小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

99 / 268
大変長らくお待たせいたしました、次話です!

リアルが目まぐるしく&予定以上にバタバタし、さらに久しく使っていない筋肉からの筋肉痛でダウンしていました。 (汗


第99話 精神(そして胃壁)的に優しい(?)ひと時

 広大な土地を誇るEU内にある緑がまだ豊かな森の中でも一際目立つ山中の、更に奥でひっそり見える古城、その名も『ヴァイスボルフ城』、はかつての革命以前から聳え立っている元貴族の城である。

 

 人を寄せ付けない気配と圧迫感を持ったこここそがwZERO部隊の本拠地であり、以前にレイラがパリへの招集に応じて旅立ったヘリポートが設置されているところでもある。

 

 完全に中世そのものの見た目と違い、wZERO部隊を立ち上げた際に完全なリフォームを施された城の内部はパリ市内の軍部地区とも引けを取らないほど要塞化していた。

 

 物理的にも、電子的にも。

 

「(おお~。 これがヴァイスボルフ城……の、外壁か。)」

 

 そんな景色をスバルは自動車の中から見上げながら内心、感動していた。

 

 ちなみに日本の名所や旧跡と呼べる数々は殆んどが『無くなっている』、あるいは『一般人立入禁止』となっていることが多い。

 

 トウキョウタワーはブリタニアの侵略時に壊されたまま中身がくりぬかれて博物館化され、フジサンも半分がサクラダイトの輸出の為に採掘場&駐屯地に改造。 キョウトやナラの寺は爆撃の際に焼かれて再開発。

 

 等々。

 

 転生先が『コードギアス』と知ってから、自分の見覚えのある(または無い)モノをリアルに見られることに彼は感動していたが、古風で巨大な城を間近で見るのは今回が初めてである。

 

「(間近で見るとスゲェ迫力だなぁ~……やっと、ここに来られた────)」

 

 その感動を味わえる時間も、束の間だけだったが。

 

「────貴様が“スバル”とやらか。」

 

 ヴァイスボルフ城に着いて自動車を降りると同時に、ハメル少佐と警備隊の何人かが彼に声をかける。

 

「ああ、そうだが? (で、確かこいつが警備隊のハメルだよな? 俺、何かやったか?)」

 

「……一応客人なので、君のご同行を願おうか? 拒否するならば一旦、身柄を拘束してもらう────」

「────え、ハメル中佐────?」

「────マルカル中佐は黙っていてください、これは()()の問題です。」

 

「……いいだろう。 (いや俺マジで何かやっちゃった? 機体は前もってここに送られて調べ上げられている筈だし、対KMFライフルも拳銃もちゃんと預けているし……なんだろう?)」

 

 その答えを、スバルはすぐに分かることとなる。

 

 

 


 

 

 どうなってんのこれ?

 

「よぉ! ()()()()だな!」

 

 い、今目の前で起こっていることをそのまま話すぜ────って、え?

『前置きは良いからとっとと話せ』だって?

 

「ここに来るのに僕たち、結構苦労しちゃったよ♪」

 

 んじゃ言うぞ?

 

『ヴァイスボルフ城に着いたら警備のハメルに付いていっ(連行されてい)たらリョウたち三人が我が物顔で寛いでいて俺と馴れ馴れしい言動をしてきた。』

 

「…………………………」

 

 ああいや、リョウとユキヤの二人だ。

 アヤノは窓際で不貞腐れながら窓の外を見ていて視線も合わせないようにしている。

 

 よって短パンから出た生足(美脚)と立派なお胸がフードパーカー越しに見える♡

 

 というか肌寒くないの? その服装で?

 

「それでスバル、詳しいことを聞こうか────?」

 

 なんの?

 

「────この場所(ヴァイスボルフ城)()()()()()()した理由を。」

 

 え゛。

 

「人が理由もなく来るはずのない森に入ってから何日もかけ、城の近辺にまで来てこれ見よがしに焚火をして────」

 

 あ、だんだんと話が見えてきたぞ。

 

 主にハメルがワナワナと呆れながら眼鏡をかけなおして怒る様子で『な・る・へ・ろ・そ~』なアレだ。

 

『部外者のリョウたち三人がEUの機密を凝縮したようなこの城に来て警備隊が撤去か接触した際に俺の名前を出した』といったところか。

 

 あ、アカン。

 この状況、絶対ハメルの逆鱗に触れているっぽい。

 

 なんでこうなった?

 

「……」

 

 まぁ、無理もないか。

 警備の担当を任されている彼からすれば、『渡り鳥』的な傭兵なんて信用できない存在だし?

 

「何か、申し開きはないのかね?」

 

 ほらぁ~。

 “申し開きはないのかね”とか言っちゃっているし。

 

 ぴえん。

 

「ん? アンタたち、もしかして僕たちがこの人からここの場所を言われたと勘違いしている?」

 

 あれ、ユキヤの薄笑いが人をバカにするようなものに変わったぞ?

 意外……でもないのか?

 

「どういう意味だね?」

 

「その人から誘われているのは本当だよ? でも彼もここに連れて来るのは初めてなんでしょ?」

 

 おお?

 なんかハメル対ユキヤの図面に変わった?

 

「……まさかとは思うが、“自力でヴァイスボルフ城”にたどり着いたとでも言いたいのかね?」

 

「そのまさかだよ、軍人さん。 “この城は自給自足で孤立している”と思っているみたいだけど……見つけるのは“不可能”じゃなくて“難しい”だけだよ? 城自体がでかいし、“廃墟”じゃないのは手入れもされている上に夜になれば明かりは点くし、何より公にされていない。 これじゃあ“何か隠しています”って言っているようなもんだよ。」

 

 おおおおおぉぉぉ?!

『饒舌なユキヤ』も珍しいっちゃ珍しいが、まさかのまさかで正論を混ぜた指摘で“ありえなくもない”状況を作りやがった?!

 

「でしょ、スバルさん?」

 

 って、そこで俺に振るんかーい?!

 

「“情報はすべて”、だっけ?」

 

 ちょっと待てオイこら。

 なんで俺の考えていた言い訳を────ゲフンゲフン

 

 いや落ち着け俺。

 まだ焦るときじゃない。

 

 考えろ。 考えるんだ。

 他人が自分を見て待っていることを忘れずに考え────あ、キタ。

 

「ああ、その通りだ。 『情報』は如何なる状況でも適応できる『万物の基盤』だ。 俺が今までやってこられたのも、そのおかげだ。」

 

 う~む、“それっぽいことを言う”のが俺にもついてきたな。

 

 あとは前もって、この城に輸送された俺の機体が調べ上げられていることを────

 

 「────なるほど……だからクレマンたちがあれほど騒いでいたのか────」

 

 っしゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

 ハメルのぼそっとした独り言が耳に届くと、俺は内心でガッツポーズをとる。

 実はというと、今回の機体は『亡国のアキト』に関わることを前提にした奴だ。

 

 通常ならファクトスフィアを展開して得る情報源の代理に以前、『マオ対策用』として使った小型無人機を使ったスペシャルラクシャータ製だ。

 

 EUではファクトスフィアはおろか、ちゃんとした『ナイトメア』もない。

 “ならどうやってちゃんとしたナイトメアを保有しているブリタニアをバックにつけているユーロ・ブリタニア相手に立ち回れているか”、という疑問が出てくる。

 答えはシンプル。

 

『気球』だ。

 

 EUは『空』に、高々度観測気球を展開させて戦場のデータを得ている。

 

『さすがコードギアスの世界』とでもいうのか時間差(タイムラグ)は生じないものの、雲や悪天候にめっぽう弱い。

 だがそれのおかげでEUはブリタニアたちにいい勝負ができていて、ワイバーン隊はEU全土でもこのアドバンテージをフルに活かせている部隊だ。

 

 つまり、『無い戦力をリアルタイムの情報戦で補っている』。

 

「それで、お前たち三人はどうしてここにいる?」

 

 っと、ハメルの声で現在へと戻る。

 また現実逃避(意識の脱線)の癖が出ていたか。

 

「ユキヤが調べ上げたところ、ここは日本人を雇っているんだろ?」

 

 なにっぬ?!

 

「お前たち……まさか志願しに来たとでもいうのか?」

 

 ……志願……だと?

 

「な~に、俺たちの実力はそこのスバルが知っているさ。」

 

 俺か?!

 そこでまた俺なのか?!

 

「ほぉ?」

 

 ほらぁ~、ハメルも怪しがっている目になってそれを俺に向けているじゃないの~。

 

「そこまでなのか? どうなのだ?」

 

 本日二回目のぴえん……って胃が滅茶苦茶痛い!

 

 もうどうでもええわ!

 

「そうだな。 佐山(リョウ)は身体能力も反射神経もかなりのものな上に手先が器用ということから操縦センスがあるとみていい。 成瀬(ユキヤ)は頭の回転も速い上に()()に長けている。 香坂(アヤノ)は────って、彼女の小太刀はどうした?」

 

 もうどうでもええわーい!

 

「……危険物をそのままにする訳がないだろう。 もちろん没収した。」

 

 うーん、『これでもか!』ってぐらいのメガネ(ハメル)ジト目正論返しだ。

 

「……後で返してやってくれないか? ()()()()()らしいからな。」

 

「………………貴様の処遇と契約とまとめて話し合う必要があるな。」

 

 まぁそうだよねぇ~。

 俺との契約書は『金銭をもらう代わりにwZERO隊の助っ人をする』なんだけれど……

 

 まさかあのア()ウも、ワイバーン隊の親族たちに配られるはずの金が横取りされているなんて思っていなかっただろうな、もとから関心もなかったし。

 

 どこぞの光のように“計画通り”だが。

 

「ああ、それと俺の商売道具の一つである機体の状態を聞いてもいいか?」

 

「……」

 

 そう言いながらハメルを見ると、彼は気まずそうに視線をそらした。

 

「……お前の機体は……()()調()()()だ。」

 

 あ。 これって多分、『分解されたまま』と取っていいのか?

 

「使える状態であれば別に構わん。」

 

「…………………………」

 

 ちょっとハメルさんや?

 なぜに目をそらしたまま汗を出すのでしょうか?

 もしかしてもしかすると『取り調べ中に技術班が興味から分解しすぎてどうやって組みなおしたらいいかわからない』状態ですか?

 

「……………………あ、あとでそれも含めて話そうか?」

 

 うん、これは『分解しすぎちゃったよん、てへぺろ☆』的なシチュエーション辺りかな?

 

 

 


 

 

 ザクッ。 ザクッ。 ザクッ。 

 

 ヴァイスボルフ城の敷地内にある森の中で、シャベルが土を掘り起こす音だけが場の静寂さを過る。

 

 景色が変わるとそこには原作とは違って生き残ったアキト一人ではなく、ワイバーン隊の少年たち数人の姿もあった。

 

「重いから気をつけろよ。」

 

「ああ。」

 

 地面を掘っていたり、リヤカーを引いたりしていた彼らは静かに、必要最低限の言葉しか口にしなかった。

 

『亡国のアキト』で、ワイバーン隊に志願したイレヴンたちは“生き残った家族に迷惑をかけまい”とのことで一つの約束を交わしていた。

 

『生き残った者が戦いで死んだ者たちの墓を掘る』、と。

 

 エリア11は元々日本だけあって、イレヴン(元日本人)はまだ名誉ブリタニア人となって『人間らしい生活』を送ることができる。

 

 だがEUでは収容所の外では住所や職はおろか、墓でさえも提供されない。

 提供されたとしてもよほどのこと(莫大な金)がない限り無理であり、ほとんどが詐欺同然である。

 

 よって小さな場所ながらヴァイスボルフ城の森の一部を譲ってもらい、そこを共同墓地としていた。

 

「アンタも物好きだな。」

 

 アキトは自分のように墓石を埋め込む地面を隣で掘っていたスバルにそう声をかける。

 

「……まぁな。」

 

 当初、ワイバーン隊の生き残りは城に帰ってきてから()()()()()()()墓を作ろうと動き出すとちょうど城の士官たちと話が終わったスバルが動き出す彼らを見るなり“手伝うぞ”との一言でスルリと作業に加わった。

 

『なぜ知っている?』という疑問……というよりは戸惑う視線にスバルはただ黙って手慣れたような振る舞いにそれぞれが似たような思惑を持った。

 

『傭兵ならば、人の生き死にを自分たちのように見たのではないか?』、と。

 

 この思惑が案外、“当たらずとも遠からず”だったことをスバル本人を含めて誰も知らないが。

 

「(はぁぁぁ。 胃がキリキリしなくてラ・ク・チ・ン。 それに想定外の過程で、思っていた結果になったのもよかったよ。)」

 

 そんなスバルはしんみりとした空気とは裏腹に自分の胃壁に優しい空間を噛みしめながら、レイラたちとの話し合いを脳裏で考えていた。

 

 省略するが、契約をしたアノウが居なくなってもスバルの契約は無事(?)wZERO部隊に引き継がれる形となった。

 

 そして今では残り少なくなり、本来殉職(じゅんしょく)した者たちの親族たちに贈られるEUの市民権と保障は何とか確保できた。

 

 というのも原作より死亡者が少なかったことと、スバルが()()()()()()()()()のが大きかった。

 

「(ま、『諦めた』というより『はなっから期待してはいなかった』がな。)」

 

 金銭をもらえない理由は単純であり、単に()()()()()()()()()()()()

 元々存在しない部隊として活動するため、すぐに足が付く電子マネーの運用を避けていることが大きかった。

 

 ()()()()

 

「(だけど機体の反応が予想以上に大きくてビックリしたな。)」

 

 そして案の定、スバルの機体は予想通りにアンナ・クレマン率いる技術部に解体されて隅々まで調べられている途中だった。

 

 無理もないが。

 

 何せ冒頭でも触れたようにスバルの機体はマオ対策用小型無人機のセンサーなどから返ってくるデータを基に情報を得て索敵、電子戦、レーダーを一機で担うような仕様だった。

 

 それは『EUやワイバーン隊が使う高々度観測気球を、コストダウンさせつつもより良くする』という概念を現実化させたようなモノで、そのせいで、元々ボロボロになった機体一機をほぼ一から作り直す過程で上半身────もとい頭部が大きくなり、平べったいパンケーキ状に収まった。

 

 そんな奇妙な形をした頭だけで、wZERO部隊の技術部に興味を引くには十分すぎたが……

 

「(まさか小型無人機をトンボやチョウチョ風に仕上げなおしただけで、アンナに“キャー! 可愛い~♡”と黄色い声をひっきりなしに出させ、俺を見た瞬間にズンカズンカと近づいては俺の肩を掴みながら息を荒くしたソフィに“あれってニッポンの『ドゥヤキィ(どらやき)』という奴でしょう?!”って迫ってくるし……ポーカーフェイスを維持するのに結構苦労したよ。)」

 

 実はスバル、wZERO部隊の『プチ裏設定』的なものを思い浮かべながら機体に組み込み、それが思っていた以上の効果があったことを胸の奥に仕舞いなおし、墓づくりに戻る。

 

 スバルが額に出てくる汗を袖で拭い、静かな周りと数々の墓石を見てから自分の手を見る。

 

「(やっぱり、万が一のためにフランス(EUの標準)語を習ってよかったと思うが……やっぱり不思議なものだな。 俺自身の体なのに、これのどこが“普通よりちょっと良い”んだ? あの自称神様、やっぱり会うことがあったら一発殴ろう……っと、また現実逃避しそうだった。)」

 

 スバルはシャベルを手にしてから掘り始める。

 

「(ちょっとほんわかとした空気で和んだけど……肝心なのはこれからだし、気を引き締めておこう。 何せ『亡国のアキト』は描写が少ない上に映し出された展開はほぼRTA真っ青の急展開ばかりだった上に、俺の覚えている内容通りにいくのかも怪しいし……でも全部が全部、悪い知らせじゃない。 『亡国のアキト』はルルーシュ側の『コードギアス本編』と直接絡むわけではないから、未来の『キャッキャウフフ対象(彼女)』探しに本腰を入れるか。)」

 

 なお、スバルはまだ知らない。

 上記の『プチ裏設定』や原作知識をもとに、行動し始めることで起こす数々のことを。

 

 だがそれは後にて、お話に出てくるであろう。




余談ですが、スバルの持ち込んだ機体はイメージ的に『アレ』が近いです。 

『D-3』に。 (汗汗

…………時間があるときに次話を書きます、短くて申し訳ございませんでした。 (汗汗汗汗汗

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。