が『冴ちゃん』……ですって?)」

 

 神楽耶が思わず思い浮かべたのは決して誰にも見せないオフタイムの桐原が『冴ちゃ~ん』と呼びながら目からハイライトが消えた毒島を甘えさせようとする光景。

 

「(お転婆であっても時と場合はわきまえるあの皇が、素直に名前で呼べるほど冴ちゃんと親しくなっておるとは意外……ちょっと寂しいのぉ。)」

 

 桐原が思い浮かべるのは昔から毒島という玩具護衛をどこにもでもほぼ引きずりまわす神楽耶に疲れながらも付き合う毒島だった。

 

 建物がガラガラと音を出しながら突っ込んでいった無頼改が中から姿を現し、中にいた毒島は目を回していた。

 

「(ぐぉぉぉぉぉ……まさか『タオパ〇〇イ輸送システム』がこれほどとは……よくアリスは無事でいられたな……)」

 

 実は毒島、サンチアとルクレティア経由で攻められているG1ベースの中に神楽耶と桐原がいたことに血相を変えながらダルクに無茶を言って『お願い』という名の命令をし、機体を投げてもらった。

 

「それよりも二人は?!」

 

 無頼改が接触回線をG1ベースと直接繋げ、ブリッジの中に彼女の声が響く。

 

『神楽耶様、おじい様! ご無事ですか?!』

 

「「いやそれ私/ワシたちのセリフ。」」

 

 二人が言ったように、毒島の機体はひどい損傷具合だった。

 

 頭部から後方に伸びる触覚型の通信アンテナはぽっきりと折れてファクトスフィアを覆う頭部の装甲が一部欠けており、スラッシュハーケンの一つは先端が千切れ、もう一つはワイヤーが完全に巻き戻されていない状態で『プラ~ン』と機体からぶら下がっており、右腕は先ほどの無茶で手が手首の先から無くなっていた。

 

『二人とも乗ってくれ、ここから脱出する!』

 

「だが敵があれだけ────」

『────こっちにはファクトスフィア以上の()()()()()()()()が付いている。』

 

 毒島はそう言いながら機体とは別の周波数に合わせているインカムを耳につけて無頼改の左手に桐原と神楽耶を乗せる。

 

『冴子? アンジュよ。 こっちは無事にチャウラー博士(ラクシャータ)メイド(咲世子)胡散臭いポニテおっさん(ディートハルト)を回収。 どうする? このままディーナ・シーに連れ戻す?』

 

『いや、私たち二人は黒の騎士団が既に用意してある脱出経路まで送る。 ゼロのことだ、私たちが回収した誰かにもしもの時の逃走経路は用意させてあるだろう。 それに“姫”の件もあるしな。 いや、お前(アンジュ)からすれば“学友”か?』

 

『“友人”ってほどじゃないわ。 せいぜい前の学校で、大会とか交流会で顔を合わせたぐらいよ。』

 

『少なくともお前の素の “死ねゴラァ!”を暴露させるほどには仲が良かったのだろう?』

 

『あ、あれはついカッとなって相手をラクロスステッキでボコるときに気迫を付ける為の叫びよ!』

 

『もういいか二人とも? これからは一時的にだが私が指揮を執る。 後で落ち合おう。』

 

『『了解。』』

 

 そしてアンジュ、自分なりの言い訳が全く言い訳になっていないことに気付かないまま毒島とともにサンチアの指示に従い、胡散臭いポニテおじさんディートハルトが用意した逃走手段へと直行していく。

 

 もちろん普段ならディートハルトが正直にそのような機密情報を言う筈がないのだが、毒島の無頼改の手に乗っていた神楽耶と桐原がいたことが幸いした。

 

『少なくとも二人が身を任せるほどのものならば利用はできる』、と警戒をしながら。

 あとは彼が個人的に雇っていた『篠崎咲世子』という()()()も傍にいたことが決定打だった。

 

 

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

「……う。」

 

 後に『ブラックリベリオン』と呼ばれる長かった夜に、太陽が水平線より上がり始めたことでボロボロのトウキョウ租界が朝日に照らされ始める中、マオ(女)は激しく揺らされながら目を覚ます。

 

 彼女は背中に薄いマットレスのようなものを感じながら、自分がナイトメアのコックピット内だと気付くのに時間はあまりかからなかった。

 

 彼女が見上げていたのは、限界まで上昇させたパイロット席の裏側だったからだ。

 

「(画面が消えている……メインカメラがやられたからって、非常用キューポラから乗り出して生身で操縦するなんて、命知らずだな────)」

 

 ────パタタ。

 

 そんな見上げていたパイロット席から赤い液体が滴り、マオ(女)の顔に落ちてくる。

 

「……血?」

 

 体中の関節が悲鳴を上げながらもマオ(女)は起き上がると、ようやくパイロットを見てはギョッと目を見開く。

 

 シートベルトのおかげで辛うじてパイロット席の中でぐったりとした、ライダースーツ&ヘルメットの者を。

 

「お兄さん?!」

 

 マオ(女)は外からガリガリとする音を背景に、スバルのいる席まで上がるとここでようやく自分たちの乗っていたナイトメアが制御を失ったまま前進し、近くの建物にぶつかりながら進んでいたことに気付く。

 

 彼女は前進している方向を見ると、自分たちがT字路の行き止まりに進んでいたのを理解し、操縦桿を握る。

 

「と、止まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 !!!

 

 酷く破損したサザビを止めようとしては金属と金属が擦りあう、直接耳に来る不愉快な音があたりに響いてはナイトメアの移動がやっとの所で止まる。

 

 ライダースーツとヘルメットの中から血が出ていることですでに重症なのは明らかだが、彼を移動させるにも操縦席に座らせたままの方が危なく感じたマオ(女)はスバルの具合を見る為に、シートベルトの金具に手を伸ばす。

 

 カチャ。

 

「手を上げろ。 ゆっくりとこっちに振り向け。」

 

 背後から来た、銃が向けられる際に生じる金属音に()()()()()()にマオ(女)は手を上げてゆっくりと振り向く。

 

「ええっと……お久しぶりだね、()()()()()()。」

 

「私の名はヴィレッタ・ヌゥ、ブリタニアの騎士候だ。」

 

 そこにはいつかのヨコスカ港で撃たれたときの(そして裁縫で修理済みの)服装を身に纏い、銃を近くの瓦礫の山から構えていた()()()()()がいた。

 

「(あーらら、記憶が戻っちゃっているの? う~ん、どう切り抜けようかなぁ。)」




カオスがやっと一段落できそうな目途が立ちましたが、次話が少々遅れるかもしれません。 申し訳ございません。 _(X3」∠)_

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